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産地紹介


うま農業協同組合 (愛媛県四国中央市)

うま農業協同組合 営農部 営農販売課
河 村 完 司


1.産地概要

 四国中央市は、平成16年4月1日に2市1町1村が合併して、新しい市政がスタートしました。市は、まさに四国の中央、愛媛県の東端に位置し、東に香川県、徳島県、南に高知県に接し、北は燧灘に面します。

 交通は、JR予讃線、国道11号線および松山自動車道が東西に走るとともに、高知・徳島自動車道とも連結しており、四国の交通の要衝となっています。    

 四国中央市は中央部を東西に走る法皇山脈により嶺北地域と嶺南地域に区別され、嶺北地域は果樹・水田畑作地帯、嶺南地域は山間畑作地帯です。               

 嶺南の気候は平均気温12.9℃、降水量1,700mmで銅山川水系にはダム整備がなされています。嶺北の気候は平均気温15.4℃、降水量1,300~1,400mmで温暖少雨な瀬戸内気候です。地質はほとんどが結晶片岩、頁岩からなる沖積層の土壌となっています。

 このように気候は好条件ではありますが、日本三大局地風の1つである「やまじ風」と言う暴風が春と秋に吹きます。この風は、最大瞬間風速40mを越える時もあり、農作物や家屋に大きな被害を及ぼすことが少なくありません。

 そのような気象条件の中、当地区においては自然と地下系の作物、里芋・山の芋の栽培が定着しました。なかでも、里芋の栽培の歴史は古く、文献によると江戸時代初期から、すでに商品作物であったとされています。戦前までは「青軸」または、赤芽などの在来品種が中心でしたが、戦後、食料増産と共に、収量が多く見込まれる「女早生」と言う品種が当地方に拡大、定着しました。そして、里芋・山の芋の栽培面積が急激に増えだしたのは、昭和45年以降の水稲の減反政策による転作の強化によってです。

 当地区の農業以外の産業では、紙関係の産業が盛んです。川之江・三島地区の臨海部には、数多くの製紙工場や紙関連加工所があり、労働力の受入れ場所が潤沢にあります。このため労働力の多くはこういった工場に働きに行くため、ほとんどの農家は兼業農家で、農作業の中心は、女性と昭和一ケタ生まれの高齢者です。加えて、前記しましたように、当地区が交通の要衝であるために、都市化が年々進んでいて、農地面積は少しずつ減ってきています。そのような中でも、当地区は、水稲・山の芋・里芋の輪作体系がしっかりと確立しているために、里芋の栽培面積約200ha、生産量約5,000t、山の芋の栽培面積約50ha、生産量約750tを維持しています。

2.部会活動

 JAうまは、平成8年に8JAが合併し、平成15年にはさらに1JAが加わりました。活動範囲は四国中央市管内になります。JAでは平成8年の合併の際、生産者部会を整備し、米麦部会、特産部会、果樹部会、野菜部会、畜産部会を発足しました。その特産部会のなかに、里芋専門部会、山の芋専門部会、茶業専門部会があり、1,185名の部会員がおり、その内、里芋専門部会は757名で構成されています。

 部会では、JA、愛媛県の四国中央普及室と連携し、優良種芋の選抜および実証試験、堆肥等を利用した土作り、生分解性マルチの実証試験、里芋専用追肥一発肥料の開発・実証などさまざまな取り組みを行っています。

1)優良種芋の選抜および実証試験

 里芋の収量や形状・品質を左右する重要な要素の1つとして種芋の選定があります。種芋は、各農家において選定し確保するのが一般的でした。しかし、自家採種の繰り返しのため農家間で収量や形状・品質の格差が広がりつつありました。そこで取り組んだのが優良種芋の選抜をして、実証試験をすることです。選抜した中から優良系統を増殖して、昭和60年頃より農家への配布を一部の地域から始めました。いまでは愛媛県農業試験場が開発したセル成型苗による大量増殖技術を実用化して、全地区に配布することが可能になりました。

2)堆肥などを利用した土作り

 土作りにおいては、個々の農家が地元の畜産農家の堆肥を利用するのが普通でした。しかし、昭和57年、JAに堆肥センターが整備されて完熟堆肥の利用による土作りが本格化しました。加えて、平成5年頃より、嶺南地区に整備されているダムの堆積土を利用して連作障害の軽減を目的に、行政と連携して客土事業に取り組みました。堆肥、堆積土の利用により有機質に富んだ土作りに努めています。

3)生分解性マルチの実証試験

 里芋のマルチ栽培は、昭和60年頃から普及し始め、早期出荷、品質向上、収量増を目的に、透明マルチ・黒マルチを各農家が出荷時期別に使用して、全体の40%まで面積が拡大しています。

 しかし、マルチも良い点ばかりではなく、6月の土寄せ作業の時にそのマルチを取り除く作業が、高齢化している農家にとっては大きな負担となり、廃ビニール処理の環境への問題も上がってきました。そこで、部会が平成10年度より生分解性マルチの実証試験に取り組み始めました。平成16年度のJA実績では、マルチの出荷約3,500本の内約1,500本(約34ha)が生分解性マルチに変わり、耐久性や分解性について実証してきた成果が実ったと思っています。ただ、全国的にもまだ普及段階ですので、材質・価格の面等について各メーカーとも研鑽を重ねていますので、部会としてもこれからも比較実証試験に取り組んでいきます。

4)里芋専用追肥一発肥料の開発・実証

 部会では、古くから里芋の専用肥料の開発に取り組んできました。

 作物の肥培管理は、その作物の状態を観察しながら施肥するのが一番ですが、作業を省力化するために開発・実証されたのが、里芋専用追肥一発肥料です。この肥料は6月中~下旬の追肥時に施用しその後の追肥は不要です。里芋の生育に応じて肥料の溶出が3段階にコントロールされ、従来の施肥回数の3回から1回に省力化できます。平成12年には「女早生SRコート」として商品化されて平成13年より現地へ導入し、いまでは、里芋栽培面積約200haの内約75haで使用されています。

3.生産販売体制

 当地で栽培されている品種は「女早生」といいます。この品種は多収量が見込まれ、強い粘りとやわらかい食感が他の品種にはない特徴です。収穫は、9月中旬から始まり3月まで行われます。収穫期間が長いため、各農家は自分の作業スケジュールに合わせて掘り取りを行います。しかし、その名のとおり早生種のため旬は10月で、食味に一番特徴の現れる時期です。

 作型は、マルチ栽培と露地栽培の二つに分けることができます。

 マルチ栽培の定植は3月上旬から始まります。西南暖地とはいえ寒い日もありますので、定植後は速やかにマルチをかけるようにしています。マルチには透明マルチと黒マルチがあり、透明は、9月中旬からの早期出荷や品質向上を目的とし、黒は、草対策や品質向上が目的です。

 露地栽培の定植は3月中旬から4月上旬にかけて行われます。年末や年明けに出荷する芋や、翌年の植付用として使用する種芋などは露地で栽培されます。


 

手掘り作業
 
機械掘り作業

 里芋の栽培のなかで重要な作業の1つに、土寄せ(当地方では「オオナカ」と言います)があります。この土寄せがしっかりできていないと、親芋につく子芋や孫芋が十分に生育しないからです。この作業は6月の梅雨の合間に行われ、田植えも始まるため農家もこの時期は大変です。

 収穫は、子茎が倒れこんできた頃を目安としています。部会で作型別に掘り取り調査を行い、出荷日を決定して部会員に連絡します。

 出荷は、農家で芋の分割・根取りを行い選荷場に持ち込みます。里芋はすべて共同選荷され、出荷形態は秀・優、階級別に、10kgダンボールばら詰めで主に京阪神を中心に市場出荷されます。出荷のピークは旬の10月と年末になります。


共同調整作業

土寄せ作業

4.今度の取り組み

 競合する他産地、特に中国産と対抗するためには、安全・安心をも売っていかなければなりません。そのための特徴ある産地作りを目指すために、平成15年度より約1haからですが、「愛媛県特別栽培農産物等認証制度」へ申請して、減農薬・減化学肥料栽培農産物の認証を受け、出荷・販売しました。昨今、食の安全・安心が消費者の一番の関心ごとであるため、十分手応えを感じることができました。しかし、除草剤などの農薬使用に制限があるため、面積拡大には苦労があると思いますが、啓発・推進に努めその輪を広げていきたいと思います。

  里芋には数多くの種類があり大別すると赤芽系統、白芽系統の2系統に分類されます。当地の最大の出荷先での京阪神では、里芋のことを「こいも」と呼びます。つまり消費地では里芋をひとくくりにしているのです。そのため生産者とともに毎年のように消費地へ出向き代表的な食べ方の「いもたき」の試食会などを行いアピールしています。            
 そのほかに下位等級品の有効利用として、「いも焼酎」の開発があります。この取り組みは平成8年より酒造メーカーの協力によって行われ、その名も「やまじごろし」、やまじ風を封じ込める意味を含めた名前で、公募で選ばれました。もう1つの特産品である山の芋を使った焼酎も造られ、やまじ風をイメージした「うまの風」として、販売されています。

 また、女性部が里芋を使ったコロッケを開発し、産直市「ジャジャうま市」で実演販売され、粘りの強さを利用してクリーミーに仕上がり、好評を得ています。

 JA及び部会は、消費者に対しては、いろいろ提案を行い産地の特徴をアピールしていき消費拡大を図り、生産者に対しては、コスト低減・省力化により所得の向上を図り、少しでも長く耕作してもらえる環境作りを整備して、定年退職者にも積極的に就農できる場を提供していきたいと思います。

5.問い合わせ

うま農業協同組合
営農部 営農販売課
〒799-0405
愛媛県四国中央市三島中央1丁目1番27号
TEL 0896-24-2311
FAX 0896-24-2259
k-kawamura@ja-uma.or.jp
河村 完司



 

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