1 契約野菜安定制度の創設
野菜の生産は天候等の影響を強く受けることから、野菜生産者(以下「出荷者」という。)にとって一定の供給量、価格等を事前に約束する契約取引は大きなリスクを伴います。
これまでの野菜価格安定制度では卸売市場に出荷されたもののみが対象であり、契約取引に伴って生じるリスクを軽減する制度ではありませんでした。
しかしながら、野菜の構造改革の推進のためには、野菜の契約取引の促進が重要であることから、野菜価格安定制度の中に、出荷者と加工業者、外食産業、量販店等の実需者との契約取引に伴うリスクを軽減するための契約野菜安定供給制度が創設されました(平成14年野菜生産出荷安定法の改正)。
更に、本制度を通じて生産者の顔が見える契約取引が円滑に行われることにより、消費者の皆さんへの野菜の安定供給が図られ、これまで以上に安心して野菜を購入していただくことに繋がると考えております。
本制度を積極的に活用していただきたく、この概要をご紹介します。
2 制度の仕組み
(1)対象となる契約取引
出荷者と実需者が書面により契約した取引が対象となります。
(2)対象となる野菜
(3)交付予約と負担金の納付
本制度に加入するには、交付予約を行い、負担金を納入します。
負担金については、国、都道府県から助成がなされています。
(4)補てん金の交付
本制度は、出荷者が契約取引に取組みやすくなるよう、契約取引の3つのタイプに応じてリスクを軽減します。
①価格低落タイプ(市場価格連動契約)
契約取引が、市場価格に連動した取引価格を設定して行うものである場合、市場価格が著しく低下すれば取引価格も下がります。このようなときに出荷者に交付金が交付されます。
②数量確保タイプ(定量定価契約)
ア 契約取引が、事前に数量と価格を定めて行うものである場合、天候不良により収量が不足すれば、何らかの方法で契約数量を確保することになります。この契約数量の確保のため、卸売市場に出荷する予定であったものを契約取引に回すこととすると、市場価格で販売していれば得られたはずの収入の損失が発生します。このようなときに、市場に出せば得られた差益分について交付金を交付します。
さらにひどい不作のときには、自分のところで生産したものだけでは契約数量を確保できません。
このような場合に、不足分を市場等から購入してでも契約数量を確保することが必要になりますが、そのときには掛かり増し経費が発生します。このようなときに、購入に要した掛かり増し経費に対し交付金が交付されます。
○対象契約:出荷数量と価格が旬単位以上で固定され、供給すべき野菜が不足する場合には当該野菜と同一種別に属する野菜を供給することを定めた契約
○交付金:全国一律に算出する平均取引価額が指標価額(基準価格の130%)を上回った場合であって、天候等による作柄変動等により契約数量を充足できなくなった場合に、
・市場出荷予定のものを契約取引にまわしたときは、平均取引価額と契約価額の差額の5割を補てん
・それでも不足し、市場等から購入した時は、購入価額と契約価額の差額の9割を補てん
③出荷調整タイプ(定量契約)
一定量を取引する契約取引を行った場合、当初の計画以上に収穫されたときは出荷調整を行う必要が生ずることがありますが、出荷調整した野菜については再生産費を回収することができません。
このようなときん、過剰生産分を出荷調整(産地廃棄等)した経費に対して交付金が交付されます。
○対象契約:出荷数量が固定された定量契約
○交付金 :全国一律に算出する平均取引価額が発動基準額を下回った場合、契約数量以上の生産量について価格低落時に出荷調整(産地廃棄等)を実施した時に出荷調整補給金交付金を交付
3 実需者にとってのメリット
交付金は出荷者サイドが受け取るものであり、直接的なメリットは出荷者サイドにあります。しかし、本制度を活用することで、出荷者も実需者のニーズに沿って予め決めた数量及び価格で供給する契約取引に応じやすくなりました。
この結果、実需者にとっても、
①天候等による生産の変動や市場価格の変動に関わらず、安定的に供給されること
②安定して一定の品質の原料が入手できることから計画的な製造が可能となり、施設・労力等が効率的に利用できること
といったメリットがあります。
実需者の皆さんにも、出荷者が本制度を活用することについて御理解・御協力をお願いします。
4 留意事項
◆機構への申込は、原則として、対象出荷期間の開始の約40日前までに、加入するタイプを決めて行うことが必要です。
◆申込みには、出荷者と実需者が予め書面により、野菜の種別、供給期間、数量、価格(価格の決め方)、不足した場合の出荷者の供給義務(数量確保タイプの場合のみ)等について締結された契約が必要です。
◆なお、予め取引基本契約を結んでおけば、数量等については覚書き等で双方が合意していることが確認できれば結構です。