野菜業務部
第三回国産野菜の生産利用拡大優良事業表彰の審査が終了し、受賞グループが下記のとおり決まりましたのでお知らせします。
本表彰は、国内の野菜需要全体の半分以上を占める加工・業務用の野菜に対して、実需者ニーズに応じた国産野菜の安定供給が求められている状況の下、産地と実需者および流通業者の連携による加工・業務用国産野菜の安定供給への取組を優良事例として表彰し、これを広く紹介することにより、国産野菜の生産拡大を進め、野菜の自給率向上に寄与することを目的として実施するものです。
この度、審査委員会による審査に基づき、受賞グループが決定しましたので審査結果を公表します。
なお、表彰式典は、3月23日に開催されました。
(1) 応募状況・審査結果
平成21年11月2日から平成21年12月22日の間に申請の行われたものについて、審査委員会による厳正な審査の結果、農林水産大臣賞1点、生産局長賞6点、(独)農畜産業振興機構理事長賞6点が決定されました。
(2) 審査委員会
審査委員長 藤島 廣二
昨年、輸入生鮮野菜が4年ぶりに増加に転じました。ただし、家庭向けの生鮮野菜に限りますと、輸入物は依然としてごく一部のままにとどまり、輸入が増えた気配はほとんど感じられません。やはり、加工・業務用において、不況と円高の影響を受けて輸入野菜が増えたとみられます。
しかも、今後、加工・業務用の需要は増えることはあっても減ることはないと予測されています。したがって、国内で野菜生産を増やし、自給率の向上を確実に推進していくためには、加工・業務用分野における国産野菜の一層の利用拡大を可能にするように努めなければなりません。
そこで本審査委員会では、生産者と流通関係者及び実需者の連携の下、加工・業務用国産野菜の生産・利用の拡大に寄与している優良事例を国内に広く紹介し、もって国内野菜産地の加工・業務需要対応力の強化と生産の拡大に資することとしております。
今回応募いただいた方々は24グループにのぼりましたが、いずれもたいへん立派な取組事例です。甲乙付け難い優良事例ばかりでしたが、長時間にわたり、7名の委員で各賞候補事例の選定に関する審議を重ねました。
その結果、本審査委員会において農林水産大臣賞1グループ、生産局長賞6グループ、(独)農畜産業振興機構理事長賞6グループを決定いたしました。ここでは農林水産大臣賞を受賞されたグループを中心に、審査委員会で特に高く評価された点をご紹介いたします。
このグループは、JA利根沼田久呂保レタス部会がMCプロデュース株式会社を介して株式会社サラダクラブにカット用レタス等を供給する取組事例です。この三者間連携で取り扱われるレタスは、平成21年(平成20年12月~平成21年11月)産で138トン(ただし、久呂保レタス部会とMCプロデュース(株)間の取引量は434トン)、キャベツ182トン(同182トン)、トレビス2トン(同4トン)にのぼりました。
この取組で特に高く評価されたのは、次の5点です。
その第1は、JA利根沼田久呂保レタス部会がMCプロデュースとの長年にわたる契約取引(平成21年産が9年目の契約)等によって、レタス等の加工・業務向け出荷量を着実に増やしていることです。例えば、同部会の平成19年産レタスの加工・業務向け出荷量は2,744トンで、全出荷量の48パーセントでしたが、平成21年産は2,965トンに増え、全出荷量の50パーセントに達しました。
第2点目は、JA利根沼田久呂保レタス部会において部会員17名の中から4名をMCプロデュース(株)向け出荷者として選定・特定化し、出荷における生産者個々の役割を明確化したことです。契約はJA利根沼田とMCプロデュース(株)との間で結んでいますので、最終的にはJAが出荷量を確保する責任を負うことになりますが、同部会における出荷者の特定化は生産者の自覚とやる気を高める優れた方法といえます。
第3点目は、MCプロデュース(株)がJA利根沼田久呂保レタス部会をはじめとする複数の産地と取引することによって、年間にわたる産地間のリレー出荷を実現していることです。例えば、(株)サラダクラブの関東エリア向けレタスについては、同レタス部会(群馬県産地)のほか、長野県、山梨県、茨城県、熊本県、宮崎県の産地とも取引をしています。これによって安定仕入・安定供給体制を構築しました。
第4点目は、(株)サラダクラブへの納品方式をケース納品から重量納品に変更したことです。レタスに限らず、葉物野菜は気温等に応じて「身の締まり」が違うため、同じ容積でも重量が異なります。そのため、ケース納品では最終製品(カット野菜)の生産量が大きく変動することになります。それを解決したのが重量納品です。
そして第5点目は、(株)サラダクラブが新商品の開発と徹底した品質管理を行い、さらに産地名等の情報を消費者に提供すること等によって、販売拡大に努めていることです。この結果、平成20年度には炒め物用カット野菜セットや野菜サラダ等を中心に販売高は99億円に達しています。
今回、生産局長賞を受賞されたのは、「金印国産本わさび契約栽培グループ」、「全農いばらき加工・業務用契約取引グループ」、「Farm to Wellness倶楽部」、「JA全農しが・カルビー湖南株式会社」、「高知園芸連・横浜丸中青果・秋本食品グループ」、「JAごとう高菜部会」、の6グループです。ここでは審査委員会で共通して高く評価された点を、3つだけに絞ってご紹介いたします。
① 生産者側はJGAPの導入、栽培履歴の記帳、農薬の適正使用、あるいはコールドチェーン化の推進等のうち複数の方法を採用することによって、安全・高品質の野菜の生産・出荷に努めています。
② 生産者・流通関係者・実需者間の円滑な意思疎通により、供給・需要両サイドの計画性を高めるとともに、生産方法の改善や保管技術の高度化を通して、安定供給を含む取引の安定化に積極的に取り組んでいます。
③ 生産面での栽培体系の改善、新品種の開発や、流通面での通いコンテナの利用、規格の簡素化、地産地消の活用、等々の様々な工夫を実行することによって、生産・流通コストの削減を積極的に進めています。
(独)農畜産業振興機構理事長賞を受賞されたのは、「マルマサフード国産野菜供給・利用協議会」、「レタス周年リレー供給契約取引グループ」、「セブン-イレブン新潟県津南町産アスパラガス調達グループ」、「魚住・清浄野菜レタス生産グループ」、「新福青果&関東屋またの食品ほ場丸ごと加工PJ」、「有田農産大根・キャベツグループ」、の6グループです。ここでは審査委員会で共通して高く評価された点を、3つだけに絞ってご紹介いたします。
① 生産者側はGAP(JGAP、K-GAP)の導入や栽培履歴の記帳、残留農薬検査の実施、あるいは予冷・保冷保管の推進等によって、安全・高品質の野菜を安定的に供給することに努めています。
② 国産野菜の利用拡大を目的に、関係者間の協力によって、通いコンテナの利用やバラ納品、あるいは流通加工施設の共同利用等を実現し、流通コストの一層の低減に積極的に取り組んでいます。
③ 契約取引の推進において契約野菜安定供給制度を既に活用しているか、または今後の活用にきわめて意欲的です。