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産地紹介


会津みなみ農業協同組合 (福島県南会津郡)
~南郷トマトにおけるエコファーマーの取り組みについて~

会津みなみ農業協同組合 下郷支店 経済課
野菜グループ営農係 平 野 貴 裕
(前 事業部営農課(西部駐在))


1.はじめに

 野菜を取り巻く環境は、農薬不正使用問題、産地間競争、消費及び価格の低迷等により厳しい条件にあります。そうした状況のなか、消費地及び消費者が求める「食」の安全・安心をコンセプトに供給できる体系作りと正確な情報発信が重要となっています。そんな背景で平成15年6月に福島県持続性の高い農業生産方式導入計画が認定された南郷トマトにおけるエコファーマーの取り組みを紹介します。

2.南郷トマトの概要

 現在、南郷トマトは南会津郡内6町村(田島町、下郷町、舘岩村、伊南村、南郷村、只見町)にまたがり栽培されています。平成15年度の栽培面積は全面積雨除け簡易ハウスにて33.38ha作付けしており、栽培者数は132名が生産しています。

 出荷先は京浜7市場をメインとし、補完的に関西1市場及び市場外流通に出荷を行い、本年度総出荷量約2,500トン出荷をしています。

 苗の供給は10名の各地域の育苗担当者が自根苗、穂木及び台木苗を共同育苗で行い、その他に一部購入苗を使用し、約62万本の育苗をしています。品種は全面積「桃太郎8」を作付し、約6割が接木で台木品種は「Bバリア」を青枯れ病等の土壌病害対策を目的として使用しています。

 仕立ては基本的に一本仕立てとし、栽培地域(標高差等)で異なりますが約10段まで収穫が可能です。

 近年は育苗期間を短縮させたセル苗直接定植や、定植期前進型栽培のような労働力分散や、収穫時期延長による収量アップを目指した作期分化型栽培が定着し始めています。

 生産を支える組織として、生産者で組織している南郷トマト生産組合を中心に、関係機関にて組織する南郷トマト振興協議会や災害等の援助機関として南郷トマト生産互助会、技術指導をバックアップする南郷トマト指導班、南郷トマト生産組合下部組織として試験展示ほ場を受け持つ研究部と地区毎の支部があります。


個人毎の施肥設計相談会

3.持続性の高い農業生産方式導入計画認定までの経緯

 南郷トマト生産組合では、食の安全に対する消費者の信頼が揺らぎつつある中、消費者が求める安全・安心なトマトの供給を目指そうという気運が高まり、平成14年2月の総会において、「福島県持続性の高い農業生産方式導入」への決議を行い、その後、県、農協などの指導機関が体制づくりを行い、生産方式導入に向けて生産者、農協、関係町村、県が一丸となった取組みが開始されました。

 導入する具体的な生産方式の内容、目標の設定にあたっては、生産技術および圃場条件に差があることから、実証展示ほの設置、生産履歴や土壌診断に基づく個人面談指導等を行い技術の高位平準化を図り、生産者の合意のもと、より高い目標を設定した生産方式の導入計画を決定し、平成15年6月に認定されました。

持続性の高い農業生産方式導入計画認定までの主な取組み

4.目標の設定

 目標の設定として「福島県持続性の高い農業生産方式導入に関する指針」をもとに作成しました。下記の表はその具体的なトマト(夏秋雨除け栽培)における内容で地域にあった事項を選択して目標を策定しています。


注:化学農薬使用回数とは単なる農薬の散布回数ではなく、散布した薬液等に含まれる薬効成分の数を散布(経歴)ごとに合計した数である。

 認定前の状況はおおむね上記の内容に沿った栽培をしており、導入計画の際に問題点のひとつとしてあげられるのは下記の指針にもとづく標準的な施肥窒素量及び農薬使用回数に対する削減目標があります。


注 1 )殺菌剤及び殺虫剤の30日当たり使用回数に栽培月数を掛け、除草剤の使用回数を加えたものである

  当産地に当てはめると、化学肥料については窒素成分37kgから30kgへ削減を目標にします。

  化学農薬については以下の計算式で削減目標とします。

  定植6月1日 収穫終了10月31日 

  栽培日数153日(育苗中の農薬使用は定植後に影響がなければ数えない)

  殺 菌 剤 栽培日数153日÷30日×3成分×80%(20%削減)=13成分となる(小数点切上げ)

  殺 虫 剤 栽培日数153日÷30日×2成分×80%(20%削減)=9成分となる(小数点切上げ)

  除 草 剤 作期当たり1成分となる。

 上記の目標を平成14年度より実施している生産履歴から見たところ目標を達成している生産者がいるため簡単にエコファーマー認定されるものと考えていましたが、関係機関と協議により、ハイレベルな独自目標を設定し実質的な面で環境にやさしい農業を目指すことになりました。

<有機質資材施用技術>

<化学肥料低減技術>

<化学農薬低減技術>

 有機質資材等施用技術については目標2トンの投入が独自目標2.5トンとなり投入の理解と土づくりの大切さを生産者に伝えながら進めていくことになりました。

 次に化学肥料低減技術については5年前より導入試験を繰り返していた有機質主体のオリジナル肥料「南郷トマト専用肥料1号・2号」を生産者とJA、南会津農林事務所の個人面談で土壌分析結果に応じて施肥量を調整しながら投入したため、栽培に必要な窒素量の供給及び化学窒素量の低減が可能となりました。

 最後に化学農薬低減技術は、農薬の効率的なローテーションの組み合わせと微生物農薬等のノーカウント農薬の使用及び防草シート、防虫ネットの普及により化学農薬低減が可能になりました。

5.実績と課題

 

 
集団指導会の様子

 平成15年は冷夏の影響により、灰色カビ病やエキ病が多発した地区もあり化学農薬散布の面において目標達成できない生産者もありました。気象条件に影響が大きい傾向にあるが次年度の課題として、それらの対象病害に微生物農薬の有効利用があげられます。

 また、南会津特有の作土が浅い土壌に連作を続ける過酷な土壌条件に対して土づくりとして物理性・化学性・生物性の改善もあげられます。

 販売面においては、エコファーマー農産物の低い消費者認知度に対し関係機関の協力を得ながら理解を促すことや、差別化販売が可能な販路を確保する出荷体制を組まなければならないことがあげられます。

6.問い合わせ

  会津みなみ農業協同組合
   事業部 営業課

  〒967-0004
  福島県南会津郡田島町大字田島字行司76

  TEL 0241-63-1174
  FAX 0241-63-1185




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