野菜業務部 直接契約課
平成24年2月3日に、東京都立産業貿易センター浜松町館(港区)において、「第18回加工・業務用野菜産地と実需者との交流会in東京」を農林水産省、野菜ビジネス協議会との共催により開催した。
本年度第2回目となる交流会には、過去最多の79者が出展するとともに、卸売業者、流通業者等約470名が会場を訪れた。
ここでは、出展者の展示内容およびマッチング促進セミナーを中心に、交流会の概要を紹介する。
交流会の開催に当たり、当機構の佐藤理事長から、「国内産地の加工・業務用需要に対応した供給体制の確立が重要になっており、機構では契約取引を支援する事業を実施するなど、国産野菜の契約取引を推進してきたところ。実需者の皆さまには、本交流会を通じて元気のある産地、新たな可能性を持っている産地がいかに多いかなど、生産現場の実情を知っていただきたい。また、産地の皆さまには、実需者のニーズを把握いただき、契約取引の拡大につなげていただきたい。」とのあいさつを行った。
続いて、農林水産省生産局農産部園芸作物課の菱沼課長から、「中国産餃子事件で野菜の輸入量が減ったが、近年はデフレ等により増加している。加工・業務用野菜対策では、自給率の向上を目的としており、生産者と実需者が強く結びつき、供給体制を構築することが重要。本交流会での商談を通じて、新たな契約取引が生まれることを期待したい。」とのあいさつをいただいた。
会場の様子
オープニングセレモニーの様子
① 生産者団体
今回の交流会は、外食・中食業者および小売店等の実需者の本社が多い東京で開催し、冬春野菜の主力産地である関東以西の生産者団体が集まり、幅広い内容の展示が行われた。
全農茨城県本部は、業務用のはくさい、ねぎ、ピーマン等を出展した。はくさいは、作付時に株間を広くすることで大きくした、歩留まりの良いはくさいについて、価格を定めた取引が提案された。ねぎおよびピーマン等は、取引先からの要望を受けたうえで、規格、価格および数量等を検討するとのことであった。
全農福岡県本部は、なす、青ねぎ、いちご、つぼみ菜、ゆきれいたけ等さまざまな野菜を出展した。つぼみ菜とゆきれいたけの中華風スープが試食で提供され、来場者の興味を引いた。新規作物のゆきれいたけは、近年人工栽培が可能になり、今後普及させたい品目とのこと。アワビのような食感で旨味が強く、中華風スープのほか、バターソテー、フライおよび姿煮に使用するとおいしいと熱心な説明が行われ、特に女性の来場者から高い評価を得ていたとのことであった。
全農茨城県本部の展示
全農福岡県本部のゆきれいたけ
② 農業法人等
農業法人等については、全国各地からの多くの出展があった。
山形県のジオンジファームは、黒にんにく等のにんにく関連商品を出展した。同者は耕作放棄地を有効活用し、有機栽培に準じたにんにく栽培を行っている。黒にんにくは、にんにくを加熱・発酵させたもので、栄養価が高く、健康食品として小売業向けにPRしたいとのこと。海外の知人を通じ試食を実施したところ、良好な手応えがあったことから、海外への販売も検討しているとのことであった。
茨城県の農産物生産ゴガミは、はくさい、キャベツおよびロメインレタスを出展した。はくさいは、加工用向けに価格を抑えた規格外品を提案。市場流通では、外葉の色が淡いはくさいは規格外品であり、出荷できないが、漬物等の加工向けでは、外葉は除去し、内部の色が淡い部分のみを使用するため、規格外品である色が淡いはくさいの方が歩留まりが良いとのことであった。また、実需者からの出荷時期、規格等の要望を直接反映した供給ができる農業者の強みを熱心に説明していた。
ジオンジファームのにんにく関連商品
農産物生産ゴガミの加工向けはくさい
千葉県の南総なばなネットは、なばなを出展した。なばなの鉄分はにらの約4倍、カルシウムはほうれんそうの約3倍と栄養価が高いとのこと。南総の温暖な気候と広大な作付面積を活かし、厳冬期にも安定供給できるという利点を説明していた。今年は特段に寒く、野菜の供給量が少ないため、流通業者からすぐにでも取引をしたいとオファーをいただいたとのことであった。
徳島県のニッキーファームは、ブロッコリーおよびロマネスコを出展した。ロマネスコはブロッコリーとカリフラワーの中間的な食味で、ユニークな形の野菜であり、もの珍しさを展示に活かし、来場者の目を引いた。他者と差別化を図りたい高級レストラン等の外食や小売向けに提案していた。
南総なばなネットのなばな
ニッキ―ファームの展示
③ 加工業者等
福島県の韓国村からし屋は、はくさい、きゅうり、キャベツ等のキムチを出展した。原料の野菜は、地元であるいわき市産にこだわり、主として地元の契約農家から仕入れている。地元の野菜の出荷がない時期は市場等で国産原料を仕入れているとのこと。韓国産の2種類のとうがらしをブレンドした、甘味、辛味、旨味の3拍子揃ったキムチを試食で提供し、いわき産の野菜をPRしていた。
野菜ビジネス協議会の東京デリカフーズ(株)/Farm to Wellness倶楽部は、カット野菜および過熱野菜を出展した。過熱野菜は、180度の水蒸気で加工し、レンジで温めるなどの方法で、すぐに食べることが可能な状態となっている。また、ボイルした野菜と比較した場合、成分が多く残っているので、食味と色味が良いことが特徴とのことであった。水蒸気温度を220度にすることで、焼き目もつけることが可能との説明を行っていた。
韓国村からし屋のキムチ
東京デリカフーズの過熱野菜等
マッチング促進セミナーでは、倉敷青果荷受組合 青果事業部長 冨本尚作氏と内閣府食品安全委員会事務局勧告広報課 リスクコミュニケーション専門官久保順一氏にご講演いただいた。
冨本氏は、「国産玉葱による加工・業務用需要への取組と契約取引」と題し、野菜需要の変化に対応しカット野菜部を立ち上げ、約150社ある得意先に安定供給するために、製造ラインでの温度管理の徹底、カット規格の多種対応、洗浄・殺菌による安全性の確保、品質検査の徹底、物流ラインのコールドチェーン化、コスト削減、ITを活用した受注・納品システムの導入等あらゆる企業努力を実施し、その中でも安全性確保の取り組みとして、青果卸売市場では日本初の「ISO22000 食品安全マネジメントシステム」を取得したという、倉敷青果荷受組合ならではの実需者ニーズに沿った取り組みについてお話いただいた。
また、過去2回、国産野菜生産・利用拡大優良事業者表彰で農林水産大臣賞を受賞し、その取組事例として、①全国に先駆けて、卸業者が市場内に野菜加工センターを設置し、地方市場を拠点とした新しい市場の活用形態としての高いモデル性が評価された、JAみいとの契約取引や、②流通の完全コールドチェーン化、生産・流通のコスト削減、産地間リレー、生産者との意見交換等を行い、たまねぎを中国産から国産原料に切り替えた、JA倉敷かさやをはじめとする国産玉葱生産グループとの契約取引等について具体的に説明していただき、聴講者が熱心に耳を傾けていた。
冨本 尚作 氏
久保氏は、「放射性物質と食品の安全性について~リスク評価を中心に~」と題し、食品の安全性を確保する上でのリスク評価の考え方を、今関心の高い放射性物質について幾つかの科学的見地も交えながら、ご講演いただいた。
はじめに、放射性物質の基礎知識をご説明いただき、もともと自然界には放射性物質が存在しており、大事なのは健康被害が起きる線量をリスク管理することとして、広島・長崎・チェルノブイリの被ばくの事例等を挙げて、現在の暫定規制値がどういった経緯で定められたのか分かりやすく解説いただいた。また、現在の暫定規制値は一般的な安全性は確保されてはいるものの、より一層、安全と安心を確保する観点から平成24年4月に施行予定の新基準値についてもお話いただいた。
久保 順一 氏
聴講者からは、「震災以前からも食品には放射性物質カリウム40が含まれており、それを摂取していたことに驚いた」「放射性物質といって過敏に怖がらず、数値をみて客観的に判断することが大事だと思った」「今後も放射能、食品安全等について講習をお願いしたい」といった声が聴かれ、関心の高さを伺い知ることができた。
セミナーの詳細については、機構ホームページからご覧ください。
http://www.alic.go.jp/operation/vegetable/stability-exchange.html
今回の交流会では、マッチングの成果のさらなる向上を図るため、新たな取り組みとして、野菜ビジネス協議会および青果物カット事業協議会の各会員と出展者を、個別に結び付ける特別商談会を実施した。多くの出展者が事前に予約して参加し、予定時間を超えて商談する等真剣な商談が行われた。
特別商談会での商談の様子
来場者アンケートでは「役に立った」との回答は93パーセントであり、「新たな取引ルートができた」、「興味を持った相手先があった」、「参考となる情報が得られた」、「情報交換ができた」等の声をいただいた。
また、今後の要望として「野菜の生産者の出展者をもっと増やしてほしい」、「新品種だけではなく、既存品種も提案してほしい」等の声があった。
当機構では、このようなご意見を参考に今後の交流会を改善していきたいと考えている。
全国農業協同組合連合会茨城県本部、全国農業協同組合連合会群馬県本部、
全国農業協同組合連合会埼玉県本部、全国農業協同組合連合会福岡県本部、
宮崎県経済農業協同組合連合会、鹿児島県経済農業協同組合連合会、
高知県園芸農業協同組合連合会、
やさと農業協同組合、遠州中央農業協同組合
北海道ホープランド、イネ子の畑から、(有)栄物産、ジオンジファーム、農業仁助屋、
(株)Tedy、(株)シモタファーム、小林農園、(株)菜果直販茨城白土ファーム、
農産物生産ゴガミ、南総ナバナネット・サンポーファーム、石凪農場・GREEN GIFT、
(株)旦千花、
(株)あずみ野エコファーム、(株)ファームかずと、信州森のファーム、
長野ハーブガーデン(有)、
(有)佐野ファーム、(有)夢街道、(有)橋場農園、
(社)大山田農林業公社、こと京都(株)、
(有)新家青果、(有)丸浅苑、
(株)ポテンシャル農業研究所、ニッキーファーム、(株)松村農園、
(有)遠赤有機農園、(株)坂田信夫商店、(有)池一菜果園、(有)コウヤマ、日本ブランド農業事業協同組合
(有)サンワアグリビジネス、飯山中央市場(株)、(株)禾の人、(有)小野塚食品興業社、
韓国村からし屋、ベジポート有限責任事業組合、(株)ジェイエイフーズみやざき、
鹿児島くみあい食品(株)
JFEライフ(株)、スマイルリーフスピカ(株)、(株)日本農園
(株)渡辺採種場、カネコ種苗(株)、トキタ種苗(株)、雪印種苗(株)、みかど協和(株)、
日本デルモンテ(株)、パイオニアエコサイエンス(株)、(株)武蔵野種苗園、
横浜植木(株)、
(株)サカタのタネ、丸種(株)、タキイ種苗(株)、
(株)大和農園種苗販売部、ナント種苗(株)
サンポー食品(株)、富士食品工業(株)、横浜丸中青果(株)、
伊藤忠商事(株)・(株)日本アクセス、
MCプロデュース(株)、
東京デリカフーズ(株)・Farm to Wellness倶楽部、野菜ビジネス協議会
(独)農業・食品産業技術総合研究機構野菜茶業研究所、長野県、鹿児島市、
富士通(株)、
(独)農畜産業振興機構