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機構から (野菜情報 2012年6月号)


alicセミナー

~野菜の機能性や食べ方等に関する新たな見地について~
―健康を維持するための野菜の食べ方―

デザイナーフーズ株式会社 取締役 市野真理子氏の講演概要

野菜需給部 需給推進課


 平成24年5月15日にデザイナーフーズ株式会社取締役の市野真理子氏をお招きし、「野菜の機能性や食べ方等に関する新たな見地」について、ご講演いただきました。
 前回までは、野菜セミナーとして野菜需給協議会会員の皆様を対象としてご参加いただき開催しておりましたが、今年度より広く参加者を募り、新たにalicセミナーとして開催しました。その概要を紹介します。

(肥満とやせ)

 近年、食の多様化もありメタボリックシンドロームの方が多くなっている。
 肥満度を測るときに、体重(kg)÷〔身長(m)の二乗〕=BMIの数値を用いるが、BMI値22が理想、25を超えると肥満といわれている。日本人は、男性の3割がBMI値25を超え、特に30歳を超えたあたりから急激に割合が増加している。
 一方、女性の場合は、BMI値18.5を下回る「やせ」の増加が隠れた重要な問題となっている。20代女性の22.3%が18.5を下回っており、特に若い女性にやせている方が多くなっている。若いときにやせていると、骨密度が増加せず、40代、50代に骨粗しょう症になってしまう可能性が高い。そのうえ、飢餓状態が続くことで、生まれてくる赤ちゃんの10人に1人が低体重児となっている。低体重で生まれた人は肥満になりやすいということが分かっており、生まれてくる赤ちゃんが将来肥満につながるという問題もある。
 このため、太っている方への栄養指導とともに、やせている女性に対する栄養指導も非常に大切になっている。

(カロリー栄養学から分子栄養学へ)

 栄養を考えるとき、従来、カロリーを中心に考えてきた。しかし、現在は、分子レベルで考えた栄養がとても重要になってきている。食べたものがいかに体の中で代謝され、エネルギーへ変換されるかが重要である。
 代謝を考えたときに、食べ方を考える必要がある。特に若い女性はダイエットが間違った方向にいかないようにしなければいけない。具体的には、カロリーを摂らないという考え方でなく、バランスのよい食事を摂り、エネルギー代謝を上げていくことが重要である。

(代謝力を挙げる食事①)

 食べ物を構成する糖質、脂質、たんぱく質をエネルギーに変える仕組みをいかに上手に作るかということである。
 例えば、ごはんはブドウ糖に変わる糖質が多く含まれているが、ミネラルやビタミンが不足しているとエネルギーに変わりづらく、皮下脂肪や肝臓に貯められて太る原因になる。
 これを防ぐためには、白いごはんを食べるときは、ビタミンやミネラルを一緒に摂ったり、麦や雑穀を混ぜたりすることも有効である。しっかりクエン酸サイクルを回して、エネルギーに変えることができれば、冷え性を解消したり、活力が出るといった効果も期待できる。

(代謝力を挙げる食事②)

 私たちの体の中では、ミトコンドリアという細胞の中にある工場でエネルギーを作っている。このミトコンドリアは、活性酸素によって攻撃され壊れていく。これを防止するためには、抗酸化力の高い野菜を摂取することが有効である。赤、黄色、紫といった色のついた野菜を個別に食べることも良いが、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンEを一緒に摂るような食べ方をすることで、お互いの抗酸化力を高め、最強の抗酸化力を生み出すことができる。

(代謝力を挙げる食事③)

 冬にとれる野菜は、体を温めやすく、夏にとれる野菜は体を冷やすといわれている。冬にきゅうりやトマトなど夏の野菜を多く食べると体が冷えてしまうので、気をつけなければいけない。
 暖かい地域で採れるものは体を冷やす作用があり、寒い地域で採れるものは体を温める。すべてがそうとは言えないが、基本的な考え方と理解してほしい。食べ方によっても野菜の作用は変化する。例えば、トマトは、生で食べると冷えるが、焼くと冷えが少なくなる。また、煮込むと体を温めて食べることができる。

(活性酸素と抗酸化物質)

 デザイナーフーズ株式会社では、活性酸素の中の、老化に関係するスーパーオキシド、美容に影響を及ぼす一重項酸素、健康を害するヒドロキシラジカルの3つに対する野菜や果物の抗酸化力のデータを測定し、三角形の面積の大きさで表している。例えば、かぼちゃでは、坊ちゃんかぼちゃの抗酸化力がずば抜けて高い。いちごやブルーベリーの抗酸化力が高いが、これ以上に高いのがパプリカである。
 また、調理方法によって抗酸化力を高めることができる。ねぎを例に挙げると、焼いたときに最も抗酸化力が高まる。昔、風邪をひいたときに焼いたねぎと味噌を一緒に食べていたが、昔からの知恵や食べ合わせには、効果的なものがたくさんあることが分かる。
 さらに、旬の季節に食べることも抗酸化力を高める大きな要素となる。ほうれんそうは、旬の冬ものもは、夏のものに比べて、ビタミンCは7倍、抗酸化力は7倍、糖度は3倍であり、反対に、硝酸イオンは1桁数値が低い。

(糖化反応を防ぐには)

 私たちの体内でたんぱく質に糖が結び付くと、たんぱく質が変性し、異常たんぱく質が生成される。この反応を糖化反応というが、肌に弾力がなくなるなど体に悪影響を与える。これを防ぐには血糖値を急激に上げないことが重要である。
 血糖値の上がりやすさを示す値にGI値がある。高GI値のものには、ごはん、食パン、コーンフレークがあり、逆に、低GI値のものには、玄米、そばなどがある。糖化反応を防ぐためには、低GI値の食品を食べることや血糖値を上げやすいものを後に食べるようにすることが大事。最初に野菜、次にたんぱく質、最後に炭水化物というフルコースのような食べ方をベジタブルファーストというが、このような食べ方も効果的である。

(食べ方をデザインする)

 私たちに不足している栄養素は、ビタミン、ミネラル、食物繊維、抗酸化物質、n-3系脂肪酸である。何を食べないかではなく、何を食べるかという自分で食べ方をデザインする力を身につけることが、健康を維持するキーワードとなっていく。

資料リンク先:http://www.alic.go.jp/content/000082943.pdf

市野 真理子(いちの まりこ)氏 プロフィール
デザイナーフーズ株式会社 取締役
椙山女子学園大学家政学部食物学科管理栄養士専攻卒。
泉万醸造株式会社 営業部販促企画課を経て、「食のコーディネーター」丹羽氏のアシスタントとして食品の開発に従事。
現在、デザイナーフーズ株式会社にて、食品メーカー、外食、コンビニエンス、スーパーなどに対して商品企画開発、情報提供、栄養カウンセリング、衛生管理などのアドバイスを行う傍らで、野菜と健康のショールーム「べジマルシェ」の店長を兼任。


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