[本文へジャンプ]

文字サイズ
  • 標準
  • 大きく
お問い合わせ

機構から (野菜情報 2012年12月号)


第19回加工・業務用野菜産地と実需者との交流会の概要

野菜業務部直接契約課 竹谷 亮佑


1.はじめに

 「本日の交流会が、産地と実需者の皆様を結ぶ「架け橋」となり、国産野菜の契約取引が一層活性化されることを切望する次第であります」当機構佐藤理事長の開会挨拶により、標記交流会(国産野菜の契約取引マッチング・フェアin仙台)は幕を開けた。
 野菜の加工・業務用需要の割合は、昭和50年頃は4割弱であったが、平成22年には6割を占めるまでに増加している。
 一方、国産野菜の供給は、過半が家計消費用に仕向けられており、増加が見込まれる加工・業務用需要に対する国産野菜の供給体制を確立することが重要となっているが、この加工・業務用野菜の取引は、定時・定量・定価格の契約取引が主体となっている。
 このため、当機構では、産地と実需者とのマッチングの場を提供するため、平成18年度から野菜ビジネス協議会との共催により交流会を開催している。
 10月31日に、宮城県の仙台卸商センター産業見本市会館サンフェスタにおいて、19回目の交流会を開催した。

2.78の事業者・団体が出展 ~出展ブース~

 仙台では平成22年8月に初めて開催し、57の事業者・団体が出展した。本交流会には、地元宮城県を中心に、東北地方から45の出展者が集まるなど、総勢78の事業者・団体(うち、JA等11、農業法人等29、流通業者9、加工業者 8)が出展し、約2年ぶりとなる仙台開催を大いに盛り上げた。

(1) JA等

 みやぎ仙南農業協同組合(宮城県)では、地場のはくさいの浅漬けに加えて、新たな加工商品としてキムチの販売を始めたところ、顧客から好評を博しているとのことである。
 「ポイントは、梨のピューレを練り込むこと。これによってキムチの味がまろやかになり、売上アップにも一役買っている」と熱心にPRしていた。

 また、天童市農業協同組合女性部山口支部やまぐち紅花若菜会(山形県)は、新商品として、地元名産の紅花若菜を練りこんだ麺や、紅花を混ぜて炊いた黄色が鮮やかなご飯等を出展していた。
 「特に紅花入りご飯は、地元の外食産業の中でも寿司店からの評判がよく、積極的に商談を進めたい」とのことであった。

(2) 農業法人等

 ㈱オジマスカイサービス(宮城県)が出展した「トマトベリー」は、いちごのように先が尖っているのが特徴的。
 「売り先は、直売所や地元外食店舗等にターゲットを絞っている。ちょうど端境期を迎える今が一番の稼ぎ時」と売り込みに余念がなかった。

 また、㈲杜のいちご(宮城県)は、ホテル・洋菓子業界への販売に特化した、粒のそろったいちご(すずあかね)の栽培を行っている。
 「6~12月頃の間に、20トン程度生産している」とのこと。甘さは控えめでいちご本来の味が楽しめて、色合いも美しいいちごだった。

 みんな野ファーム(青森県)では、柔らかくて甘い白かぶと実がやや硬めで酢漬け向けの赤かぶを出展していた。
 白かぶはサラダとして生食可能で、後述の試食コーナーでも、来場者の評判が良かった。

 ㈱レインボーフューチャー(茨城県)では、野菜入りウインナーが来場者から好評であった。
 「野菜嫌いの子供が野菜を食べるようにしたい、という主婦のニーズを受けて、自社の燻製技術を応用し、野菜入りウインナーを作る技術を発案した」と語ってくれた。

(3) 流通・加工業者

 仙台市中央卸売市場の青果卸会社の子会社である㈱ベジフル仙台(宮城県)は、産学官の連携によって独自のスチーム技術を開発し、加工野菜の販売強化を目指している。
 「卸売として野菜の品質にはこだわりを持っている。私たちの開発した技術は、素材のポテンシャルを高めるものであり、どの業種に対しても売り込んでいける」と担当者は語っていた。

 また、大西ファーム(岩手県)は、イタリア産のトマトに近い品種の栽培に挑戦しており、それを加工したドライトマトを、生食用と併せて出展していた。
 フリーズドライ等の加工処理を施したトマトは、「サラダだけでなく、居酒屋等さまざまなジャンルの外食産業からのニーズが高い」とのこと。出展者全体で見ても、今回はトマトの出展が多かった。

3.生産者20者が実需者と精力的に商談 ~特別商談コーナー~

 マッチング成果の向上を図るため、前回開催(2月3日の東京開催)より始めたのが、特別商談コーナー(野菜ビジネス協議会および青果物カット事業協議会の会員企業等と出展者を結び付ける、個別・予約制の商談会)である。
 今回は、実需者7社に対し、前回を大幅に上回る20の生産者が参加し、延べ57件の商談が精力的に行われた。
 特別商談会に参加し、11の生産者と商談を行ったサンポー食品㈱取締役常務の野口修氏は、「特別商談会には、産地の力になれればという思いも込めて参加している。個別に見ると興味深い品目はあるが、そういった各地域特有の野菜を一つにつなぎ、新商品や新しい食べ方を提案してくれるコーディネーターの登場に期待している」と述べていた。
 また、「地場消費の野菜を広域流通させるためには、ストーリーを描くことが不可欠である。そこには、生産に取り組む姿勢や熱意が込められていることも必要だ」と、産地側の工夫や地域間での連携にも期待を寄せていた。

4.産直型流通の重要性を強調 ~マッチング促進セミナー~

 交流会では、毎回、野菜の流通に携わる専門家等に、野菜の契約取引の実態等、時宜にかなったテーマにより講演を行っていただいている。
 今回は、㈱カネマサ流通サプライチェーン部副部長の南吉幸氏から、「産直型の中間流通からみる市場動向」と題して講演を行っていただいたところ、当初用意した席数では間に合わず、席を追加した上で立ち見が出る程の盛況ぶりであった。
 南氏は、高齢化などによる消費市場の変化や産地構造の変化が生じている今だからこそ、産地から「直接」実需者に納品する「産直型」流通が重要となることを強く訴えた。
 国内産地および最終実需者の双方に軸足を置く南氏の講演を、多くの聴講者が熱心に聞き入っていた。

5.新企画のサラダバーが大盛況 ~試食コーナー~

 今回、出展者の商品のPRを強化するため、新たにサラダバー形式の試食コーナーを設置した。30の出展者が約50品目の「自慢の野菜」を提供したところ、常に行列ができる盛況ぶりであった。

 ㈱イグナルファーム(宮城県)のトマト、㈱青岩建設(青森県)のきくらげ、全農青森県本部・ゆうき青森農業協同組合(青森県)の長いも漬等が好評であった。また、品目別で見るとトマトの人気が高く、アンケートによると、「興味のあった野菜」として20%超の回答を得た。
 ドレッシングに対する関心も高く、有明産の海苔や長野産のひとみ人参を使用したドレッシングを無償提供していただいたAOC合同会社(千葉県)のブースには、商品の説明を求めて多くの実需者が詰めかけた。
 出展者からも、「出展物のPRにつながった」「サラダを食べながら、和やかに商談を進めることができた」といった高い評価をいただいた。

6.契約野菜事業等をPR ~機構業務説明会~

 当機構では、平成14年度以降、契約取引に係る生産者のリスクを軽減する契約野菜安定供給事業等を実施し、国産野菜の契約取引を推進している。
 本交流会でも、これらの事業等を周知するため、2回に分けて機構の業務説明会を行った。それぞれ、40~50名程度の参加があり、聴講者からは、「野菜の契約事業を知る、良い機会だった」「野菜をめぐる情勢が、短時間でよく理解できた」などの感想が寄せられた。

7.おわりに

 単身世帯や共働き世帯の増加、高齢者世帯における中食の普及等を背景に、加工・業務用野菜の需要は、増加傾向にある。そうした中、国産野菜が安定した需要先を確保するためには、産地は加工・業務用の実需者ニーズに応えていくことが重要となっている。
 このため、当機構では、継続的に交流会を開催することにより、産地と実需者のマッチングの場を提供していくこととしている。次回は、来年2月19日(火)に東京(東京国際ファーラム)で開催することを予定しており(JA全農、JA全中および農林中金共催の「国産農畜産物商談会」と同時開催)、多くの皆様の出展と来場を期待している。
 最後に、本交流会を仙台で開催するに当たり、多大な御協力をいただいた関係者の皆様方に、この場を借りて御礼申し上げる。


(参考)出展者一覧(順不同)

【JA等】

全国農業協同組合連合会青森県本部・ゆうき青森農業協同組合、十和田おいらせ農業協同組合、全国農業協同組合連合会岩手県本部、みやぎ仙南農業協同組合、栗っこ農業協同組合、加美よつば農業協同組合、みどりの農業協同組合、こまち農業協同組合、「庄内丸ごと届け隊」推進協議会、天童市農業協同組合女性部山口支部やまぐち紅花若菜会、全国農業協同組合連合会福島県本部

【農業法人等】

農業生産法人四季菜にんにく㈱、みんな野ファーム(㈲野沢芝生アグリ事業部)、イネ子の畑から、和楽堂健康農苑、㈱青岩建設、㈱アグリカシオペア、㈲川口納豆、㈲大郷グリーンファーマーズ、農事組合法人水鳥、㈲耕佑、㈱オジマスカイサービス、㈱田伝むし、㈲ダイアファーム、㈲杜のいちご、㈱イグナルファーム、㈱ジオンジファーム、㈱最上まいたけ、大石田町新作物開発研究会、仁助屋、㈱Tedy、㈱TKF、㈱レインボーフューチャー、㈱野菜くらぶ・グリンリーフ㈱、おさる農園、㈱グランパ、農事組合法人八幡営農組合、西地食品㈲、㈱岡林農園、㈱坂田信夫商店

【流通・加工業者】

國分青果、中規模流通ネットワーク(マイティ千葉重㈲)、アグリSCMふくしま、㈱ウェルビィ、AOC合同会社、㈱青湘物産、飯山中央市場㈱、伊藤忠商事㈱・㈱日本アクセス、MCプロデュース㈱、大西ファーム、奥田建設㈱(薬莱山葵栽培園)、㈲佐藤蒟蒻店、㈱ベジフル仙台、きのこ総合センター㈱、ジャパン・イマジネーション・フーズ㈱、㈱エムコ、㈱メディカル青果物研究所

【種苗会社】

カネコ種苗㈱、㈱渡辺採種場、雪印種苗㈱、みかど協和㈱、日本デルモンテ㈱、㈱武蔵野種苗園、㈱日本農林社、横浜植木㈱、㈱サカタのタネ、ツルタのタネ㈱、タキイ種苗㈱、ナント種苗㈱

【植物工場、試験研究機関等】

㈲安全野菜工場、ファーム味来工房(アルプスビジネスクリエーション福島)、岩手県立遠野緑峰高等学校、(独)農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センター、東北公益文科大学紅花プロジェクト、㈱アミタ持続可能経済研究所、長野県、野菜ビジネス協議会、(独)農畜産業振興機構

※ 各出展者の詳細情報については、機構HP上の「交流会コーナー/野菜契約取引マッチング・ゲート」をご参照ください。
URL : http://www.alic.go.jp/ alic 【交流会】 で検索


元のページへ戻る


このページのトップへ