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「加工・業務用野菜産地と実需者との交流会」 (東京)の概要について

野菜業務部 契約取引推進課
調査情報部 情報課


 加工・業務用の野菜生産に取り組む産地と外食・加工、小売業などの野菜を取り扱う実需者が一堂に会して交流・商談を行う「加工・業務用野菜産地と実需者との交流会」が1月28日に東京で開催された。今回の交流会は本年度最後の開催であったが、出荷団体、農業生産法人、種苗会社、流通業者および行政・研究機関などから総勢59もの出展が行われた。

 会場となった東京都立産業貿易センターには約550人もの来場者があり、活発な商談や情報の交換が行われた。また、同じ会場の一角では、産地と実需者との交流を促進するための事例の紹介の「マッチング促進セミナー」や出展者が来場者に自慢の野菜をアピールする「ショート・プレゼンテーション」も行われた。

◆ 各出展者ブースの概要

 各出展者のブースでは、ねぎ、はくさい、だいこんといった今が旬の野菜のほか、乾燥、冷凍、袋詰と多彩な加工が施された野菜や海外原産の新顔野菜、地域伝統野菜など、多種多様な野菜の展示が行われた。

 中でも、加工用として収穫作業や加工処理の省力化が期待できる通常より大きいサイズのにんじんやほうれんそう、糖度が高く高級洋菓子店のケーキにも使用されているミニトマト、葉肉が厚く鍋ものの具材としても使えるレタス、この時期としては珍しい真冬の北海道で収穫されたアスパラガス-などの野菜は、ひときわ来場者の関心を集めいていた。



展示された色とりどりの野菜の数々



食べ方やレシピの提案も好評



真冬の北海道産アスパラガス

加工処理を行いサイズを表示した野菜

◆ 出展者や来場者の声

 ある出展者は、「今までは麦中心の産地作りを行ってきたが、今後、徐々に加工・業務用の野菜の生産に切り替えて行く」と話していた。現在6ヘクタールの規模で加工用のにんじんの生産を行っているが、将来的には面積を30ヘクタールにまで拡大する予定であり、地元の農業生産法人にも生産を呼びかけているという。また、加工用のにんじんを選んだ理由は、生産にさほど手間はかからず、契約取引による安定した収入も見込まれることにあるといい、課題はどの程度まで機械化が図れるかにあると話していた。

 一方、来場者からは、「ユーザーの国産嗜好は強まる傾向にあるが、安定した量の供給が可能な産地の確保に苦慮している。産地側に望むことは、規格外品でも構わないので、安定した量の供給を望む」といった話が聞かれた。

◆ 交流促進マッチングセミナー

 今回の交流会では、二つのテーマによるセミナーが開催された。いずれのセミナーも会場は沢山の参加者で満員となり、関心の高さがうかがえた。

 <サラダクラブと国内野菜産地との取り組み>

 最初に、株式会社サラダクラブ専務取締役の金井氏から、「サラダクラブと国内野菜産地との取り組み」と題して、国産野菜の利用拡大に向けた同社の取り組みについて発表が行われた。その中では、現在、株式会社サラダクラブが取り扱う野菜の97%は国産であり、パプリカやトレビス、ラディッシュなど、国産による安定した量の確保が困難な野菜の一部は輸入もので補っているが、海外からの輸送途中における品質の劣化などから、今後とも国産ものの利用の拡大に努めたいとの話があった。そのほか、同社にとって理想的な国内産地の立地条件とは、野菜の鮮度保持の観点から全国9カ所のカット野菜製造工場までの輸送時間があまりかからない産地であること、また、ラディッシュのように比較的国内生産量の少ない野菜の場合は、天候不順などの影響によるリスクを回避するため、分散した産地の確保が重要であること、さらに、社員の収穫体験研修などを通じた産地との交流が、企業と産地間におけるお互いの理解に役立つこと-などについて発表が行われた。

 <農業生産法人の設立と農場運営・販売戦略>

 次に、株式会社イトーヨーカ堂の執行役員販売事業部長であり、株式会社セブンファーム富里の代表取締役である戸井氏から、「農業生産法人の設立と農場運営・販売戦略」と題して、小売業者が農業生産法人を立ち上げた理由とこの先の運営の考え方について発表が行われた。この中では、当初は、生産者との契約によるリサイクル・ループの構築を想定していたが、生産者の信頼と安心感を得るために農協も含めた3者による農業生産法人の設立となった経緯や、企業が農業に参入して組織を運営していくには、代金の決済や経理処理などをガラス張りにした上で、生産は生産者、販売は企業といったお互い得意な分野を担当するなど、分業と協業を明確にした運営を心がけることが重要であるとの発表が行われた。そのほか、野菜の販売においては、「この店から出た食品残さをたい肥化して、そのたい肥をほ場に還元して生産した野菜が、天候の影響により規格外品となった」というようなストーリー性を持たせて販売すれば、規格外品でも消費者は納得して通常の規格外品の価格よりも高い価格で購入し、生産者には喜ばれ、売る方も販売に対する意識が変わってくるといったことや、子供たちをほ場に連れて行き、間引きや収穫作業を体験させることが無駄を出したり、粗末にしてはいけないという意識を育てることに役立ち、食育にもつながるといった発表が行われた。



ショート・プレゼンテーションの様子

セミナー講演の様子

◆ さいごに

 今回の交流会について来場者にアンケート調査を行ったところ、「今回の交流会は役に立ちましたか」との問に対して、回答者の93%の方から「役に立った」との回答が寄せられた。役に立った具体的な内容としては、「情報交換ができた」、「参考となる情報が得られた」などの回答が多かった。

 また、「食べ方の提案が良かった」、「新商品のアイデアのヒントを得られた」、「特徴ある青果物、新品種の展示があった」といった意見もあった。
また、交流会の運営に関する意見としては、「定期的な開催を希望する」、「生産法人における契約取引について知りたい」、「時間を延長して欲しい」といった意見が寄せられ、今後の運営に当たっては、これらの意見を踏まえ、さらに改善すべき点は改善しつつ、今後とも継続的に生産者と食品メーカー、外食業者、流通業者など実需者との交流・商談の場を提供し、加工・業務用野菜の国内生産の拡大につなげていきたい。

【交流会に関する問い合わせ先】
野菜業務部 契約取引推進課
(河原、薄井、吉田)
TEL 03-3583-9816~9
FAX 03-3583-9484



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