消費・安全局 表示規格課 生産行程監視班 有機食品係長 中村 生郎
1.小売店舗、流通業者および生産者における調査の実施概況(表1参照)
平成16年7月から8月にかけて全国各地の小売店2,998店舗において販売されていた農産物480,362点を対象に、義務表示事項(名称、原産地)および「農薬不使用」などの表示の調査を実施しました。
これらの小売店において、仕入伝票の点検などにより、義務表示事項(名称および原産地)および「農薬不使用」などの表示の根拠の確認調査を実施しました。
また、
(1) 小売店舗外で事前包装された商品が販売されているケースなど、小売店舗において表示内容の適正性が確認できなかったケースについては、仕入れ先である流通業者807業者に対する伝票類の点検など
(2) 「農薬不使用」などの表示のある農産物の栽培方法の確認のため、その栽培を行った生産者921農家などに対する栽培記録、ほ場などの点検など
の遡及調査を行い、表示内容との整合性を確認しました。
さらに、農薬を使用せずに栽培した旨の表示のある農産物286点を小売店舗において買い上げ、(独)農林水産消費技術センターにおいて残留農薬分析を実施し、残留農薬が検出された場合にはその原因を調査しました。
2.小売店における表示状況(表2および表3参照)
小売店2,998店舗において販売されていた農産物480,362点の表示状況を調査した結果、21,806点(4.5%)の農産物に「農薬不使用」などの表示のあることを確認しました。
また、のべ169店舗において、のべ1,573点に義務表示事項(名称および原産地)の欠落が認められました。このうち、
(1) 名称の欠落は73店舗(2.4%)の812点(0.2%)で、
(2) 原産地の欠落は96店舗(3.2%)の761点(0.2%)で、
これらについては、その場で指導を行うとともに、必要に応じて指導文書を発出し、改善状況の確認を行っています。
3.不適正表示の実施者および措置の状況(表4参照)
名称および原産地ならびに「農薬不使用」などの表示の内容が事実と異なる不適正表示は、小売店114店舗、流通業者23業者、生産者15農家などの計152業者などにおいて、認められました。
このうち、「農薬不使用」などの表示に係る不適正表示は、小売店9店舗、流通業者13業者および生産者15農家などの計37業者などにおいて、認められました。
なお、不適正表示が確認された事例については、不適正表示の発生原因や期間などについて事実確認を行い、その内容に応じてJAS法に基づく指示・公表などの措置(指示・公表8件、文書指導101件など)を行っています。
4.残留農薬分析結果に基づく調査の概況(表5、表6および表7参照)
農薬を使用せずに栽培した旨の表示のある農産物286点を小売店で買い上げ、(独)農林水産消費技術センターが残留農薬分析を実施した結果、商品数15点(同一商品を別々の小売店で買い上げた例もあることから、実商品数は10点)から残留農薬が検出されました。
このため、残留農薬が検出された農産物を販売していた小売店舗および流通業者ならびにその生産者に対する調査を行い、農産物に農薬が残留していた原因を確認しました。
原因調査の結果、表示内容と異なり農薬を使用して栽培されていたものが5点、表示内容どおりに農薬を使用せずに栽培されていたが、周辺からの農薬の飛来など他の原因による農薬汚染を防止するための措置が不十分であったために農薬が付着していたものが5点ありました。
これらについては、その原因に応じて、不適正表示の是正または周辺からの農薬の飛来などによる農薬付着の防止の措置の徹底について、改善指導を行っています。
5.「無農薬」などの表示の実施者への啓発
農林水産省においては、農薬や化学肥料を使用せずまたは削減して栽培した農産物の表示の方法などを明確にすることとして、平成15年に「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)を改正し、平成16年4月から生産された農産物に適用しているところです。
この改正後のガイドラインでは、「無農薬」の用語は残留農薬がないとの誤認を与えかねないこと、「減農薬」の用語は削減の比較対象、割合が不明確なことから、「無農薬」「無化学肥料」「減農薬」「減化学肥料」などの用語が表示禁止事項とされています。
この趣旨を踏まえ、本特別調査においては、改正後のガイドラインによらずに「無農薬」「無化学肥料」「減農薬」「減化学肥料」などの用語を表示していた小売店、流通業者および生産者に対して、農薬を使用せずまたは削減して栽培した旨を表示する際には、「栽培期間中化学合成農薬不使用」、「化学合成農薬節減(使用回数:当地比5割減)」といった消費者に誤認を与えない正確な表示を行うことが適切である旨の啓発を行いました。