野菜業務部直接契約課 竹谷 亮佑
野菜の加工・業務用需要の割合は、昭和50年頃は4割弱であったが、食の外部化の進展等により、平成22年には6割を占めるまでに増加している。
一方、国産野菜の供給は、過半が家計消費用に仕向けられており、増加が見込まれる加工・業務用需要に対する国産野菜の供給体制を確立することが重要となっている。
このため、当機構では、産地と実需者とのマッチングの場を提供するため、平成18年度から野菜ビジネス協議会との共催により、交流会(通称:国産野菜の契約取引マッチング・フェア)を開催している。
2月19日、節目となる20回目の交流会を、東京国際フォーラムで初めて開催した。
今回は、全国各地から過去最大となる112の事業者・団体(うち、JA等4、農業法人等51、流通・加工業者27)が出展した。初出展者も51と多く、新しい顔ぶれがそろった。
また、JAグループが同日同会場にて、「国産農畜産物商談会」を開催していたこともあり、来場者数は従来の2倍以上となる約1,200名にのぼり、初めての東京国際フォーラムでの開催は大いに盛り上がった。
JA全農おおいた(大分県)は、新品種として、下仁田系の遺伝子を持つ「甘ねぎ」(長ねぎ)と、しっとりとした食感が特徴の「甘太くん」(さつまいも)をPRしていた。JAグループ主催の商談会との重複出展となったが、「業務用ニーズへの対応が重要だと感じ、出展した。客層の違いを踏まえて、情報収集を積極的に行いたい」と語っていた。
また、単協として唯一の出展となったJAあしょろ(北海道)は、大きく育った地元特産のラワンぶきを漬け物に加工し、パックで小売業者に販売している。「ふきの漬け物ニーズが東京以北に多いので、今回は、文化を広める意味も込めて出展した」とのことである。
JAあしょろのラワンぶき
試食コーナーでも、漬け物が好評だった
今回初出展の中村農場(北海道)は、たまねぎを練りこんだパン等を出展。現在は約5haの農地でたまねぎを生産し、過半はスーパー向けに出荷しているが、B品を地元向けパンなどの材料に仕向けている。担当者は、「今後、加工用需要に対応したいが、そのためには、規模を拡大し、大口出荷できる体制を構築する必要がある」と語っていた。
また、㈱ファームいせはら(神奈川県)も今回初出展。県の商工会連合会経由で交流会を知った同社は、自然薯(やまのいも)と黒枝豆の生産・加工に取り組んでいる。自社ブランドの「大山自然薯」を真空パックに詰め、三越やイオン等のスーパーに卸しているが、食べきりサイズに小分けされている点が好評とのこと。黒枝豆「ともちゃん」は、連作障害を避けるために栽培を開始したが、現在はタネ選別の際にはじかれたものを甘納豆に加工・販売するなど、積極的に商品開発を行っている。
㈱ファームかずと(長野県)は、高糖度のトウモロコシやにんじん等を生産する農業生産法人。出荷は夏場で、6割近くは関東・関西圏のスーパー向けだが、「レストラン業界等、小口ながらも高単価の売り先を多く確保したい」との思いで参加した。
㈱五條市青ネギ生産組合(奈良県)も今回が初出展。刻み青ねぎの大口パックを、卸経由で病院食や社食向けに出荷している。試食品として、白飯に揚げ玉、錦糸卵、青ねぎをふりかけ、ポン酢で味付けした「ねぎめし」を提供していたが、ねぎ特有の辛味や臭みが少なく、マイルドな味わいであった。
【コラム】目立つトマトの出展 ~多様なニーズに対応~
今回の出展品目を見ると、トマトの出品の多さが際立っていた。また、各出展者はさまざまな品種や販売形態を打ち出しており、ニーズに合わせた差別化を図っていることがうかがえる。
なかでも、外観が特徴的なトマトは、㈱アグリセールス(兵庫県)が出展した「シシリアンルージュ」という品種。やや縦長の形状をしたヨーロッパ系のミニトマトで、塩・オリーブ等の加熱調理との相性が良く、皮をむいて1キロパックでの冷凍出荷を計画中とのことであった。
トマトの加工に自ら取り組む出展者も多かった。日高村あぐりネットワーク(高知県)では、果肉がしっかりした味の濃いトマトを完熟出荷しており、熟し過ぎたものはピューレにして販売している。
また、㈲グランジャ(長野県)は、糖度7の「ぜいたくトマト」を生産しており、夏搾りのトマトジュースを熟成させ、冬場に1ℓ瓶を1本1,260円で販売している。
一方、㈱明宝レディース(岐阜県)は、県内産のトマトを原料にし、コクがあり、後味も爽やかなケチャップを出展。「今後は自分たちの手で販路を開かなくてはいけない」との思いから初出展したとのことである。
生産にとどまらず、自ら加工や販売を手掛けていく生産者の意欲的な姿勢が印象的であった。
㈱トレード(京都府)は、京野菜を専門に扱う流通業者で、全国の百貨店やスーパーに卸している。なかでも提案型スーパーや直売所に対しての売り込みに力を入れている、とのこと。「他社との差別化のポイントは、単品にとどまらず、京野菜コーナーを作り出す力にある」と担当者は語っていた。
AOC合同会社(千葉県)は、前回の仙台開催に引き続き2回目の出展となった。前回は、後述の試食コーナーで提供したドレッシングの評判が高く、開催後、数社から見積依頼を頂いたとのことであった。ほかにも、百貨店ギフト向けのニンジンジュース等の評判が高く、糖度は5.8とやや低めながら、うまみ成分のアミノ酸が多く含まれているため、コクがある味わいだった。
マッチング成果のさらなる向上を図るために実施している「特別商談コーナー」(野菜ビジネス協議会及び青果物カット事業協議会の会員企業等と出展者を結び付ける個別・予約制の商談会)には、実需者13社に対し30の生産者等が参加し、延べ97件の商談が精力的に行われた。
今回、特別商談会に参加し、13の生産者等と商談を行った横浜丸中青果㈱外販事業部営業推進第二グループの森本課長は、特別商談会について、「商談相手の情報を事前に把握できるので、商談を効率的に行うことができる。本コーナーの魅力は、業務向けニーズに対応するさまざまな商品を提案頂けるところ。実需者に対する理解をさらに深めて頂き、商談をより実りあるものにしていきたい」と語ってくれた。
出展者の商品のPRを強化するため、前回より始めたのが「試食コーナー」。出展者が持ち寄った「自慢の野菜」を、サラダバー形式で来場者が自由に試食できる。
33の出展者が延べ65品目を提供し、常に行列ができる盛況ぶりであった。
なかでも、日高村あぐりネットワーク連絡会(高知県)の高糖度トマト(シュガートマト)、大石田町新作物開発研究会(山形県)の自然薯、トキタ種苗㈱(埼玉県)のスティッキオ、光生アルミニューム工業㈱(愛知県)のアイスプラント等が、来場者の興味を誘っていた。出展者ブース同様、試食コーナーの出展品目もトマトが多く、来場者からも好評であった。
また、ドレッシングに対する関心も高く、北海道ホープランド(北海道)の山わさび等、一風変わったドレッシングに、来場者は高い興味を持っていた。
出展者からも「出展物のPRができた」「試食コーナーから来場者が流れてきた」といった評価を頂き、急きょ予定になかった野菜を提供したいと申し出る出展者もいたほどであった。
最近、当機構が実施したアンケート調査において、4割の農協が3年前と比べ加工・業務用野菜の取引が拡大していると回答している。また、9割以上の農協が、今後、生産者の経営安定等を図るため、取引を拡大していく見込みであると回答しており、産地の実需者ニーズへの対応体制の強化が期待されている。
当機構では、今後も継続的に交流会を開催することにより、産地と実需者とのマッチングの場を提供していくこととしている。
最後に、本交流会を開催するに当たり、多大なご協力をいただいた関係者の皆様に、この場を借りて厚く御礼を申し上げる。
【JA等】
高知県園芸農業協同組合連合会、全国農業協同組合連合会大分県本部、鹿児島県経済農業協同組合連合会、足寄町農業協同組合山菜加工場
【農業法人等】
㈱ファームハウスぴぽろ、中村農場、農業生産法人北海道ホープランド、㈱フレアズ、㈲川口納豆、大石田町新作物開発研究会、㈱ジオンジファーム、旬菜農場、㈱Tedy、㈲水戸菜園、北浦有機事業協同組合、つくばバイオマスもみがら研究会(江戸農法推進部会)、生井菜園、農業生産法人㈱基進、浅間蔬菜組合、㈱野菜くらぶ・グリンリーフ㈱、㈱アーバンファーム、南総なばなネット、㈱ファームいせはら、㈱炭香、長野ハーブガーデン㈲、農業生産法人㈲トップリバー、㈱ミスズライフ、信州森のファーム、有坂きのこ園、農業生産法人㈱ファームかずと、㈲増島農園、神谷農園、カネロク松本園、農業生産法人㈱うまヘルシー、農業生産法人㈲佐野ファーム、㈲中山食茸、農業生産法人㈱スギヨファーム、㈲橋場農園、自然フーズ㈱、こと京都㈱、㈱ニューふぁ~む21、㈲新家青果、農業生産法人㈱五條市青ネギ生産組合、有機事業農業協同組合、㈲岡山県農商、㈲エーアンドエス、㈲丸浅苑、西地食品㈲、㈲遠赤有機農園、四万十オーガニックファミリーズテレサファーム、日高村あぐりネットワーク連絡会、(農)秋香園、(農)ECOマッシュ、農業生産法人㈲新福青果、㈱さかうえ
【流通・加工業者】
國分青果、十和田青果㈱・㈲十美商事、マクタアメニティ㈱、㈲アグリクリエイト有機栽培あゆみの会、㈲サンワアグリビジネス、AOC合同会社、東京富永商事㈱、㈱はにーびー、㈱大洋青果、ナラサキ産業㈱、日本ブランド農業事業協同組合(JBAC)、㈱青湘物産、飯山中央市場㈱、㈲グランジャ、㈱トレード、井上商店・ハートファーム、MCプロデュース㈱、㈱日本アクセス(伊藤忠商事㈱)、東京シティ青果㈱、横浜丸中青果㈱、㈲秋田ふるさと雑穀村、明陽食品工業㈲、桜乳業㈱、あぶくま食品㈱、ジャパン・イマジネーション・フーズ㈱、㈱LSL、神栄アグリフーズ㈱、㈱明宝レディース、㈱アグリセールス、倉敷青果荷受組合、㈱オキス、富士食品工業㈱、サンポー食品㈱、東京デリカフーズ㈱
【種苗会社】
カネコ種苗㈱、トキタ種苗㈱、渡辺農事㈱、みかど協和㈱、日本デルモンテ㈱、㈱ジャパンポテト、パイオニアエコサイエンス㈱、横浜植木㈱、㈱サカタのタネ、タキイ種苗㈱、ナント種苗㈱、㈱大和農園種苗販売部
【植物工場、試験研究機関等】
㈱野菜工房、スマイルリーフスピカ㈱、植物工場野菜greenLand、光生アルミニューム工業㈱、(独)農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センター、(独)農業・食品産業技術総合研究機構 野菜茶業研究所、(公社)園芸いばらき振興協会、長野県、鹿児島市生産流通課、野菜ビジネス協議会、(独)農畜産業振興機構
※ 出展者の詳細情報については、機構HP上の「交流会コーナー/野菜契約取引マッチング・ゲート」をご参照ください。
URL : http://www.alic.go.jp/ [alic 交流会] で検索