1 野菜をめぐる現状
(1) 生産の動き
平成17年の野菜の産出額は約2兆円で推移し、畜産の産出額(約2.6兆円)に次ぐものになっていますが、作付面積は約45万ha、生産量は約1,200万トンで近年減少傾向にあります(図2)。また、野菜生産は、農業所得で生計を立てている農家(主業農家)が81%を占め、このうち、認定農業者のいる農家は15%で、その面積シェアは34%となっている中、農業従事者の減少や高齢化も進行しています(図3)。
(2) 流通の動き
近年、加工や外食・中食産業向け等の業務用途向けの需要が増大している中、食品製造業、食品小売業及び外食産業においては、平成15年と比べ卸売市場、食品小売業からの仕入割合が減少し、生産者団体等からの直接や商社等を介しての仕入れが増える傾向にあります。
(3) 消費の動き
外食や中食などの食の外部化が進展する中、野菜の消費量は減少傾向にあり、平成18年には1人年当たり95kgで、これに併せて、生鮮野菜の購入量も1人当たり56kgで平成8年に比べ4kgの減少となっています。
また、世代別の摂取量においては、厚生労働省が定める野菜摂取目標350gを下回り、特に若年層において不足になっています。
2 野菜の自給率向上に向けた今後の方策
(1) 基本的な取組
野菜の自給率の縮小基調は、外食・中食産業等の発展に伴い、加工・業務への需要が国内の野菜需要の5割以上にまで増大し、その加工・業務用需要の輸入野菜シェアが平成2年の12%から、平成17年には32%まで増加しています。この主たる要因としては、実需者の要望があるにもかかわらず、国内産地の対応が遅れていること等が上げられ、今後、加工・業務用需要における国産野菜のシェアを奪還していくためには、
①加工・業務用対応の必要性についての生産者側での理解の浸透、
②加工・業務用に対応した生産方法やその取引手法となる契約取引のノウハウの普及、
③実需者ニーズの把握、
④輸入に対抗して生産すべき品目やその時期の分析と、これに対応した産地の育成
等を図っていくことが重要となっています。
(2) 具体的な取組
これまで、野菜産地と実需者との交流会や、産地が加工・業務用需要に取り組む際に参考となる「品目別・用途別ガイドライン」の作成、配布等の取組みを進めてきたところであり、減少傾向であった指定野菜(ばれいしょを除く)の加工向け出荷数量の下げ止まりなど一定の成果が得られています。しかしながら、生産努力目標(27年:1,422万トン)の達成には更なる取組が必要であり、従来の全国一律的な施策の展開から、以下のモデル産地等を対象とした重点的かつ集中的な支援に転換し、着実に生産拡大を図っていくよう取組むこととしています。
①モデル産地の形成
公募により全国で12箇所のモデル産地を選定し、加工・業務用向けの新たなモデル野菜産地を形成します。
モデル産地に対しては、加工・業務用需要向けの大型規格高収量等の栽培体系の生産実証、交流会等による実需者とのマッチング、契約取引を推進する産地側の人材育成等といった取組をパッケージとして重点的に支援していきます
②産地強化計画に基づく産地育成
産地自らが作成した産地強化計画において、加工・業務用需要に対応した取組を推進することとしている産地に対しては、取組状況を点検・分析した上で、モデル産地に準じて、交流会への出展や研修会への参加等を支援していきます。
③産地と食品産業の連携強化
国内産地と食品産業の連携を強化していく観点から、産地と食品産業が連携して積極的に国産野菜の生産・利用拡大を進める取組を顕彰する制度の創設や、食品業界ごとに求める品種特性等の項目を整理し、種苗会社や産地へ業界ニーズ等の情報提供を行うとともに、産地による食品産業等への品種特性等の情報発信等も促進します。
④平成20年度以降の取組
平成20年度からは、剥き等の一次加工が遅れているため輸入品にシェアを奪われているさといも、かぼちゃ、ごぼう等の品目についてもモデル産地を設置するとともに、強い農業づくり交付金、食品産業クラスター展開事業等において優先配慮すること等によって支援し、加工・業務用需要に取り組む産地を更に増加することを計画しています。
おわりに
野菜の自給率向上に向けては、生産者、実需者及び行政等の全ての関係者が危機 感を共有し、それぞれの立場での役割分担をもって連携した取組を推進することが 不可欠であると考えています。幸いにも、最近、食の安全・安心面から中国産野菜 等の輸入が減少している状況にあり、これを好機と捉え、生産段階で各取組を積極 的に実施することで、加工・業務用を中心とした生産拡大が推進されるよう期待しています。