野菜需給部 需給業務課
平成21年1月30日に、機構にて、長野県でレタスなどの契約取引を先導的に実施している有限会社トップリバー代表取締役社長嶋崎秀樹氏を講師として招き、講演をいただきましたので、その概要を紹介いたします。
トップリバーは長野県の北佐久郡という軽井沢の隣の町に事務所を構えています。産地は、北佐久郡と南佐久郡にあり、取り扱っている野菜は98%がレタス、はくさい、キャベツで、その他は、ブロッコリーやほうれんそうなどです。出荷時期は5月の連休後から11月初旬までとなり、昨年は93万ケースを出荷しました。今年の目標は102万ケースです。得意先は40~50社あり、そのうち加工業務用の取引先が80~90%を占め、契約による取引を行っています。
トップリバーが大切にしているのは、「販売」と「人材育成」です。まず、「販売」では、専属の営業が3名います。農業生産法人に専門の営業がいるということは非常に珍しいことですが、これはとても大事なことだと考えています。農業以外の分野では、生産者に価格の決定権がありますが、農業にはないというのは、生産者が負けてしまう一つの要因だと考えているからです。営業が契約取引に係る事務を行い、しっかりとマネージメントしますので、トップリバーはこれだけの規模を維持できています。
トップリバーがなぜ契約取引で規模が大きくなってきたかというと、お客さんの欲しいものを作っていることが一つの要因となっています。スーパーなどはどうしても見た目を重視しますが、加工業務では、歩留まりが重要になってきます。例えば、レタスでは、市場経由でスーパーなどに行く場合、1つの段ボールの中に大きさLのレタスで16玉が好まれますが、加工業務では、歩留まりが重要となるので、大きい玉が好まれます。そのため、トップリバーでは、1つの段ボールに12玉の大玉で対応しています。つまり、得意先によって欲しいものが違うということをトップリバーでは社員に教え、実行しています。また、欠品を出しません。大手コンビニの言葉に「当方の品質の一番は安定供給です。」という言葉がありました。つまり、契約の遵守こそ大事なのです。たとえ市場で高値がついていようが、契約者に対して契約したケースを契約した価格できちんと出荷するということです。これは実はとても大変なことです。夏場のはくさいが良い例ですが、痛みが早いこの時期に毎日契約した数量のケースを出すということはなかなかできるものではありません。トップリバーでは、あらゆる情報をもとにいつ播種をするべきか、どのくらい播種するべきかをパソコンで管理しています。そして、契約をできる限り遵守するために、不足時には外部から購入することもあります。そしてここから生まれる信頼関係こそが、契約取引を続けるに当たり何より大事だと考えています。
もう一つトップリバーが力を入れているのは、「人材育成」です。
日本の農業は現在高齢化にあります。あと5年、10年経ったときどのくらいの人が農業を続けていられるでしょうか。10人が農業を止めたら、2~3人でそれを担っていかないといけないのです。2~3人で担うということは大規模生産者にならないわけにはいきません。その面積を担うためには、機械化と人を雇うことが必要になります。トップリバーでは、人を雇うことができるリーダーとなる人材の育成に力を入れています。経営者比率でいいますと、現在の日本の典型的な家族で経営している場合、経営者である父に対して、1名の雇用者の母といった、経営者比率50%の形態が多いです。しかし、農業で利益を得るには、経営者比率が25%くらい、つまり1人に対して3人の雇用者がいるくらいがいいのです。ですから、リーダーとリーダーの片腕になる人、そしてそれ以外の人で担っていくのが理想です。3ヘクタールなら大体6人でやっていく、そのくらいがちょうどいいと思っています。
そして、人材育成で大事なのは、若者に目標を持たせるということです。トップリバーでは研修を1週間、1カ月、3カ月と設けていますが、3カ月を終えた時点で特別な理由がない限り辞めていく人はいません。研修も単に歯車の一つとしてやらせるのではなく、目標をもってやらせることが大事です。トップリバーでは、毎年、今年の目標、2年、3年先の目標、5年先の目標を書いてもらいます。そして、スタッフがその実現のために皆で協力、支援しています。そして、たとえ不作であった年であったとしても、約束した給料はきちんと払ってあげることです。トップリバーでは、今後の農業を本気で担う若者の育成に関してはどこにも負けないと思っています。
今の日本の農業、今後の日本の農業にはこのようなリーダー格の存在とリーダーを中心とした組織農業が大事だと思っています。米作では集落農業が進められて来ましたが、野菜でも必要だと思っています。集団を形成して利益を上げていく、これが全国に広がっていったとき、農業の全体的な地位の向上につながると考えています。そして、大学を卒業した若者が、就職活動の活動先として名を挙げるようにしたいと思っています。