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機構から 野菜情報 2021年9月号

令和2年度指定野菜価格安定対策事業における価格差補給交付金等の交付状況について

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野菜業務部 交付業務課

【ポイント】

1 令和2年度指定野菜価格安定対策事業の価格差補給交付金等の交付額は、187億2885万円(前年比97.  0%、過去10年平均比151.1%)で、近年では、令和元年度(193億円)に次ぐ高い水準となった。
2 品目別には、(1)レタス58億4078万円(前年比152.4%)、(2)トマト46億1076万円(同146.2%)、(3)キャベツ24億2254万円(同96.7%)、(4)たまねぎ23億2218万円(同65.8%)、(5)きゅうり10億7838万円(同220.6%)の順で、上位5品目で全体の約9割を占める。
3 道府県別には、(1)熊本県33億9037万円(前年比165.0%)、(2)愛知県17億2451万円(同141.1%)、(3)長野県16億2984万円(同95.3%)、(4)北海道15億1701万円(同42.9%)、(5)茨城県11億6596万円(同179.9%)の順で、上位5道県で全体の約半分を占める。

1 はじめに

 野菜は国民の食生活に欠くことのできない食料品ですが、天候により豊作、不作の差が大きい上に日持ちしないものが多いため、価格が短期間に大きく変動するという特性を有しています。このため、当機構では、キャベツ、トマトなど消費量が多く重要な野菜14品目を対象として指定野菜価格安定対策事業を実施しています。この事業は、あらかじめ国、都道府県の区域を単位として設立された野菜価格安定法人、生産者が資金を積み立てておき、これら野菜の市場価格が低落した場合に生産者が次年度以降も安定した生産を継続できるよう、低落の幅に応じた価格差補給交付金等を生産者に交付するものです。
 この度、令和2年度事業の対象野菜の出荷期間が終了しましたので、当該年度における価格差補給交付金等の交付状況について報告します。

2 気象概況と東京都中央卸売市場における価格の状況

 令和2年度の野菜の価格を概観すると、4月から5月は、低温による生育不良や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止の外出自粛の影響に伴う家庭消費の需要(巣ごもり需要)の増加のため、平年より価格が上回って推移した一方、業務用需要の減少により、一部の品目の価格が平年を大きく下回りました。また、7月から8月にかけては、長雨と日照不足の影響により、葉茎菜類、果菜類など多くの野菜が前年を上回って推移しました。
 その後は、好天に恵まれ台風の襲来による被害もなく順調な生育で、10月からの秋冬野菜は平年を下回って推移し、一時的に寒波の影響があったものの、3月まで好天に恵まれ、価格は平年を下回って推移しました。
 具体的には、春野菜は、低温による生育不良や昨年度から引き続くCOVID-19の感染拡大防止の外出自粛の影響に伴う巣ごもり需要の増加のため、キャベツやはくさいなどの価格は平年を上回って推移しましたが、業務用需要が減少したことにより、たまねぎなどの価格が平年を大きく下回りました。
 夏秋野菜は、梅雨前線の活発化による長雨と日照不足の影響により入荷量が少なめとなり、キャベツやはくさいなどの葉茎菜類やきゅうりなどの果菜類など多くの野菜が前年を上回って推移しました。一方、業務用需要の減少により、レタスは平年を下回って推移しました。
 秋冬野菜は、晴天と適度な降雨に恵まれたことから安定した入荷量となったことに加え、業務用需要の減少などから、はくさい、キャベツ、レタスなどの葉茎菜類の価格が平年を下回り、特にレタスが大きく値を下げて推移しました。
 1月から3月にかけては、一時的に寒波の影響が多少あったものの、3月までは暖冬で日照量にも恵まれ、潤沢な入荷量となり、葉茎菜類、果菜類などの価格が平年を下回り、業務用需要の減少もあり特にトマトが平年を下回って推移しました。
 一方、ばれいしょは、主産地の生育期の天候不順などの影響により出荷量が減少したことに加え、巣ごもり需要もあり、価格がほぼ年間を通して平年を上回って推移しました。

3 価格差補給交付金等の交付状況

 このように、令和2年度の指定野菜の価格は、4月から8月を除き、ほぼ年間を通して平年を下回ったため、令和2年度事業の価格差補給交付金等の交付額は、年間を通じて価格が平年を下回った前年度に引き続き高い水準となり、187億2885万円(前年比97.0%、平成23~令和2年10年平均比151.1%)、交付率(資金造成額に占める交付額の割合)は16.6%となっています(図1)。

図1
 
 品目別の交付状況は、レタスが58億4078万円(前年比152.4%、交付割合31.2%)で最も多く、次いでトマトが46億1076万円(同146.2%、24.6%)、キャベツが24億2254万円(同96.7%、12.9%)、たまねぎが23億2218万円(同65.8%、12.4%)、きゅうりが10億7838万円(同220.6%、5.8%)の順になっています。これら上位5品目で交付額の約9割を占めます(図2、表1)。

図2


表1

 
 レタスの交付額が多かった要因としては、9月以降好天となり、野菜全般が安定した生育になる中で、COVID-19の感染拡大防止の影響により業務用需要が減少し価格を押し下げたこと、また、茨城県、静岡県などの冬レタスの主産地でも、温暖な気候が続き、潤沢な出荷となったことに加え、業務用需要の減少から、冬レタスの出荷期間を通して価格が低水準で推移したことから、レタス全体の交付率は42.4%となりました。次いで交付額が多かったトマトも、秋から冬にかけての熊本県、愛知県、栃木県などの産地において好天に恵まれ、順調な生育となり、特に主産地である熊本県産が潤沢な入荷量だったことに加え、業務用需要が減少し価格が低水準で推移したことから、トマト全体の交付率は21.8%となりました。
 品目別・出荷時期別(種別別)の交付状況をみると、冬春トマトの43億9592万円(前年比185.2%、交付率31.4%)を筆頭に、次いで冬レタスの37億2001万円(同170.5%、52.2%)、冬キャベツの23億5336万円(同117.8%、43.6%)、たまねぎの23億2218万円(同65.8%、20.7%)の順となっています(表1)。
 次に、道府県別の交付状況は、(1)冬春トマトなどへの交付が多かった熊本県の33億9037万円(前年比165.0%、交付率27.1%)を筆頭に、(2)冬キャベツなどへの交付が多かった愛知県の17億2451万円(同141.1%、30.2%)、(3)夏秋レタスなどへの交付が多かった長野県の16億2984万円(同95.3%、23.2%)、(4)たまねぎなどへの交付が多かった北海道の15億1701万円(同42.9%、12.8%)、(5)冬レタスなどへの交付が多かった茨城県の11億6596万円(同179.9%、27.5%)の順となっています。これら上位5道県で交付額の約半分を占めています(図3、表2)。

図3

 
表2
 

 以上、令和2年度指定野菜価格安定事業における価格差補給交付金等の交付額は約187億円と昨年度に続く高い水準となりましたが、この生産者への価格差補給交付金等の交付により、生産者の経営安定と野菜生産の安定が確保され、ひいては、消費者への指定野菜の安定供給が確保されています。機構では、今後とも、速やかな価格差補給交付金等の交付など本事業の的確な運営に努力してまいります。