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「機構の野菜業務について意見を聞く会」の概要    

前野菜業務第一部審査役 長町 雅美


1 はじめに
  当機構では「野菜業務について意見を聞く会」を平成19年3月13日(火)に開催いたしました。関係有識者にご参集いただき「野菜の生産・流通・消費に係る最近の情勢変化と機構の野菜関係業務」について、ご意見・ご提言等をいただいたので、その概要を紹介します。


2 出席者
牧口正則
全国農業協同組合連合会 園芸販売部長
寺尾 勲
ホクレン農業協同組合連合会 種苗園芸部長
嶋崎秀樹
有限会社トップリバー 代表取締役
原田 篤
横浜丸中青果株式会社 代表取締役副社長
立平満雄
東果大阪株式会社 執行役員
宮本浩章
株式会社三祐 代表取締役
寺嶋 晋
イオン株式会社食品商品本部 農産商品部長
佐渡純一
キューピー株式会社生産本部 野菜原料購買担当部長
田中秀幸
株式会社ロック・フィールド 購買部マネジャー
吉田孝男
群馬県農業局 蚕糸園芸課長
木立真直
中央大学商学部 教授
木田滋樹
社団法人日本施設園芸協会 会長
(順不同、敬称略)
 
 
農林水産省生産局
豊田野菜課長
   

3 会議の概要
  当機構の木下理事長の挨拶に続き、農林水産省生産局の豊田野菜課長から挨拶をいただいた後、最近の野菜をめぐる情勢、機構における野菜関係業務の実施状況等について説明を行いました。

 その後、出席者から意見・提言等を頂戴するとともに、意見交換を実施しました。以下その概要を紹介します。

【出席者からのご意見等】
(1) 産地サイド
・ 野菜生産出荷安定法の下で、大型産地による共販体制をつくり、消費者に野菜の周年安定供給がされてきたが、食の外部化等の環境変化には十分に対応しきれない面もあった。

・ 生産、流通が多元化する中で、市場機能も活用しつつ、価格と数量を明確にした契約的な取引へのシフトを進めるべきである。
・ 作付面積を守り計画的に生産することが産地の責務であるが、豊作等により価格が低落したときは、最もコストのかからない圃場還元(産地廃棄)をしつつ適切な市場出荷を行うべきであり、消費者に対しては、この仕組みが合理的との理解を得られるようなPRが必要である。

・ 加工・業務用需要が5割以上を占める中で、農協や市場に産地と実需者を結ぶコーディネーターの不在が安定供給を難しくしている理由であり、輸入増につながっている。このコーディネーターとなる人材の育成が求められる。

(2) 流通サイド
・ 流通が多元化しているため、産地廃棄しても市場価格が上昇しない状況にある。

・ 卸売会社は、集荷を基本とする手数料商人としての認識が主体であったが、業務用分野への販売を通じて、差益商人としてリスク負担するような脱皮が求められている。
・ 産地との関係では、出荷形態の変更(例えば、ピーマンの袋詰めを給食用にバラ詰めにする。)を求めても応じてもらえず、市場の段階で包装をバラして実需に対応しているのが実態である。

・ 業務用では「定時・定量」といわれているが、定量ということは少なく、売れ行き、メニュー変更等により仕入れが変動する実態にあり、流通業者がコーディネート機能を発揮することを求められている。

(3) 実需・小売サイド
・ 「野菜の大切さ」を子供たちが分かってきているといった実感はあるが、現実には野菜消費が伸びていないため、「野菜はすてきなんだ」というPRを充実してほしい。

・ アグリビジネスにもマーケティングが必要で戦略的に考えることが求められており、これには人材育成が欠かせない。

・ 野菜調達の契約にあたり、ただ安ければいいということではなく、再生産価格の維持が必要と考えている。

・ 契約取引においては、口約束が多いが、商取引であり互いに契約条件を詰める必要がある。

・ 一部では国産回帰もいわれるが、自給率40%の現状を踏まえれば「海外からの食料をどう位置付けるのか」との視点も必要となっている。

・ 野菜においては加工用と業務用とは別物であり、業務用野菜には市場経由するものも多く、議論の際には区分すべきである。

・ 加工原料用野菜について、安全・安心や差別化を追求する中で、契約取引が増えてきた。

・ メニューを決めるにはある程度の時間が必要であり、生育状況等の産地情報については、全体的な情報を共有していく必要がある。

・ 「野菜の旬」が大切であり、差別化の観点から少数の生産者の産物に対応した商品展開もある。

(4) 地方行政、学識経験者
・ 野菜専業地域とその他では認定農業者によって担われる野菜生産の割合に極端な差がある。

・ 麦をきっかけに組織された集落営農に、野菜を組み込んでいくべきである。

・ 契約取引では、需給調整が最大のネックであり、ほかに代金決済、物流等の問題をかかえている。

・ 「定時・定量」といわれているが、実態的には客数予測が困難なことから「必要なとき必要な量がほしい」といったフレキシビリティが求められる結果、口頭契約が多くなっている。

・ 契約取引事業の数量確保タイプは、市場仕向けと実需者向けが同じ野菜という前提で仕組まれているが、差別化ニーズからそれぞれに分化することもあり得ると考えられる。
・ 日本では小売の寡占化が欧米と比べて低く、また、外食においては個人商店等が広範に存在しており、契約取引事業もこれに対応すべきと考えている。

・ これまで野菜産地では「加工・業務用」の認識がなく、全量を市場出荷しているので、全て生食向けだろうとの理解であった。

・ 加工・業務向けには「あんなに安い値段では」との産地の声があるが、それに対応した生産・出荷をすれば、単価は安くてもトータルでは所得が多くなる経営をすることも可能である。


【意見交換】
・ コーディネート能力は人材による影響が大きく、研修等によりスキルアップに努めたい。

・ コーディネーターも大事だが、その要請に対応できる産地側の人も必要であり、加工
・業務向けにしっかりした取引をやっている産地では、束ね役の人が大きな役割を果たしている。

・ 流通も出荷団体もコーディネーターになるべきであり、産地と消費者を結ぶスキームを作り上げることが必要である。

・ 価値ある農産物を安定供給する仕組みを実現するためには、短期的な経済効率を求めず、長期的な視点にたち、考え方の共有化を図る必要がある。

・ 野菜を出荷規格により加工向け、生鮮向けに区分するよりも消費者の価値観に対応する必要がある。外見のみでなくビタミンCの含有量等やおいしさを基準にしたものも考慮すべきである。

・ 実際にコーディネーター役をやっているが、それなりのことをすれば野菜はまだまだ売れると考えている。

・ 産地においては「やる気のある生産者」を募るべきであり、コーディネーター育成についても行政が応援することも望まれる。



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