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農林水産省から


野菜の自給率の動向と今後の課題について

総合食料局 食料企画課 計画班 鈴木卓


1 平成17年度における食料自給率の概要
 農林水産省では、本年8月10日に平成17年度の食料自給率(食料消費について国産でどの程度賄われているかを示す指標)の概算値を発表した。

 具体的には、平成17年度の総合食料自給率は、カロリーベースで40%、生産額ベースで69%となった。カロリーベースについては8年度連続横ばい、また、生産額ベースについては対前年度横ばいの水準となっている。

 カロリーベースの食料自給率をまず消費面から見ると、米については引き続き消費が減少したものの、その減少幅は縮小した。一方、畜産物については、鳥インフルエンザ発生の影響等により減少していた鶏肉の消費が増加したものの、牛乳・乳製品が飲用需要等を中心に減少した。また、植物油脂、果実、野菜については消費が増加した。この結果、国民1人・1日あたりの総供給熱量は2,573kcal(対前年度0.4%増)となった。

 一方、カロリーベースの食料自給率を生産面からみると、ばれいしょ、魚介類等が減少したものの、大豆、野菜、果実などの生産量が前年度に比べて増加した。この結果、国民1人・1日あたりの国産熱量は1,021kcal(対前年度0.7%増)となった。

 このことから、カロリーベース食料自給率=国産熱量:1,021kcal÷総供給熱量:2,573kcal(ともに国民1人・1日あたり)=40%となった。

 また、生産額ベースについては、畜産物が国産単価の上昇等に伴い国内生産額が増加した一方、米や野菜は国産単価の下落に伴い国内生産額が減少したため、食料の国内生産額は10.2兆円(対前年度3.9%減)となり、輸入品を含めた食料の国内消費仕向額は14.9兆円(対前年度2.9%減)となった。

 このことから、生産額ベース食料自給率=国内生産額:10.2兆円÷国内消費仕向額:14.9兆円=69%となった。

野菜の自給率の推移


2 野菜の自給率について
(1)平成17年度の野菜の自給率
 平成17年度における野菜の自給率(重量ベース)については概算値で79%となっており、対前年度比1ポイントの低下となった。野菜については、昭和44年度まで自給率100%を保っていたが、その後徐々に低下傾向をたどり、平成5年度に88%と初めて9割を割り込んだ。その中で、今回の79%は、概算値ではあるものの初めて8割を割り込む水準となる(図参照)。

 野菜については、平成17年3月に策定された「食料・農業・農村基本計画」(以下、基本計画)において、平成27年度における自給率目標を88%としているところであり、その達成に向けた消費面・供給面の課題抽出と、その課題に対応し得る施策の実施が重要となっている。

(2)野菜を取り巻く現状と課題
(1)消費面
 野菜の消費面については、これまでの消費拡大対策の実施により、野菜摂取目標量の認知度が上昇傾向にあるとともに、野菜飲料の摂取頻度が増加するといった簡便化志向の特徴を示している。消費全体(1人1年当たり純食料)では96.2kgと、基本計画で示した基準年である平成15年度の野菜消費量95kgから目標年である平成27年度の100kgに向けて、ほぼトレンド通りの実績となっている。
 野菜の消費に関する今後の見通しについては、引き続き消費拡大対策を実施することにより、野菜摂取目標量の認知度等は上昇を続けると見込まれるものの、目標に対する達成率は20歳代及び30歳代で低下傾向にあり、家計消費における生鮮野菜の購入量も前年をやや下回って推移していることから、トレンドを維持するためには一層の施策の推進が求められる。

(2)供給面
 野菜の供給面については、気象条件に恵まれたため、台風被害が大きかった前年に比べて国産供給量が増加(対前年13万t増加、1,248万t)するとともに、輸入による供給量も野菜飲料の消費増加等により、その原料であるにんじんやトマト等が増加したことから、全体が増加(対前年32万t増加、337万t)した。
 このうち、国内生産については、前年比では増加したものの、基本計画で示した平成27年度の目標である年間1422万tに向けたトレンドには達していない。

 その要因としては、
・ 高齢化の進展等により、作付面積の減少に歯止めがかかっていない(野菜作付面積H5:562千ha→H10:506千ha→H15:461千ha→H17:448千ha)。
・ 外食・中食での野菜消費量の増加や野菜飲料の摂取量の伸びを背景に、加工・業務用需要が堅調な伸びを見せているが、国内生産がその需要に十分応えきれていない(主要野菜の加工・業務用における輸入割合H2:12%→H12:26%)。
等が考えられる。

 野菜の生産に関する今後の動向について依然として作付面積が減少傾向にあり、上記のような状況を克服し、国産による供給量を基本計画で示したトレンドに近づけていくためには、一層の施策の推進が求められる。

(3)今後の対応施策
(1)消費
 野菜の消費面については、食事バランスガイドの活用を通じた食育の取組の中で、摂取拡大を一層促進するため、
○ 産地において野菜の栄養成分・機能性に係る情報提供を行う対象品目及び取組産地の拡大
○ 外食・中食における野菜利用増大を更に推進するための野菜素材集の作成及び産地とのビジネスマッチングを目的としたイベントの開催
○ 企業・団体等の従業員食堂において成人を対象に野菜摂取拡大を図るため企業等の福利厚生担当向けマニュアルの作成等の支援を実施することとしている。

(2)供給
 消費者等のニーズに的確に対応した生産を行う担い手の育成・確保と、その担い手を中心とした安定的な野菜の生産・出荷体制を確立し、体質の強い産地づくりを進めるため、野菜価格安定制度及び需給安定対策を見直し、契約取引の推進、需給調整の的確な実施、担い手を中心とした産地への重点支援を19年度から実施する。

 また、国内産地が加工・業務用需要に適切に対応した生産を行うように、
○ 用途別需要に対応した皮むき・カット等の一次加工施設やパッケージングを行うための処理加工施設、定時・定量供給体制の構築に向けた集出荷貯蔵施設等の整備への支援といったハード面の対応
○ 産地に加工・業務用に求められる品質、規格や栽培管理のポイントなどをまとめた「品目別・用途別ガイドライン」を用いた検討会等のイベント開催等といったソフト面の対応
を一体的に実施することとしている。



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