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農林水産省から


野菜指定産地制度をめぐる現状と課題

生産局 野菜課 産地指導班


 「野菜指定産地」という言葉は、野菜生産に携わっている人ならたびたび耳にしていると思います。
 今回は、野菜指定産地制度の現状・課題などの実態把握および指定基準の充足状況の検証などを目的とした現地調査の結果をもとに分析も取り入れ、現行の野菜指定産地制度の現状と課題についてご紹介します。

1.野菜指定産地制度の概要
 野菜指定産地は、「野菜生産出荷安定法」(以下「法」といいます)で定められています。法第4条では、野菜指定産地を「指定野菜の種別ごとに、一定の生産地域で、出荷の安定を図るため、集団産地として形成することが必要と認められるもの(要約)」とし、具体的な指定基準(下表)を省令で定めています。


 野菜指定産地に指定されると、農畜産業振興機構が実施している指定野菜価格安定対策事業及び契約指定野菜安定供給事業の対象産地となり事業に参加することができます。

 野菜指定産地の区域は、原則として市町村単位で構成することになっており、都道府県、地方農政局などを通じて、指定基準(作付面積・共販率)に基づき毎年調査・審査して、必要に応じて新規指定、指定解除、区域の変更を「官報」告示により行っています。官報の告示は、毎年数回行っており、その都度、産地数や区域が変わっています。

2.指定産地数、作付面積、区域の推移
 国内野菜の作付面積および生産量は、野菜の消費量の減少および輸入野菜の増加もあって減少を続け、平成17年度には、45万ヘクタール(1,248万トン)となっています(図1)。

 野菜指定産地の作付面積だけでみても、昭和60年度の16万ヘクタールを最高に、平成16年度には、15万ヘクタールとなっています。

 また、指定産地数は作付面積の減少と農協・市町村合併による産地統合などで、昭和60年の1,236産地を最高に、平成18年5月現在で998産地まで減少しています(図2)。

図1 国内野菜の作付面積・生産量の推移
図2 野菜指定産地数の推移


 産地数の減少もさることながら、農協合併および市町村合併が行われた地域を野菜指定産地単位でみると、区域内の市町村全域の面積広がったことや、市町村・農協名称の変更などにより、その地方の通称名が変わるなど、かつてのイメージがずいぶん様変わりをした産地も数多くあります。

3.指定産地の構造の変化
 野菜生産の現状は、主に農業所得で生計を立てている農家(主業農家)によって担われています。その野菜を生産している農家のうち、認定農業者(注1)の比率は15%(面積比率は34%)にとどまっています。さらに、農業従事者の減少や高齢化が進み、60歳以上の従事者が半数を占める状況です。

 このような状況の中で、指定産地の構造は、(1)加工・業務用需要の増大、(2)契約取引・直売所の増加、(3)農家の高齢化による栽培管理、収穫・調製作業の労働力不足、(4)作付品目転換に伴う作付面積の減少、さらに(5)出荷規格に対応できないことによる共販(共同出荷)量・率の減少、などの産地をとりまく環境により大きく変化しています。

 これら多くの変化のうち、とくに契約取引及び農家の高齢化についてみてみると次のことが言えると考えます。

1)契約取引
 多くの野菜指定産地で書面での契約によらないものも含め、契約取引が増えているようです。
 その理由の一つには、契約取引による安定した農家収入の確保があります。このことから、今後も契約取引に取り組みたいとする産地も多く、特に若い世代が多くを占める産地では、経営の安定を図る観点からその傾向が強く見られます。

2)産地における農家の高齢化
 農家の高齢化による収穫・調製作業の労働力不足により、キャベツ、はくさいなどの重量野菜から、軟弱野菜を中心とした軽量野菜への転換が進み、指定野菜の作付面積の減少に拍車をかけています。さらに、収穫作業そのものを「業者」に委託する地域もみられ、系統外直売所への出荷増も加わって、共販量・率の低下を招いている産地もあります。これらを放置していると、需給調整に支障をきたすことから、産地によっては、出荷規格の見直し(軽量化、簡素化)や庭先集荷の実施、収穫・調製作業の共同化などの取り組みを進めていますが、すぐに効果がでていないのが現状です。

4.今後の課題と将来の産地の姿
 このように、野菜指定産地をめぐっては、産地の構造の変化や高齢化により、多くの課題があります。
 とりわけ、高齢化への対応は、その地域に根ざした産地の取り組みが必要と思われます。取り組みの一例をあげると、自治体・農協が共同して、新規就農者への2年間の研修を行い、就農に際しては資金提供などを行ってる産地があります。しかし、有効な取り組みが見つからない産地が多いのも現実です。

 また、10年~15年先といった将来の産地の中核を担う者については、担い手のいない耕作地を集積した「農事組合法人」、「大規模生産者」へシフトするとみる産地が多数あります。一方で将来像が不透明な産地もあり、担い手問題は今後の大きな課題になると思われます。

5.まとめ
 野菜指定産地制度は、その時代背景や状況によって変化してきました。
 食料自給率の向上という政策のもと、「一定の生産地域で、出荷の安定を図るため、集団産地を形成する」という精神で、今後も野菜指定産地制度の的確な運用に努めていきたいと思います。

 また、「野菜の価格安定制度・需給安定対策の見直し」(詳細については「野菜情報」2006年9月号を参照)の中で、産地強化計画の策定などを通じて、さらなる産地の基盤強化につなげていきたいと考えています。

(本文等引用データ)
1)野菜生産出荷統計
2)2000・2005年世界農林業センサス(農林水産省大臣官房統計部)
3)野菜指定産地一覧表(農林水産省生産局野菜課


注1)認定農業者
経営規模の拡大、生産方式の合理化など農
業経営改善計画を作成し、市町村の認定を受
けた生産者のこと



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