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農林水産省から


野菜の産地強化計画策定の推進について

生産局 野菜課 産地指導班
産地指導係長 栁澤 敏


はじめに
 野菜産地においては、国際競争にも耐えうる体質の強い国内産地体制を確立するため、産地独自が「産地改革計画」を定め、これに基づく取組の推進による野菜の構造改革を平成13年から平成16年度にかけて実施し、一定の成果が得られました。

 しかしながら、国内の野菜産地では、高齢化が進展するなど産地基礎の脆弱化が進む一方、加工・業務用需要を中心として輸入野菜のシェアが増加傾向にあります。

 このような状況を踏まえ、担い手の育成・確保を図るとともに、消費者・実需者のニーズに対応した一層の低コスト化などを通じて、担い手を中心とした競争力のある生産供給体制の確立などを図るために、産地独自が産地ごとに明確な目標を定めた「産地強化計画」を平成17年度から新たに策定し、一層の構造改革を推進していくこととなりました。
 以下、野菜産地における「産地強化計画」策定の必要性を国における推進方向について紹介します。

 

1 野菜の更なる構造改革の推進について
(1) 野菜の構造改革対策(平成13~16年度)
 平成10年以降、中国からのねぎをはじめとする野菜の輸入急増に対応し、将来にわたり国内野菜産地の供給力を確保していくため、消費者や実需者に選好される品質・価格の国産野菜を供給できるよう、生産・流通両面にわたる構造改革を進めることが急務となりました。このため、平成13年から、「野菜の構造改革対策」として、低コスト化、契約取引の推進、高付加価値化という国が示した3つの戦略モデルを参考に各産地が取り組む産地改革に対し支援を行ってきたところであります。

 平成13年から16年度にかけて実施した構造改革対策においては、1,901の産地(平成17年1月現在)が「低コスト化」「契約取引の推進」「高付加価値化」の3つの戦略モデルを参考に産地改革計画を策定のうえ、目標達成に向け取組を実施しております。それらの目標達成状況については、各産地で設定した目標値に対し、どの程度達成したかについて見ると、平成14年度は67%、平成15年度は68%となっており、一定の成果が得られてはいるものの、一層の加速化が必要であることが明確になりました。

(2) 新構造改革対策の推進
 これまでの構造改革対策の検証をはじめとする「野菜政策に関する研究会」報告及び平成17年3月に出された食料・農業・農村基本計画を踏まえまして、平成17年度から、以下のような新たな構造改革対策を実施しています。
 (1)産地強化計画の策定
 (2)加工・業務用需要への対応強化
 (3)消費拡大対策の推進

(参考)産地改革の3つの戦略モデルの考え方

モデル


考   え   方


低コスト化タイプ


○輸入野菜にコスト面で対抗し得るよう、徹底した低コスト化に取り組み、例えば、生産・流通コストの3割程度の削減を目標とする。


契約取引推進タイプ


○実需者のニーズに応えつつ、安定した経営を確保するため、定量、定価、定時、定質による契約取引を継続して行う。低価格による供給に力点を置く場合は、例えば、生産・流通コストの3割以上の削減を目標とする。


高付加価値化タイプ


○立地条件により大幅なコスト削減が難しい産地や都市近郊産地等において、地域特産品種、有機栽培野菜等の高付加価値な野菜生産を行い、例えば、生産・流通コストは現状以下とすることを目標とする。



○計画策定産地数の推移



○目標達成状況

 

2.産地強化計画の推進について
(1) 産地強化計画の必要性
 上記のとおり、野菜産地においては、これまで国際競争にも耐えうる体質の強い国内産地体制を確立するために、産地独自の産地改革計画に基づき取組を実施し、平成13年より実施している構造改革については一定の成果をあげてきたところです。

 (1)産地における高齢化の進展
 (2)加工・業務用野菜を中心とした輸入の増加
 (3)実需者・消費者ニーズが多様化等の状況

 しかしながら、現在、野菜産地が直面している上記(1)から(3)のような決して楽観できない状況を考えれば、引き続き、新たな構造改革を強力に推進していく必要があります。

 また、各産地が構造改革を推進するためには、産地の人、資金といった資源に限りがある中で、こうした資源をいかにして戦略的に集中させるかが最も重要であり、これを実現していくために、その方向性を明確にする産地強化計画の策定が必要不可欠であることを、産地の皆様に認識していただきたいと思います。

(2) 産地強化計画と産地改革計画の違い
 産地強化計画は、産地における構造改革の方向性を明確にし、生産者一人一人の意志を統一するために必要不可欠なものであり、産地における構造改革を推進する中核をなす計画として、産地改革計画と同じ位置づけになります。また、産地強化計画は、構造改革の第2ステージを強力かつ効果的に推進するため、次のような点で産地改革計画を前進させたものになっています。

 (1)産地改革計画の内容を具体的な目標とそれを実現するための方策に絞ってスリム化
 (2)担い手を核として将来的に供給責任を果たし得る体質の強い産地づくりを図る観点から、「担い手とその育成・確保手法」の明確化
 (3)輸入野菜に奪われたシェアを奪回するため、加工・業務用需要に的確に対応した生産供給体制の確立に向けた取組の明確化
 (4)その他、必要に応じて、環境保全に配慮した取組、安全・安心への取組等の追加

(3) 産地強化計画の推進
 前述しましたように、ここで、これまで進めてきた構造改革の歩みを止めてしまえば、産地の将来は決して楽観できないものとなってしまいます。特に、将来にわたり野菜産地が持続的に発展していくためには、(1)担い手を中心とした産地の体質強化(2)これまで対応が遅れてきた加工・業務用需要に的確に対応した産地づくりが極めて重要となっています。そのための道筋を明確にする、すなわち、それが産地強化計画が担う使命なのです。

 さらなる構造改革の取組を進める上では、産地の人、資金といった資源に限りがある中で、戦略的にこうした資源を集中させることが必要不可欠であることを各野菜産地へ強く訴え、産地強化計画を強力に推進しているところであります。

 産地強化計画を策定し、その実現に向けて必要な取組を行う産地に対しては、国の支援を重点化することとしています。具体的には、(1)農業・食品産業競争力強化支援事業(直接採択事業)のうち、野菜に係る取組を実施する場合にあっては、産地強化計画の策定を事業採択の要件としている他、(2)強い農業づくり交付金にあっては、産地強化計画の策定・実現に向けた取組を、野菜に係る重要な取組と位置づけ、交付金を配分する際の重要な要素としています。

 最後になりますが、産地強化計画については、産地における構造改革の方向性を明確にし、生産者一人一人の意志を統一するために必要不可欠なものです。従って、指定産地であるか否かを問わず、産地改革計画を策定し、構造改革に取り組んでいる全ての産地については、速やかに産地強化計画に移行していただくとともに、それ以外の産地についても、遅くとも平成18年度末までには産地強化計画の策定が進められるよう、関係されます皆様のご理解・協力をお願いいたします。



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