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学校給食における地産地消の推進に向けての優良事例調査結果について(2)  

企画調整部 広報消費者課


 当機構で実施した「学校給食における地産地消の推進に向けての優良事例の調査結果」を先月号から2回に分けて掲載しており、今月号では愛知県常滑市(常滑市北学校給食共同調理場、JAあいち知多)、愛知県豊田市(豊田市教育委員会、JAあいち豊田)の2ヶ所の学校給食における地場農産物の利用状況を紹介します。



Ⅰ 愛知県常滑市の事例

○調査対象
常滑市北学校給食共同調理場、あいち知多農業協同組合(JAあいち知多)
○調査日
平成19年2月15日
○概要
愛知県常滑市における学校給食への地場農産物の提供活動についての調査を行った。常滑市の小・中・幼稚園等(全33校)の学校給食については、南北2ヶ所の学校給食センターから提供されている。地場農産物以外の農産物は、基本的には地元青果業者から供給されているが、地場農産物については、納入業者として指定されているJAあいち知多(特販課)から供給されている。

図1 愛知県内市町村図



表1 常滑市の農業概要


資料 農林水産省「生産農業所得統計(平成17年)」
「2000年農業センサス」

1 地域の概要について
① 常滑市は知多半島の西海岸に位置し、海抜60m~80m程度の南北に細長い丘陵地である。

② 人口は約5万人、気候は年間を通じて温暖で適度の雨量があり、露地野菜(キャベツ、たまねぎ、フキ)、果物(巨峰、いちじく)等の栽培が盛んである。また、漁業も盛んで、魚の宝庫といわれる伊勢湾から多種類の魚が獲れ、のりの養殖も行われている。

③ 常滑市内の農業協同組合については、JAあいち知多がある。

④ 常滑市の農業産出額(平成17年)は48億円であり、米は7億円(13.7%)、野菜は4億円(8.0%)、畜産は29億円(59.9%)を占めている。また、総農家数に占める専業農家数の割合(平成17年)は13.3%であり、基幹的農業従事者(自営農業に主として従事した世帯員のうち、普段の主な状態が農業である者)に占める65歳未満の割合(平成17年)は40.8%である。

2 学校給食における地産地消について
(1) 取り組みの目的
【常滑市北学校給食共同調理場】
① 常滑市や知多半島の農産物を活用して地域の特色を活かした献立の多様化を図ることにより、食に関する指導に活かす。

② 児童・生徒に食料の生産・流通・消費についての理解を深めさせる。

【JAあいち知多】
  従来型の市場出荷に加え、JAあいち知多管内の農産物について、地域の農産物は地域で消費してもらうという視点からの取り組み(地産地消)を通じ、食育の推進と地域農業への理解の醸成を図る。

(2) 取り組みの経緯
  JAあいち知多は、第2次中期経営計画(平成16年度~18年度)の重点課題項目として地産地消の推進を掲げ、平成16年度には市場外流通の専門部署として営農部特販課を設置し、本格的に学校給食への取り組みを開始した。

  また、常滑市北学校給食共同調理場も、地産地消の取り組みについて以前から関心を持っていたが、JAあいち知多の供給体制が整ったことを受け、平成16年6月から、学校給食に地場農産物を使用する取り組みを本格的に開始した。

  開始当初は、調理場が指定する方法で地場農産物をJAから直接納入することは困難だったが、JAあいち知多が配送業務を外部委託することで円滑な供給が可能となった。
  現在では、通常献立への導入のほか、学校給食週間(毎年1月)において積極的に地場農産物を利用したり、夏休みの親子料理教室での献立に取り入れたりしている。

(3) 取り組みの概要
  学校給食への農産物は、基本的には入札制度により地元青果業者から供給されているが、地場農産物については、納入業者としてJAあいち知多(特販課)を指定し、南北2ヶ所の学校給食センター(常滑市北学校給食共同調理場及び常滑市南学校給食共同調理場、供給先は常滑市内の小・中・幼稚園等(全33校))に供給されている。

 JAあいち知多は、地場農産物を営農部特販課がJA各営農センターから集荷した上で、外部委託した配送業者を通じて学校給食センターへ納入している。

  常滑市北学校給食共同調理場は、事前に作成した献立案に基づき食材として希望する地場農産物の品名、量等をJAあいち知多に連絡し、それを受けたJAあいち知多は、各作物担当者との確認を通じて地場農産物の見積書を提出し、落札された品目を納入することとなるが、その過程においては、担当者同士が緊密に連絡を取りつつ、需給のミスマッチを解消している。

  生徒・児童や家庭に対する普及啓発活動も盛んであり、平成18年度の学校給食週間の取り組みとして『育もう!食で「こころとからだSmile」』等の各種ポスター等の学校への配布や、地場農産物を使用した料理レシピを各家庭より募集して献立に取り入れたり、毎月の「常滑市給食だより」の配布といった活動を展開している。また、JAあいち知多においては、「知多半島の野菜、果物を使ったレシピ集」を作成・配布し、知多半島の主要な農産物(水稲、ふき、たまねぎ、キャベツ等)を使った料理や収穫時期等を紹介するといった活動に取り組んでいる。

  なお、個々の地場農産物の学校給食センターへの調達価格は、過去・現在の市況や、配送費(外部委託)を加味して決定されている。

  また、地場農産物を利用した加工品(冷凍みかん、カット野菜等)については、JAあいち知多から調達された地場農産物を原料とし、県内及びJAあいち知多所管の加工場(げんきの郷あぐり工房)において製造・供給されている。

図2 地場農産物の学校給食への調達システム(常滑市)


(4) 取り組みの効果
  平成18年度には、愛知県に地産地消の推進等を担当する食育推進課が設置される中、生徒・児童からは「地場農産物を使用した学校給食はおいしい」との声が多くあがっており、学校栄養職員による学校給食の場における地場農産物の普及・啓発と相まって、生徒・児童・家庭による地場農産物や地域産業への興味・関心の向上が図られている。

(5) 現在の課題と今後の展開方向
  学校給食の食材として提供される地場農産物は、大量調理を円滑に行う観点から、学校給食センターの要望により供給サイズの規格を設定しているが、生産者側としては規格による制限を強化すると必要量の確保・提供が難しくなることを懸念している。

  また、学校給食週間(毎年1月)時には地場農産物の利用が積極的に進められているが、生産者側にとってみると、例年1月は、品目によっては出荷量・価格等が非常に不安定な時期であることに加え、県内の他地域でも地場農産物への需要が集中することにより、地場農産物の確保・提供が難しくなるケースもある。

  このような実情を踏まえ、JAあいち知多では、地場農産物を原料とした新たな加工品(冷凍食品等)の開発を通じた学校給食への安定供給の取り組みを模索しており、このような動きについて学校給食側も期待を寄せている。


Ⅱ 愛知県豊田市の事例


○調査対象
豊田市教育委員会、あいち豊田農業協同組合(JAあいち豊田)
○調査日

平成19年2月16日


○概要
愛知県豊田市における学校給食への地場農産物の提供活動についての調査を行った。学校給食への地場農産物の基本的な供給ルートは、JAあいち豊田→卸売市場→給食納入業者→譛豊田市学校給食協会→10ヶ所の給食センター→豊田市内の小・中学校となっている。また、地場農産物の一部は、豊田市教育委員会が発注業務等を行い、農業生産法人(任意団体)から直接、給食センターに供給されている。

図3 愛知県内市町村図




表2 豊田市の農業概要


資料 農林水産省「生産農業所得統計(平成17年)」
「2000年農業センサス」

1 地域の概要について
① 豊田市は、愛知県中北部に位置し、人口約42万人、自動車産業を中心とした工業都市である。

② また、豊かな自然を背景とし、米、なし、モモ、シンビジウム、茶等の栽培も盛んであり、県内でも有数の農業地域という側面もある。

③ 豊田市内の農業協同組合については、JAあいち豊田がある。

④ 豊田市の農業産出額(平成17年)は116億円であり、米は31億円(26.5%)、野菜は16億円(13.9%)、畜産は30億円(26.1%)を占めている。また、総農家数に占める専業農家数の割合(平成17年)は5.5%であり、基幹的農業従事者(自営農業に主として従事した世帯員のうち、普段の主な状態が農業である者)に占める65歳未満の割合(平成17年)は36.7%である。

2 学校給食における地産地消について
(1) 取り組みの目的
【豊田市教育委員会、JAあいち豊田】
① 地場農産物を学校給食に提供することにより、「食」と「農」の関係や地域農業に対する関心を深める。

② 栽培プロセスの学習、収穫体験、交流給食等を通して生産者への感謝の気持ちを育てる。

③ 地域の農産物の生産実態等を知ることにより、食料自給率を考えたり、素材の持つ「旬」の味を知るなどの食育の教材とする。

(2) 取り組みの経緯
  豊田市は主食である米・麦類の県下有数の生産地であるが、中でも米は前年度に生産量が把握でき、学校給食への計画的な全量供給も可能であることから、JAあいち豊田をはじめとする関係機関との協力の下、平成15年9月から米飯給食全量に豊田市産米「大地の風」を使用することを開始した。

  また、多様なニーズへの対応と米・麦類の消費拡大を図るため、平成16年4月から毎月1回、豊田市産米を使用した米粉パンの供給を開始し、平成17年4月から毎月1回、豊田市産小麦(農林61号)を100%使用したスライスパンの供給を開始した。なお、平成19年度からは豊田市産小麦を100%使用した中華麺の供給(年3回)を予定している。

  さらに、地場農産物を利用した副食・加工品の取り組みも積極的に推進しており、にんじん、なす、はくさい、だいこん、梨、柿(平成15年度)、とうがん、きゅうり、桃ジャム、納豆(平成16年度)、キャベツ、ばれいしょ、みつば、生しいたけ、桃ゼリー(平成17年度)、たまねぎ、干ししいたけ、味噌、パック豆腐(平成18年度)、レトルト大豆・厚揚げ(平成19年度予定)等を学校給食に供給してきている。

  これら取り組みを推進するに当たっては、地産地消の意見交換会の場である豊田市農産物ブランド化推進協議会(豊田市農政課)の活用や、県産農産物導入促進モデル事業(愛知県)、地場農産物等学校給食活用促進事業(愛知県)等の各種補助事業を通じた、米・麦・大豆の加工品の試作に係る補助、米粉パン・豊田市産小麦100%スライスパンへの給食費補助等の支援策が積極的に活用されている。

(3) 取り組みの概要
  学校給食への地場農産物の基本的な供給ルートは、JAあいち豊田→卸売市場→給食納入業者→(財)豊田市学校給食協会→10ヶ所の給食センター→豊田市内の小・中学校(102校)となっている。なお、養護学校については、(財)豊田市学校給食協会から直接供給を受けている。

  地場農産物については、(財)豊田市学校給食協会を経由して納入することとなるが、その際、(財)豊田市学校給食協会は、学校給食用食材を豊田市産指定で給食納入業者に発注し、給食納入業者は卸売市場から地場農産物を仕入・納品している。

  このような仕組みにおいて、利害関係者の調整や需給のミスマッチを解消するため、豊田市農産物ブランド化推進協議会が開催されており、豊田市教育委員会、JAあいち豊田、給食センター等の関係者が集まり、学校給食に提供される地場農産物の季節別の供給・需要量等の事前の相互確認が行われている。

  また、地場農産物の一部(キャベツ、ばれいしょ、だいこん、たまねぎ、干ししいたけ、味噌)については、豊田市教育委員会(保健給食課)が発注業務等を行い、農業生産法人(任意団体)等から直接、学校給食センターに供給している。

  地場農産物を利用した加工品(桃ジャム、桃ゼリー)については、JAあいち豊田から調達された地場農産物を原料として県内の加工場において製造されており、(財)豊田市学校給食協会を通じて供給されている。

  なお、個々の地場農産物の学校への調達価格は、卸売市場を通すため、実勢価格を反映した価格となっている。

図4 地場農産物の学校給食への調達システム概略図(豊田市)


(4) 取り組みの効果
  地場農産物の提供を受けている個々の学校は、地域の生産者の協力の下、生徒・児童による生産現場体験学習(播種、収穫等)や生産者を学校に招いての交流給食等を行っており、学校栄養職員による学校給食の場における地場農産物の解説と相まって生徒・児童による地域や地場農産物への関心や親近感の向上が図られている。

(5) 現在の課題と今後の展開方向
  学校給食の食材として提供される地場農産物は、大量調理を円滑に行う観点から、給食センターの要望により供給サイズの規格を設定しているが、生産者側としては規格による制限を強化すると必要量の確保・提供が難しくなることを懸念している。

  また、農業生産法人(任意団体)から直接、学校給食センターに供給されている地場農産物の一部については、新鮮ではあるが規格が不揃いであったり、天候によって収穫の時期や出荷量が左右されるため、安定供給が難しくなるケースもある。

  このような課題を克服する観点から、従来にも増してコーディネーター(調整役)機能の強化が求められてきており、地場農産物の供給量の過不足を機動的に調整したり、学校給食用食材全体のバックアップ等を行う体制の構築が必要となっている。

愛知県は平成18年11月20日に平成19年度から平成22年度までをプランの期間のとする「あいち食育いきいきプラン~愛知県食育推進計画~」を決定しており、同計画においては、給食における地場農産物の利用促進を図るため、「学校給食関係者と生産者等との意見交換会」を行うとされており、このことがコーディネーター機能の強化に結びつくことが期待される。



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