調査情報部 調査情報第二課
◆用途に応じた多様な加工・業務用向け品種
今回のブース出展では種苗会社から加工・業務用向けの品種として、サラダに使える色鮮やかなレタス、外葉が小さく芯が短いのでロスの少ないキャベツの新品種、生産者の作業効率が向上できるへたにトゲがない“なす”、イボがなく皮が薄くえぐみがないあっさりした“きゅうり”、辛さが抑えられ炒めてお酒の“つまみ”として相性の良いとうがらし、通常のトマトよりも甘みと栄養価があるトマト、それぞれの用途に応じた多くの野菜が紹介された。
また、種苗会社の担当者は、「今回の出展の目的は、実需者である市場関係者や食品加工、外食産業のバイヤーと情報交換を行い、どのようなニーズがあるのかを調査するうえで有効であり、最終的には、実需者と種苗会社、さらに産地を含めた連携をしていくことが大切である」、「さまざまな用途の品種を紹介するだけでなく、新しい調理法を実需者に紹介して需要を拡大していくことも、今後の市場拡販に対する種苗会社の役割である」と語っていた。
◆伝統野菜や地域特産野菜の紹介と国内産地の積極的プロモーション
農業生産法人や生産者団体、市場関係者のブースでは産地の主要品目や伝統野菜、野菜の機能性の紹介の他に、加工・業務用向けの野菜生産や、安心安全な野菜生産の取り組みを積極的に行っている展示ブースが目立った。
伝統野菜としては、JA大阪泉州の水なすの漬物、卸売業者による各種京野菜やなにわの伝統野菜、石川県の地域特産野菜などが出展した。各地の伝統野菜は多くの来場者の目を引いていたが、各展示者からは地域特産野菜については、ロットの確保が難しいことが課題との声が聞かれた。
ある生産者団体の担当者は、「一般家庭で消費する野菜は頭打ちになっている。これからは、いかに業務用向けに販売できるかが、我々生産者が生き残れるかの鍵となる。昨今では、安心安全な野菜を求める消費者のニーズが出てきており、今がチャンスなのでこの交流会を活かして販路を探したい」と語っていた。
堆肥を利用し、減農薬栽培に取り組んでいる生産者は、「農薬と化学肥料をできる限り使わずに、土づくりにこだわることで、おいしく栄養価の高い野菜ができるので、これからは、それを売りにして認知度を上げていきたい」と語っていた。農業生産法人の担当者からは、「これからの生産者は、野菜を作るだけでなく、いかに特色のある野菜を企画販売するかを考えなければならない。そのためにも、インターネット通販などの販売方法や特色のある包装方法やデザイン性を大切にして他とは違う販売方法を模索して拡販したい」との話があった。
◆出展者によるショートプレゼンテーションの実施
今回の交流会ではブースの展示に加えて出展者によるショートプレゼンテーションが開催された。ショート・プレゼンテーションは、生産者団体、農業生産法人、種苗会社により行われた。JA遠州中央からは、産地の特徴を活かして、チンゲンサイやタアサイなどの中国から導入した野菜の生産を始めた経緯や、周年出荷できる安定供給面、さらに、これらの地域特産野菜の調理方法の紹介、淡路島でたまねぎなどの栽培に取り組んでいる有限会社新家青果からは、地域の特産品の紹介やたまねぎにおける加工・業務用向け、スーパー向けの規格の紹介の他、自社農園で行っている有機栽培などの安心安全に向けた生産体制について説明があった。さらに、種苗会社の株式会社トーホクからは、加工・業務用やスーパー向けなど、用途に適した特徴のある品種が紹介された。
最後に当機構からは、契約野菜安定供給事業の制度説明を行い、また、ブースでは、同事業について個別対応で説明を行うとともに各種パンフレットを配布し、事業等の紹介を行った。さらに、インターネットで野菜に関するさまざまな情報を入手できる「ベジ探」の機能説明、各種データの検索方法及び、本誌「今月の野菜」の紹介などを行った。
◆この交流会をきっかけに需要を掘り起こし、拡販につなげたい
当日は、開場直後からたくさんの来場者が訪れ、産地の人々に対して熱心な質問や名刺交換を行っていた。
生産者側の方々からは、「現在は、野菜を作っても客のニーズに合わないと売れない時代。市場関係者や外食産業などの実需者、究極的には消費者の求めるものを作らないと自分たちが作った野菜は売れない。そのためにも、この交流会を通じて、自分達の特徴のある野菜をPRして、需要を掘り起こし、拡販につなげていきたい」、「これまでは、産地が東日本にあるため、販売も東日本が主であったが、西日本にある実需者への認知度を上げるために、私たちの産地でできた栄養価の高い野菜をここ大阪でアピールしたい」、さらに、「この交流会は、他で開催されている食品展示会と異なり、我々がターゲットにしている外食産業や加工業者などに参加者が限定されているため、集中してPRできるのが良いところ。しかし、このような展示会はあくまで、実需者と触れる最初の段階であるだけで、契約に結びつけるためには次のステップを考えなければ意味がない」との声が聞かれ、各出展者の加工・業務向け野菜への熱心な取り組み姿勢が印象深かった。
一方、実需者の意見を聞くと、ある漬物会社の担当者は、「食の安心安全が求められているため、現在では、ほとんど国内産の野菜を使用している。この交流会では、知らなかった産地や、その地域特有の栽培方法を学ぶことができるのでよい機会だった」、さらに、外食産業の担当者は、「現在は、卸売会社から国内産の野菜を調達しているが、これまでどのような産地があるのか、どのような栽培方法で野菜を作っているのかについて知る機会が少なかったので、それを学ぶために今回の交流会に足を運んだ」と語っていた。
また、社内で野菜の通販部門に携わる卸売会社の関係者からは、「最近では、野菜のインターネット通販を行う会社が多くなりライバル会社との競争が激しくなっている。我々の仕事は、特色のある野菜の食味とか、デザイン性のある包装をした野菜など、他社よりいち早く斬新な情報を入手することが大切で、ある意味、情報という付加価値をインターネットを通じてお客に提供している。そのため、産地の情報や特徴のある栽培方法で作られた野菜など、新しい情報を入手するうえで、この交流会は大変有効である」とのコメントがあった。