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農林水産省から


植物新品種の保護の強化及び活用の促進に関する
検討会報告及び種苗法改正案について

生産局 種苗課
企画班 橋本 泰治


1 植物新品種の保護の強化及び活用の促進に関する検討会報告について
  農林水産分野の知的財産である植物新品種は、我が国農業の振興と国際競争力の強化を図るための重要な要素であります。植物新品種として出願・登録される品種数は年々増加しており、これらを知的財産権として的確に権利化し、「守り」と「攻め」の両面で積極的に活用することが極めて重要であります。

  一方、近年、我が国の登録品種が海外へ違法に持ち出され、その収穫物が違法に輸入される事例が顕在化し、育成者権への社会的な関心を集めています。こうした中、国としてはこれまで、種苗法を改正して育成者権の効力の対象を加工品にまで拡大し、また育成者権の存続期間を延長、育成者権侵害に対する罰則の強化を図る等の措置を講じてきております。さらに、独立行政法人種苗管理センターにおける品種保護Gメンの設置など育成者権侵害対策に対する各種支援策の整備を進めること等により、国内のみならず海外における育成者権の積極的活用の基盤を整えてきたところであります。

  農林水産省としては、平成18年6月2日、農林水産省知的財産戦略本部において「農林水産省における知的財産戦略の対応方向」を決定し、植物新品種の育成者権の保護・活用の強化を図るための具体的な検討の場として、育成者権者(種苗会社等)、農業生産者及び法律専門家等から構成される検討会を設け、年内を目途に、新品種の保護・活用に関する総合戦略を策定することとしました。

  また、「知的財産推進計画2006」(内閣知的財産戦略本部決定。平成18年6月8日)においても、ア)品種保護制度をより使いやすくするため、必要に応じて制度を整備すること、イ)育成者権の侵害に係る懲役刑の上限を10年とすることについて検討し、必要に応じ制度を整備すること等が検討事項として盛り込まれたところであります。

  このような経緯を踏まえ、平成18年7月25日、「植物新品種の保護の強化及び活用の促進に関する検討会」(座長:早稲田大学法学部、渋谷達紀教授)が設けられ、「植物新品種の育成者権の取得を促進するとともに、育成者権侵害対策を強化し、育成者権の積極的かつ効果的な利用を促進することにより、「農業分野における知的財産権の適切な保護・活用を図る」ことを基本目標に掲げ、今後必要と考えられる施策を幅広く検討しました。さらに種苗法制度の改正を視野に入れた課題については、法律専門家及び育成者権者(種苗会社等)を中心に構成される「制度分科会」を別途設けて検討を進め、12月19日に総合戦略として検討会報告がとりまとめられたところであります。

  報告では、(1)育成者権取得・権利行使の容易化、(2)個人、中小企業等に対する侵害対策への支援、(3)DNA技術開発の促進、税関による水際取締制度の活用、(4)意図せぬ権利侵害の防止、(5)海外での育成者権取得・権利行使に対する支援について現状把握と施策のあるべき方向についてとりまとめられました(図1)。

  また、分科会報告では種苗法改正を視野に入れ、(1)品種登録表示の導入、(2)民事訴訟の特則の導入、(3)罰則の見直し等について所要の改正等を検討すべきとされました(図2)。

  「植物新品種の保護の強化及び活用の促進に関する検討会」の会議資料及び速記録は以下のウェブサイトにおいて公表されているので詳しくはこちらを御覧ください。
http://www.maff.go.jp/www/counsil/counsil_cont/seisan/newplants/index.html

図1 植物新品種の保護の強化及び活用の促進に関する検討会報告の概要


図2 「制度分科会報告」の概要



2 種苗法の一部を改正する法律案について
  農林水産省では検討会報告に加え、登録件数が年々増加していること、育成者権の侵害が急増し現行制度では侵害に対する抑止力が十分に働かず、また損害回復が進まない状況にあることを踏まえて、第166通常国会に「種苗法の一部を改正する法律案」を提出したところであり、具体的には以下のとおりです。


(1) 権利侵害に対する訴訟上の救済を円滑化するための規定の整備
特許法等の知的財産権法にならって、以下の規定を整備します。

  (1) 侵害物品の譲渡数量に、正規品の単位当たり利益の額を乗じた額を損害額とすることができることとします。

  (2) 侵害の事実を否認する被告は、自己の行為の具体的態様を明らかにしなければならないこととします。

  (3) その他、当事者による鑑定人への説明、裁判所による相当な損害額の認定、営業秘密についての秘密保持命令等の規定を整備します。


(2) 罰則の引上げ
   特許法等他の知的財産権法にならって、以下の罰則の引上げ等を行います。

  (1) 権利侵害に対する罰則の引上げ
   懲役 3年以下   10年以下
      又は   → 又は/併科
   罰金 300万円以下(法人は1億円以下) 1000万円以下
(法人は3億円以下)

  (2) 詐欺行為で品種登録を受けた者に対する罰則の引上げ
   懲役 1年以下   3年以下
      又は   →   又は
   罰金 100万円以下(法人は100万円以下) 300万円以下
(法人は1億円以下)

 (3) 秘密保持命令違反に対する罰則の整備(新設)
   懲役5年以下 又は/併科
   罰金500万円以下(法人は3億円以下)


(3) 表示の適正化等

  (1) 登録品種でない種苗について登録品種である旨の表示又はこれと紛らわしい表示を付すことを禁止します(新設)。
   懲役3年以下 又は
   罰金300万円以下(法人は1億円以下)

  (2) 登録品種の種苗を業として譲渡する者は、当該種苗に登録品種である旨の表示を付すよう努めなければならないこととします。

  (3) 登録品種の名称について、利害関係人の申立てにより変更を命ずることができるようにします。

植物新品種の保護制度について
 新たに植物品種を育成した者は、国に登録することにより、知的財産権の一つである「育成者権」を得、登録品種の種苗、収穫物、加工品の販売等を独占できる。



植物新品種育成者権の保護の強化(種苗法改正)



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