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野菜についての消費者代表との意見交換会の概要

総括調整役        戸谷 亨
野菜業務第一部 調整課長 佐々木 昇


1 はじめに

 

 
意見交換会の様子



 農畜産業振興機構では、食料・農業・農村基本計画に掲げる望ましい食料消費の姿、食品の健康に果たす役割についての理解の増進などに資するため、情報の収集・提供を行っており、その一環として各分野別に「消費者代表との意見交換会」を開催しています。

 野菜については、健康の維持増進に重要な役割を果たしており、摂取を増加することが必要となっていますが、摂取量は減少傾向にあります。また、今年は相次ぐ台風の上陸、10月の長雨・曇天の影響で野菜の供給量が不足し、野菜の価格が高騰しております。

 このような中で、野菜を巡る状況について、消費者代表、生産、流通、消費の関係者・専門家などとの間で情報や意見の交換を行い、野菜の重要性について消費者の皆さんの一層の理解に資するため、平成16年11月12日(金)に当機構会議室において、「野菜についての消費者代表との意見交換会」を開催しました。本稿では、その概要を紹介します。

2 出席者

 意見交換会には、以下の方々にご出席いただき、機構からは山本理事長、菱沼副理事長、伊藤総括理事、和田理事他が出席しました。

○ 消費者団体

 主婦連合会副常任委員 石井 栄子
 全国消費者団体連絡会事務局 高野ひろみ
 全国地域婦人団体連絡協議会 星野美枝子
 事務局
 日本生活協同組合連合会理事 阿南 久

○ 生産、流通、消費などの関係者・専門家

 全国農業協同組合連合会  江郷 明  
 園芸販売部長
 イオン(株)SSM商品本部 上田 隆之
 農産商品部 
 (社)全国学校栄養士協議会 松本ふさ江
 理事
 女子栄養大学教授 吉田企世子
 (財)食生活情報サービス 渡辺 文雄
 センター理事長  

○ 行政

 農林水産省生産局野菜課長 竹森 三治
 農林水産省生産局野菜課 近藤 秀樹
 流通加工対策室長

           (順不同、敬称略)

3 意見交換の概要

 会議では、機構から、野菜の生産・流通・消費を巡る情勢、野菜への理解促進のため学校などで食育の指導者の方に使っていただく参考書として「野菜ブック」の作成を進めていることの紹介などを行うとともに、農林水産省の竹森野菜課長から、最近の野菜価格の動向と緊急野菜供給対策および「野菜政策に関する研究会」の中間報告についてご紹介いただき、それらを踏まえて意見交換が行われました。

(緊急野菜供給対策関係)

 緊急野菜供給対策について、消費者代表の方から、

・早期出荷も重要であるが、野菜の輸入を緊急に行い、急場をしのぐべきではないか。

・スーパーなどでの傷んだ野菜の販売イベン トに国は支援をしているのか。

などのご意見・ご質問があり、野菜課長から、

・国では、以前緊急輸入を実施したこともあるが、国が直接消費者に販売するわけではないので、消費者へのメリットが分かりにくく、また、今では民間ベースでの輸入が進んでいるので、国が直接輸入する必要性は薄れ、効果も限られていることから、現在は行っていない。

・国としては、並級品などの出荷促進のため生産者への奨励金の交付などを行っており、並級品の販売イベントに対する支援はしていない。

などの回答をしていただきました。

 全体の意見交換に先立ち、健康にとっての野菜摂取の重要性などに関連して、ご専門の立場および生産、流通、学校での食育のそれぞれの立場から話題提供およびご発言をいただきましたが、その概要は次のとおりです。

(野菜摂取の重要性等関係)

・国立がんセンターの垣添先生や国立健康・栄養研究所の田中先生によれば、生活習慣の変化で日本人に西欧型のがん(肺がん、大腸がん、乳がんなど)が増え、また、がんの原因の35%は食事、30%は喫煙であり、がんは心臓病などと同様生活習慣病である。

・世界がん研究基金とアメリカがん研究財団の共同調査で、野菜は全ての部位のがんに対して発生のリスクを減少させる効果があるとの結果が出ている。

・関係団体などが共同して、野菜のがん予防の効果の啓発などを行い、野菜の消費拡大を進めている。

・一般の消費者は、啓発活動やメディアを通じて、健康のため野菜を食べなければならないことは理解しているが、実践につながっていない。食生活全体の見直しを行わないと、野菜の摂取の増加につながらない。

・外食産業や加工などでの国産野菜の利用の促進を進めて欲しい。

・形の悪い野菜を廃棄せずに日頃から利用することはできないか。

(生産関係)

・生産者が望んでいるのは、価格の安定である。高ければ野菜の消費離れや輸入の増加につながるので、現在のような高値は望んではいない。

・野菜は「工業製品」ではないので、均一な 規格品ばかりできるわけではなく、また、生産過剰になると手取りも確保できないこともあるので、産地廃棄をせざるを得ない場合もあることを消費者の方々にも理解していただきたい。

・全農では、安全・安心のシステムとして、生産行程・流通行程を認証し消費者へ情報提供する産地の顔が見えるシステムづくりに取り組んでおり、野菜では現在24産地の認証が行われている。

・収穫体験ツアーやNHKと協力して行うチャリティフェアーなど産地と消費者との交流の取り組みを年数回実施している。

(流通関係)

・野菜の販売では、鮮度・おいしさが重要である。

・契約取引を推進しコスト低減に努めている。

・安全・安心は差別化ではなくインフラであり、スーパーとしても一部の野菜では生産履歴の開示を始めている。

・小さいだいこんを作ってもらったところ消費者に好評であったが、ニーズに即した小さ目のサイズのものの供給も重要である。

・一方で、不作時にはサイズや量を求めるニーズに対応するため、緊急に輸入も必要となる。

・スーパーでも契約農場の体験ツアーや小学生の店舗招待などの食育の取組みを行っている。

(学校における食育関係)

・小・中学生にも野菜の大切さの認識はあり、学校給食では一食当たり150g程度の野菜を使うようにしているが、給食のおかずで野菜の食べ残しは目立っている。

・最近育てて収穫する体験学習が多くなっており、それらの体験をきっかけに、野菜を食べるようになったなど、子供の頃から作り手の見えるような教育が必要である。

・野菜料理は家庭でも「食べてくれない」など食べさせることに苦労しているとの話しも聞くが、食卓から口へ運ぶため、野菜の重要性などを繰り返し、継続的に指導することが不可欠である。

・「生野菜が食べたい」との声も聞かれるが、O157以来、給食で使うことは難しい。野菜の産地では人手を増やして生野菜を出している学校もあるが限られており、多くの施設では子供たちの要望に応えられないのが現状である。

・保護者は輸入野菜に対する安全性などに不信感があり、輸入野菜を極力使用しない努力をしているが、今年のように価格の高騰が続くと給食費も心配である。

・給食で地産地消の取組みが増えているが、個々の生産者から食材を集めるところもあり、思うように調達できないことも多いため、JAなどの調達ルートができるとありがたい。

 全体を通じての意見交換では、消費者代表の方々などから次のようなご意見がありました。

(最近の野菜価格関係)

・産地見学会などをしているので、今回の台風などによる野菜の価格高騰は、致し方ないと理解している。葉ものは高いが、全ての野菜が高いわけではない。

・今回の生鮮野菜の高騰で、中国の冷凍野菜や米国のカット野菜などが輸入されてきているが、中身が不安である。

・生協では予約販売を行っているので、今回の野菜価格の高騰により、普段買わない組合員からも野菜の購買注文が多く、商品供給に苦労している。

・通常並級品は売れないので価格が低く、市場に出す出荷経費も賄えないので、流通させるのは難しい。

(食育、安全・安心関係)

・毎年、全国の消費者と生産者が集まって全国消費者大会を開催しているが、今年は消費者と生産者の連携に際しての問題点などについて議論していきたい。

・地域の婦人団体では各県で地産地消の取組みを進めており、土づくりから一緒に行い、採れたもので料理教室を行っているところもある。

・自分で料理をすると口にするようになるので、日常生活で子供たちと一緒に料理を行うなど、家庭生活から見直していくことが必要である。

・生協としては、生産地との交流を従来から行うとともに、生産履歴の開示の取り組みを始めているが、それに併せて野菜の効能や食べ方についての情報も提供するとよいと考えている。

・子供の頃野菜嫌いでも、嗜好は成長とともに変わっていくが、教育によって野菜は健康によいことを常にインプットしておくことは大切である。

(野菜の栄養価関係)

・野菜の栄養価が年々減ってきているのではないか。この面の研究が重要である。

・全ての野菜で栄養価が低くなっているわけではなく、トマトなどは高くなっている。品種も変遷し内容も変わってきているが、栽培技術でカバーしている面もある。

(野菜の定義関係)

・「いちごは野菜なのか果物なのか」という議論があったが、野菜の分類について、もう少し分かりやすく整理して欲しい。

・野菜の分類については、機構の「野菜情報」の4月号でも書いたが、生活実感との違いもあり、議論のあるところである。

(その他)

・とにかく正しい表示を行ってほしい。依然として、紛らわしく、消費者を誤認させるような表示がみられる。

・発光ダイオードで作ったレタスなどがマスコミでも取り上げられているが、大地の恵みにより作る野菜本来のあり方とは違うのではないかと思う。

・家族構成やライフスタイルの変化に対応した野菜の提供方法(ばら売り、料理の仕方のわからない人に向けた組合せ野菜など)も重要である。

・地方では農産物の直売所が盛んであり、スーパーの中に直売所コーナーを設けているところもあり、東京と違った消費形態が生じつつある。

 機構としては、今回の意見交換会での議論を踏まえ、今後とも、機構の業務の円滑な実施、消費者の皆さんへの分かりやすい野菜関係情報の提供などに努めて参りたいと思います。



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