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野菜ビジネスフォーラムin東京・大阪の開催

野菜業務第二部 契約取引推進課
  課長補佐  小松崎 幸 子
  係長     田 崎 剛 毅


 独立行政法人農畜産業振興機構(以下、「当機構」という。)および財団法人外食産業総合調査研究センター(以下、「外食総研」という。)の主催により、生産出荷団体、流通、青果販売、外食など実需者、種苗、資材など幅広い関係の方々の参集を得て、加工・業務用野菜をめぐるフォーラムを東京と大阪でそれぞれ開催しましたのでその概要を報告します。

1 趣 旨

 わが国の野菜の消費は、家庭内で調理される量が急速に減って、惣菜など調理済み食品の利用が増えるなど消費構造が変化しています。この結果、加工・業務用の消費量が大きく伸びてきており、この傾向はこれからも続くと考えられています。

 このため、加工・業務用需要に向けて野菜を安定的に供給していくことが、産地に求められている大きな課題となっていますが、一口に加工・業務用といっても、業態ごとに品種、栽培方法、規格、契約の方法などが異なるため、これらの要望にきめ細かく応えていくことは容易なことではなく、従来の仕組みを超えた生産から消費にいたる、新しい流通システムを作る必要があります。

 また、これらへの取組みは、生産者と実需者だけではなく、種苗会社、流通関係者なども加わって幅広い関係者の総意のもとに一体となって取組んでいくことが重要なカギとなります。そのきっかけ作り、仲介の場としてフォーラムを開催しました。

2 フォーラムの実施概要

 同フォーラムは2つの会場で行われ、東京の会場は、平成16年12月6日に江戸川区の「タワーホール船堀」において、350名を超える参加者の下に、主催者を代表して当機構の伊藤元総括理事の開会挨拶に始まり、農林水産省生産局の染英昭審議官の来賓ご挨拶と続きました。一方、大阪の会場は、1週前の11月30日に城東区の「クレオ大阪東」において、250名の参加者の下に当機構挨拶後、農林水産省野菜課流通加工対策室の近藤秀樹室長の来賓ご挨拶により開会されました。

 フォーラムは、いずれの会場も二部構成で、第一部は「業務用野菜の供給をめぐる戦略と課題」と題した基調講演。第二部は「業務用野菜の取組先進事例や諸問題」について、産地、実需・流通、学識経験者などによるパネルディスカッションが行われました。また、新品種の紹介、パネル展示、関係者による交流会も開催されました。

3 基調講演

 

 
小田勝己氏の講演(東京)

 
 
 

 
木立真直氏の講演(大阪)



 東京の会場では、外食総研主任研究員の小田勝己氏が、大阪の会場では、中央大学商学部教授の木立真直氏が、(1)野菜の自給率の低下と野菜輸入の増加、漸減する家庭内消費と業務用需要の増加傾向と、(2)市場経由率及びセリ売が低下する中で、新たな市場の役割として、米国の例をもとにコーディネーター機能が重要であること、(3)野菜法の改正により契約野菜安定供給制度が創設され、その推進を図ることが重要なことなどを強調されました。また、(4)外食・中食産業の動向について、新たな競争戦略として、メニュー、食材調達などにおける本物志向などを意識した差別化の展開、特に、最も調理などに手間のかかる生鮮野菜を積極的に活用した差別化として、各業態による国内産地の囲い込みの事例などを紹介されました。さらに、(5)外食企業などが求める契約取引の特徴として、一定規格と品質の特定化、取引期間全体を通じた数量確保、定価格などがあるため、産地側の課題として、指定規格以外の商品の販売先の確保、不作時による数量確保、メニュー改定による品目の転換などにおけるリスクヘッジをあげられました。

 そしてこれらに対応する方法として、需要、供給などの予測と情報の共有化、商品フローの効率化、品質管理などについて、生産者と実需者が従来の伝統的な流通チャネルから、双方が十分理解し合えるような、価値創造に向けての情報の共有と協働(Collaboration)が重要で、ITなどを活用した新たな野菜サプライチェーンの構築が必要であるとの提言が行われました。

4 パネルディスカッション

 東京の会場では、社団法人日本施設園芸協会会長で農林水産省の野菜政策に関する研究会座長代理の木田滋樹氏をコーディネーターとして、産地からJA全農いばらき園芸部VF課長の野崎和美氏、千葉県富里市農業協同組合常務理事の仲野隆三氏、流通・実需から東京青果株式会社取締役野菜第一事業部長の荒川憲治氏、株式会社ロック・フィールド購買部マネージャーの田中秀幸氏、学識経験者の独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構中央農業総合研究センター総合研究第4チーム長の佐藤和憲氏をパネラーとして、さらに、小田勝己氏と近藤秀樹室長にも加わっていただき、パネルディスカッションが行われました。以下、主な発言を紹介します。

 木田氏:輸入増加の原因として、実需者の求めるものに対して国産ではなく輸入品が対応できたという事実もあるが、生産者と実需者の意識にギャップがあるように感じる。それぞれの立場から意見をいただきたい。

 野崎氏:新たな流通の仕組みづくりとしてVFステーションという直販施設を設置し、委託集荷中心では価格変動が大きいことと共販率を高める工夫として、コンテナ集荷による契約取引を始めた。その背景は、高齢化による労力不足などから雇用労働が必須となり、そのための賃金支払いには価格の安定が重要なこと、量販店向けでは週単位の値決めのため、長期契約可能な業務用(コンビニ、ファーストフードなど)との契約が求められていたことである。生産グループは1グループ20人程度で約40グループある。課題は、不作時、豊作時の数量調整が重要で、実需者のニーズを捉えて、半年ごとに計画を立て実行している。

 仲野氏:1970年代までは作れば売れたが、80年代から伸び悩みとなったため、業務用向けトマトなどを始めた。当初、卸業者を通じて始めたが、サンドイッチ用のものは生食とは違うということで失敗したこともある。しかし、その後企業と直接接触するなどの工夫により順調に行っている。課題は、突然の企業経営の悪化などによるキャンセルと天候不順などによる不作時の対応である。企業とのコーディネーターとして、品種、栽培技術など産地の情報を持っている営農指導員を活用することが重要と考えている。

 田中氏:企業ポリシーとして、健康・安心・安全はもとより鮮度も重視している。供給側への要望としては、(1)現行規格は量販店用のもので、箱単位の個数入り表示や、A、Bなどの等級はあまり意味を持たない (2)鮮度重視の観点から国産志向で、できれば収穫後2、3時間で使用したいが、共同配送やカット工場間の連携などによりコストを下げる工夫を図れないかである。

 荒川氏:業務用需要への定量・定価販売は難しい面もあるが重要な課題である。出荷規格も検討すべきであり、毎年続く秋口の葉物の高値続きは、実需者のメニューから外されるなど、消費離れも怖い。市場法の改正により市場取引も大きな転換期を迎えていると認識している。

 佐藤氏:従来の市場流通は量販店中心で、実需者も卸、仲卸に任せっきりで、何か問題が起きた場合でも事後的な対応で済ませてきた。業務用は、販売も流通もチャネルが違うということを意識する必要があり、相互の理解が重要ではないか。

◎会場からの発言に関して

 卸売会社A:1980年代からコンビニ対応の業務用野菜に取組んだ。用途に応じた商品紹介が重要と感じた。また、産地も業務用に対応した産地作りへの意識改革が必要ではないか。

 生産者:数量不足への対応は、どうクリアすべきか。

 荒川氏:契約を守るためには、余裕を持った作付けが重要であり、天候によっては貯蔵などによる調整も場合によっては必要ではないか。

 田中氏:他の食材は契約書で数量、品質、価格などを決めているが野菜だけ文書による契約書がない。今年のような場合には、顧客に事情を説明して理解していただいている。

 佐藤氏:需給調整モデルはないが、契約数量を全量でなく3割程度にするとか、販売チャネルのミックスによる危険分散が重要と考える。

 仲野氏:通常契約対応は2割増しで作付けをしている。かつて、数量が足りずに市場から調達したことがあるため、自分たちで基金を積んで対応することとしている。水害は暗渠などの敷設で回避できるが逆に干ばつ時の灌漑施設も必要で、また、リースハウスの活用なども重要である。

 野崎氏:契約書は、取引に関する基本契約のみで、数量、価格などについては別途提案書で個別に対応している。なお、天候被害などによる場合は免除規定を設定している。

 卸売会社B:契約野菜安定供給制度の普及が遅れているように聞いているが。

 近藤室長:野菜政策研究会でも指摘があり、運用改善を図るとともに制度の普及も一層加速するとともに、様々な場を活用しつつ、消費者や実需者の視点に立った生産・流通対策の推進などについて関係者の間で幅広い情報交換を行うことが重要であることを再確認した。

 今後も関係者の方々の格別のご協力をお願いしたい。


パネルディスカッションの様子(東京)


 大阪の会場では、木田滋樹氏をコーディネーターとして、産地から元あわじ島農業協同組合理事の古東英男氏、岐阜県加子母トマト生産組合長の今井加恵喜氏、実需者からキューピー株式会社生産本部生鮮原料購買担当部長の佐渡純一氏、株式会社清浄野菜普及研究所常務取締役の樽本純生氏、学識経験者から小田勝己氏のほかに、中央大学の木立教授と近藤秀樹室長をパネラーとして迎え、パネルディスカッションが行われました。以下、主な発言を紹介します。

 古東氏:長い時間をかけてあわじ島ブランドを確立してきた。加工業務用は5%程度あるが、基本的には市場出荷が主体。実需者との取引では、いわゆる「良いとこ取り」だけされることが多く残品の処理に産地は困るなどの問題がある。

 今井氏:契約栽培ではないが直接取引きしている。土作りを中心にやってきたので商品には自信がある。実需者から特に注文はないが、共感しながらやることが大事。

 佐渡氏:惣菜向けはロットが大きいため、特定産地との契約栽培が多い。また、加工に適した品質のものが必要なため、品種も指定することとなる。

 樽本氏:大阪万博以降、各レストランにカット野菜を供給してきた。通常のアイテム数は40~45品目で17品目が契約栽培である。市場経由は、量が少ないものや天候不順などにより量の確保ができないときに利用する。

 木田氏:需要動向を見ると業務用が6割もあり、それに対応した物作りが重要ではないか、実需者も必要なものしか要らないという問題の投げ合いだけでは解決しないのではないか、生産側が実需者の個別のニーズに対応できないのであれば仲介役は誰がやるのか、会場の意見も伺いたい。

◎会場からの発言に関して

 卸売会社D:市場法の改正もあり、取引も従来の方法ではなく柔軟な対応が必要だが、量販店を含め業務対応として、幅広いニーズにどう応えていくかが課題である。

 仲卸会社:小売、惣菜もやっている。トレーサビリティもあり国産を使いたいが、価格が3倍もするのでコストの面からも輸入を使わざるを得ない。ダンボール出荷でなくて良いので、容器などを工夫して価格を下げてもらいたい。

 H農協:カット野菜工場と契約している。生産者を契約向け、市場向けと分けている。ブランドも面積もない産地にとって、契約取引は農家経営の観点から重要である。

 卸売会社E:現在、契約取引は年間3%弱程度行っており、3年後は10%へと拡大したい。実需者と産地との調整パイプ役と思っている。安心・安全は当然として輸入との差は味であることをアピールしている。

 種苗会社:輸入される野菜も種子は国産。1品種開発するのに15年はかかるし、さまざまなニーズに対応しきれないのが現状。


パネルディスカッションの様子(大阪)


5 契約事業パネルなどの展示

 東京、大阪の会場ともに、当機構が進める契約野菜安定供給事業のパンフレットによる事業内容の説明、先進産地、実需者、種苗、資材メーカーなどによる野菜の新品種、出荷コンテナ、芽出機械、パネルなどが展示され、最新情報などについて活発な意見交換が行われました。



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