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「食を考える月間」 ~機構の取り組み~

企画調整部 広報消費者課


 「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てる「食育」の推進が重要となっていることから、昨年7月15日に「食育基本法」が施行され、あらゆる機会を利用して「食育」の推進を図ることとされている。

 農林水産省では、1月を「食を考える月間」とし、「食」に関するあらゆる人々の参加の下に、「食育」に係る普及・啓発の取り組みを展開することとしている。

 農畜産業振興機構は、この取り組みの一環としてシンポジウムの開催、イベントへの参加などを行ったのでその概要を紹介する。


1 「ニッポン食育フェア」への出展  1月14、15日(土、日)
 地域の特色を生かす健全で安心できる食生活、地場産物の活用による消費者と生産者の相互理解の推進、地域に伝わる伝統的な食文化の継承を紹介し、食育の一層の推進を図ることを目的として、農林水産省が提唱し、地域に根ざした食育推進協議会と社団法人農山漁村文化協会の主催による「第3回食育総合展 ニッポン食育フェア」が1月14日(土)、15日(日)の2日間、東京国際フォーラムで開催された。この2日間で、子どもからお年寄りまで幅広い年齢層の2万7千人が来場した。

1.展示会場概要
 会場は「企業の食育」、「学校の食育」、「家庭の食育」、「食育ワンダーランド」、「食品えらびの安心情報」、「地産地消のおすそわけ」の各コーナーに分かれて展示が行われ、「食と農の応援団劇場」では「食事バランスガイドで気軽に健康生活」や「嗜好のしつけは大丈夫?」というテーマの講演などが行われた。

 また、地域、学校、企業・団体、農林漁業の場で実施されている地域に根ざした食育を全国から募集して、特に優れた実践事例を紹介する「地域に根ざした食育コンクール2005」の表彰式も併せて行われた。

2.「農畜産物の正しい知識を広げよう!」をテーマに出展
 機構は、畜産関係団体および砂糖関係団体と共同出展し、「農畜産物の正しい知識を広げよう!」をテーマとして、パネル展示、機構ホームページの紹介などを行った。ブースを訪れた人からは、砂糖や牛乳の適切な摂取量などの質問が多く聞かれ、健康への関心が高いことが伺えた。


来場者でにぎわう機構ブース

(1) パネルと実物展示
 機構の役割を説明したパネルや食肉、牛乳・乳製品、野菜、砂糖それぞれが健康に不可欠な食材であることを、栄養面やその果たす役割を中心にわかりやすく説明したパネルの展示を行った。
 また、普段はあまり目にする機会がない砂糖の原料となるてん菜やさとうきびなどの実物展示を行った。


好評であった各種パンフレットの配布

(2) ホームページ紹介、ビデオ放映、パンフレット配布
 (1)機構ホームページの「食育コーナー」の紹介や、(2)畜産物を使った24種類の料理を紹介するテキスト「私がシェフ!楽しく作ってみんなで食べよう!小学生・中学生が作る料理レシピ集」の配布、(3)機構作成のトマトとにんじんの作り方について説明した「育ててみよう!おいしい野菜」、砂糖摂取による効用および糖質の適切な摂取のあり方について解説した「栄養指導に活きる砂糖の正しい知識」の2本のビデオを放映した。


てん菜、さとうきび、野菜の実物を展示

 併せて、機構および関係団体作成の各種パンフレット、冊子の説明、配布を行ったところ、入場者の関心には高いものがあった。
(企画調整部 広報消費者課課長 田中 清  課長補佐 小田垣 諭司)


2 「農産物の安全確保に関するシンポジウム」1月18日(水)
 当機構は、消費者などに対し、農薬に関する安全性の確保に向けての取り組みや食品安全GAP(適正農業規範)の取組などを紹介することにより、国産農産物に対する消費者の信頼の確保を図ることを目的として、岡山市において、中国四国農政局との共催で、「農産物の安全確保に関するシンポジウム」(基調講演、パネルディスカッション)を開催した。当日は、消費者や生産者など約250名が参加した。


会場には約250名が参加

1.基調講演
 基調講演は、3名の講師から、農薬や食の安全・安心についての重要課題をテーマに行われた。

(1) 「農薬からみた食の安全と安心」(梅津憲治氏‥大塚化学ホールディングス(株)取締役兼専務執行役員、神戸大学客員教授、日本農薬学会会長)
・農薬は、膨大な試験を行い、厳密な審査を受け、国の登録を取得した薬剤であり、登録された範囲内で使用される限り安全が保証されるものである。
・農薬を使用しないで消費者が求める農作物を生産することは困難である。
・消費者は、食の安全性に関して、食品添加物や農薬の使用について不安感を持っている。
・また、消費者は、天然物は安全と信じ込んでいるが、ジャガイモに含まれるソラニンに代表されるように、天然物が直ちに安全というわけではない。
・したがって、人工物であるか天然物であるかを問わず、われわれを取り巻く環境中に存在する残留農薬をはじめとする種々の化学物質の危険性と安全性に関して、また、その有用性に関しては、最新かつ最高水準の科学技術の成果に基づいた客観的な議論が必要である。

(2) 「食の安全を目指したイオンの取り組み」(植原千之氏‥イオン株式会社食品商品本部グリーンアイ開発部長)
・消費者の食の安全・安心に対する関心が高まる中イオンにおいては、生産段階から消費段階にいたる過程で、一貫した基準・規範(GAP/GMP/GDP)を適用することにより、農産物に由来する食のリスクを最小化し、食の安心を向上させるシステムであるA-Q(イオン農産物取引先様品質管理基準)の構築に取り組んでいる。
・イオンーGAP(適正農業規範)は生産者や生産管理責任者が、イオンーGDP(適正流通規範)は流通にかかわる者が、当たり前のこととしてキチンと取り組んでいくという内容である。
・GAPやGDPに取り組むことにより、産地全体の品質管理レベルが上がり有利販売ができる、余裕を持った栽培管理を行うことができる、コスト意識が芽生え財務内容が改善するなどのメリットが生じている。

(3) 「農薬のポジティブリスト制とその対策について」(横田敏恭氏‥農林水産省消費・安全局農産安全管理課農薬対策室長)
・農薬については、農薬登録制度による安全性のチェック、無登録農薬の取締り、農薬の使用方法のチェックにより、リスク管理が行われている。
・ポジティブリスト制は、残留農薬基準が設定されていない農薬が一定量を超えて残留する食品の販売等を原則禁止する制度であり、残留農薬基準がない農薬については、暫定基準や一律基準が適用される。
・農薬使用時においては、農薬のラベルの記載事項を確認して使用基準を遵守すること、農薬散布時のドリフトに注意することが重要である。

2.パネルディスカッション
 パネルディスカッションは、「農薬と食の安全を考える」をテーマとして、岡山大学多田教授の進行により行われた。パネリストは講師3人佐伯峰義氏(JA愛媛野菜生産者組織協議会運営委員)、佐藤久子氏(岡山県消費生活問題研究協議会副会長)、真木貴正氏(コープCSネット商品事業本部長)に加わっていただき(1)農薬はなぜ必要か、(2)農薬を安全に使うためにはどうしたらよいか、(3)消費者に安心してもらうためにはどうしたらよいかという三点をポイントに行われた。
(総括調整役 本村裕三)


「農薬と食の安全を考える」パネルディスカッション


3 「食生活と健康を考えるシンポジウム」 1月23日(月)
 1月23日(月)、京都市呉竹文化センター(京都市伏見区)において、「食生活と健康を考えるシンポジウム」を開催した。近隣府県から、消費者、栄養士、医療・福祉関係者、食品関係者など約600名が参加した。

1.服部幸應氏の特別講演
 共同主催者である農林水産省近畿農政局と食を考える国民会議から開会のあいさつが行われた後、服部幸應氏(服部栄養専門学校校長/医学博士/食育推進会議委員)から『食育を考える』と題した特別講演をして頂いた。

(講演要旨)
 (1) 生活習慣は8歳までにきちんと付ける。その基本は食生活であり、食育がしっかりしていれば知育、徳育、体育もともに伸びる。生活の基盤が崩れ始めている日本では、食を通じた人間教育をし直すことが必要となっている。
 第一に、どんなものを食べたら安全か、危ないかを知る能力を身に付けさせること。
 第二に、食べる場を通じて「しつけ」をすること。
 第三に、食料や環境問題を教えること。

 (2) 40%まで落ちた食料自給率を上げるため、日本人の身体に合った食べ方を考え直さなければならない時期にあり、みんなで努力しなければならない。小さいときから食料にも生産にも興味を持ち、農業や漁業を原点からサポートするようになることなど。

2.吉田俊秀氏の話題提供
 次に、吉田俊秀氏(京都府立医科大学臨床教授/京都市立病院糖尿病・代謝内科部長、5千人を超える肥満患者と診察)から、パネルディスカッションの話題提供として、『食べたいけど痩せたい人のために』というテーマで話しをいただいた。

(講演要旨)
 ほんの5パーセント、5キロの減量で、多くの糖尿病や高血圧、高脂血症の合併症は治ってしまう。原因は分子生物学の進歩によって解明された。太れば一つだけ合併症を伴うことはまれで、多くの合併症を伴いやすい。肥満には皮下脂肪型と内臓脂肪型があるなど、やせるために食べなければならないものとして、食事前にキャベツ、レタスを時間をかけてかむことが有益など。

3.パネルディスカッション
 話題提供の後、吉田氏のコーディネートにより、「ともに考える『食生活と健康』」をテーマにパネルディスカッションを行った。パネリストの市民団体「食と環境のひろば・Leaves」代表の渡辺さおり氏、京都府立大学人間環境学部食保健学科助教授の大谷貴美子氏、がんこフードサービス株式会社代表取締役会長の小嶋淳司氏、京都市保健福祉局保健衛生推進室健康増進課課長補佐の田中陽子氏から、それぞれの活動や所見の発表の後、特別講演者の服部氏も参加し、意見交換を行い、更には会場の参加者との質疑応答も行った。
(総括調整役 菊池弘美)

(各シンポジウムにおける詳細な内容は、当機構ホ-ムページ消費者コーナー「フォーラム等報告」に掲載されています。)



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