JAはが野営農部
園芸特産指導グループ
次長 鶴 見 俊 之
1.地域の概況
1)地域の略図
2.経営環境の特徴
芳賀地方は、平坦部と八溝山系とに分かれますが、気象条件はほぼ均一化しており、真岡市の平均気温は12.6℃、年間降水量は1,272.3mmです。
平坦部は、黒ボク土が広く分布する水田地帯であり、一部河川沿いでは肥沃な灰色低地土も分布しています。
平坦地帯は、鬼怒川、五行川、小貝川の一級河川が南北に流れ、それぞれの支流水域によって灌漑されており、水利に恵まれています。
首都圏に100キロの位置にあり、出荷先は大半が京浜市場となっており、ナスについては、流通量の調整で一部仙台や長野市場への出荷、又地産地消から地元宇都宮市場への出荷も行っています。
芳賀地方は県の東南部に位置し1市5町からなる広域合併JAです。組合員戸数15,246戸、准組合員戸数3,202戸で、農産物生産が盛んに取組まれJA取扱い高235億円(H15年度)になります。イチゴは日本一の生産量を誇り、ナス・梨・トマト・花卉等も県内を代表する産地を形成しています。
3.ナス部会組織図
4.部会活動
1)生産地の概要
JAはが野における園芸特産物の生産額は、130億円を超えます。首都圏に100キロ圏内の利点を活かし新鮮な農産物をいち早く消費者の皆さんに安定的に供給できる産地を目指しています。
管内の代表的な品目のひとつにナスがあります。ナス部会は、生産者数381名(内ハウス栽培者65名)、年間生産量5,000トン(内ハウス1,200トン)、販売高13億円(内ハウス4億円)の取扱いとなっており、夏秋ナスの歴史は古く昭和35年頃より中村地区(真岡地区)で導入され、現在も盛んに栽培が続いています。品種は露地栽培が千両二号、促成・半促成栽培が式部に統一、近年、契約の加工ナス(筑陽)も導入されています。
2)野菜指定産地
青果物の価格低迷が続き農家経営が厳しい時代にありますが、農家の皆さんに安心してナス栽培を続けて頂く事が大切であります。当部会では、国の野菜指定産地として指定され、メリットである価格安定事業は欠くことが出来ない価格補填制度であることから広域的に拡大を進めたところです。シーズン2,500トンを当制度に加入することで価格低迷時の対応に万全を期しております。
3)広域営農指導員
ナス部会は、平成11年3月に広域合併し統一部会を立ち上げました。合併当初、旧JA間に栽培管理や品質管理に大きな技術格差があり、こうした技術格差の是正や技術の底上げを図る目的で、平成12年3月より広域営農指導員が品目毎に7名専任設置されました。
広域営農指導員(ナス担当)は、技術レベルの高いところ(目標到達地点を高めに設定)に統一することを目的に、各地共通資料による現地検討会・荷造り講習会・座談会等を開催することからスタートをしました。技術の高位平準化を推進する一方、広域合併JAの組織別課題を明確にし、その課題別到達値を策定し(他品目との歩調を合わせ)、各種事業を進めています。
○広域営農指導員が取り組んできた内容
(1)栽培技術の高位平準化
(2)各種資材、農薬、肥料の統一
(3)出荷規格、出荷容器の統一
(4)部会事業及び会計の統一
(5)集荷所利用料金の統一
(6)広域物流合理化の統一
(7)共計・共販体制の統一
(8)販売戦略に基づく生産誘導
(9)食の安心安全への取り組み
4)夏秋ナス新規栽培者の確保と支援策
部会内では、生産者の高齢に伴い夏秋ナスの栽培中止者も年々増えることから、対策として定年退職者をターゲットに地区別に目標(1地区10名×6地区)を設定し新規栽培者の推進確保に取組んでいます。新規栽培者には、苗・資材・農薬等の手配や戸別の栽培指導、新人対象の現地検討会・荷造り講習会等を毎月開催し支援しています。
5)省力化対策
育苗では、全体40万本を超えるナス苗を、セル苗やリレー苗による定植苗で供給するなど、農家のニーズ応えるかたちで苗を供給するシステムを確立しています。また、出荷規格の簡素化によりAMのロットを大幅に拡大している。更には、量販店とのコンテナ出荷を立ち上げ(現在は全体量の30%の取扱量)、もっと拡大することで労力を軽減を図って行きたいと思います。加えて、過重労力を軽減する為、農家の希望によりハローワークと連携しパート雇用を支援しています。
6)周年出荷体制
周年を通じて安定的にナスを出荷することで産地の優位性を発揮しています。若い後継者を中心にハウス栽培の導入を図りました。促成土耕栽培(23名4ha)促成養液栽培(24名5ha)半促成栽培(26名3ha)に露地を含めると、4つの異なるタイプの栽培を柱に希望農家が経営やコスト・労力面を選択できる仕組みを立ち上げています。今後も新技術開発計画に基づきにより内容(目標の達成に向け)の充実を図りたいと思います。
7)共計共販体制
統一部会が平成11年3月に設立され、その年の6月から共計共販体制が整備されました。これは、真岡流通センターに一元集荷するものであり、横持ち輸送体制を整備し、厳しい検査体制を引くことによって地区間格差を乗り切ることができ、JAはが野のイメージはむしろ高まる結果となりました。そのことが販売価格にも反映し、各地区に対しメリット還元することができました。
現在では全ての部会、共計共販体制が確立されており、運賃、集荷所利用料金など諸条件も統一整備されました。
8)販売戦略に基づく生産誘導
ナス部会では、レギュラー出荷の他に、グループ販売を積極的に企画し実践しています。手あげ方式による特殊販売を全体量の40%まで引き上げようとしています。例えば、Y量販店の60本コンテナ出荷、i量販店80本コンテナ出荷、加工の長ナス栽培や平箱コンテナ60本詰め等、商物分離を主体とした相対取引に力を入れています。
今後も新たな販売企画を提案しグループ販売を積極的に推進する方向であります。
9)安心はが野ブランド
「はが野から出荷される農産物なら安心できる」と消費者の皆さんから信頼される産地ブランドを構築する為の取り組みを全生産者により推進しています。
1)生産履歴の記帳及び点検
2)栽培・防除マニュアルの更新
3)残留農薬のサンプル分析
4)農薬の安全使用講習会
これらの取組みは各部会とも徹底して行われています。
更には、環境保全型農業への取組みとして全生産者エコファマーの認定を受け、堆肥の施用・土壌診断の実施による適正な施肥管理の実践や「JAはが野専用有機肥料」(いがっぺ・よがっぺ)の開発と普及拡大による減化学肥料に努めています。
5、今後の取組み
平成16年4月よりパッケージセンターが新設稼動されました。ナス・イチゴ・トマトをメイン品目として活用します。基盤強化策として第二、第三のパッケージセンターも視野に入れてます。これらが時期を得て上手く機能することで規模拡大や新規参入に波及、更に特殊販売(売れる物作り)に波及することで農家のニーズに応え且つ農業基盤の脆弱化に対処したいと思います。
環境保全型農業については、環境劣化分子を検証し、環境保全型農業から環境創生型農業実現に向け技術革新を図り、当地自慢ブランドを幾つも育てたいと思います。またナスの生産や販売活動が環境保全に果たす役割も沢山あることを消費者の皆さんにアピールして行きたいと思います。