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農林水産省から


最近の野菜消費の現状と農林水産省における野菜の消費拡大対策について

生産局 野菜課 流通加工対策室 消費班


1 はじめに
 日本人の食生活は、戦後大きく変化し豊かになった反面、食の欧米化などで食生活のバランスが崩れ、そのことが生活習慣病の要因の一つとして指摘されています。

 昨年6月、「食育基本法」が制定され、農林水産省では、「日本型食生活」の実践を促進する観点から、厚生労働省の協力の下「食事バランスガイド」(図1)を策定したところです。この「食事バランスガイド」は、「食生活指針」を具体的な行動に結び付け、国民1人1人がバランスのとれた食生活を実現していくことができるよう、一日の食事の組み合わせやおおよその量をわかりやすくイラストで示したものですが、その中で野菜は、「副菜」(5~6つ(sv))に位置づけられており、野菜料理で5皿程度とされています。

 野菜は、国民の健康と食生活及び農業生産において重要な地位を占めており、特に近年野菜摂取によるガン予防効果等が明らかにされ、生活習慣病予防の観点からも重要性が高まっています。

 しかし、我が国の1人当たりの野菜消費量は、近年減少しており、特に若年層を中心に、健康の観点から定められた摂取目標量の1人1日当たり350g(「健康日本21」(厚生労働省))を大きく下まわっています。

 このような状況を踏まえ、農林水産省としては、食育の取組と一体的に、野菜摂取と健康との関係等に関する啓発活動を推進するとともに、野菜の消費拡大に向けた各種取組を実施していますので、主な取組について紹介いたします。

図1 食事バランスガイド

2 野菜の消費をめぐる最近の状況
 我が国の1人当たり野菜消費量は、最近10年間で約1割減少しており、平成16年度は92.9kgとなっています。野菜の消費動向を緑黄色野菜とその他の野菜に分けてみると、緑黄色野菜が、平成16年度には25.3kgとここ数年は安定しているのに対して、その他の野菜は平成16年度には67.6kgとなっており、近年、減少傾向で推移しています。

 品目別に見ると、洋食メニューの増加等により、サラダ等に用いられるレタスやトマトなどの消費量は増加しているものの、煮物や漬物などに用いられるだいこんやはくさいなどの重量野菜の消費量は大きく減少しています。(図3)


図3 品目別1人当たりの野菜購入量の推移


 また、日本と米国の国民1人当たりの野菜の消費量を比較すると、以前は、日本人の方が野菜を多く摂っていたものの、近年、日本の野菜消費量は減少しているのに対して、米国の野菜消費量は増加しており、日米逆転しています。(図4) これは、米国において、1991年から野菜や果物をもっと食べることを薦める運動(ファイブ・ア・デイ運動:野菜・果物を1日に5サービング以上食べる運動)が展開された結果によるところであるとされています。

図4 1人一年当たりの野菜消費量の日米比較


 次に、日本人の野菜の摂取状況を年齢階層別に見ると、60歳代がもっとも野菜を摂取していますが、いずれの世代も成人1人1日当たりの野菜の摂取目標量とされている350gを下回っており、特に15~39才層の若年層ほど野菜の摂取不足が目立ち、より多くの摂取が必要とされる若者の野菜離れが懸念されています。(図5)

図5 世代別の野菜消費量

3 野菜の消費拡大に向けた取組内容
 このような状況を踏まえ、農林水産省としては、健康の維持・増進の観点から、野菜摂取の重要性を知っていただき、野菜の消費量を増加させるために、平成14年度から青果物健康推進委員会及びファイブ・ア・デイ協会(以下、民間団体とする。)を事業実施主体とし、野菜の消費拡大に向けた各種取組を実施してきました。平成17年度からは、新たに、
 (1)産地における野菜の栄養・機能性成分に係る情報提供の取組
 (2)外食・中食における野菜利用増大及び普及啓発活動
 (3)成人を対象とした企業・団体における野菜摂取普及啓発活動
に取り組んでいます。
 平成17年度の主な取組みを以下に紹介します。

(1) 野菜等健康食生活協議会の開催
 平成16年度までは、医学、栄養学、農学、教育、青果物関係業界団体等の関係者から構成される「野菜等健康食生活協議会」を設置し、野菜等と疾病についての科学的知見に基づいた普及啓発、分かり易い摂取目安「5皿分」の開発及び量販店・学校等での普及啓発、普及啓発の効果分析を実施してきました。
 平成17年度は、「健康日本21」、「食生活指針」、「食事バランスガイド」を踏まえつつ、上記(1)~(3)等の取り組みについて、効果的な方策等について、小委員会を設け検討しています。
 さらに、野菜等の摂取と健康との関わりに関する疫学調査等の新たな知見収集・整理も引き続き行っています。
(検討結果、疫学調査等の知見等のについては、http://www.v350f200.com/をご覧下さい。)

(2) 産地における野菜の栄養・機能性成分に係る情報提供
 消費者の健康志向が高まっていることから、野菜の健康に関する重要性をアピールするために、産地サイドで野菜の栄養・機能性成分を分析し、成分量及びその機能性に係る適切な情報を量販店店頭にて消費者に提供する取組を実施しています。
 17年度は、トマト(JAしもつけ(栃木県))、にんじん(JA富里市(千葉県)、ピーマン(JA宮崎経済連(宮崎県))をモデル品目として選定し、産地で栄養・機能性成分を分析し、農産物の包装にシールを添付(写真1)するとともに、量販店店頭に栄養・機能性成分を分析したデータを掲示する取組(写真2)をモデル的に実施しました。



写真1 農産物の包装に栄養成分等の情報を添付
写真2 栄養成分等の分析値をPOPで情報提供

なお、栄養・機能性成分の情報提供の方法については、サンプリング数や分析方法、流通段階での栄養・機能性成分の変化、法令遵守の観点からの情報提供のための表現方法などについて検討しました。

(3) 外食・中食における野菜の利用増大及び普及啓発活動
 近年、生活様式の変化に伴い、家庭で野菜を調理し摂取する機会が少なくなっている傾向があり、食の外部化が進んでいます。(図6)平成16年度まで野菜の消費拡大対策は、家計内消費を伸ばすことを重点的に実施してきましたが、外食を利用する頻度が高い人ほど野菜摂取量が少ないという調査結果もあることから(図7)、17年度は、外食・中食の利用者に対する野菜摂取の重要性の普及啓発や外食・中食業界において野菜を今以上に利用していただくための取組を実施しました。

図6 食の外部化の推移



図7 外食の利用度頻度別にみた1日当たりの野菜摂取量の違い



ア 外食店舗における野菜摂取の重要性の普及啓発の取組
 16年度までは、1日当たりの摂取目標量(350g/日)をわかりやすくするために、「1日当たり5皿分以上」(野菜料理1皿70g×5皿=350g)という摂取目安を野菜等健康食生活協議会において開発し、を量販店店頭を中心に普及してきました。平成17年度は、「外食」・「中食」店舗における野菜摂取目安の普及等を重点的に取り組んでいます。
 具体的には、モデル店舗において、提供されている野菜料理が何皿分にあたるのかをメニューに記載したり、テーブルに野菜の栄養や産地情報を盛り込んだPOPを配置したり、外食店舗等を利用したイベントを開催しました。

イ 野菜・果物が主役のクッキングコンテストの開催
 「第2回野菜・果物が主役のクッキングコンテスト」を青果物健康推進委員会とファイブ・ア・デイ協会の共同により実施しました。全国各地からは600を超える応募があり、頂点を決める最終審査会が1月17日、東京恵比寿において開催されました(写真3)。
 第2回目の開催となる今回は、一般消費者を対象にした部門に加え、プロの調理人等を対象にした部門を設けて外食・中食における野菜料理のメニューの増加と、利用者の野菜料理選択の機会増加を目的として実施しました。

ウ 「第1回日本全国・野菜フェア~めざせ!野菜摂取5皿分~」の開催
 一般消費者に対して野菜摂取の重要性や1日当たりの摂取目安(5皿分)等を普及啓発するとともに、外食・中食においてさらに多くの野菜を利用していただきたいとの考えから、「第1回日本全国・野菜フェア~めざせ!野菜摂取1日5皿分~」を、2月6日・7日の2日間、東京国際フォーラムにて青果物健康推進委員会が事業実施主体となり開催しました(写真4)。

 展示会場は、「生産者ゾーン」、「流通ゾーン」、「中食・加工ゾーン」、「外食ゾーン」、「メーカーゾーン」、「小売ゾーン」の概ね6つにゾーニングし、野菜実需者と生産者が活発な情報交換ができるような工夫をしました。特に「生産者ゾーン」については、全国各地の産地が連携し品目別のブース(19品目)を設置するとともに、試食コーナーを会場の中心部に設置し、19品目の野菜のおいしい食べ方や新しい食べ方などの提案や新品種の野菜の展示などを行いました。また、タレントや有名シェフによるトークショーやクッキングショー、「食育」をテーマにしたステージなどを様々な内容のイベントを2日間にわたり繰り広げました。2日間で合計1万5千人の参加があり、大変な賑わいを見せました

 また、6日には、「野菜フェアセミナー 加工・業務用野菜最前線」(主催:独立行政法人農畜産業振興機構)および「野菜フォーラム2006 ~食べて健康!野菜と果物」(主催:財団法人食生活情報サービスセンター 共催:青果物健康推進委員会,ファイブ・ア・デイ協会)、7日には、「加工・業務用野菜推進シンポジウム ~これでいいのか加工・業務用野菜への取り組み!~」(主催:社団法人日本施設園芸協会/青果物健康推進委員会/独立行政法人農畜産業振興機構)を同時開催し、こちらも定員を上回る参加のもと実施され、今後の野菜の消費拡大にむけて必要となるテーマについて活発な意見交換等が行われました。
(「第1回日本全国・野菜フェア~めざせ!野菜摂取5皿分~」の会場風景等については、http://www.vf7.jp/を是非ご覧下さい。)

(4) 企業・団体における健康のための野菜摂取拡大活動の支援
 平成16年度までは、野菜嫌いが顕著な子供を主な対象として普及開発活動を実施してきましたが、平成17年度からは、成人を対象にした普及啓発活動を開始しました。
 本年は、モデル企業を設置し、主に社員食堂を主な啓発の場として、従業員に対して野菜摂取の重要性や1日の野菜の摂取目安(5皿分以上)の普及啓発を実施しました。



写真3 野菜と果物が主役のクッキングコンテスト最終審査会
写真4 第1回日本全国・野菜フェアの会場風景

4 平成18年度の取組み
 国民の多くの方々は、野菜の摂取は健康の維持・増進のために重要であると理解していますが、残念ながら、最近の現状をみるともっと野菜を食べようと思うような積極的な態度に至っておらず、野菜の摂取量の減少が続いております。

 農林水産省としては、栄養バランスが優れた「日本型食生活」の実践を推進する観点から、食育の取組と連動して、米、野菜、果物等の消費拡大を推進することとしていますが、平成18年度からは、品目別に行われていた国産農産物の消費拡大対策を「にっぽん食育推進事業」に統合し、食育と一体的かつ戦略的に実施することとしています。

 野菜については、平成17年度からの取組を引き続き、食育の取組と連動させ実施していくこととしています。「食事バランスガイド」と併せて野菜の摂取目安である「1日5皿分(350g)以上」を浸透させるとともに、消費者の摂取態度の変容を促し、野菜の摂取量が増加するような施策を講じてまいりたいと考えています。



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