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平成18年食品流通段階別価格形成調査 (青果物経費調査)結果の概要について

統計部消費統計室 流通構造統計班
価格形成統計係 盛山 昌二郎


はじめに

  食品流通段階別価格形成調査(青果物経費調査)は、「青果物集出荷段階経費調査」、「青果物仲卸段階経費調査」及び「青果物小売段階経費調査」から成り、平成18年直近の決算期間(1年間)について、各流通段階別の流通経費と品目別(調査対象25品目(野菜19品目、果実6品目))の価格形成を事例的に調査し、青果物の流通コスト低減、効率化等を目的とする食品流通改善施策等の資料とすることを目的に実施したものである。

  本稿では、青果物経費調査のうち、野菜に係る各流通段階別の調査結果を中心に紹介する。

■1 調査の概要

(1) 青果物集出荷段階経費調査
  全国の青果物の主要産地に所在する集出荷団体のうち、主に東京都中央卸売市場、大阪市中央卸売市場へ出荷する集出荷団体を対象に、経営概況及び集出荷経費(選別・荷造労働費、包装・荷造材料費等)、販売経費(出荷運送料、卸売会社手数料等)、販売価格(卸売価額、荷主交付金・出荷奨励金等)等について調査を行った。

(2) 青果物仲卸段階経費調査、青果物小売段階経費調査
  青果物仲卸段階経費調査は、東京都及び大阪市中央卸売市場に所在する仲卸業者、青果物小売段階経費調査は、東京都及び大阪府に所在し、東京都及び大阪市中央卸売市場から仕入を行う小売業者を対象に、経営概況、販売経費(支払運賃、包装材料費、車両燃料費等)、管理経費(賃借料、支払利子、市場使用料(仲卸段階のみ)、支払地代等)、給料手当等の経費、品目別の仕入金額及び販売金額等について調査を行った。

■2 調査結果の概要

(1) 野菜の集出荷段階の流通経費等(100kg当たり)
  ア 野菜平均(調査対象19品目)の集出荷・販売経費は6,549円で、販売価格(卸売価格に卸売会社が集出荷団体に対して支払う荷主交付金・出荷奨励金及びその他の収入を加えたもの。以下同じ。)14,897円に占める割合は44.0%となっている。

  一方、生産者受取価格は9,886円で、販売価格に占める割合は66.4%となっている(図1)。

図1 集出荷段階の流通経費等(野菜平均、100kg当たり)

注:( )内の数値は、販売価格に占める各経費等の割合である。


  集出荷・販売経費の内訳をみると、集出荷経費(青果物の収穫後、選別・荷造、出荷等を行い、消費地卸売市場へ運搬される直前までに要した経費。以下同じ。)のうち、出荷のための選別・荷造労働費(生産者+集出荷団体)は1,793円(販売価格に占める割合は12.0%)、包装・荷造材料費は1,065円(同7.1%)となっている。

  なお、出荷のための選別・荷造は、生産者が行った後に集出荷団体に持ち込む形態が中心となっている。

  また、販売経費(消費地卸売市場への運搬から販売されるまでに要した経費。以下、集出荷段階の流通経費において同じ。)のうち、卸売市場での販売にかかる卸売会社手数料は1,196円(同8.0%)、出荷運送料は1,282円(同8.6%)となっている。

  イ 野菜の販売価格に占める集出荷・販売経費の割合は、集出荷団体において機械選別等が主体のピーマンは28.1%と低くなっているが、生産者による選別と荷造が主体のほうれんそうは88.1%と高くなっている(表1)。

表1 集出荷段階における販売価格に占める経費と生産者受取価格の割合等(野菜19品目)
金額: 100kg当たり円
割合: %


注:( )内は、販売価格計に占める各項目の割合である。
なお、集出荷経費及び生産者受取価格には、生産者による選別・荷造労働費が重複して含まれるため、販売価格に占める割合の内訳を合計しても、必ずしも一致しない。

 ウ 野菜の集出荷・販売経費に占める各経費の割合をみると、機械選別等を集出荷団体で行った割合が高くなっているトマト、ピーマン、たまねぎ、ばれいしょでは選別・荷造労働費の割合が低く、それぞれ12.1%、16.7%、11.0%、9.5%となっており、生産者による選別と荷造が主体となっているほうれんそう、ねぎ、きゅうり、にんにく、生しいたけでは選別・荷造労働費の割合が高く、それぞれ64.1%、46.5%、48.5%、46.7%、43.9%となっている(図2)。

図2 集出荷・販売経費に占める各経費の割合(野菜19品目)


 
  また、たまねぎ、かぼちゃは遠隔地からの出荷が中心であるため出荷運送料の割合が高く、それぞれ31.1%、33.3%となっており、ピーマンは卸売会社手数料の割合が高く、29.2%となっている。

(2) 仲卸業者及び小売業者の流通経費等(1店舗当たり平均)
  ア 仲卸業者及び小売業者の仕入・販売の状況をみると、販売収入に占める仕入金額(仕入れ原価)の割合は、それぞれ87.4%、74.3%となっており、販売収入の大部分を占めている(図3)。

図3  仲卸業者・小売業者の流通経費割合( 1 店舗当たり平均)



  イ 仲卸業者及び小売業者の経費の内訳をみると、給料手当の割合が最も高く、それぞれ47.2%、56.9%を占め、次いで管理経費(仲卸28.3%、小売30.3%)、販売経費(仲卸23.9%、小売11.3%)の順となっており、仲卸業者、小売業者とも概ね同じ傾向となっているが、仲卸業者は小売業者への配送に係る経費(支払運賃)の割合が高いため、販売経費の割合が高くなっている(表2、表3)。

表2  仲卸業者の経費等
単位 金額:千円
割合:%



表3  小売業者の経費等
単位 金額:千円
割合:%




【参考】流通過程全体を通じた価格形成(価格形成の試算)
  今回の調査結果を基に、産地から小売までの各流通段階での価格形成を試算すると、以下のとおりであった。

1 試算の前提条件

(1) 本調査は、同一の品目の価格形成を各段階ごとに追跡する調査ではないが、(1)産地段階の調査は東京都中央卸売市場又は大阪市中央卸売市場(以下「対象市場」という。)への出荷実績の多い都道府県の中から選定した集出荷団体、(2)仲卸段階の調査は対象市場で青果物を取り扱う仲卸業者、(3)小売段階の調査は対象市場から仕入を行う小売業者を対象としていることから、一連の価格形成が行われているとの前提を置き、さらに各段階の販売・仕入価格(例えば、仲卸段階の販売価格と小売段階の仕入価格)は一致するものと仮定し、仲卸、小売段階のそれぞれの仕入金額に仕入金額と販売金額の比率を乗じ販売価格の試算を行った。(具体的には、「2価格形成の試算」を参照。)

(2) 仲卸、小売段階の試算に用いた仕入金額、販売金額については、平成18年11月の1か月間における品目別の仕入金額、販売金額を把握したものであるが、1か月間の仕入金額と販売金額の価格比と年間の価格比は一致するものと仮定し、価格形成の試算を行った。

  なお、仕入金額と販売金額の価格比の算出に当たっては、仕入れて傷んだり、売れ残り等により販売できなかったものの割合を把握し、それに見合う金額を仕入金額から除外している。

2 価格形成の試算 

 だいこんを例とした価格形成の試算結果は、次のとおりである(図4、表4)。

図4 だいこんの流通の価格形成の例(100kg当たり)


表4 野菜の品目別流通段階別の価格(試算)
単位:100kg当たり円

注:野菜の試算に用いた品目は、集出荷段階経費調査の調査対象19品目のうち、アスパラガス
を除く小売及び仲卸段階経費調査の調査対象18品目である。


(1) 集出荷団体の販売価格及び生産者受取価格
  ア 平成18年直近の決算期間(1年間)のだいこんの100kg当たりの生産者受取価格は、調査結果から6,816円 であった。

 イ 平成18年直近の決算期間(1年間)の集出荷団体でのだいこんの100kg当たりの販売価格(卸売市場での卸売価格)は、調査結果から10,035円であった。

(2) 仲卸業者の価格
  ア 仲卸業者のだいこんの販売価格は、仕入価格に対し119.7%であった。

  イ 仲卸業者は、集出荷団体の出荷しただいこんを卸売市場を経由して(1)のイの卸売価格(10,035円/100kg)で入荷すると仮定できるので、仲卸業者での100kg当たりの販売価格は、販売金額と仕入金額の対比(119.7%)を用いて、
   10,035円×119.7%=12,012円
   と試算される。

(3) 小売業者の価格
  ア 小売業者のだいこんの販売価格は、仕入価格に対し136.4%であった。

 イ 小売業者は、仲卸業者から(2)のイの仲卸価格(12,012円/100kg)で入荷すると仮定できるので、小売業者での100kg当たりの販売価格は、販売金額と仕入金額の対比(136.4%)を用いて、
   12,012円×136.4%=16,384円
   と試算される。

■おわりに

  食品の流通部門は、全国各地の農林漁業者や食品製造業者等が生産・製造している食品のみならず、世界各国から輸入される多種多様な食品を、安定的かつ効率的に消費者に供給するという極めて重要な役割を果たしており、農林水産省では、食料供給コストの縮減等の流通構造改善に関する施策等を通じて、流通機構の合理化、流通機能の高度化等を推進しているところである。

  本調査に御協力いただいた各流通段階の関係者に感謝申し上げるとともに、調査結果がそれらの施策の推進等の資料としてはもとより、関係機関の方々に広く活用されることを期待するものである。



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