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野菜についての消費者代表との意見交換会の概要

総括調整役  伊藤 英明
野菜業務第一部 調整課長 佐々 木昇


1 はじめに
 農畜産業振興機構(以下、「機構」という。)では、食料・農業・農村基本計画に掲げる望ましい食料消費の姿、食品の健康に果たす役割についての理解の増進などに資するため、情報の収集・提供を行っており、その一環として各分野別に「消費者代表との意見交換会」を開催しています。
 今後の野菜生産については、「野菜政策に関する研究会」の報告にもあるように、消費者や実需者などの視点に立った一層の取組みを推進することが重要であるとされているところです。
 このような中で、野菜の生産・流通などに関して、常日頃、消費者が考えておられる事項などについて、消費者と生産関係者及び専門家との間で意見交換、情報交換を行い、今後の消費者ニーズに即した生産者などの取組みの推進に資するため、平成17年6月20日(月)に当機構会議室において、「野菜についての消費者代表との意見交換会」を開催しました。本稿では、その概要を紹介します。


2 出席者
 意見交換会には、以下の方々にご出席いただき、当機構からは菱沼副理事長、伊藤総括理事、和田理事他が出席しました。

○ 消費者団体
 主婦連合会 参与 和田正江
 全国消費者団体連絡会
  事務局長 神田敏子
 消費科学連合会 企画委員 鈴木美根子
 日本生活協同組合連合会
  理事 阿南 久

○ 野菜生産者
 夏井岩男(北海道)
 村上千秋(栃木県)
 鴨志田良典(神奈川県)

○ 生産者団体
 全国農業協同組合連合会
 園芸販売部次長 牧口正則
 全国農業協同組合連合会
  栃木県本部 園芸部長 枝 啓司
 全国農業協同組合連合会
  神奈川県本部 農産販売一課長
福岡喜輝

○ 学識経験者
 千葉大学園芸学部教授 篠原 温

○ 行 政
 農林水産省生産局野菜課
  流通加工対策室長 鈴木良典
(順不同、敬称略)





3 意見交換の概要
 会議では、農林水産省の鈴木流通加工対策室長から、野菜の生産・流通・消費を巡る情勢をご紹介いただき、また、消費者団体から野菜生産などに望むことについて、生産者からは、消費者の視点に立った取り組みについてそれぞれ発言して頂き、それらを踏まえて意見交換が行われました。
 消費者から出された主な意見は次のとおりです。

(野菜の規格について)
・野菜の百円ショップの展開など、規格外の野菜の販売が増加。このような傾向が続くことを期待。
・少量多品目販売、ばら売りなど消費者にとって使い勝手の良い売り方を要望。
・行き過ぎた等級付けは、価格の上昇、規格 外品の増加を生み出し無駄であり、改善すべき。

(安全・安心への取組みについて)
・GAP(注1)やトレーサビリティ(注2)については、生産サイドは意識して積極的に取り組むことが必要。
・生協も産直の規範を策定して取り組んでいるが、このような取組みが全国的に普及すること期待。
・農薬の使用基準や実際の農薬の使われ方などの正しい情報を、分かりやすく消費者に伝えることが必要。

(野菜の旬について)
・石油で加温して、一年中同じ野菜が生産されていることについてどう考えていくべきか。
・野菜の旬がなくなり季節感が消えてきている。消費者のアンケートでも安くておいしい時期にたくさん食べたいという結果もあり、直売などにより旬の野菜が手に入るようなあり方も必要。
・野菜本来の辛みや苦み、香りが薄れてきているが、食べ安さ重視の取組みは疑問。

(正しい情報の提供について)
・例えば、「これを食べればガンになる」とかといった過大な情報や使用されている農薬がたまたま危険とかといった間違った情報が流れているので、消費者に正しい情報を分かりやすく伝えることが必要。

(遺伝子組替作物について)
・遺伝子組換作物について、正しい知識が得られるようホームページだけでなく、消費者が入手できやすい手段で提供すべき。
・遺伝子組換作物は生態系を考えると疑問。

(野菜の消費について)
・中食、外食が増加しているが、レストランの野菜のメニューをもっと増やすとか、豊富な野菜を用意するとかといった消費者が野菜を消費しやすい取組みを行うことにより、野菜の消費が増えるのではないか。
・食の大切さや体によい野菜をうまく取り入れた料理法などを積極的に提供することが重要。
・直売など消費者と生産者の顔の見える関係づくりが大切。誰がどのように作ったのかは消費者の安心感につながる。

 消費者からの意見発表の後、生産者から消費者に視点をおいた安全安心な野菜生産への取組み、特に土づくりや農薬使用のあり方について心がけていること、栽培管理を徹底し、栽培履歴の記帳を履行していることなど、生産サイドの取組みの紹介がありました。
 また、学識経験者からは我が国におけるGAPの取組みの現状、流通の改革が進んでいることなどの紹介があり、その後、消費者、生産者、行政の間で、野菜の規格や販売のあり方、情報提供のあり方などについて、活発な意見交換が行われました。
 特に野菜の規格や流通について、規格にこだわらない野菜流通やばら売り、量り売りなど、消費者のニーズに即した販売方法が普及し、消費者が自分の意志で多様な品揃えの中から野菜を選べる状態が作りだされることが重要でないかといった意見が出されました。また、情報提供については、間違った情報はすぐに打ち消すような取組みも必要ではないかといった意見も出されました。
 当機構としましても、今回の意見交換会での議論をも踏まえ、今後とも、当機構の業務の円滑な実施、消費者の皆さんへの分かりやすい野菜関係情報の提供などに努めて参りたいと考えています。

注1:GAP(Good Agriculture Practice:適正農業規範)
 農産物生産における病原微生物、科学的危害、異物混入などの危害対策や栽培過程における管理方法を取りまとめたもの。危害対策を文書化し記録することで、安全性の取組を証明できる。(詳しくは、野菜情報2004年10月号及び2005年1月号に掲載。)

注2:トレーサビリティ(Traceability)
 生産、処理・加工、流通・販売などの段階で、食品の仕入れ先、販売先などの記録を取り、保管し、識別番号などを用いて食品との結び付きを確保することによって、食品とその流通した経路および所在などを記録した情報の追跡と遡及を可能とする仕組みである。(詳しくは、野菜情報2004年10月号、2005年1月、2月号、5月号に掲載。)



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