野菜需給部 需給業務課
平成21年6月29日に、当機構にて、カット野菜の製造・販売を手掛ける株式会社サラダクラブ専務取締役の金井順氏を講師として招き、国内野菜産地と連携した事業の取り組みなどについて講演をいただきましたので、その概要を紹介します。
株式会社サラダクラブは、キユーピー株式会社と三菱商事株式会社の合弁企業として1999年2月24日に創業しました。会社ができて10年と4カ月ということになります。当社の業績は比較的順調に推移しており、2008年にはおよそ100億円の売上げとなっています。
国内では、カット野菜の分野は昔から存在はしていたものの一般に認知度が低かったのですが、創業してまもなく市販用業界で躍進することができました。しかし、世界的な規模でみると、欧米にはそれぞれ大企業が存在しており、米国には売上げが1,000億円を超える企業が存在します。当初は業務用の売り上げ比率は30パーセント、35パーセント程度の時期もありました。現在、売り上げの大半はスーパーを主とする市販用となっています。
加工工場は、直営工場が茨城県(五霞)、東京都(中河原)、兵庫県(伊丹)、岡山県(真庭)、佐賀県(鳥栖)の5工場と、グループ工場、協力工場の4工場を合わせて9工場あります。主力商品は北海道から沖縄までの9工場で製造しています。およそ10,000店前後のスーパーの店舗に私どもの商品が並ぶようになっています。
あくまでも推計値ですが、仮にスーパーで売っている生鮮野菜の売り上げを約2兆円とし、さらにその中の約2パーセント程度がサラダ系のカット野菜だとした場合、350~400億円の売上げになります。一方、米国の市場は、パッケージサラダとカットベジタブルの区分は難しいですが、売上げは少なくとも5,000億円はあるのではないかと考えています。食文化の違いもありますが、やり方によっては日本でも伸びる余地があると考えています。これだけ女性も仕事を持たれると野菜を丸ごと買ってきて最初から全部調理するのはなかなか大変なことですし、一人暮らしやご夫婦二人きりという家庭では使い切りサイズが便利でしょう。また、ゴミの有料化などにより、サラダの簡便性が求められるのではないかと考えています。私見ですが、そういった要素を考えると、全体の2兆円の市場は変わらないとしても、5パーセント位、つまり小売ベースで1,000億円位の市場規模を創出することは日本でも可能だと思っています。
創業して10年で随分日本の売り場も大きくなりましたが、欧州の売り場は日本とは比較にならないほど大きなものとなっています。今よりもさらに2倍、3倍の売り場を作っていこうと色々な工夫をしているところです。
総務省の資料によると、この4、5年で丸ごとの野菜も含めた生鮮野菜の購入費用は右肩下がりになっていますが、逆にサラダで見みると、むしろ消費額は増えているというデータもあり、我々にとっては勇気づけられる資料です。さらに、我々の商品のアピール力があれば、サラダの支出額は増やすことができるのではないかと考えています。
家族の形態は、核家族、一人暮らしが非常に増えています。また、一般的に朝食にかける時間は年々短くなっています。簡便性をアピールすれば、まだ伸びる余地はあると考えています。
商品開発については、少しでも新しいものを皆さんにご紹介したく、ある程度成果が出てきた商品をご紹介させていただきます。
まず最初に青じそを使った「青じそと大根のサラダ」です。青じそをカットして、しっかり洗浄し、サラダの中に入れるのは以外に難しいことで、キユーピー研究所のスタッフにだいぶ協力していただきました。ある程度満足のできるものができたのが今から二年ほど前だと思います。これは地味な商品ですが結構強い支持があり、定番にもなっています。
それから「ほうれんそう」ですが、軟弱系の野菜でなかなか苦労しました。一応まだまだ課題は残っているのですが、ある程度商品として認知されつつあるかなというところです。
それから産地や主要メーカーとの情報交換による開発です。まず、「金美にんじん」です。現在は茨城県や千葉県でも生産しており、すべてが沖縄県産ではありませんが、沖縄県を中心に、初年度は沖縄県のJAさんのご協力を得て出させていただきました。これは多分、もとは中国から入ってきたものだと思うのですが、非常に色が鮮やかで、味も非常にいいことから、恐る恐る出した部分はありますが、このような類の商品としては高い評価をいただいたと思っています。
それから「スダチ」のサラダは、売り上げは期待したほどではありませんでしたが、仲買の方との情報交換や打ち合わせの際の「スダチをハーフカットしてドレッシングの替わりに使ってみるのも面白いのではないか」というアイデアをちょっと拝借しました。
次に、メニューの提案力ですが、「おかずサラダ」があります。こういうことにも今チャレンジしています。コンセプトそのものは間違ってないと思うのですが、やはり売り上げが我々の期待したほどではなかったことから、適宜少し修正を加えながらもう少しお客様に価値観を訴えられるような商品に変えていきたいと思っています。
広報宣伝活動というのは予算の関係もあり、思うようにできない部分も多いのですが、自前で何かできないかということで、ホームページを一年半くらい前に開設しました。そのホームページを活用し、二十代の女性に人気があるブロガーで料理研究家の方とキユーピー広報室の協力も得て、当社の商品を使った簡単なメニューを提案させて頂いています。その結果、我々の自前ホームページのアクセス数は、瞬間的に伸びました。若い女性を取り込む場合には、その世代に人気のある人に協力いただければ、注目を浴びる事ができると実感しました。もちろんアクセス数がそのままの状態で推移しているわけではありませんが、最初の数の二倍くらいのアクセス数は二カ月経っても継続しております。今後も色々な形で野菜の提案をしていきたいと考えています。
また、より具体的なキユーピー本社とサラダクラブの取り組みの一例として、サラダ麺があります。私どもは、サラダなどを提供しているわけですが、店頭で実際に販促しますとかなり反響が多く、売り上げが厳しい時期にある程度カバーできたのはこのような取り組みをしたことの成果もあると思います。一方で、キユーピー本社のドレッシングも期待した以上に数字が出たとのことでした。サラダクラブも、そこそこの規模になってきましたので、野菜の方も含めてグループ全体として、店頭でさまざまなプロモーションができるようになってきたように思います。このような企画はまだ始まったばかりですが、今のところ順調に進んでいるという評価をいただいており、一過性ではなくて今後も継続していきたいと考えています。また、8月31日の「野菜の日」に向けて現在取り組みを考えているところです。
私どもの取り組みは、「第二回国産野菜の生産・利用拡大優良事業者表彰」において、農畜産業振興機構の理事長賞を含め、三つの取り組みのすべてにおいて賞をいただくことができました。ここまでいただけるとは思わなかったのですが、若いスタッフがすごく喜んでくれましたし、また産地の方がものすごく喜んでいただいたことが印象に残っています。産地の方の協力がなければいくらプロモーションを行ってもこのビジネスは成り立ちません。産地の方がやる気を持っていただくのが一番だと思っています。私自身も私の部下もかなり頻繁に産地に伺っており、一緒に産地の取り組みを推進しています。これは必ず今後も継続していきたいと思っています。実際に産地に行き、産地の方の色々な悩み、楽しみなどを時にはお酒を飲みながら聞くことで、我々なりにできるだけ彼らの考え方、将来的に考えていることを的確に捉えるよう努力を続けていきたいと思っています。私としては来期もこういった賞にぜひ応募していきたいと思っています。
全農長野県本部からプレゼントキャンペーンを是非実施したいとの話があり、私どもの商品を購入したお客様の中から抽選で長野県の果物をプレゼントするという企画を実施しています。全農長野県本部からは、従来の市場とのつながりとともに我々サラダクラブのようなメーカーとの付き合いも大事にしていただき、これはもう車の両輪だと思いますが、関係の強化が年々深まっています。
それから国産トレビスについてですが、これはサラダクラブの知名度もまだまだ十分ではありませんが、産地の間では知名度もだいぶ高まってきましたので、できるだけ多くの方に声をかけ、産地を分散し国産化比率を高めていきたいと思っています。
また、それ以外に全農長野県本部や全農群馬県本部の協力を得て、我々のスタッフあるいはキユーピーの方に声をかけ、実際に収穫体験も参加していただいています。全体として評価は高いので継続していきたいと思っています。
国産野菜の消費拡大を語るというのはなかなか大きなテーマなので、今回は事例紹介をしました。今後も我々としては、国内の産地を最優先し、輸入物を積極的に使用することは考えていません。鮮度と信頼感がその理由です。いつ何時、万一のことがあっても、その日のうちに飛んでいけるというのは、我々メーカーにとっても安心感がありますし、当然、消費者の方にとっても国産中心のサラダクラブに対する信頼感は、これからもっと強くなるのではないかと考えています。
1977年 三菱商事株式会社の食品第二部入社。米国三菱商事シアトル支店へ転勤し、主として原料及び食品の対日輸出および三国間取引担当
1995年 米国から帰国。生活産業グループ内食品本部に配属となり、主に青果物の輸入および新規事業開発を担当
1999年 キユーピー株式会社との合弁企業である株式会社サラダクラブ設立に伴い同社常務として出向。現在は専務取締役