(1)中国の主産地と生産概況
中国のごぼう主産地として、
山東省、
江蘇省、
陝西省、
河南省、
湖北省、
安徽省、
浙江省などが知られている(図6)。日本では、きんぴらや煮物、サラダなどで消費されているが、中国では、日本のように野菜として消費する習慣がなく、薬用としての消費が主流であった。現在でも、安徽省などでは、政府を挙げて地元産ごぼうを中薬材
(注3)として利用し、ブランド化する政策を実施しており、中薬材栽培としてのごぼう栽培も注目されている。
また、中国のごぼうも日本と同様に春まきと秋まきがあり、生産地域によって収穫時期が異なる(表2)。
(注3)健康目的として利用される自然素材。漢方薬などの原材料で、日本では生薬とも呼ばれる。
このうち作付面積が1位の山東省および2位の江蘇省は、ごぼう生産の歴史が長い主産地である。
国内作付面積の約5割を占める山東省の生産状況を見ると、2023年の作付面積は1万6074ヘクタール(前年比7.6%増)、収穫量は70万1000トン(同8.7%増)と、いずれも前年よりかなりの程度増加した(表3、写真1)。単位面積当たりの収益が向上したことで、農家の栽培意欲が向上し、生産量の増加につながったとみられる。
国内作付面積の約3割を占めている江蘇省の生産状況を見ると、23年の作付面積は9071ヘクタール(前年比24.8%増)、収穫量は40万トン(同26.2%増)と、いずれも大幅に増加した。作付面積および生産量が増加した要因の一つに、省市政府によるごぼう栽培の拡大を支援する動きがある。例として、江蘇省
徐州市政府は、栽培技術指導などの推進政策を導入しており、規模拡大や生産資源の共有、ごぼう栽培新規参入を目的としたごぼう団地の建設を、徐州市の
豊県や
沛県で行った。
また、山東省および江蘇省のごぼうの単収を見ると、各年とも10アール当たり約4トンを超え、日本の同1.75トン
(注4)の2倍以上となっている。
ごぼう生産の経営形態は、個人農家、合作社
(注5)、企業であり、これらの形態が協力し合って生産を行っている。山東省では、農家が植え付け、栽培管理などを合作社、販売を合作社または企業が行っている。一方、江蘇省では農家が植え付けと栽培管理、合作社が技術支援と販売を行っている。これらにより、集約的な栽培、管理、機械収穫が実現し、農家の収益向上につながっている。
(注4)農林水産省「令和6年産野菜生産出荷統計」より。
(注5)地域の指導者、例えば農村の書記などを中心に地元の同業農家が共同で法人を設立するもので、法人に関する制度としては日本の農業協同組合に近い。
(2)主産地の栽培品種および栽培暦
山東省と江蘇省で栽培される品種は、日本の種苗メーカーのものが普及しており、春、秋まき兼用種の「柳川理想」が主力品種である(表4)。また、「黄皮ごぼう」など産地独自の品種もあり、地理的表示制度
(注6)に登録されている。
山東省および江蘇省では、春と秋の年2回植え付けを行っており、どちらの省も収穫時期に大きな差はない(表5)。
(注6)中国では知的財産権の保護や、特色ある農産物の地域ブランドを形成し、有力な地域産業の育成に寄与するための地理的表示制度が運用されている。
(3)栽培コスト
ごぼうの栽培コストについて、主産地である山東省と江蘇省を比較すると、地理的に近く、気候条件や土壌条件が似ていることから、10アール当たりの栽培コストに大きな差はない(表6、7)。栽培コストの構成比を見ると、両省の2021年および24年ともに人件費が約30%以上を占め、次いで農業機械・器具費が約17%、借地料が約16%となった。両省の21年と24年の栽培コスト変動比を見ると、いずれの項目もおおむね15%前後上昇している。
項目ごとに見ると、人件費や肥料費、農薬費が最も増加した。増加要因のうち人件費は、農村部から都市部への人材流出で労働需給が逼迫し、減少した人材を補塡・維持するために、最低賃金の改定といった処遇改善が必要となったためとみられる。肥料費は、肥料原料の高騰による肥料製造コストの上昇に加え、農家が増産や品質向上のために、より高効率な肥料を選択する傾向にあることが、肥料支出を一段と押し上げているとみられる。農薬費は、農薬製造コストの上昇が要因とみられる。
近年のごぼう生産を取り巻く状況として、ごぼうは、根の生長と発育に適した環境を整えるための深耕に労働力や技術力が必要とされており、担い手不足が問題となっている。江蘇省では、江蘇省農業科学院の専門家らが3年間で約2000人の農家に対しごぼう生産の現場指導を行い、栽培技術の向上につなげる取り組みを行っている。また、労働力への依存度を下げるべく、植え付けの大規模化や標準化、機械化を進めている。特に、両省は他の産地と比較して機械化が進んでおり、1分間当たり7メートルの溝を掘ることができる溝掘り機や、
播種機を使用している。他にも、ドローン利用などによる病害虫発生の常時監視および早期予察で防除効果を高め、ごぼうの収量と品質の向上につなげている。
(4)調製コスト(人件費、梱包資材費など)
山東省および江蘇省のごぼう1トン当たりの調製コストについて、2021年と24年を比較すると、水道光熱費を除くすべての項目で増加した(表8、表9)。両省で、最も構成比の高い人件費は、21年および24年とも全体の約5割を占めている。これは、栽培コストでの人件費増加と同様に、人材を補塡・維持するために賃金の改定などを行ったことが人件費の上昇要因となっている。
次に、構成比全体の約2割以上を占める梱包資材費について、梱包資材自体の生産コスト増に伴う価格高騰や、企業が消費者の意識変化に対応した梱包資材の刷新に注力していることが、梱包資材費用の上昇要因となっている。
構成比の約1割を占める輸送費の増加については、原油価格の高騰および輸送業界における人件費の上昇が影響しているとされている。