[本文へジャンプ]

文字サイズ
  • 標準
  • 大きく
お問い合わせ

機構から


加工・業務用野菜産地と実需者との交流会の概要について

野菜業務部 契約取引推進課 調査情報部 情報課



 当機構は、需要が増加している加工・業務用野菜の国内生産を拡大するため、11月18日に東京都港区浜松町の東京都立産業貿易センターで生産者、食品メーカー・外食業者、流通業者などの実需者が一堂に会して商談・交流を行う「加工・業務用野菜産地と実需者との交流会」を開催した。

 今回の交流会は、昨年に引き続き、外食産業への外食向け野菜の提案の場を設けることを目的に、社団法人日本フードサービス協会(JF)主催の「JFフードサービスバイヤーズ商談会」と併せて開催した。

 JFの商談会には、食品企業、出荷団体、行政機関など56の者からの出展があり、当機構の交流会には、全農、農協、農事組合法人など12の者からの出展があった。また、同時にセミナーが開催され、最近の国際的な穀物需給の逼迫、食料価格の高騰が外食産業などの実需者に大きな影響を及ぼしていることを背景に、日清オイリオグループ株式会社から「穀物・油脂等の需給動向と食材仕入・調達への影響」について、日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社から「食材価格高騰とその後の下落への対応」について、情報提供が行われた。

 商談会・交流会には、外食・中食・流通業者を中心に総勢で1,631名の参加があり、会場内で活発な情報・意見の交換が行われた。


 商談会・交流会への期待

 交流会は、主催者のあいさつで幕が開けられた。はじめに、JFの田沼会長から、「国内の産地に行くたびに、地元のすばらしい食材との出会いに感動している。一方で、常日頃から安全・安心を心がけ努力しているものの、昨今の食の不祥事については残念な思いである。今後は、食と農、畜産、水産の連携をより強化し、産地とバイヤーが一緒に、より安心できる食の提供を行っていきたい」、また、当機構の木下理事長から、「輸入食品の安全性に関連してさまざまな事件が発生したことから、実需者の中で国産品へのニーズが高まってきている。この交流会で外食・中食業者と野菜産地が連携強化のきっかけをつかむことができれば、大変有意義である」とのあいさつがあった。そして、農林水産省総合食料局食品産業振興課外食産業室の青山室長から、「このような食に関わる人々が一堂に会して交流する取り組みは、食料自給率向上に向けた非常に意義のある活動である」とのあいさつがあった。



田沼会長のあいさつの様子

木下理事長のあいさつの様子

 加工・業務用野菜特別ブース

 交流会の出展者のブースでは、キャベツ、だいこん、はくさい、ねぎ、ほうれんそうなどこれからの季節、需要が期待される野菜の展示が多く見られた。キャベツは甘さなどの食味を、だいこんは煮くずれしにくいなどの特性を、ねぎは食味と併せて規格外品としての用途の提案など加工・業務用を意識した出展の数々であった。また、愛知県経済連の色とりどりのトマト、遠州中央農協の特産の海老芋、全農埼玉県本部の甘みのあるばれいしょ、全農長野県本部の甘くて業務用向きの細長い形状をしたパプリカなどは来場者の関心を呼び出展者もPRに余念がなかった。


ひときわ目をひいた色とりどりのトマト

野菜の展示

 特色のあるPRの数々

 出展者によるPRも様々であり、調理方法や試食といった「素材」のPRにとどまらず、かんきつ類などの加工品や千両、南天、銀杏の葉などのつまものとの「セット」によるPRや高温加熱蒸気による素材を生かした温野菜や海水を散布して栽培したねぎなどの「技術」のPR、あるいは、標高差を利用した長期間にわたる出荷や全国に点在する産地間のリレー出荷による「供給力」のPR、さらには、野菜アイスや野菜ワインなど新たな「用途」のPRなどPRにも様々な特色がうかがえた。

 また、ある卸売業者は、産地との強いつながりに基づく品揃えと低温管理施設による数量調整機能およびコールドチェーン化、さらにはカット工場、パッケージセンターを活用した実需者の要望に応じたカット野菜の製造など、加工・業務用向けに安定した商品の供給力をPRしていた。



調理方法を熱心に聞く来場者

試食の様子



実需者の要望に沿ったカット野菜

「つまもの」の展示

 時代を反映した取り組みのPR

 様々なPRの中でも時代に沿ったものの一つに、環境に配慮した取り組みのPRがある。ある出荷団体は、天敵を利用して農薬の使用回数を減らすことによる人体や環境にやさしい野菜の生産の取り組みをPRしていた。また、ある農業生産法人の代表者は、木くずや雑草、食品残渣、家畜排せつ物などの廃棄物を原料にしたたい肥の生産から、そのたい肥を利用した土作り、野菜の生産・販売にいたる循環型の野菜の生産についてPRしていた。

 出展者・来場者の意見

 会場では、交流会に参加した出展者や来場者からさまざまな意見が聞かれた。

 出展者からは、「一度に多数の仕入れ担当者と直接商談ができる機会は滅多になく、色々な業種のニーズや生の情報を聞けるのがよい」、「産地としても、今が国産野菜を売り込むチャンスととらえており、このような機会を利用して少しでも販路を広げていきたい」、「ただ単に野菜を陳列するだけではなく、他とは違った何かを付加してアピールしないと売れない時代である」などといった意見が聞かれた。中には「来場者が見向きもしてくれない」とPRに苦慮している出展者もいたが、やはり品数が多く、試食を行っているブースは人気があるようであった。また、「ただでさえ産地は高齢化により生産量は減少傾向にある中で、今回の原油価格や資材費、肥料代の高騰は生産者にとって打撃が大きく、産地の存続が危ぶまれている」と産地の将来に危機感を訴える農協の担当者もいた。

 一方、来場者からは、「消費者の国産野菜に対するニーズは高まってきている。国産野菜の取り扱いを増やしたいと考えているが、国内の産地を開拓するのは大変である。このような催しは我々にとって大変ありがたい」、「もっと変わった品種の野菜が見られるのかと思ってきたが、意外と少なかった」などといった意見も聞かれた。ある種苗会社の担当者は、「種のエンドユーザーは生産者であり、生産者がもっと活気に満ちて元気な状況にならないと種の市場の拡大にはつながらない」と、野菜産地の活性化に期待を寄せていた。



来場者の質問に答える出展者

活発な情報交換の様子

 加工・業務用向けへの取り組みについて

 出展者に、産地における加工・業務用需要に対する取り組みについて聞いてみたところ、国産野菜へのニーズの高まりや生産者の経営安定の観点から、出展者の多くは加工・業務用向けの取扱数量を徐々に増やしていきたいとの意向を持っているようではあるが、ある出展者は、「生産者は市場に出荷した方が価格の面で有利との固定観念が強く、加工・業務用への転換が思うように進まない」と生産者の意識改革の必要性を説いていた。また、「商談は行うが、契約内容の詰めの段階で契約数量や価格などの条件面で折り合わず契約まで至らない場合が多い」と契約が成立するまでの難しさを訴える声が多く聞かれた。契約が成立しない要因はさまざまであろうが、要因の一つにコストの問題もあるようだ。特に物流のコストについて、「既存の市場向け以外の新たなルートへの配送となるとコスト的に問題がある」という声はたくさん聞かれた。ある出展者は、契約取引を推進する上の一つの策として、「例えばキャベツにおいては、鉄製コンテナの普及がコスト削減および作業の効率化につながり効果的ではないか」と経験も交え感想を語っていた。また、「生産全量について契約取引を望む農協も中にはあるが、契約取引に対して認識が甘い面も見受けられる。契約取引と市場出荷のバランスが重要と考える」との意見も聞かれた。さらに、「契約取引を推進していく上で、産地をとりまとめる人材の育成が何よりも重要ではないか」といった意見も聞かれた。

 さいごに

 来場者に今回の交流会についてアンケート調査を行ったところ、「今回の交流会は役に立ちましたか」との問に対して、回答者の90%の方から「役に立った」との回答が寄せられた。役に立った具体的な内容としては、「生産者との接点が持てた」、「取引につながる情報が得られた」などの回答が多かった。また、出展者の各ブースについては、「伝統野菜や特産品などを紹介してほしい」、「冷凍野菜の提案がほしい」といった意見があり、出展者から提供された情報の内容については、「購入価格の具体的な提案がほしい」、「品名、用途などをもっとわかりやすく明示してほしい」といった意見があった。また、交流会の運営に関する意見としては、「加工・業務用野菜のコーナーが狭かった」、「全国各都道府県の農産物の紹介を増やしてほしい」、「実演の煙やにおいが気になるので会場の換気を考えて欲しい」などといった意見が寄せられた。なお、今後の交流会の運営に当たっては、これらの意見を踏まえ、今後とも継続的に生産者と食品メーカー、外食業者、流通業者など実需者との商談・交流の場を提供することにより、加工・業務用野菜の国内生産の拡大につなげたい。

【交流会に関する問い合わせ先】
野菜業務部 契約取引推進課
(河原、薄井、吉田)
TEL 03-3583-9816~9
FAX 03-3583-9484



元のページへ戻る


このページのトップへ