野菜業務第二部
1 はじめに
国民が健康で豊かな暮らしを実現するためには、我が国農業の健全な発展とともに、健康の維持に不可欠な、安全な国産野菜を安定的に供給できる体制の整備が重要です。
近年の野菜をめぐる情勢をみますと、野菜販売農家の高齢化、家庭内消費の減少と多様化、加工・業務用需要の増加、野菜輸入の増加に伴う価格低落と自給率の低下等が課題となっております。
こうした中で、平成13年のねぎ等3品目のセーフガード暫定発動を契機として、平成16年度までを構造改革期間として、国際競争に対応しつつ、消費者や実需者に選好される国産野菜を供給できるよう、生産から流通、消費にわたる野菜の構造改革を強力に推進することとされました。
このため、輸入急増農産物対応特別対策等の諸対策のほかに、平成14年度から46億円の財源をもって、野菜構造改革促進特別対策事業が組まれ当機構(平成15年9月までは旧野菜供給安定基金)が担当することとなりました。
本事業は、国内産地が「産地改革計画」に沿って、新たな技術の導入・実証等の先行的かつ集団的な取組みを行うのに助成し、もって需要者のニーズに合わせた生産を産地が行うようにするとともに、産地の競争力の強化に資そうとするものです。
つきましては、これまでに行われた事業の実施状況等について、2回に分けてご紹介します。
2 野菜構造改革促進特別対策事業の概要
この事業は、平成14年度から平成16年度の3ヵ年の事業で、全ての野菜を対象に、産地改革計画を策定し、都道府県知事の認定を受けている農協、集団等が、生産体制もしくは流通体制の改革につながる活動、需要拡大のための活動又は先行的かつ集団的に行われる技術改革を実行するのに対し、支援するものであり、新たな技術の導入等に要する事業費の1/2相当額以内について、補助する事業です。
対象となる活動は、低コスト生産や高付加価値化の推進のための、生物農薬やフェロモン剤、黄色防蛾灯、生分解性マルチなどの導入、堆肥や緑肥による土作り、契約取引の実施に伴う通い容器の導入、鮮度保持のための資材等の導入、さらには、需要拡大のための活動等多様な取組みが対象となっており、その対象となるメニュ-の例は別表のとおりです。
なお、平成14年4月から平成16年3月までに、この事業に取り組んでいる産地数(農協、集団等)は990となっています。
3 産地改革計画の策定
本事業は、産地改革計画を策定した産地を対象に行うこととされています。この産地改革計画については、野菜の構造改革対策において、野菜産地(農協、集団等)は、低コスト化、契約取引の推進、高付加価値化といった3つの戦略モデルを参考に産地ごとの特性や意向を踏まえ、明確な目標を定めた構造改革のための計画「産地改革計画」を策定し、都道府県知事の認定を受けることとなっており、その詳細は次のとおりです。なお、平成16年3月現在、産地改革計画を策定した延べ産地数は1,858となっています。
戦略モデル
(1)低コスト化タイプ
輸入野菜にコスト面でも対抗しうる産地とするため、生産・流通コストの3割程度の削減を目標として、徹底的な低コスト化の取組。
例えば、
(1) 高性能収穫機等を含めた機械化一貫体系を確立し規模拡大を図ることによる生産コストの削減。
(2) 施設野菜について、災害等に強く安価な低コスト耐候性ハウスの導入による設置コストの低減・生産性の向上。
(2)契約取引推進タイプ
加工、外食産業等の実需者ニーズに応えつつ、安定した経営を確保するため、定量、定価、定時、定質による契約取引の推進。
また、契約取引に当たって、規格の簡素化、流通コストの低減に寄与する通い容器による一貫利用システムを確立する等による流通の合理化・効率化の推進。
(3)高付加価値化タイプ
立地条件等により大幅なコスト削減が困難な産地や都市近郊産地において、地域特産品種や有機栽培野菜等消費者のニーズに対応した高付加価値野菜の生産による輸入品との差別化。
このような、生産のみならず流通・販売も含めた戦略を産地自らが策定し、計画的に取り組むことにより、産地を構成する個々の農家の意識改革。
(次回は、熊本県及び鹿児島県の実施状況についてご紹介します。
野菜業務第二部 調査役 椎名 康行)