野菜需給部需給推進課
独立行政法人農畜産業振興機構は、平成24年3月16日に、生産者、流通業者、消費者等野菜の関係者が一堂に会する第15回野菜需給協議会(座長:中村靖彦東京農業大学客員教授)を開催した。
本協議会では、「平成23年産秋冬野菜の需給・価格の実績とその要因」、「平成24年産春野菜の生産(生育)・出荷状況及び需給・価格の見通し」等の確認が行われるとともに、協議会として平成24年度に新たに実施する消費拡大の取組みを決定した。また、農林水産省農林水産政策研究所小林茂典総括上席研究官から「野菜の用途別需要の動向」について、デザイナーフーズ株式会社の市野真理子取締役から「野菜の機能性や食べ方等に関する新たな知見」について説明が行われた。
議事の概要及び各委員から出されたご意見等は以下のとおり。
事務局から、秋冬野菜の需給・価格の動向について説明。見通しの対象とした秋冬野菜6品目(冬キャベツ、秋冬だいこん、たまねぎ、冬にんじん、秋冬はくさい、冬レタス)は、低温、少雨、日照不足等の影響により、たまねぎと冬にんじんを除き、1月以降、価格は前年を上回った。
事務局から、春野菜の需給・価格の見通しについて、3月12日に開催された野菜需給・価格情報委員会での取りまとめ結果を説明。見通しの概要は以下のとおり。
気象予報会社から、今年の春から夏にかけての天気の動向について説明。日本付近は、高気圧と低気圧が交互に通過する周期変化で、沖縄と奄美を除き、天気は数日の周期で変わりやすい見込み。また、ラニーニャ現象は終息に向かう。
4月は前年並みの出荷が見込まれるものの、価格は震災等の影響で安値であった前年を上回ると見込まれるが、5月以降、価格は前年及び平年を下回る見込み。
加工・業務用では、寒玉系の出荷が早めに終了すれば、中国産、韓国産の使用にシフトする可能性。
価格は、4月以降平年並みと見込まれるが、6月は青森産への切替りの状況次第で価格が前年を上回る可能性もある。
外食用では、価格が高いことから、切りだいこんを使用するケースも見られる。一方、加工・業務用では、中国産のだいこんを使用したところ、使えるとの評価がなされている。
5月上旬頃に出荷が重なる可能性があり、価格は前年を下回る可能性があるが、全体としては前年並みの見込み。
国内産の加工・業務用への対応次第では、中国産の輸入が増加する可能性がある。
順調な出荷が見込まれることから、価格は平年並みと見込まれるが、5月下旬には平年を下回る可能性。
主産地との価格差から、九州産への手当てが増える傾向にある。
加工・業務用は、国産への回帰の動きもあるが、一方で価格面の有利性から、中国産等の輸入ものへの移行も見られる。
漬物用への手当のため、4月上旬に市場への出荷が減少し、価格が平年を上回る可能性があるが、4月下旬以降は入荷量が増加し、平年を下回る見込み。
外食業界では、4月以降使用量がかなり減少する中で、最近ではサラダ需要も出てきているが、小ぶりな品種や1/2カット等の提供にとどまっている。
生育が遅れていた分の出荷が4月中・下旬以降に集中し、価格は前年を下回る見込み。
価格高騰の影響を受け、加工・業務用では、台湾産への需要が高まる傾向にある。
11月及び12月前半の気温が高かったことによる前進出荷に加えて、その後の寒波等の影響により市場への入荷量が減少し、価格が高値となった。小売においては、単価が上がったため金額ベースでは好調であったが、数量ベースでは減少した。
野菜の高値を背景に、価格が一定で、食べ残し等の無駄の少ないカット野菜が伸びている。
冬場の産地は、関東より西が中心であることから、一般の小売においては影響はほとんどなかった。
加工・業務用では、一部地域を除いてほとんど抵抗がなくなってきているが、学校給食用においては依然として特定地域への抵抗感が存在している。
4月から、放射性物質の規制値が引き下げられることに伴い、検査の費用について、誰が負担するかが課題。
カット野菜の消費は、簡便性を求める消費者のニーズにも合致し、家計消費においては従来以上に大幅に増加している。今後、価格動向との関係をより注視する必要。
通常1/4カットしているものをさらに1/6、1/8カットにしたり、鍋物用にざく切りにしたりして、商品を小口化している。
冬場は、西南暖地を中心とした西の産地の野菜が多かったが、春から夏にかけては関東以北の産地が主流となり、原発事故の影響を心配する消費者の反応が心配。消費者ストレスの緩和のため、西の産地との併売を行う動きがある。
昨年は東日本大震災後の自粛ムードから、花見需要やレジャーを見込んだ販売戦略を打つことができなかった。今年は弁当、惣菜等を含めて春の食材を積極的に販売する動きがある。
加工・業務用需要が伸びている中で、加工用産地の育成が今後の大きな課題。
野菜の価格が高騰し、小売の段階ではカット野菜の販売量が増えた一方で、外食業界では、コスト削減のためにカット作業を内製化する傾向も見られる。
消費拡大を行うためには「簡便性」と「機能性」がキーワードになる。その場合、野菜の機能性については、一時的な情報に惑わされることがないように「医食農連携」を確立し、医学的エビデンスをしっかり構築することが必要。
若年層においては、特に調理をしない傾向があり鍋物用具材がセットになった「野菜キット」が伸びる傾向にある。
今後は60代~70代の「高齢・単身世帯」をターゲットにした販売戦略が必要。コンビニだけでなく、遠方のスーパーにも足を運んでもらうため、小量目化をさらに進めていくことが必要。
食育は子供だけではなく、大学入学時や社会人になる時期等生活スタイルの変化があるタイミングで行うことが効果的ではないか。
これに対し、「春レタスについて「生育が遅れていた分の出荷が4月中・下旬以降に集中」との見通しがなされているが、他の品目はどうか。」との質問があり、「葉茎菜類には同様のことが言える。」との答えがあった。
また、「4月からの放射性物質の規制値の引き下げに対応して検査を行う必要があるが、流通のどの段階の負担が重くなるのか。」との質問に対して「水際のチェックが重要。県の衛生部局等でまず行う。農林水産省等で県の機器整備への支援を行っている。」との答えがあった。
また、「子供への影響が心配なので、しっかりやってほしい。」、「加工原料としてちゃんと使えるよう、安全な野菜だけ流通するようにしてほしい。」との要望があった。
協議会会員から、平成24年度における野菜の消費拡大の取組みについて報告されるとともに、協議会として、消費拡大に積極的に取り組むこととし、平成24年度においては、
①野菜シンポジウムの開催(8月31日の「野菜の日」を予定)
②消費拡大リーフレットの作成・配布
が決定された。
これに対し、野菜シンポジウムの開催に関し、「野菜の摂取量が少ない若年層を対象とするのであれば、野菜を経済的に食べる工夫を盛り込んで欲しい。」との要望があった。
また、「若い母親に集まってもらうつもりなら、保育室を用意するなどの工夫が必要。」、「高齢者を対象としたセミナーも行う必要がある。」との発言があった。
農林水産省農林水産政策研究所小林茂典総括上席研究官より、5年ぶりに改正された野菜の用途別需要動向(3月6日公表)に関して、加工・業務用需要の比率が前回の55%から56%に上昇したこと等について説明があった。
デザイナーフーズ株式会社市野真理子取締役より、健康を維持するための野菜の食べ方等について、「血糖値を上げないためには、最初に繊維質の多い野菜を食べ、次に肉や魚、そしてご飯の順に食べることが大切である。」などの説明があった。
これに対し、「必要な成分をサプリで補うのと野菜で補うのと違いがあるか。」との質問があり、「サプリでは過剰になることがある。食品で摂ることを薦めている。」との回答があった。
また、「あるセミナーで妊婦には葉酸が大切との説明があったがどうか。」との質問があり、「若い女性を対象とする際には、葉酸の大切さをお話している。」との回答があった。
〔なお、同内容の講演が5月15日開催のalicセミナーにおいて行われる予定となっている。〕
次回の開催については、夏秋野菜を対象に7月中旬を予定。
なお、配布資料等は当機構のホームページ
(http://www.alic.go.jp/y-suishin/yajukyu01_000129.html)に掲載しておりますので
ご参照ください。