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第12回野菜需給協議会(持ち回り開催)の概要

野菜需給部需給推進課


 独立行政法人農畜産業振興機構は、平成23年3月25日に第12回野菜需給協議会(座長:中村靖彦東京農業大学客員教授)を持ち回りにて開催した。
 本協議会では、平成23年産の春野菜の生産(生育)・出荷状況及び需給・価格の見通しについて、報告するとともに、福島第一原子力発電所の事故に伴う野菜関連情報について報告した。
 報告内容の概要及びこれに対する各委員から出されたご意見などは以下のとおり。

【平成23年春野菜の見通し等について】

 平成23年産春野菜について、平成23年3月10日に開催した野菜需給・価格情報委員会で取りまとめられた需給・価格の見通しの一部を更新し報告するとともに、福島第一原子力発電所の事故に伴う野菜関連情報について報告した。
(福島第一原子力発電所関連情報は、以下の農林水産省ホームページアドレスに掲載。)
http://www.maff.go.jp/noutiku_eikyo/index.html

○23年春野菜の見通し

・春キャベツは、4月までは量販店の販売促進による需要もあり価格は堅調に推移する見込み。出荷量が増加する5~6月以降、価格は平年並またはそれ以下の水準まで低下するものと見込まれる。

・たまねぎは、府県産の生育状況は順調で出荷量は前年を上回る見込み。価格は北海道の貯蔵品の在庫が少ないことから4月までは現在の水準で推移するものの、5月以降は現在より1割以上低下する可能性が高い。

・春だいこんは、単収は増加傾向にあり面積増以上に出荷量が増える可能性あり。
 小売店では一本売での販売が減少。このため価格は、現状のまま弱含みで推移すると見込まれる。

・春夏にんじんは、出荷量は平年並みであるが徳島県から千葉県に切り替わる5月中旬から6月上旬にかけて一時的な品薄が起こる可能性がある。価格は基調としては前年並ないしやや高めで推移すると見込まれる。

・春はくさいは、作付面積は増加傾向で、生育状況も順調なことから出荷量は増加すると見込まれる。例年、5月以降は量販店での販売量が減少するため、価格は前年を下回って推移する可能性が高い。

・春レタスは、長野県が降雪、低温で生育が遅れ気味だが出荷量は平年並みと見込まれる。気温の上昇により需要も増えるが、出荷が集中することから価格は平年を1割以上下回ると見込まれる。

【野菜需給協議会会員から出された主なご意見】

・直ちに健康に影響を及ぼすものではない安全なものまで心配して出荷を自粛するような動きがあるが、こうした中では買い支えなどで生産者をきちんと支援する必要がある。

・津波による塩害、原発の放射能汚染の影響で農作物の生産そのものが困難になり、長期にわたり供給に影響があるのではないかと不安がある。

・原発事故と野菜の安全性について、正確な情報(放射性物質の多くは水で洗えば落ちるのかなど)を提供してほしい。

なお、配布資料等は当機構のホームページ
http://www.alic.go.jp/y-suishin/yajukyu01_000058.html)に掲載しておりますのでご参照ください。

◎ 第12回野菜需給協議会でのご意見を受け、有識者のご協力をいただき、放射性物質やその野菜への影響などについての疑問に対する回答・解説を以下のとおり作成し公表した。

2011.3. 31

放射性物質とその野菜への影響等について

 福島第一原子力発電所の事故に伴い、一部の県において野菜の出荷制限や摂取制限措置がとられていますが、放射性物質やその野菜への影響等についての情報が必ずしも正確ではなく、野菜に対する不安感が広がっております。また、野菜需給協議会会員の消費者団体の方々からも正確な情報が必要との声が寄せられています。
 そこで本分野について長年研究しておられる大桃洋一郎氏((財)環境科学技術研究所前理事長、現特別顧問)にご監修いただき、放射性物質やその野菜への影響等についての疑問に対する回答・解説を作成いたしました。

【放射性物質について】

Q1 放射能と放射性物質はどう違うのか

 α線やβ線などのように高速で飛ぶ粒子やX線やγ線のような高エネルギーの電磁波のことを放射線といい、この放射線を出す能力のことを放射能といいます(ベクレルとは放射能の強さの単位です)。放射性物質とは放射能を持った物質のことです。
 よく「放射能漏れ」という間違った使い方がされますが、正しくは「放射性物質漏れ」です。

Q2 放射線を浴びると必ず癌になるのか

 人間が放射線を浴びることを被ばくといいます(シーベルトとは被ばくの影響度の単位です)。放射線の人体への影響は時間当たりの被ばく量と被ばくした期間の長さにより異なります。
 我々は天然の放射性物質や宇宙からの放射線などにより1年間に2.4ミリシーベルト被ばくしています。また、例えば胃のエックス線による集団検診(0.6ミリシーベルト)、飛行機搭乗(東京~ニューヨーク片道で0.1ミリシーベルト)によっても、被ばくします。しかし、人体には放射線による損傷を修復する機能が備わっており、被ばく量が少ない時には、全く問題ありません。
 なお、200ミリシーベルト以上の大量の放射線を短時間に被ばくした人の一部に癌が発生する可能性があり、その発生割合は、被ばくした放射線の量とともに増加しますが、一般の方がそのような状況になることは考えられません。

Q3 放射性物質は体内へ取り込まれたら排出されないのか(蓄積していくものなのか)

 体内に取り込まれた放射性物質は、その物質が持つ放射能が半分に減少するまでの時間(物理学的半減期)と、代謝によって排泄され半分に減る時間(生物学的半減期)によって除去されます。この両者の組み合わせを実効半減期といい、ヨウ素-131の甲状腺からの実効半減期はおよそ7日、セシウム-137の全身からの実効半減期はおよそ100日ほどです。つまり甲状腺に取り込まれたヨウ素-131は1週間で半減し、セシウム-137は3か月ほどで半減するというわけです。

【暫定規制値について】

Q4 暫定規制値はどのようにきめられているのか

 国際放射線防護委員会が勧告した放射線防護の基準値をベースに、この基準値を飲料水、牛乳・乳製品、野菜、穀物、肉、卵、魚その他の食品ごとに割り振り、年間の摂取量を想定して、一年間摂取し続けた場合に基準値に達する放射能濃度を暫定規制値としています。

Q5 暫定規制値を超えた野菜を食べると癌になるのか

 厚生労働省は今回のような緊急時の場合、ヨウ素については甲状腺の等価線量として年間50ミリシーベルト、セシウムについては実効線量として年間5ミリシーベルト以上摂取しないように食品ごとに暫定規制値を設定しました。しかしこの暫定規制値がかなり安全側の基準に立ったものであることを認めています。
 特にセシウムについては年間10ミリシーベルト(現行基準の2倍)に緩和しても不適切とは言えないとしています。つまり現行の規制値を若干超える食品を1年間食べ続けたとしても発がんを心配する必要はないということです。

【野菜における放射性物質の動きについて】

Q6 今回の野菜から検出された放射性物質はどこから来たのか(空気、水、土壌)

 葉菜類から多く検出され、また、施設野菜の方が少ないこと、広範囲に遠くまで広がっていることから、大気からチリの形で付着したものと考えられます。

Q7 野菜のどの部分につきやすいか

 今回のように放射性物質が大気中に放出された場合は、まず葉面への直接沈着に着目すべきです。もちろん土壌にも沈着しますが土壌からの移行割合は直接沈着の100分の1ほどです。

Q8 放射性物質は表面にあるのか、植物体内に取り込まれるものなのか

 放射性物質は、まず野菜の表面に付きます。従ってキャベツやはくさいなど結球している葉物は外葉をむくことで大幅に減らすことができます。

【家庭での対応その他について】

Q9 どのように調理したら安心か(洗えば落ちるのか)

 野菜を洗う、煮る(煮汁は捨てる)ことで、かなり除去できます。
 例えば、ほうれんそうや春菊等の場合、煮沸処理(いわゆる「あくぬき」)によって、セシウムやヨウ素の50~80%が除去されるという研究報告もあります。

Q10 出荷制限されている地域の野菜は、出荷制限されていないものも食べない方がいいのか

 出荷制限対象以外の流通する食品についても、食品衛生法に基づく暫定規制値を超えるものは流通させない取り組みがなされていますので、一般に流通しているものについては食べても問題ありません。



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