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「機構の野菜業務について意見を聞く会」の開催の概要

野菜業務第一部 調整課長 小林 健一


1 はじめに
 独立行政法人農畜産業振興機構では、「野菜業務について意見を聞く会」を平成18年3月9日(木)に開催し、今回は加工・業務用野菜をめぐる状況を中心に意見をいただいたので、その概要を紹介します。


2 出席者
金井 順   株式会社サラダクラブ 専務取締役
余郷 勲   株式会社柿安本店 常務取締役
田中 徳美  株式会社ニチレイフーズ 原料グループマネージャー
松本 佐都市 株式会社九州屋 商品担当部長
阿南 久   日本生活協同組合連合会 理事
荒川 憲治  東京青果株式会社 第一事業部長
安斎 良邦  株式会社野富上又 代表取締役社長
牧口 正則  全国農業協同組合連合会 園芸販売部長
麻生 斎   全国農業協同組合連合会千葉県本部 園芸担当部長
太田 孝文  愛知県経済農業協同組合連合会 園芸部長
関根 誠   北海道農政部農産振興課 参事
木田 滋樹  社団法人日本施設園芸協会 会長
小林 茂典  農林水産政策研究所 地域経済研究室長
(順不同、敬称略)
農林水産省
 豊田野菜課長、鈴木流通加工対策室長


3 会議の概要
 会議では、山本理事長の挨拶に続き、農林水産省豊田野菜課長からご挨拶をいただき、話題提供として鈴木流通加工対策室長から農林水産省の加工・業務用需要への取組みについてご説明いただいた後、出席者から「加工・業務用需要における国産野菜の利用推進について」を主なテーマとしてご意見を頂戴しました。その概要は次のとおりです。

(1) 実需者
〔カット野菜〕
・ カット野菜は、すぐに使えて非常に便利、使いやすく無駄がないこと、衛生的であることから、取り扱いは大きく伸びている。
・ 原則として国産を利用しているが、時期的に輸入野菜を使わざるを得ない。
・ 産地との取引形態は、数量、期間、規格、価格について口頭での約束のため、天候不順等で生産量が減少すると数量の確保が困難になってしまう。野菜を周年、安定的に確保することは非常に難しい。
・ 年間を通して、安定的に原料を調達することが一番大切な問題である。
・ カット野菜は、歩留まりが高いことが重要で、このための品種の改良が必要である。
・ コールドチェーンの確立という観点から産地から小売の集配センターまではよくなってきたが、小売段階では望ましい状態でないため、食品の安全性からも役所でガイドラインを作成していただくことが望ましい。
・ 昨今の健康や食に対して関心が高まる中でこだわりの野菜を作りながら差別化する必要があると考えている。
・ 契約野菜安定供給制度について、更に普及推進を図るべきではないか。

〔冷凍野菜〕
・ 加工野菜は、安心・安全、顔の見える産地管理の観点から国産を利用したい。コスト、安定供給、品質等の条件を満たすことができれば、国産の利用は増大する。
・ 国内産地には、コスト競争力、特に国際競争力という部分で頑張ってほしい。
・ 顔の見える安心・安全が一番大事なので、消費者ニーズに素早い対応ができるのは国産であると考えている。

(2) 流通業者
・ 業務・加工用向けに品種をどうするか、一定の量目・歩留まりをどのように確保するかが大きな課題である。
・ コンテナ等の容器のコスト削減ができれば、かなり取引が拡大するのではないか。
・ 業務需要には産地リレーという形で対応することになるが、国内で出荷リレーしていくことは難しい。定時、定量の安定供給のため必ずリスクヘッジしておく必要がある。現在、10~20%は輸入で対応している。
・ トマトはほぼ生食用しか作られていないが、外食では炒める、煮る、焼く等ができるトマトが求められている。業務需要がどのようなものを求めているかということを把握して、商品開発や品種改良をするべきである。
・ 市場に業務用需要向けの加工施設があれば、産地で生産されたものを全量引き取ることができ、現在市場出荷されない規格外品等を業務需要に向けることができる。今後、市場は業務加工も含めながら、販売、分荷を行って欲しい。
・ ポジティブリスト関係では、業務・加工筋が我々の栽培履歴を信用してくれるかが問題になる。毎日毎日提供できるわけではないので、月1回程度日を決めて対応していきたいと考えている。

(3) 生産者団体等
・ 農協組織は、共販体制による卸売市場向け販売を長く行ってきたが、バブル崩壊とほぼ同時期に生産、消費の構造が変化してきた。生産では大規模生産者等から一律の共販体制に不満が出てきたが、これらの要望に応えられなかった。また、消費では外食・中食が増加するなど食の構造の変化がおこり、実需者からの契約的な取引の要望に対応できなかったことから輸入野菜が急増した。
・ 産地としても卸売市場、小売、量販店だけでなく、加工・業務用需要に対して対応を始めたところだが、小売向けと業務・加工用向けとでは価格差が大きく、コストダウンを本格的に進める必要がある。
・ 共計共販は非常によい仕組みだが、契約的に物事を進めようとすると、これを守れる人たちで対応するなど、新たな共販の仕組みを作る必要がある。
・ 卸売市場には、産地の代理店機能をしっかり果たしてもらい、加工・業務用需要にも積極的に対応できる仕組みを作ってもらいたい。
・ 業務需要への対応は、契約的に対応できる生産者を選び、新しい品種を持ち込んで産地を作っていくことが重要である。
・ ある産地では、野菜の加工センターでいろいろ加工しているが、原料調達が十分ではない。市場出荷用のものを業務加工用とするには、高コストで利用できない。それに対応できるよう目的別とか機能別の組織を作る必要がある。

(4) 学識経験者
・ これまでの国内産地は、家計消費用を念頭に置いた生産・流通であった。ところが、加工・業務用の場合には、その求められる特性が家計消費用とは異なるため、これに対応した産地体制つくりが必要となっている。
・ 食の外部化は構造的なものとなっており、働く女性、共稼ぎ世帯、単身世帯、高齢者世帯が今後も増えるという見通しの中では、食の外部化がますます増加し、加工・業務用需要への対応は必須である。
・ カット野菜では一般の青果用に比べて大玉を求め、加熱調理用であれば水分含有量も考える必要があるなど生食とは違った品種選定が必要となるので実需者や種苗会社との連携が重要である。
・ 契約取引では、コスト低減をしなければならず、従来の家計消費用を前提とした生産では対応が難しい。コスト低減の方法としては、単収の増加、出荷調整の簡素化、バラ輸送とか通いコンテナ利用、商品化率の向上など、コスト低減についていろいろ見直していく必要がある。
・ いろいろな等階級の利用ということで、市場は素材型の流通が中心であったが、加工を含めた業務用食材型の生産・流通へも対応することが必要である。
・ いろいろな産地やいろいろな等階級を必要とする人たちが一緒になって、生産・加工・流通の中で共有化、あるいは共同化できる部分は共同して、共同利用の加工施設をつくって商品を提供していくことも必要である。
・ 産地と実需者をつなげていくコーディネーターの役割が、加工・業務用対応の中で大事である。
・ 加工・業務用向けの国内生産と流通、消費の関係がうまく機能していないのは、野菜の消費構造が変わった実態に対する認識が、関係者には希薄であるためではないかと思う。



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