調査情報部 調査情報第二課
◆国内野菜産地と食品産業との連携を促進
今回の交流会ではブースの展示に加えて加工・業務用野菜マッチングセミナー及び出展者によるショートプレゼンテーションが開催された。
加工・業務用野菜マッチングセミナーでは、株式会社アイエー・フーズグループ取締役相談役の黒澤賢治氏が、「これからのJA販売事業と実需者との連携について」と題し、JA甘楽富岡営農事業本部で経験された事例を挙げ、JAの現状と今後の課題についての提言をされた。JA間での産地間競争が潜在的に存在し、そのすき間に輸入農産物が入荷し価格を武器に国内に定着し、最終的には産地が崩壊している事例が多く見られる現状から、市場出荷を前提とした生産体制からの脱却を図り、今後は実需者の要望に応えるために組合員の人材育成をし、産地間連携を図るなどの業務連携することが重要であると述べた。
また、株式会社ロック・フィールド購買部マネージャーの田中秀幸氏は、「国産素材を活用したお惣菜の推進について」と題して、主に卸売市場から原料を調達していた従来のシステムから国内産地との契約取引による原材料調達への転換に至った経緯や、契約取引における産地との取り組みについて説明した。
さらに、(1)「生産者の顔が見える素材」として、安心、安全な原料調達のため、産地との連携を図り取り組むことが大切である。(2)「新しい野菜の発見」として、食の多様化に伴い、これからは消費者の需要を意識し、産地、種苗会社と意見交換しながら新しい野菜を開発し、メニューへの導入を図る。(3)「フードマイレージ」として、輸入農産物が、輸送に係るエネルギーを考えると環境に与える負荷があるため、産地直送や地産地消の重要になっており、そのため、(4)「ローカル」として、どのように作ったのかというよりも、どのように輸送されているのかを考える必要があることの4点がロック・フィールドの課題であると締めくくった。(マッチングセミナーの講演録は、後日、機構のホームページ「野菜の情報」(http://vegetable.alic.go.jp/)に掲載する予定です。)
出展者によるショート・プレゼンテーションは、生産者団体、農業生産法人、種苗会社、卸売業者により行われた。
和歌山県農業協同組合連合会からは、さやえんどう、新しょうが、山椒、梅などの主要生産品目の紹介だけでなく、安全・安心への取り組みとして、生産履歴の記帳、残留農薬の検査への取り組みについてPRがあった。
有限会社トップリバーからは、農業生産法人としての生産体制、流通形態、法人構成員の担い手育成などの取り組みについての紹介があった。
各種苗会社からは、加工・業務用に適した特徴のある品種が紹介された。さらに、東京シティ青果株式会社からは、全国各地の産地と実需者との橋渡しとなる流通コーディネーターとしての役割など具体的な取り組みが紹介された。
当機構からは、ショートプレゼンテーションで契約野菜安定供給事業の制度説明を行い、また、ブースにおいては、契約野菜事業について個別対応で説明を行うとともに、インターネットで野菜の情報を入手できる「ベジ探」(野菜情報総合把握システム)の機能説明、各種データの検索方法などを紹介した。同時に各種パンフレットの配布を行った。
当日は、開場直後からたくさんの来場者が訪れ、産地の人々に対して熱心な質問や名刺交換を行っているのが目についた。生産者側の方々に話しを聞くと、実需者の方々から直接話を聞くことで勉強にもなり、取引のきっかけができたという声が多かった。一方、実需者からは扱いにくいという理由で流通に乗らないめずらしく、美味しい野菜を種苗メーカーのブースで発見できたのでこれからのメニュー開発の参考にしたいとの意見等も聞かれた。
また、来場者から今回の交流会に関するアンケート調査を行ったところ、「今後の取引等の手助けになりましたか」との質問に対し、約90%の回答者から役に立ったとの結果があった。また、次回以降に希望するテーマとしては、「地域特産品」、「新種の野菜の紹介」、「特別栽培・有機などのこだわり産物」の回答があり、一方、交流会に関する要望・意見の回答としては、「セミナーの講演内容が良かった」、「継続して実施してほしい」、「プレゼン・セミナーコーナーと展示ブースを別会場にした方がよい。」、「出展者を増やしてほしい。」などの結果があった。
当機構としては、本年11月に東京の第2回目と大阪で開催(次ページの案内参照)を予定しており、今後ともこのような実取引に結びつくイベントその他に取り組み、国産野菜の振興、実需者への安定供給につなげていきたいと考えている。