NZで生産されるCucurbita属(カボチャ類)には複数の品種が存在し、日本向けに輸出されるかぼちゃ(Buttercup Squash)と、NZ国内で消費されるパンプキン(Pumpkin)は、異なる作物として捉えられている(コラム1参照)。本稿では、日本向けに輸出されるButtercup Squashをかぼちゃと表記する。
(1)栽培と対日輸出拡大の経緯
1970年代の日本では、国内の価格が、主要産地からの供給の減少する1~5月が高い水準にあったため、かぼちゃは季節野菜として扱われていた。
このため、価格高騰期を狙い、日本の青果物専門商社や卸売業者が種苗会社と協業し、日本とは季節が逆となるNZでの産地開発を進めてきた。
他方NZでも、NZ園芸作物輸出権限法
(注1)に基づき設立された園芸作物輸出局
(注2)の下部組織として、88年にNZかぼちゃ協議会が設立された。同協議会は園芸作物輸出局の下で、輸出促進や品質管理、市場開拓など、輸出に特化した事業を実施している。
このように、日本の民間企業主導の産地開発、産地形成に呼応したNZのかぼちゃ生産者の存在および政策に基づく業界主導の輸出促進体制・品質管理によって、80年代に対日輸出は大きく拡大した。また、85年9月のプラザ合意
(注3)以降、為替相場が円高で推移し輸入価格が低下したことも、輸入増に寄与したとみられる。
(注1)1987年に園芸作物の効果的な輸出マーケティング促進を目的に制定された法律。
(注2)輸出マーケティング戦略の企画・立案と、傘下団体の会員に対する輸出ライセンスの付与を主な業務とする組織。
(注3)1985年に日本、米国、西ドイツ(当時)、イギリス、フランスの5カ国の財務大臣、中央銀行総裁によるドル高修正に向けた協議での合意。
(2)主産地と生産動向
NZのかぼちゃ生産は、主に北島で行われている(図5、表1)。中でも東部のギズボーンとホークスベイが主要生産地であり、公表データがある2022年時点では、両地域でNZのかぼちゃ作付面積全体の約99%を占めている。両地域は温暖な気候と
肥沃な土壌を特徴とし、かぼちゃ生産のほか、同じく主要輸出品目であるリンゴやキウイの主産地としても知られている。
NZ全土のかぼちゃの作付面積は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大以前は、おおむね6500ヘクタール前後で推移していた。しかし、COVID-19による世界的な物流の混乱などが影響し、2021/22年度(7月~翌6月)には5643ヘクタール、22/23年度には3830ヘクタールと大きく減少した(図6)。
22/23年度は、23年2月に北島を襲ったサイクロン「ガブリエル」の影響で、生産量が前年度比51%減の3万2234トンと大幅に減少した(表2)。23/24年度の生産量はサイクロン被害から回復し、6万2368トンにまで増加した。10アール当たりの単収は、21/22年度以前が1.3トン前後だったのに対し、22/23年度は災害の影響から同0.84トンまで落ち込んだが、23/24年度には災害前よりも高い1.57トンにまで増加した。
(3)生産者数
かぼちゃ生産者数は、2000/01年度には245者だったが、02/03年度には141者へと急減し、その後も増減を繰り返しながらも減少傾向で推移し、24/25年には19者となった(図7)。
生産者減少の背景には、経営コストの上昇に加え、雇用労働者の労働安全および食品安全に関するコンプライアンス強化に伴う負担増など、NZ農業全体の構造変化があるとみられる。労働力や輸送費など生産関連コストが増え続ける中、大規模生産者はスケールメリットによりコスト吸収が可能であるが、小規模生産者では経営維持自体が困難となり、離農や他の生産者への農地貸付・売却が進んでいる。同様にかぼちゃ生産も大規模化により一定の生産量が確保される中、小規模生産者の
淘汰と集約が進む傾向にあり、さらなる集約化や新規参入の動向が注目される。
(4)主な品種・作型
NZで生産される日本向けかぼちゃの品種は、「えびす」、「味平」、「ほっこりえびす」、「くりゆたか」、「蔵の匠」など日本の種苗会社が育種したものが多い。近年は
嗜好の変化から、粘質のえびす系よりも粉質の栗系品種の生産が増えている。また、ミニかぼちゃの「坊ちゃん」や食感と甘みに優れた「マロンドール」なども一部で栽培されている。
かぼちゃは、
播種後およそ100日程度で収穫でき、NZでは一般的に9~12月にかけて播種(直播)し、1~4月ごろに収穫される。着果肥大以降において生産コスト増加の一因となる、玉回し(実の底部にもしっかり色がつくよう、実を回し、底部に日が当たるようにすること)などの作業は省力化されている。
(5)収穫から輸出まで
収穫から輸出までの日数は、収穫・選別・乾燥に3日間、梱包・輸送に3日間、その後2週間かけて輸送(船便)され、計3週間程度で日本に到着する。収穫されたかぼちゃは選果場で十分に洗浄した後、目視などでサイズや品質により選別される(写真1、2)
※。
かぼちゃ協議会は、輸出向けかぼちゃのサイズや重量に規格を定めていないものの、生産者による一般的な選別は三つの段階に分けられ、最上位が輸出向け、次いで国内向け、最後に酪農用の飼料向けとなる。これらの選別は見た目と重さ、傷の数によって決定されている。また、輸出向けのうち、日本向けに不適合なものは韓国や中国向けとなる(表3)。選別後に木箱(700キログラム)に詰められ、青果物用の冷蔵コンテナで輸送され(写真3、4)、日本に到着した後は、段ボールに詰め替えられて流通・販売される。
(6)RSE制度による労働力確保と人件費への影響
かぼちゃの収穫・選別・梱包作業が集中する1~6月にかけては、多くの労働力が必要とされている。特に収穫は手作業で行われるため、収穫機1台に十数人の人員確保が必要となる。農作業に従事する労働者不足は日本と同様にNZでも深刻な問題であり、そのためNZでは、外国人労働力確保のため、認定季節労働者(RSE:The Recognised Seasonal Employer)制度(以下「RSE」という)が導入されている(コラム2を参照)。2007年から開始した同制度では、認定季節労働者に対するさまざまな支援が定められている(表4、写真5)。
また、24年9月の同制度の改正時には、認定季節労働者を1シーズン7カ月で3年連続雇用した場合には、報酬を10%加算することが定められた。現地関係者によると、認定季節労働者の人件費は5年間で25%上昇しており、26年の最低賃金は時給25NZドル(2420円)になるなど、日本の25年度の平均最低賃金(1121円)に比べて約2倍の水準となっている。NZ国内の人件費上昇の問題のみならず、為替変動や中東情勢の悪化に起因する資材費や輸送費上昇の問題などもあり、かぼちゃの生産・輸出に影響するとされている。
しかし、これらの問題が背景にあっても、東京都内小売店でのNZ産かぼちゃの販売価格(26年3月)は、100グラム当たり45~59円と、前回(18年)調査時の平均値に比べ上昇は緩やかに抑えられている(表5、写真6)。これは、高単収品種の導入や規模拡大による生産コスト低減など、さまざまな取り組みの成果によるものとみられる。