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農林水産省から

野菜の消費拡大に向けた地域の取組みについて

生産局 野菜課  流通加工対策室 消費班


1 はじめに

 野菜は、国民の健康と食生活及び農業生産において重要な地位を占めており、特に近年野菜摂取によるガン予防効果等が明らかにされ、生活習慣病予防の観点からも重要性が高まっています。

 しかし、我が国の1人当たりの野菜消費量は、近年減少しており、特に若年層を中心に、健康の観点から定められた摂取目標量の350g/1人・日(「第6次改定日本人の栄養所要量」(厚生労働省))を大きく下まわっています。

 このような状況を踏まえ、農林水産省としては、野菜摂取と健康との関係等に関する啓発活動を推進するとともに、野菜の消費拡大に向けた各種取組みを全国段階と地域段階の2つの面から支援しています。今回は特に地域段階における取組みを中心に消費拡大対策について紹介します。


2 野菜の消費をめぐる最近の状況


 我が国の国民1人当たりの野菜消費量は、最近15年間で約1割減少しており、特に若年層で消費量が少なく、15~19才層では、健康の観点から定められた目標値である350g/1人・日の7割程度の水準となっており、野菜の摂取不足が深刻化している状況にあります。

 このように、若年層を中心として野菜の消費が減少しているのは、

(1)児童生徒の嫌いな食品上位10品目中8品目が野菜である等、若年層の野菜嫌いの傾向が顕著となってきていること

(2)洋食メニューの増加等により、サラダ等に用いられるレタス、トマト等の消費は増加しているものの、煮物や漬物等に用いられるだいこん、はくさい等の重量野菜の消費が大きく減少していること

(3)1人世帯や共働き世帯が増加する中で、下ごしらえが必要等手間のかかる野菜料理が敬遠されるとともに、ファーストフード等の外食や中食による食事の機会が増え、家庭での料理の機会が減少していること

 等が要因であると分析しています。

3 野菜の消費拡大に向けた国の支援

 農林水産省においては、消費者や実需者に選ばれる品質・価格の国産野菜を供給できるよう、生産・流通・消費にわたる「野菜の構造改革対策」を推進しています。その一環として平成14年度から「野菜消費構造改革対策推進事業」を実施しており、野菜の消費拡大に向けた取組みを支援しています。

 全国段階においては、医学、栄養学及び教育関係の学識経験者を核に、健康の観点から野菜等の摂取増加を呼びかける民間団体等からなる協議会を設け、マスメディア、Webサイト(http://www.v350f200.com/)、民間団体の会員である量販店の店頭等を通じて、分かり易い1日当たりの摂取目安(1日野菜料理5皿分(350g)以上)や野菜の健康維持機能等に関する啓発活動に取り組んでいます。

 また、これと併せて、地域段階においては、若年層において野菜消費が少なく、今後一層野菜消費の減少が懸念されることから、児童・生徒に対し教育の場などを通じて、野菜と健康との関係に関する知識の普及、栽培・収穫・調理等の実体験を通じた野菜への親近感の醸成、とれたての美味しい野菜の摂取体験による摂取の習慣化等の取組みを進めています。

4 地域段階における地区推進事業について

 地域段階における取組みは、野菜消費構造改革対策推進事業・地区推進事業により支援していますが、その具体的内容や活動例等について以下のとおりとなっています。

○事業内容:野菜の摂取不足がもたらす健康危機に係る情報の提供、学童等の若年層を中心とした消費者の生産から消費に至る体験活動等を通じ、野菜消費量の増加と摂取の習慣化を促進するため、次の(1)から(4)までに揚げる必要な事項を実施することができる。

(1)野菜消費改革推進協議会等の開催、推進計画等の作成

(2)野菜の生産から消費にいたる体験活動等の実施

(3)商品選択改善・調査の実施

(4)その他必要な事項

○事業実施主体:都道府県、市町村、都道府県野菜価格安定法人、農業協同組合連合会、農業協同組合中央会、農業協同組合、特認団体

○採択要件:地域において、野菜の消費拡大に向けて、関係機関・団体との連携体制が整備されていること又は整備されることが確実と見込まれ、都道府県知事又は地方農政局長が認めるものであること。

○補助率:1/2以内




○地区推進事業の活用イメージ

5 野菜消費構造改革対策推進事業地区推進事業の取組状況について

1)地区推進事業実施状況

 平成14年度は21道府県24ヶ所、平成15年度は25道府県29ヶ所で事業が実施されており、さらに多くの地域での取組みが期待されます。


2)地域段階における取組事例(福井県小浜市)

 福井県小浜市は、平成13年3月に市民憲章を制定し「水と魚や野菜がうまいまち」を高らかに宣言しています。また、同年9月には、全国唯一の「食のまちづくり条例」を制定し、「地産地消」を重要な政策課題として位置付け、地場産野菜の消費拡大を推進しています。平成15年度からは、野菜消費構造改革推進事業を実施しており、地場産野菜であるキャベツ、トマト、谷田部ネギ等の消費拡大に向けた各種取組みを積極的に展開しています。特に子供達に対する調理等の実体験を通じた地場産野菜への親近感の醸成、野菜摂取の習慣化が図られています。

(1)具体的な取組方策

○子供に対する地場産野菜消費推進事業

・幼児の料理教室「キッズキッチン」の開催(写真(1))

・地産地消推進員(教員・保育士等)に対する講演会実施

○小中学校への地産地消推進事業

・食に関する講演会実施

・ふるさと料理実習(各校)

・農業体験活動(モデル校4校)(写真(2))


 

(1)幼児の料理教室「キッズキッチン」

(2)農業体験活動

○地場産野菜PR事業

・「ふるさと料理を楽しむ会」開催

○地産地消普及啓発番組の作成 

・地産地消活動を実施している個人・団体を毎月5~10分のTV番組で紹介

○「御食国若狭おばま」食生活体験バスツアー

・地域外の方を対象として「御食国若狭おばま食文化館」での調理等各種体験の実施

(2)事業実施による効果

・幼児の料理教室「キッズキッチン」などの開催により、幼児の間で地場産野菜がブームになったり、保護者側にも家庭の食生活・食環境の重要性の理解が高まった。

・食文化館キッチンスタジオにて実施される、地場産野菜を使った調理実習や各種イベントにより、若年齢層にも地場産野菜の調理方法が浸透してきた。

・各学校ごとの食の体験を通じて、小中学校自身が地場産野菜や郷土料理に関心を持ち、食生活及び食環境の見直しと意識改革のきっかけができた。

・地産地消啓発番組により、地場産野菜や地産地消に取り組む身近な団体の活動を広く紹介し、市民の間での理解が高まった。

・「ふるさと料理を楽しむ会」「食生活体験バスツアー」で地域外の人々に、若狭おばまの旬の野菜、郷土料理を食してもらい地場産野菜のPRを行うとともに、交流人口が増加した。

6 おわりに

 国民の多くは、野菜の摂取は健康のために重要であると理解していますので、摂取目安である「1日5皿(350g)以上」を今後さらに普及させ、具体的な摂取行動がとれるように変化させていくことが重要と考えています。

 既存の補助事業をうまく活用し、消費拡大に向けた様々な取組を展開することで、野菜摂取の習慣化が図られ、地域における野菜の消費拡大が図られますよう、積極的な推進よろしくお願いします。




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