大臣官房統計部 消費統計室
流通構造統計班 久芳 秀樹
○産地直売所
Ⅰ 設置概況等
1 産地直売場所設置数
産地直売所設置数(平成16年11月現在)は2,982直売所でした。
これを農業地域別にみますと、関東・東山が762直売所で最も多く、次いで九州が539直売所、東北が381直売所となっており、この3地域で5割強を占めています(図1参照)。
(回答のあった産地直売所は2,374直売所でした。以下の記述は、この回答のあった産地直売所について取りまとめたものです。)
図1 農業地域別産地直売所数
2 営業時期
通年営業を行っている産地直売所は87.4%、季節的営業を行うところは12.6%でした。
また、年間営業日数(1産地直売所当たり平均)は280日で、約7割の直売所が300日以上の営業日数でした。
3 参加(登録)農家数及び営農指導
参加(登録)農家数(1産地直売所当たり平均)は167戸でした。
また、直売所の参加(登録)農家への栽培にかかる営農指導(複数回答)については、「多品目栽培の推進」(46.4%)、「地域特産物の栽培の推進」(45.1%)、「周年栽培の推進」(39.4%)などを実施してる一方、「営農指導はしていない」ところも32.8%あることが分かりました(表1参照)。
表1 農業地域別参加(登録)農家への営農指導(複数回答)
4 購入者数
直売所における年間購入者数は、「5万人未満」が約6割を占めている一方、「20万人以上」も約1割を占めています。
また、購入者の居住地域については、「一般通過者又は観光客」が約3割なのに対し、「産地直売所の立地市町村内一円及び隣接市町村内の居住者」が約7割と大半を占めています。
Ⅱ 販売状況
1 販売額
(1) 販売額
年間販売額(1産地直売所当たり平均)は7,462万円で、販売額規模別は1億円未満の産地直売所が全体の約8割を占める一方、2億円以上も約1割を占めています。
また、農業地域別にみますと、東海が1億133万円で最も多く、次いで九州が9,429万円、関東・東山が8,626万円、四国が7,843万円の順となっています(表2参照)。
表2 農業地域別販売額及び販売額規模別産地直売所数割合
(2) 品目別販売額
品目別年間販売額(1産地直売所当たり平均)は、野菜類が2,280万円(30.6%)と圧倒的に多く、農産加工品が804万円(10.8%)、果実類が762万円(10.2%)、花き・花木が598万円(8.0%)、米が494万円(6.6%)の順となっています(図2参照)。
図2 品目別年間販売額(割合)
2 地場農産物販売額
地場農産物の販売額(1産地直売所当たり平均)は4,759万円で販売総額(7,462万円)の63.8%を占めています。
また、品目別販売額をみますと、野菜類が2,044万円(42.9%)で最も多く、次いで農産加工品が710万円(14.9%)、果実類が618万円(13.0%)、花き・花木類が459万円(9.6%)、米が375万円(7.9%)などでした(図3、表3参照)。
図3 産地別年間販売額(割合)及び地場農産物品目別年間販売額(割合)
表3 農業地域別産地別年間販売額
Ⅲ 地場農産物販売に当たっての動向・取組み・課題等
1 地場農産物販売に当たっての動向及び取組み
3年前と比較した地場農産物の取扱量は、「増えた」が61.7%、「変わらない」が19.3%、「減った」が17.1%でした(図4参照)。
図4 3年前と比較した地場農産物取扱量の動向
地場農産物販売に当たっての取組みについては、6割以上の直売所(複数回答)で、「地域特産物の販売」(66.1%)、「朝採り販売」(65.8%)、「地場農産物の安定的な販売」(63.6%)、「生産者の氏名、栽培方法等の明記」(61.8%)を行っています(図5参照)。
図5 地場農産物販売に当たっての取組(複数回答)
また、その取組みの効果(複数回答)として、「消費者への安全・安心な農産物の提供」(84.4%)、「地域農業の活性化」(72.5%)、「地場農産物の販路の確保」(58.2%)、「消費者と生産者のコミュニケーション」(52.7%)などをあげています(図6参照)。
図6 地場農産物販売に当たっての取組効果(複数回答)
2 地場農産物販売に当たっての増減意向と課題
3年後の地場農産物取扱量の増減意向は、「増やしたい」が80.5%、「現状維持」が15.9%、「減らしたい」が0.3%でした(図7参照)。
図7 3年後の地場農産物取扱量の増減意向
また、地場農産物販売に当たっての課題(複数回答)は、「地場農産物の品目数、数量(参加農家)の確保」(77.4%)が最も高く、次いで「購入者の伸び悩み」(42.7%)、「産地直売所及び関連施設の整備・拡充」(32.6%)などでした(図8参照)。
図8 地場農産物販売に当たっての課題(複数回答)
○おわりに
高度成長期になって、広域大量流通システムが成立し、食生活が洋風化、多様化する中にあって、広域大量流通は食生活の向上に寄与するところとなりました。
しかし一方で、消費者(消費地)と生産者(生産地)との距離は大きく広がり、食材の旬や地域の食文化に対する意識が薄れ、全国的に画一的な食文化になってしまったり、その食材がどこで、どのように生産されたかもわからず、また、生産地では、生産性向上の追求が中心となるなどの傾向が顕著となりました。
こうした状況から、近年の「食」の安全・安心を求める消費者と生産者等との間の「顔の見える関係」をつくりたいとの要求から、それに応える「地産地消」の取組みが全国に草の根的な盛り上がりをみせています。
平成17年3月に閣議決定された「食料・農業・農村基本計画」においても、「地産地消」は食料自給率の向上に向け重点的に取り込むべき事項として全国展開等を積極的に推進することとされており、「地産地消」は、ただ単に地域で生産されたものを地域で消費するというだけではなく、「地域の消費者ニーズに即応した農業生産と、生産された農産物を地域で消費しようとする活動を通じて、農業者と消費者を結びつける」取組みであり、これを地域の主体的な取組みとすることにより、「消費者が、生産者と『顔が見え、話ができる』関係で地域の農産物・食品を購入する機会を提供するとともに、地域の農業と関連産業の活性化を図る」こととしています。
さらに、7月に施行された「食育基本法」の中では、「『食』をめぐる環境の変化の中で、国民の『食』に関する考え方を育て、健全な食生活を実現することが求められるとともに、都市と農山漁村の共生・対流を進め、『食』に関する消費者と生産者との信頼関係を構築して、地域社会の活性化、豊かな食文化の継承及び発展、環境と調和のとれた食料の生産及び消費の推進並びに食料自給率の向上に寄与することが期待されている。」としており、「地産地消」の取組みがこうした期待にも応えられるものと考えます。
○調査方法等
(1) 調査対象
市区町村(第3セクターを含む。)又は農協(総合農協、専門農協及び経済連を含む。)が設置主体となっており、有人で常設店舗形態の施設を保有し、年間又は季節的に営業している産地直売所のすべてを調査対象とした。
(2) 調査方法
調査は、統計・情報センターからの往復郵送調査で実施した。
(3) 調査範囲及び調査対象期間
ア 調査の範囲は、全国とした。
イ 調査対象期間は、平成15年度(平成15年4月1日~平成16年3月31日)の1年間とした。
(4) 地場農産物の範囲
産地直売所の所在市町村又は隣接市町村(同一都道府県内)で栽培された農産物を基本とし、農協が設置主体の産地直売所及び農産加工場はその管轄範囲で栽培された農産物とした。
(5) 全国農業地域の区分
北 海 道:北海道
東 北:青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島
北 陸:新潟、富山、石川、福井
関東・東山:茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、山梨、長野
東 海:岐阜、静岡、愛知、三重
近 畿:滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山
中 国:鳥取、島根、岡山、広島、山口
四 国:徳島、香川、愛媛、高知
九 州:福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島
沖 縄:沖縄