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海外情報 野菜情報 2026年8月号

中国国内の需要増加と輸出先の多角化が進む中国産ブロッコリー

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調査情報部

【要約】

 中国では国内外の需要の伸びを受け、ブロッコリーの生産が増加しており、大都市部では高価格帯の有機ブロッコリーも販売されている。
 中国産ブロッコリーは、冷凍物を中心に対日輸出されているが、生産量に占める輸出割合は1割程度と少ない。しかし、既存輸出先からの需要が伸長していることに加え、新規輸出先の開拓も行われていることから、今後は輸出量の増加とともに輸出先の多角化と再配分も行われ、輸出先構成比が変化する可能性がある。

1 はじめに

 中国は、日本に輸入される野菜(注1)の58%(2025年、数量ベース)を占める最大の輸入先であり、同国の生産動向は、わが国の野菜需給に大きく影響を与える。
 24年の日本のブロッコリー供給量(国内収穫量+輸入量〈生鮮および冷凍の計〉)は24万1899トン、うち輸入量は8万1399トン、供給量に占める輸入の割合は33.6%となった。輸入ブロッコリーは冷凍物が中心で、国産品よりも価格優位性が高く、輸入先別に見ると25年は生鮮の96%、冷凍の56%を中国産が占めている(図1)。
 本稿では、中国の代表的なブロッコリー生産地である江蘇(こうそ)省および(せっ)(こう)省での聞き取りを中心に調査し、その結果を統計データと併せて報告する。
 なお、本稿中の為替レートは、1中国元=24.17円(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月央平均為替相場」の26年6月末日TTS相場)を使用した。

(注1)輸入野菜は、生鮮野菜、冷凍野菜、塩蔵等野菜、乾燥野菜、酢調製野菜、トマト加工品、その他調製野菜およびその他の野菜を指す。







 

2 日本のブロッコリーの需給動向

(1)生産状況
 ブロッコリーは、需要面では健康志向の高まりや、冷凍ブロッコリーの普及により家計消費だけでなく外食など加工・業務用需要も伸長している。また、生産面では水田転作やレタスなど他品目からの転作が進んだことなどから、近年の生産が増加傾向にある。24年産(4月~翌3月)の作付面積は前年と同じ1万7300ヘクタールとなった(図2)。
 
(2)輸入動向
 25年のブロッコリー輸入量のうち、生鮮は1872トン(前年比5.9%増)とやや増加し、冷凍は9万5278トン(同19.6%増)と大幅に増加した(図1)。25年は増加に転じたものの、為替変動などで輸入品の価格優位性が低下したことに加え、国内産の増加や周年供給が可能になったことなどから、生鮮の輸入は減少傾向にある。しかし、冷凍物は外食や中食などの業務用需要が伸長していることに加え、家計消費でも簡便商材としての需要が伸長していることから、冷凍物の輸入は増加傾向にある。
 



 
(3)平均取引価格
 東京都中央卸売市場における生鮮ブロッコリーの平均取引価格は、図3の通り。22年までは、収穫期後半である晩秋から初冬までの気温が比較的高く推移したことで市場流通量の多い秋冬作型ものの入荷量が潤沢であったため、価格は1キログラム当たり370円前後で推移していたが、23年以降は夏季の高温などの影響を受け、市場入荷量が減少し、24年は過去10年間で最も高い同478円となった。
 同市場のブロッコリー取扱量のうち3%程度を占める中国産を主とする輸入品は、国内産に比べ高い水準で推移している。輸入生鮮品の多くは市場外流通で外食などの実需者と直接取引され、市場流通品は少ない。市場流通する輸入品は、外食などの実需者が市場外流通で調達しきれない分を卸売市場で買い付けることなどから、引き合いが強いため輸入品が国産品の価格を上回っていると思われる。


3 中国のブロッコリー生産の動向

(1)中国の主産地と生産概況
 中国は世界最大のブロッコリー生産国であり、産地は沿海部や北西部、南西部に分布しており、2024年の作付面積は約11万ヘクタールとされる。主産地は沿海部の江蘇省、浙江省、南西部の雲南(うんなん)省、北西部の(かん)(しゅく)省などがあり(図4)、これら4省で中国国内作付面積および同生産量の5割を占めている(表1)。江蘇省および浙江省内の主産地を見ると、江蘇省は塩城(えんじょう)市および南通(なんつう)市、浙江省は寧波(ねいは)市および台州(たいしゅう)市と、両省とも沿海部に形成されている。
 江蘇省の生産状況を見ると、中国国内の内需拡大や、海外からの需要増加や価格上昇を背景に、生産意欲が高まったことから、作付面積は増加傾向にあり、24年の作付面積は全国の15.7%を占める1万7300ヘクタール(前年比3.6%増)となった(表2)。これは同年の日本全体のブロッコリー作付面積と同じ規模で、10アール当たり収量は、夏季の高温の影響があったものの1.91トンと前年よりわずかに増加した。


 
 なかでも亜熱帯湿潤気候の塩城市は、冬季でも比較的温暖で冬作型でも生育が安定していることから、江蘇省で最もブロッコリー栽培が盛んな地域である。特に、同市北部の県(注2)である響水(きょうすい)県は市内最大のブロッコリー産地であり、同県の24年の作付面積は6700ヘクタール(北海道の約2倍)、収穫量は12万5000トン(同約4倍)で、同省全体の約4割を占めている。また、響水県の南に隣接する浜海(ひんかい)県も同市内ではブロッコリー栽培が盛んであり、24年の作付面積は2000ヘクタールを超えている。
 響水県および浜海県の両県政府は22年、ブロッコリー生産振興のため、定植苗に補助金を措置した。これにより生産者の作付け意欲が高まり、両県ではブロッコリー作付面積および生産量が増加した。
 浙江省の生産状況を見ると、24年の作付面積は全国の13.9%を占める1万5300ヘクタール(前年同)、10アール当たり収量は、冬季の低温・乾燥によるべと病の発生などがあったものの、前年同の1.83トンで、近年は江蘇省同様、作付面積は増加傾向にある(表3)。
 台州市の県級市である臨海市は、1989年に中国で最初にブロッコリー栽培が始まった産地であり、2003年には国から「中国ブロッコリーの郷」の称号が与えられている。臨海市の24年の作付面積は4700ヘクタール、生産量は9万トンと、中国国内で最大規模の秋作型および冬作型産地を形成している。また、台州市の北に隣接する寧波(ねいは)市もブロッコリー栽培が盛んである。

(注2)中国は省・自治区の下に三区分の行政区域(一級:省級行政区画、二級:県級行政区画、三級:郷級行政区画)があり、省級行政区画である地級市が管轄する県級行政区画には、市轄区、県級市、県、自治県、旗、自治旗、特区および林区がある。





 
(2)主産地の栽培暦、栽培品種および栽培コスト
ア 栽培暦
 中国のブロッコリー栽培は露地栽培と施設(ハウス)栽培があり、このうち露地栽培の面積は全体の約85%以上を占める。また、露地栽培および施設栽培とも、すべての季節で定植しており、2~4月以外はリレー出荷体制を構築している(表4)。産地ごとの作型の分布を見ると、春および夏作型は河北省、甘粛省、雲南省など、秋および冬作型は江蘇省、浙江省、湖北省、山東省などが多い。

タイトル: p080b
 
イ 栽培品種
 中国のブロッコリー品種は、日本や欧米の種苗企業のものが多いものの、主産地の江蘇省や浙江省では、外国産品種から公立研究機関の育成品種へ置き換えが進んでおり、これら産地の主力品種となっている(表5)。
 特に、浙江省農業科学院・野菜研究所はブロッコリー育種を意欲的に進めており、早生種である「美青」、中生種の「浙青」は地元浙江省だけでなく、江蘇省の代表的品種に位置付けられている。
 耐暑性品種は、国産品種に置き換えが進んでいるものの、耐寒性品種については、依然として「耐寒優秀((株)サカタのタネ)」などの日本の品種が主力となっている。

タイトル: p081a
 
ウ 栽培コスト
 2025年の江蘇省の10アール当たり栽培コストを見ると、最も比率が高いのは人件費、次いで土地代、肥料費、種苗費となっている(表6)。22年と比較して25年のコストは15%上昇しており、コスト比率に大きな変化はないものの、同上昇率は種苗費が21%、人件費が20%、肥料費が13%など、コスト比率の高いものは同上昇率も高くなった。これらのコストが上昇した要因として、1)国産品種の種苗費は、外国産品種から置き換えた際の開発・普及コストが苗価格に上乗せされているため、外国産品種より高値、2)人件費は若年層の農外流出による労働力不足、3)肥料費はエネルギー価格の上昇や世界情勢の変化のほか、有機栽培に対応するための高価な有機肥料の使用、4)土地代は農地流動化を促進してきたことで、借地料を含む土地取引価格が上昇していること-などが挙げられる。
 浙江省も江蘇省と同様の傾向となっているが、江蘇省よりも土地代や人件費が高く、栽培コストはやや高くなっている(表7)。

タイトル: p081b
 
(3)機械化や栽培技術の進展状況
ア 管理作業までの機械化
 ブロッコリーは、収穫作業以外の工程を比較的機械化しやすい品目であり、主産地の江蘇省および浙江省では管理作業までの機械化が進んでいる。主なものは日本と同様で、1)セルトレイ育苗対応の自動播種(はしゅ)機、2)自動または半自動定植機、3)中耕培土などのための管理機、4)防除ドローン、5)かん水用スプリンクラー(追肥用の液肥施用対応)―などが挙げられる。()(らい)保護のため日本同様、収穫は手作業だが(写真)、近年はブロッコリー収穫機の開発などさらなる機械化が進められている。

タイトル: p082
 
イ 栽培技術の標準化と環境負荷低減栽培
 前述の通り、機械化栽培を軸にした定植などの栽培技術の標準化が図られており、定植は作型や地域特性などに考慮しつつ、定植深、株間、畝間などが標準化されることで、栽培技術練度に左右されず、初期生育が安定する。
 また、耕種的防除や土壌診断による適正施肥などにも取り組んでおり、施肥・防除コストの削減や環境負荷低減のほか、病害虫の薬剤抵抗性リスクや過剰施肥による軟弱生育の防止など、健全な生育につなげている。
 さらに、大規模圃場(ほじょう)などを中心にIoT(注3)などのスマート農業技術が導入され、土壌水分計(pFメーター)やセンサーなどで土壌中の水分量、養分などを常時モニタリングし、それらのデータを標準的生育モデルと組み合わせることで、適切な栽培管理を行うとしている。

(注3)Internet of Thingsの略。「モノのインターネット」という意味で、機械などさまざまな「モノ」をインターネットに接続する技術。

ウ 有機栽培認証と普及状況
 近年、中国でもさまざまな農畜産物で有機栽培認証(以下「有機認証」という)取得の動きが広がっており、ブロッコリーでも主産地を中心に有機認証取得産地が増加している。その事例として臨海市では、同市作付面積全体の約3割に当たる1300ヘクタールで有機認証を取得しており、さらに同7割に当たる3300ヘクタールで緑色食品認証(注4)(以下「緑色認証」という)を取得している。また、響水県では、同県作付面積の約15%に当たる1000ヘクタールで有機認証を取得し、さらに同30%に当たる2000ヘクタールが緑色認証を取得している。主産地以外でも有機認証の取得推進が積極的に進められており、河北省、雲南省、湖北省などの一部地域でも有機認証または緑色認証を取得した生産者などがいる。
 政府は、有機認証取得支援として取得費用補助金を措置しており、生産者の申請コストを軽減している。浙江省では、有機認証取得圃場に対し、1ムー(約6.7アール)当たり200~300元(4834~7251円)の補助金を交付している。
 有機認証取得支援のほか、取得後も有機栽培を継続させるため、政府は有機栽培技術サービスチームを組織し、生産者に対して有機栽培技術研修や病害虫防除指導などを実施している。また、有機ブロッコリーの有利販売、市場開拓として農産物展示即売会の開催やEコマース(電子商取引)プラットフォームによるプロモーションなどを実施している。

(注4)政府系の中国緑色食品発展センターが認証。持続可能な生産原則に基づき、同センターが指定する特定の生産方式で生産され、汚染されていない安全、優良な品質の食品が対象。
 
(4)ブロッコリー栽培における課題
ア 上昇する人件費
 これまで中国の野菜生産現場では、内陸部からの出稼ぎ労働者が低賃金で作業を行ってきたが、近年は出稼ぎ労働者が他産業に就業してしまうことなどから、農業企業などで労働力確保が問題となっている。仮に労働力が確保できた場合でも、年々上昇する他産業と同水準の賃金を支給すると、人件費の増大に伴う生産コスト上昇による収益性低下が懸念される。

イ 生産性を低下させる気候変動リスクと連作障害
 近年、地球温暖化などにより顕著な高温や豪雨、干ばつなどが発生しており、露地栽培のブロッコリーにとって、気候変動リスク対応が喫緊の課題となっている。このため、地方政府の農業農村局では生産者などに対し、高度な農業気象情報である「精密農業気象サービス」による災害警報システムを構築し、かん水・排水対策の徹底や収穫期の前倒しなど、同リスク低減技術の実現を促している。
 また、設備投資余力のある農業企業などに対しては、同リスク低減のために露地栽培から環境制御がしやすい施設栽培への転換を促している。これにより、厳寒期の保温対策も露地栽培より容易になることから、同リスク対策だけでなく、収穫期の長期化に資するとしている。
 ブロッコリーは、連作障害のリスクがある作物であり、連作が常態化している農業企業などの大規模圃場では、連作障害が多発している。また、収量増加のために化成肥料の大量施用を行ってきた圃場では、前作の窒素分残留などによる定植後の軟弱徒長と病害発生リスクの増加が問題となっている。このため、定植前土壌診断による施肥設計適正化、健全な根張りのための有機質など土壌改良材施用が行われている。さらに、アブラナ科以外の品目との輪作体系構築による土壌病害リスク低減策も進められている。
 長期的に健全な土壌環境を維持するとともに、消費者の安全・安心な農産物需要に対応するため、有機栽培などの環境負荷低減栽培を導入する動きも見られる。同技術の導入に当たっては、耐病性品種の導入や耕種的防除とともに前述の災害警報システムの活用により、IPM(注5)を実践することが必要である。

(注5)Integrated Pest Management(総合的病害虫管理)。病害虫の発生および増加の抑制と、病害虫発生初期における防除を適時で経済的なものにするために必要な措置を総合的に講じて行うもの。

4 中国国内での販売状況

(1)成長するブロッコリー市場
 高まる消費者の健康志向を受け、中国国内のブロッコリー需要は伸長しており、これに併せて販売量も増加している。2022年に192万トンだった販売量は、23年は201万トン、24年には211万トンと、毎年10万トン程度増加している。
 平均価格は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大により需要低迷した22年は1キログラム当たり4.3元(104円)だった。しかし、COVID-19が収束し始めたことで需要が回復し、23年は同4.8元(116円)、24年は同5.2元(126円)と毎年0.5元(12円)程度高くなっている(図5)。この背景として、需要回復以外に、高価格帯の有機ブロッコリーが、食の安全・安心を強く求める消費者心理に合致し、家計消費での需要が伸びたことがあるとされている。
 

 
(2)家計消費が主体の国内消費
 2024年の中国のブロッコリー消費構造を見ると、63%が家計消費向けとなっている(図6)。
 家計消費向けを都市区分別に見ると、平均所得の高い一級都市(注6)では、量販店の個包装品や有機ブロッコリーなど高価格帯商材が主流となっている。これに対し、一級都市より所得の低い二級、三級都市では、伝統市場などによる比較的低価格帯商材が主流となっている。
 家計消費向け販売は量販店や伝統市場が中心だが、近年、新たな販路として、BtoCオンラインサイトによる産地から消費者への直販や、マンション住民単位などで生産者から共同で購入する「社区団購(しゃくだんこう)」という産直共同購入なども行われており、これらの販売割合も増加している。
 家計消費向けに次いで多いのは外食向けの25%で、中華料理店の炒め料理などで使用されるほか、近年は健康志向によりカフェやサラダバーなどのメニューにも多く採用されるようになった。また、セントラルキッチン調理が中心のファストフードでも使用されているが、一定の規格が求められるため、選別ライン改修などの出荷対応が急がれている。
 加工品(中国国内および輸出向けの合計)は12%で、加工向けは主に冷凍品、乾燥品、粉末品としてその多くは輸出用に仕向けられており、これらは甘粛省などで有機栽培されたものが原料として用いられる。近年需要が増加している中国国内向け加工品は、健康食品や幼児向け栄養補助食品に利用されている。

(注6)一級都市は大都市で、かつ国際的にも影響力を持つ北京市、上海市、広州市および新セン市の4都市。二級都市は、省内で比較的大きな規模と比較的大きな地域的影響力を有する省級市。三級都市は地級市などを指す。
 

5 輸出・加工状況

(1)国内生産量の1割程度にとどまる輸出量
 中国国内でも需要が増大しているため、供給量に占める輸出量は生鮮および冷凍を合わせても1割程度に過ぎず、2024年は23万トンだった。
 輸出価格は、22年の1キログラム当たり1.34元(32円)から24年には同1.53元(37円)と、国内需要が伸長していることなどが影響して年々高くなっている(図7)。
 なお、主な輸出先は日本、韓国、EUなどであり、このうち日本向けは輸出量全体の16%程度を占めている。
 中国産ブロッコリーの輸出産地のうち、浙江省、江蘇省および雲南省の上位3省で全輸出量の5割弱を占めており、そのうち輸出量第1位の浙江省は、全輸出量の3割前後を占める大産地となっている(表8)。毎年、上位3省とも輸出量は1割程度、輸出額は2割程度増加している。
 輸出向け形態の内訳を見ると、最も多いのは生鮮で、次いで日本向けで多い冷凍となっている(表9)。なお、製品重量割合は低いものの、脱水加工のフリーズドライやパウダーは、生鮮品換算にすると輸出量内訳の中でもかなりの割合になると思われる。






 
(2)上昇する加工コスト
 生産現場同様、冷凍などブロッコリー加工業でも労働力確保が問題となっており、加工コストの過半を占める人件費が上昇している。江蘇省の2025年のブロッコリー1トン当たりの加工コストを見ると、人件費は22年比23.3%増の1480元(3万5772円)と大幅に上昇している(表10)。また、段ボールなどの梱包資材費や輸送費も上昇傾向にあり、これらのコスト上昇が加工企業の収益低下につながっている。
 浙江省の同加工コストを見ると、人件費は同比14.4%増の1510元(3万6497円)と江蘇省より高いが、他のコストも同省より高いことから、加工コスト全体に占める人件費比率は江蘇省より0.8%低い46.5%となっている(表11)。

タイトル: p086
 
(3)ブロッコリー輸出・加工における課題
ア 引き続き上昇が見込まれる加工コスト
 前述の通り、労働力確保のため人件費の上昇は大きな問題となっている。現在の生産体制を維持するためには、より高い賃金、より良い福利厚生を維持し、既存労働力のつなぎ止めと新規労働力の確保が求められ、人件費は今後も上昇することが見込まれる。
 梱包資材費、輸送費および光熱費も引き続き上昇することが見込まれる。このうち梱包資材費は、板紙生産コストの上昇による段ボール仕入れ値の上昇に加え、他産業からの需要増加で引き続き値上がりする可能性がある。輸送費および光熱費は、中東情勢の悪化で原油価格が高騰しているため、これまで以上に上昇する可能性がある。
 人件費対策としては選別機、カッティングマシンなどの導入による、冷凍加工前の手作業工程の省力機械化によるコスト削減が求められる。これにより、加工場の労働環境改善も期待できる。
 梱包資材費対策としては、これまでの段ボールから再利用可能なリターナブルコンテナ(輸送用容器)の使用が始まっている。通気性の良いリターナブルコンテナを使用することで、コールドチェーンによる鮮度保持も期待できる。
 輸送費対策としては、物流コスト削減のため、個々の農業企業、合作社(協同組合組織)など(以下「企業など」という)が所有、手配したトラック輸送から、複数の企業などによる共同配送へのシフトが見られる。さらに、安価でより多くの者が参加できる共同物流として、鉄道輸送利用の動きも見られ、浙江省から北京市までの冷蔵コンテナ列車の運行も始まった。

イ より高付加価値が見込める加工品開発の必要性
 中国産ブロッコリーの輸出形態のうち3割は冷凍で、その主要輸出先である日本ではエクアドル産よりやや低価格帯で販売されている。今般、円安により対日輸出の収益性が低下している。このため、増大する中国国内市場のうち、比較的高所得層向けの加工品を対日輸出することでの収益確保が求められている。具体的には冷凍物のほか、パウダー、缶詰、チップス菓子といった長期保存可能品、健康志向に訴求した青汁の原料などが挙げられる。これらにさらなる価値を付加するものとして、有機ブロッコリーなど、より消費者に訴求しやすい栽培方法により生産された原料を加工品に使用することが望ましいとされている。なお、有機ブロッコリーは高付加価値な生鮮品として、中国国内でも高級量販店などで販売されている。

ウ 輸出先の多様化
 現在、ブロッコリー輸出は日本、韓国といった東アジアや米国、欧州向けが中心となっている。これら輸出先での需要は安定しているが、今後も中国国内での生産量の増加が見込まれることに加え、今般の世界情勢の変化などに対応するため、新たな輸出先開拓が始まっている。具体的には、経済発展と健康志向によりブロッコリー需要が伸長している東南アジアや中央アジア、富裕層が多く購買力が高い中東などが挙げられる。関係者によると、輸出先の多角化により、より有利な輸出先に重点を置くことで、これまでの輸出先構成比が変化する可能性があり、これら新規開拓市場への輸出量は、今後3年で年平均15%ほどの伸長が期待できるとされる。

6 おわりに

 日本ではブロッコリーの家計消費、外食などの実需者それぞれからの需要が伸長しており、国内生産が増加している。しかし、原価率重視の外食・中食産業やより経済性を求める消費者などのニーズから、価格競争力を持つ中国産冷凍ブロッコリーの需要は底堅さが見られる。
 その中国においてブロッコリーは、伸長する国内外の需要を受けて作付面積および生産量とも増加しているが、生産量に占める輸出割合は1割程度と少ない。しかし、輸出先からの需要伸長に加え、新規輸出先開拓も行われていることから、今後は輸出量増加とともに輸出先の多角化と再配分も行われ、輸出先構成比が変化する可能性がある。
 国産野菜による加工・業務用野菜の国産シェア奪還を目指す上で、中国の伸長する国内需要、輸出先多角化による輸出先構成比の変化などを引き続き注視してまいりたい。