(1)2024年の生鮮野菜の消費量は減少
レタスは、生産量と輸入量がともに前年より減少した一方で、輸出量が増加したことにより、国内の供給量が減少したことから消費量が減少した。非結球レタスの1人当たり消費量は、1990年代の平均2.7キログラムから2020年代には平均7.7キログラム台に増加した。これに対し、結球レタスは、90年代の平均10.9キログラムから、2020年代の平均が6.4キログラムとなっており、24年は過去最低の5.6キログラムとなった(表2)。このような変化についてUSDAは、消費者が非結球レタスの方が結球レタスに比べて栄養価が高いと認識していることが要因と分析している。
かぼちゃは、生産量が前年比11%減、輸出量が同12%増となり、輸入量も微減となったことにより、国内の供給量が減少したことから消費量が減少した。
にんじんは、生産量が同約16%減、輸出量が同12%増となったことにより、国内の供給量が減少したことから、消費量がかなり大きく減少した。にんじんの消費量に占める輸入品の割合は年々増加し、2020~24年にはその割合が過去最大の22%と、2000~04年(8%)の3倍近くとなった。
(2)2024年の主要生鮮野菜の生産量は減少
生鮮野菜は、生産量の約3分の2が露地栽培である。2024年の生鮮野菜の上位5品目の生産量は、レタス、トマト、にんじん、かぼちゃの減少分が、たまねぎの増加分を上回ったこと、また、作付面積の減少と単収の低下などから、前年比5.0%減となった(表3)。上位5品目以外では、スイートコーン、ブロッコリーなどの生産量が減少した。
(3)生産者価格は2024年に上昇、2025年1~5月は前年を下回って推移
生産者価格に関する野菜価格指数(2011年を100とする)は、2024年に前年比11%高の173.5となり、22年に次ぐ過去2番目に高い水準となった(図2)。指数の上昇は、トマト、レタスなどの主要野菜の生産量の減少による生産者価格の上昇が要因である。一方、25年の生鮮野菜の生産者価格は、1~5月の各月とも前年同期を下回っている。25年5月の野菜価格指数は、前年同月比23.1%減の123.7となっている。
24年2月のトマト、たまねぎがそれぞれ前年同月比で2倍強、結球レタスが同71%高と大幅に高かったことにより、25年2月のトマトは前年同月比69%安、スイートコーン同62%安、結球レタス同50%安などとなったことから、同期の生産者価格は全体的に大幅に値下がりした。
(4)カリフォルニア州の貯水量が平年より増加
2024年夏の猛暑は、野菜生産に悪影響を及ぼした。今夏も同様の状況であれば、単収の低下を防ぐために
灌漑用水を増やす必要がある。多くの野菜を生産するカリフォルニア州では、シエラネバダ山脈における冬季の積雪が、作物栽培に必要な水の約30%を供給しているため、毎年4月1日の積雪量が水供給の重要な指標となる。25年の積雪量は、平年より4%、24年より22%、いずれも少なかった。しかし、州内の貯水池の貯水量は平年に比べて約17%多かった。このため、長期予報では、野菜主産地のカリフォルニア州中央部などを除き、同州の大部分が7月までは干ばつによる被害は起きないとされている。
(5)投入資材価格は、2022年以降、大きな変化なし
2020~22年は、異常気象、ロシアのウクライナ侵攻、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大に伴う供給網の混乱により、野菜生産の投入資材価格指数が平均26%上昇した。23~24年の投入資材価格指数の変動は、これよりはるかに小幅であり、上昇率は23年は前年比0.1%増、24年は同0.3%増といずれも前年並みとなった(表4)。現在のところ、25年1、2月の投入資材価格指数は、前年同期に比べて0.5%低くなっている。
図3は、15~24年のインフレ率(GDPデフレーター)、投入資材価格指数および野菜生産者価格指数の推移を示している。比較を容易にするため、各指数は、COVID-19の感染拡大が始まった20年を100としている。
20~23年のコロナ禍には、投入資材価格指数が年平均6.3%上昇し、同期間のインフレ率(4.2%)を上回った。この間、野菜生産者価格指数は年平均8.5%上昇し、22年には前年より45%上昇した。
24年の投入資材価格指数は前年をわずかに下回り、野菜生産者価格指数は同約11%高となった。なお、25年第1四半期の投入資材価格指数は、前年同期比0.5%減となっている。
ほとんどの野菜生産者にとって、賃金が生産費の約3分の1を占め、最大の費目となっている。24年の賃金上昇率は約3%となり、23年(同5.5%)、22年(同7.4%)に比べて小幅な上昇率であった。25年は、農業労働者の最低賃金の上昇率が平均4.5%(時給約2557~2668円)になると予想されている。
燃油価格は、米国の原油生産量が増加したことにより値下がりした。化石燃料は肥料の原料にもなるため、窒素肥料価格は、原油価格が上昇した21年(前年比30%強増)、22年(同約85%増)に大幅に値上がりした。窒素肥料の価格は、原料となる天然ガスの価格が23年は同41%、24年は同14%下落したことにより、それぞれ37%、10%下落した。25年は、発電用天然ガスの世界的な需要増と天然ガス在庫の減少により、天然ガス価格が前年の約2倍になると予想されており、肥料価格も値上がりする可能性がある。
(6)輸入量は増加、輸出量は減少
かんしょを除く米国の生鮮野菜の貿易は、カナダおよびメキシコとの間が主体となっている。米国は輸入野菜に大きく依存しており、2024年は輸入量が輸出量の約4倍になった(表5)。25年1、2月の生鮮野菜(ばれいしょを除く)の輸入量が前年同期比2.1%増であったのに対し、輸出量は同6.8%減であった。
(7)有機および温室栽培野菜
ア 2025年第1四半期の生産者価格は下落
2025年第1四半期の生鮮野菜(有機・慣行)の生産者価格は、全体として前年同期に比べて下落した(表6)。なお、25年4月のロメインレタスとセロリの生産者価格は、アリゾナ州の生産量の増加分がカリフォルニア州中央部の生産量の減少分を上回ったことにより、前年同期に比べて下落した。葉物野菜やセロリの産地は、カリフォルニア州中央部とアリゾナ州西部・カリフォルニア州南部との間を季節移動する。
イ 2024年の有機野菜の輸入割合はきゅうりが最大
2024年の有機野菜の輸入量は表7のとおりである。
24年の生鮮野菜(有機および慣行)の輸入額上位3品目はトマト、きゅうり、ピーマンであり、品目ごとの月間総輸入額に占める有機の割合は、きゅうりが14~20%、トマトが3~8%、ピーマンが7~11%であり、金額・数量共に70%以上が温室栽培であった。
