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加工・業務用野菜セミナーとシンポジウムの報告

野菜業務第二部契約取引推進課


 当機構および社団法人日本施設園芸協会の主催により、生産出荷団体、流通、青果販売、外食などの実需者、種苗会社などといった幅広い関係者の方々の参集を得て、平成18年2月6日及び7日の2日間にわたり、東京国際フォーラムにおいて、加工・業務用野菜をめぐるセミナーとシンポジウムを、青果物健康推進委員会主催の第1回日本全国野菜フェアと併せて開催したので、その概要を報告します。


1.開催の趣旨
 近年、わが国における野菜の消費は、家庭内で調理される量が減り、惣菜等調理済み食品の利用が増えるなど消費形態が急速に変化しています。この結果、加工・業務用の実需者による消費量が大きく伸びてきており、この傾向はこれからも続くと考えられています。

 このため、加工・業務用需要に向けて野菜を安定的に供給していくことが、産地に求められている大きな課題となっています。しかし、一口に加工・業務用といっても、業種ごとに求められる品質、規格などが多様です。また、周年、安定した価格で定量供給するには国内での対応が十分ではく、輸入野菜も年々増大し、昨年は過去最大の290万トンとなりました。

 一方、食料供給の安定、食の安全・安心、地産地消などの観点からも、輸入野菜に占められているシェアを奪還し、担い手を中心とした国産野菜の安定供給体制を早期に実現することが喫緊の課題となっています。これらへの取り組みは、生産者と実需者だけではなく、産学官、種苗会社、流通関係者等も加わり、幅広い関係者の総意のもとに、一体となって取り組んでいくことが重要であり、それらに関する情報発信と検討の場としてセミナーとシンポジウムを開催しました。

2.加工・業務用野菜セミナーの実施概要
 加工・業務用の需要に応えていくためには、生産から流通、消費にいたる新しいシステムを構築する必要があり、それは外食・中食産業に委ねられています。その動向を正しく理解することが今後の野菜生産や、流通にとって不可欠です。このため、「加工・業務用野菜最前線」と題し、B1セミナールームにおいて、2月6日、170名を超える参加の下、セミナーを開催しました。

 当セミナーでは、外食・中食産業の動向、仲卸売業の実際、カット野菜の現状、野菜飲料の原料調達などについて講演等が行われました。その概要は以下のとおりです。

(1) 契約野菜安定供給事業について
 (当機構担当課長)
 野菜の契約取引によって生じるリスクのセーフティーネットである「契約野菜安定供給事業」の紹介。

(2) 農薬のポジティブリスト制度について
 (農林水産省消費・安全局農薬対策室長 横田敏恭氏)
 当該制度は、基準が設定されていない農薬等が一定量を超えて残留する食品の販売等を原則禁止する制度である。現在、生産現場で使用されている農薬は安全性が確認されている登録農薬だけであり、食品残留農薬についてもADI(1日許容摂取量)や農薬の使用基準・残留基準が設定されている。
 生産者が農薬の使用基準を把握し守っていれば、食品中の残留農薬も基準を超えることがなく、通常の食事でもADIを超えるような残留農薬摂取は考えられない。生産者は農薬の使用基準を守り、適切に農薬を用いることが重要である。


「農薬のポジティブリスト制度」について講演する横田氏


(3) 外食産業の現状と仕入れ実態について
 (財団法人外食産業総合調査研究センター主任研究員 堀田宗徳氏)
 近年、中食産業は増加傾向にある反面、外食・内食産業は減少傾向にある。そのため、大規模外食企業は収益を得るため、コスト削減に力を入れている。売上の増加は客数の増加に比例するため、消費者ニーズを積極的に取り入れようとしており、今後、このような取り組みは流通業者や生産者側にも必要であり、産地表示や商品の流通等を明確に表示できるよう、関係者の協力が必要となってくる。

(4) 野菜の生産・流通におけるマーケティング~野菜の流通が変わる、ピンチをチャンス~について
 (三晃青果株式会社オーナー 黒田一郎氏)
 実需者が生産者に自らの経営方針や内容等を開示していないなど、お互いの情報交換が正確に行われておらず、生産者と実需者の間に信頼関係が築かれていない。さらに生産者や市場関係者の契約意識の希薄さといった問題点もある。
 天候不順により欠品があったとしても、実需者は供給することを要望するので、生産者は何があろうとも供給しなければならない。こうした様々なリスクを回避するために、契約野菜安定供給事業等を利用する必要がある。また、両者が互いに契約したことが明確となるよう、品種、数量、期間等を正確に表示する書面契約を行い、お互いが契約を必ず履行することが必要である。

(5) カット野菜の現状と展望について
 (デリカフーズ株式会社経営企画部長 澤田清春氏)
 近年、女性の社会進出等により独身の男女が増加傾向にあり、料理の手間が省けるという利点を持つカット野菜が注目されつつある。また、健康志向が高まっている昨今、衛生管理、原産地表示等の重要性も高まっている。カット野菜の普及には365日、24時間体制のチルド物流網の確立が重要であり、野菜をできるだけ新鮮な状態に保存し、店頭に並べていくことが重要である。

(6) 野菜飲料の原料調達について
 (カゴメ株式会社調達部国産原料グループ部長 荒木孝夫氏)
 野菜ジュースから野菜を手軽に摂取できるので、過去10年間で野菜飲料市場は1.5倍に拡大しており、今後更に拡大させていきたい。「よい原料」「よい技術」を基本に生産しているので、生産者が契約を遵守し、安全性の高い野菜が生産されることを期待している。

3.シンポジウムの実施概要
 加工・業務用野菜推進シンポジウムは、2月7日に開催しました。シンポジウムは二部構成となっており、第一部(午前の部)では「加工・業務用需要のニーズと産地対応方策」をテーマに情報提供を行いました。
 第一部の情報提供の概要は以下のとおりです。

(1) 農林水産省農林水産政策研究所地域経済研究室長 小林茂典氏
 たまねぎ、トマト、キャベツおよびほうれんそうを事例として、家庭消費用とは異なる加工・業務用の品種、作付体系、収穫方法及びそのコストを説明。
 加工・業務用需要の主要野菜全体に占める割合が51%から54%と上昇しており、野菜の加工原料化、業務用食材化が進んでいる。また、輸入野菜は低価格というメリットがあるため、加工・業務用需要における輸入野菜の割合も12%から26%と大きく増加している。加工・業務用需要に対して国内産地の対応ができていないため、輸入品が今後も増える。よって、国内生産者は、家計消費用と異なる加工・業務用野菜に必要な基本的特性を念頭に置いて野菜を生産し、低価格で供給することが重要である。

(2) キユーピー株式会社生産本部野菜原料購買担当部長 佐渡純一氏
 外食・中食産業者が用途別にどのような品質の野菜を産地に求めているのか、安全性という観点を中心に説明。
 美味しい野菜とは、色や形がよいものであったり、土壌汚染されていない土壌で育ったものであったり、農薬使用がないものであったりと様々な観点から判断される。しかし、例えば、農薬が安全である範囲で使用されているか否か判断する人がいない。こうした判断をする人がいれば、その野菜は安全であると明確になる。こうした安全性というブランド表示が輸入品と競合する対策の一つになる。

(3) JA富里市常務理事 仲野隆三氏
 流通段階での生産者と実需者の連携の希薄さや農協の人材(専門家)育成の問題点を指摘。
 実需者がどのような野菜を求めているか生産者に情報を積極的に与えておらず、生産者も実需者の経営方針や求める野菜の品質等についての情報を受けていない。こうした連携の希薄さを解決するため、農協が両者に働きかける必要がある。しかし、現状では農協はそうした体制をとっていない。このため、実需者と生産者の連携をより強くする専門家育成に注目する必要がある。

 第二部(午後の部)の概要は以下のとおりです。

(1) 中国野菜の対日輸出の現状と今後の戦略について(基調講演)
 (当機構国際情報審査役付上席調査役  河原壽)
 近年、中国産野菜の品質・安全性の確保、チェック体制等が徹底されてきており、輸出向け野菜に力が入れられている。安全管理の徹底のため、「無公害農産品管理弁法」が設けられており、無公害農産品の基準が品目ごとに定められ、その認証制度が整備されるとともに、卸売市場での管理監督強化等、統一された検査システムが義務付けられている。このような野菜が加工・業務用野菜として生産され、今後、さらに日本への輸出が計画されている。


当機構の河原による基調講演

(2) 加工・業務用野菜への取り組み事例について
 生産者サイドから、有限会社新福青果代表取締役の新福秀秋氏、香川県豊南農協営農振興部長の平野源嗣郎氏、JA全農いばらき園芸部VF課長の野崎和美氏、実需者サイドから、三晃青果株式会社オーナーの黒田一郎氏、ロイヤルホールディングス株式会社執行役員環境問題担当の梅谷羊次氏、すかいらーく株式会社MDカンパニーマネージャーの石田聡司氏の計6名による事例発表。

(3) パネルディスカッション
 (コーディネーター:社団法人日本施設園芸協会会長 木田滋樹氏、
 パネラー:事例発表の6名、農林水産省野菜流通加工対策室長 鈴木良典氏)
 パネルディスカッションでの、主な意見は以下のとおりです。


パネルディスカッションの様子

・今後国内の野菜消費はある程度輸入品を認めつつ、国内品とのバランスをどのようにとるかが課題となる。実需者は、天候不順等などにより、どれだけ国内産に被害が生じたかに応じて不足分を輸入しており、他方、消費者もこうした災害等のリスクを認め、商品を選定している。

・実需者としては、生産者は最善をつくし実需者に商品を供給し、信頼関係を構築する必要があると考えている。最善を尽くしても生じるリスク分については実需者が保障する。しかし、現状では実需者が求めている野菜がどのような物であるか、生産者に伝わっていない。これをなくすべく、実需者が求めるもの、どのような流通で商品が実需者に届き、それがどのような形に変わるかといった供給ガイドラインを作る必要がある。

・安定的な取引のため、公平な判断をしてくれる仲介人を設けたり、契約が曖昧にならないような書面契約をしたりする必要がある。また、契約取引の推進のためには、契約取引安定供給制度が有効な方法の一つであると考えられる。

4.展示会場の概要
 当機構のブースでは、野菜情報総合把握システム(ベジ探)や契約野菜安定供給事業をパネル展示、パンフレット配布などで紹介しました。

 展示ホールでは、トマト、ピーマン、だいこんなど19品目ごとにブースが設けられました。各ブースでは担当者が野菜の特徴や周年供給体制などの情報提供が行われました。

 そのほか、食品メーカー、小売、外食業者、種苗会社などが出展し、野菜に関する情報を幅広く提供しました。

 イベントコーナーでは、著名人やベジフルティーチャーを迎えたトークショー、有名レストランのシェフによる野菜を使った料理の実演などが行われ、多数の観覧者で賑わっていました。

 また、会場の中央には、「国産野菜楽試味(たのしみ)コーナー」という試食コーナーが設けられ、訪れた人々は素材の味が引き立つように調理された新鮮な野菜を味わい、国産野菜の魅力を再認識しているようでした。(小川)
注:セミナーの講演録につきましては、別途印刷およびホームページに掲載します。



当機構のブース

実需者と生産団体との情報交換風景



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