野菜業務部 契約取引推進課
平成22年1月29日に名古屋国際会議場にて「加工・業務用野菜産地と実需者との交流会 in 名古屋」を開催した。
本交流会は、東海地区で初の開催となり、過去最多の69団体(67ブース)が出展した。
会場には600名を超える来場者にお越しいただき、またセミナーは立見が出るなど盛況を呈した。
交流会の開催に当たり、当機構の内藤副理事長より「それぞれの産地の特色ある野菜を本交流会で実需者の皆さまにしっかりと伝えていただきたい。どのように調理すれば美味しくなるかといった、品目ごとの野菜の特性や調理法などを実需者は知りたがっている。本日は実需者の方にぜひ野菜産地の思いを届けていただきたい」とのあいさつが行われた。
また、農林水産省東海農政局の竹森局長より「新政権に交代したが、新政権でも国内の自給率の強化が最大の課題になっている。加工・業務用野菜は、輸入野菜との競争にさらされているが、自給率を上げる上でも、実需者の方々に国産野菜をぜひ使っていただきたい。産地側も実需者のニーズに沿った品質のものを生産し、提供することが必要である。その生産体制、流通体制の整備などの面でも我々は積極的に応援してまいりたい」とのあいさつがあった。
①生産者団体
JA三重中央は、独自に農産物の加工施設「ベジマルファクトリー」を設立し、実需者のニーズに合わせたカット野菜を提供している。現在、約70名の契約農家を中心にさまざまな野菜を仕入れ、ISO22000に準拠した工場で一般用と業務用に分け、それぞれの野菜に加工を施し販売している。契約取引を行うことで農業者の経営の安定が図られるとともに、加工施設では地元の雇用の促進が図られている。
そのほかにも、東海地区からは初出展のJAひまわりをはじめ、JA全農ぎふ、JAあいち経済連、JAとぴあ浜松、JA遠州中央およびJA全農みえからの出展が行われた。
②農業生産法人
東海近郊の農業生産法人からも多数の出展が行われたこともあり、東京や大阪の交流会とはひと味違った野菜がお目見えした。伊賀地域の一部でしか栽培されていない日野菜とはくさいを交配させた新品種「いがむらさき」や日本での知名度はまだ低いもののヨーロッパ諸国ではごく日常的に食べられている国産の「チコリ」、もやしのような外観の茎に、ほうれんそうのような葉がついた新食感の「ささげ菜」などが目を惹いた。また、新顔野菜の調理メニューを配布し、どのような調理法があるかなどもわかりやすく提案する様子が見られた。
また、ポット栽培やアイメック栽培システム(高機能性高分子膜を用いた栽培技術)など各社こだわりの栽培技術を用いて育てられた野菜も展示され、熱心に聞き入る来場者の姿が多く見られた。
③中間事業者
野菜ビジネス協議会のコーナーでは、外食・中食・ベンダー産業などの青果物ニーズに対応する中間事業者が、来場者と情報交換する様子が見られた。野菜を使った加工品が展示され、にんじんや大葉を原料としたワインなど珍しい商品を手にとる来場者の姿が多く見かけられた。また、にんじん、さつまいも、紫いもなどを入れたロールケーキや、季節に応じ旬の野菜を用いたグリーンアスパラやかぼちゃのアイスクリーム、ホワイトアスパラやパプリカのプリンなど、最近の消費者の嗜好に合わせたベジスイーツの紹介も行っていた。
そのほか、冬場の交流会ということもあり、レンジで温める温野菜サラダやお湯を入れるだけのサラダ野菜スープなども紹介され来場者の関心を集めていた。
④行政・試験研究機関
愛知県、岐阜県のブースでは、各県の伝統野菜が展示されていた。伝統野菜として、愛知県は35品目、岐阜県の飛騨・美濃伝統野菜は20品目が認証されている。両県で栽培されている長さが1メートル以上ある「守口だいこん」は、現在は漬物として使用されるのが一般的である。しかし、食文化の変化により漬物の消費が減少する中、漬物以外の用途についても考案中とのことであった。特色のある地域の野菜をどのように加工し消費者に届けるかは、生産者をはじめ行政や民間企業の工夫が問われ、今後農商工連携がますます促進されると考えられる。
また、石川県のブースでは、地野菜を工夫に富んだ加工品にしている例が見られたので紹介する。中でも目を惹いたのが、近年血圧上昇抑制効果が確認されている「中島菜」である。従来は「漬物」や「おひたし」として食されていたが、加工技術の発達により凍結乾燥粉末にすることが可能となり、さまざまな加工品への用途が拓けたことから、現在、JA能登わかばと企業が連携し、粉末を使用したジェラートやプリンが開発され、製造・販売されている。そのほかにも石川県農業総合研究センターが選抜した「長根系源助だいこん」は、加工・業務用として煮炊きに適しているため、コンビニのおでんや弁当にも利用されているとのことであった。
今回のセミナーでは、キユーピー株式会社でサラダ・総菜事業の野菜担当としてご活躍中の藤本幸佳氏と、三重県立相可(おうか)高等学校で食物調理科の教諭として教鞭をとられており、平成19年に「文部科学大臣優秀教員表彰」を受けた村林新吾氏をお招きした。
両セミナーとも、立見が出るほどの盛況を呈していた。
藤本氏には、「キユーピー株式会社における国産野菜需要への対応と産地への提言」と題し、国際的な傾向、国内での消費者目線、行政の考え方、企業の動向についてお話しいただいた。講演の中で、「企業と生産現場が情報を共有し、工場の設置場所を検討し、その工場の近くに産地を作り物流費を圧縮するなど、流通・情報のインフラを共有していくことで、今後、加工・業務用野菜の国産化が図られるのではないか」との提言があった。また最後に、日本にとって最大の野菜輸入先国である中国の現状についてもお話しいただいた。
村林氏は、「食育の観点からの国産野菜」と題し、相可高等学校における食育の取り組みや、地元の食材を活かした高校生レストラン「まごの店」での活動を中心にお話しいただいた。
「まごの店」では、高校生自らが卸売市場に足を運び食材の調達を行っており、そのことが食材を知り、旬のものを味わうこととなり、ひいては「食育」につながることや、生産者や市場の方と直に会って話すことが「生きた勉強」となり、素材を活かした料理を作ることにつながることなどのお話をいただいた。
セミナーの詳細については、機構ホームページよりご覧ください。
http://www.alic.go.jp/operation/vegetable/stability-exchange.html
来場者アンケートでは、「役に立った」との回答が91パーセントあり、「さまざまな加工を行う業者と出会えた」「カット野菜の予想以上の品質の高さに驚いた」「現物を見ながら情報交換ができた」「今後の時代、方向性を読み取ることができた」「最近の色々な種類の野菜を知ることができた」などのご意見をいただいた。特に「セミナーは非常に参考となった」との声を多数いただいた。
今後出展者に提案して欲しい商品としては、「耐寒性のある軽量の新品種の葉菜」や「総菜用のキット商品」、「地場野菜」、「開催地域ではあまり売られていない野菜」、「加工・業務用に向く野菜」「弁当、総菜などに向く加工メニューの提案(調理法など含む)」などがあった。
(参考)加工・業務用野菜産地と実需者との交流会in 名古屋 出展者一覧 (順不同)
【JA全農/農協】
JA全農ぎふ/JAとぴあ浜松/JA遠州中央/JAあいち経済連/JAひまわり/JA全農み
え/JA三重中央・ベジマルファクトリー/JA三重中央キャベツ、なばな、ブロッコリ
ー部会/JA全農とっとり/高知県園芸連/JAにじ/JAさが/JA鹿児島県経済連
【生産法人・植物工場】
(株)ファームハウスぴぽろ/(農)百姓倶楽部/(株)昭和村農園/(有)安曇野三郷ハイテクファーム/(株)サラダコスモ/かみのほゆず生産組合/(株)不二工芸製作所アグリ事業部/J-そよかぜアグリ推進協議会/東邦産業(株)/(有)大山田農林業公社/(農)忍の里/日本アドバンストアグリ(株)/(株)スプレッド/(有)柴生農園/西地食品(有)/(有)遠赤有機農園/(株)岡林農園/(株)坂田信夫商店/(株)春口農園/(有)コウヤマ/(有)ポテンシャル農業研究所
【流通業者】
飯山中央青果(株)/(株)ヘルスライフ/ハートファーム(株)/(株)井上商店/(株)クロスエイジ/
中九州青果(株)/くまもと とくさん クラブ
【種苗会社】
渡辺採種場/(株)トーホク/カネコ種苗(株)/トキタ種苗(株)/みかど協和(株)/雪印種苗(株)/日本デルモンテ(株)/横浜植木(株)/(株)サカタのタネ/ツルタのタネ/
(株)ナコス/タキイ種苗(株)
【行政・試験研究機関、その他】
いしかわ戦略作物プロジェクト/山県市産業振興課/(独)農研機構野菜茶業研究所/岐
阜県/愛知県/三重県/静岡県/農林水産省東海農政局/FOOD ACTION NIPPON 推
進事務局/(独)農畜産業振興機構
【野菜ビジネス協議会】
野菜ビジネス協議会/(株)アイスクウェア/MCプロデュース(株)/サンポー食品(株)/
(株)清浄野菜普及研究所/キユーピー(株)/名古屋デリカフーズ(株)/(株)三晃
〈交流会に関する問合せ先〉
野菜業務部 契約取引推進課 前川・川口・前田
TEL:03-3583-9818 FAX:03-3583-9484