大臣官房統計部消費統計室
流通動向第1班 二宮 睦
農林水産省統計部では、青果物の流通改善対策、価格安定対策等の施策に対応するため、全国の青果物卸売市場における青果物の卸売数量および卸売価額を把握し、価格形成の実態等を明らかにすることを目的として「青果物卸売市場調査」を実施している。
この度、「平成17年青果物卸売市場調査結果の概要」を公表したので、その概要について野菜を中心に紹介する。
○ 調査の仕組み
平成17年青果物卸売市場調査は、平成17年1月から12月までの1年間を調査期間として、全国のすべての青果物卸売市場で営業する卸売会社(961社)を対象に実施した。
対象卸売会社のうち(1)人口20万人以上で、かつ青果物の年間取扱数量がおおむね6万トン以上の都市、(2)県庁所在都市及び中央卸売市場が開設されている都市、(3)野菜生産出荷安定法に基づく指定野菜価格安定対策事業の対象市場の所在する都市、で営業する卸売会社においては、野菜58品目、果実44品目・品種について、調査協力者からの聞き取り、関係諸帳簿の閲覧又は調査協力者が作成したFDを収集する方法により調査を行った。
その他の卸売会社においては、野菜及び果実の総量(卸売数量、卸売価額)のみについて、調査票を郵送配付・回収する自計申告により調査を行った。
本調査の対象とする青果物とは、「加工品」を除く「生」の青果物であり、(1)収穫したままの状態のもの、(2)収穫したものに若干の処理を行い「生」としての機能を有したもの(洗いごぼう、切りごぼう、洗いさといもなど)、(3)単なる価値保全、価格維持のために貯蔵したもの(低温貯蔵、CA貯蔵など)をいう。
全国値については、野菜及び果実の総量(卸売数量、卸売価額)は調査結果の単純積み上げとし、品目別の値については、品目別に調査した卸売会社結果の野菜及び果実の総量に占める各品目別の割合を基に推定した。
○調査結果の概要
1 野菜総量
平成17年の青果物卸売市場における野菜の卸売数量(輸入及び転送量を含む。)は1,195万トンで、ほぼ前年並みであったものの、平成11年から6年連続で減少した(表1、図1参照)。
これは、にんじんやキャベツが前年の台風の影響等による作付けの遅れや、生育の抑制により減少したことなどによる。
卸売価額は2兆1,626億円で、前年に比べ8%減少した。
卸売価額を卸売数量で除した1kg当たり卸売価格は181円で、前年に比べ7%低下した。
これは、はくさいやレタスが卸売数量の増加により安値であったことや、前年の野菜の価格が、台風の影響等により全体的に高値で推移したことなどによる。
2 品目別の動向
主要品目の動向をみると、卸売数量は、レタスが前年に比べ5%増加し、にんじんが7%減少した。卸売価格は、卸売数量の動向からにんじんが前年に比べ9%上昇し、レタスは22%低下した(表1参照)。
(1) レタス
卸売数量は64万トンで、前年に比べ5%増加した。
これは、適度な降雨により生育が順調であったことや、前年の10月、11月に台風の影響等により卸売数量が大幅に減少した茨城産が増加したことなどによる。
卸売価格は1kg当たり151円で、順調な入荷により安値で推移したことなどから、前年に比べ22%低下した(図2参照)。
(2) にんじん
卸売数量は71万トンで、前年に比べ7%減少した。
これは、前年の台風の影響等により作付けの遅れや生育が抑制されたことにより1月から3月の卸売数量が減少したことや、作付面積が減少したことなどによる。
卸売価格は1kg当たり120円で、1月から4月の卸売数量が減少し高値で推移したことなどから、前年に比べ9%上昇した(図3参照)。
(3) はくさい
卸売数量は99万トンで、前年に比べ3%増加した。
これは、前年の10月から12月に台風の影響等により卸売数量が大幅に減少した茨城産が増加したことなどによる。
卸売価格は1kg当たり56円で、概ね順調な入荷により年間を通じて安値で推移したことなどから、前年に比べ25%低下した(図4参照)。
(4) キャベツ
卸売数量は138万トンで、前年に比べ4%減少した。
これは、愛知産などが前年の台風の影響から、葉の損傷等により生育が抑制され、1月から5月まで卸売数量が減少したことなどによる。
卸売価格は1kg当たり85円で、5月までは卸売数量の減少から高値で推移していたものの、6月以降は概ね生育が順調であったことや、前年の9月以降の価格が台風の影響等により高値であったことなどから、前年に比べ4%低下した(図5参照)。
(5) だいこん
卸売数量は116万トンで、前年並みであった。
卸売価格は1kg当たり75円で、夏場の高温等による生育不良からの回復により10月以降の卸売数量が増加し安値であったことや、前年の10月から12月の価格が台風の影響等により高値であったことなどから、前年に比べ17%低下した。
(6) ほうれんそう
卸売数量は18万トンで、前年に比べ3%増加した。
これは、一部で生育の遅れがあったものの、天候にも恵まれ概ね生育が順調であったことや、前年の10月、11月の卸売数量が台風の影響等により大幅に減少したことなどによる。
卸売価格は1kg当たり407円で、前年の10月、11月の価格が、長雨や台風の影響等により高値であったことなどから、前年に比べ13%低下となった。
(7) きゅうり
卸売数量は61万トンで、前年に比べ3%減少した。
これは、1月から4月までは西日本での低温の影響、7月には北日本での低温、日照不足の影響等による生育の抑制から減少したことなどによる。
卸売価格は1kg当たり222円で、1月から4月と7月は卸売数量の減少から高値で推移したものの、前年の8月から11月の価格が長雨、台風の影響等により高値であったことなどから、前年に比べ7%低下した。
(8) たまねぎ
卸売数量は120万トンで、前年に比べ3%減少した。
これは、国産たまねぎが前年の台風の影響等による野菜の高騰から前倒し出荷となり、1月以降、卸売数量の減少が続いたことや、8月から10月にかけて北日本で夏季の高温、少雨により生育が抑制されたことなどによる。
卸売価格は1kg当たり93円で、卸売数量の減少から1月から5月まで高値であったことなどから、前年に比べ3%上昇した。
3 輸入野菜
(主要都市(注1)の市場計)
主要都市の青果物卸売市場における輸入野菜の卸売数量は44万トンで、前年に比べ13%増加した(表2参照)。
これは、ニュージーランド産かぼちゃの輸入が増加したこと、国産たまねぎの卸売数量の減少を反映して輸入たまねぎが増加したことや、その他の輸入野菜でにんじんが大幅に増加したことなどによる。
卸売価格は1kg当たり193円で、前年に比べ12%低下した。
これは、単価の低いかぼちゃやたまねぎの卸売数量が大幅に増加したことなどによる。
(注1) 主要都市とは、人口20万人以上で、かつ青果物の年間取扱量がおおむね6万トン以上の都市とそれ以外で県庁所在都市及び中央卸売市場が開設されている都市をいう。
なお、輸入野菜については、主要都市の市場計のみであり全国値の推定は行っていない。
果実の動向(参考)
(青果物卸売市場調査では、いちご、メロンおよびすいかは果実に含んでいる。)
1 果実総量
平成17年の青果物卸売市場における果実の卸売数量は500万トンで、前年並みであった(表3参照)。
これは、みかん、輸入果実は減少したものの、国産果実の日本なし、かき、もも、ぶどうが、気象災害も少なく生育が順調であったことから、前年に比べ大きく増加したことなどによる。
卸売価格は1kg当たり245円で、前年に比べ6%低下した。
これは、前年が台風の影響により卸売数量が少なく卸売価格が高値であったことや、17年産のみかん、かき、日本なしの価格が卸売数量の増加により前年に比べ大幅に低下したことなどによる。
2 いちごおよびすいかの動向
(1) いちご
卸売数量は18万トンで、前年に比べ3%減少した。
これは、低温の影響等から3月の卸売数量が減少したことなどによる。
卸売価格は1kg当たり1,052円で、卸売数量の減少から最盛期の2月から4月の価格が高値であったことなどから、前年に比べ9%上昇した。
(2) すいか
卸売数量は44万トンで、前年並みであった。
卸売価格は1kg当たり140円で、低温の影響による生育遅れの回復から6月及び8月が卸売数量の増加により安値となったことなどから、前年に比べ13%低下した。
○ おわりに
本調査へご協力いただいた関係者に感謝申し上げるとともに、調査結果が関係機関の方々に広く活用されることを期待するものです。
□ 「平成17年青果物卸売市場調査結果の概要」の詳細なデータ等については、農林水産省ホームページの農林水産統計データ【http://www.maff.go.jp/j/tokei/index.html】でご覧頂けます。