(2)潤沢なかんがい用水と価格高により加工用トマトの生産が増加
2023年はカリフォルニア州のセントラル・バレー地域の各地で、冬の嵐による洪水が発生し、春になっても圃場は湿潤状態が続いた。このため、春の移植と秋の収穫に遅れが生じたが、かんがい用水が潤沢となったことやトマト製品に対する需要の高まりにより、加工用トマトの生産者は、高単収と高値による恩恵を受けた。
23年上半期にカリフォルニアトマト生産者協会と加工業者は、慣行栽培のトマトの基本契約単価を、ここ数十年の最高値となる1トン当たり2万3000円とすることで合意した。
高まる需要から、トマトペーストの在庫は前年度よりもさらに減少したため、トマトペースト価格は上昇基調にあった。主要トマト加工業者によれば、バルク(55ガロン(208リットル)ドラム缶入り)の23年秋のトマトペーストの価格は、トマト可溶性固形分の含有割合の増加により、1キログラム当たり278~398円と、23年春の価格(同263~380円)に比べて5~6%高くなっている。この価格水準は、20年の加工用トマトの生産者価格である同131円よりはるかに高いが、1980年代の生産者価格(同589円:インフレ調整後)に比べると高くはない。
23年8月に公表されたUSDAの報告書によると、23年のトマトの生産契約数量は1423万トンと、前年の1157万トンから23%の増加が予測されている。
輸出入統計によれば、23年1~10月のトマト加工品の累計輸入量は、前年同期比で約16%減少している(図4)。これは、23年の輸入量(生鮮重量換算)の70%以上を占めるトマトソースの輸入量が、前年同期比18%減となっているためである。一方、トマト加工品の輸出入額は、加工用トマトの単価が前年より30%以上高くなっているため、前年よりも増加する可能性がある。
対照的に、23年1~10月のトマト加工品の累計輸出量は、前年同期比1.4%増であった。輸出量の変化は、半分以上を占めるトマトペーストと約3分の1を占めるトマトソースの輸出量の変化によるものである。なお、直近23年10月の状況を見ると、トマトソースの輸出量は15%増、トマトペーストの輸出量は同6%減となっている。
22年と23年の貿易状況の違いは、国内生産の増加、旺盛な国内需要、トマト価格の高騰を反映している。米国のトマト加工業者は、国産品で輸入品を代替しつつ、国外への安定的な製品供給を維持している。
(3)冷凍野菜の在庫量がわずかに減少
米国で生産される加工用野菜の多くは、夏の終わりから秋にかけて収穫、加工、貯蔵されるが、野菜加工品の流通・販売は、通年で行われている。また貿易は、国内の消費者が年間を通じて多種多様な野菜加工品を入手できることに役立っている。さらに、生鮮野菜とともに冷凍品などの野菜加工品は、消費者に味覚を含む食の多様性や栄養を提供する上で重要な役割を果たしている。
USDAは、農産物を30日以上保管する約600カ所の低温貯蔵施設のリストを管理し、これらの施設を月1回調査し、冷凍野菜の供給量の変化を観測している。2023年10月には、前年同月比0.5%減となる約171万9100トンの野菜とばれいしょが冷凍貯蔵されていた。このうち、約32%がばれいしょ、28%がスイートコーン、8%がグリーンピース、7%がいんげん豆、5%がにんじん、2%がブロッコリーであった。
(4)貿易状況:野菜加工品の輸出入額が増加
2023年1~10月の野菜加工品の輸入額は、前年同期比7.6%増の9001億円であった。カナダは、野菜加工品の輸入先として最大であり、米国の野菜加工品輸入量の25%以上を占めている。カナダからの野菜加工品の輸入額は、前年同期比18%増の2897億円、メキシコからの輸入額は同9.9%増の1679億円といずれも増加した。一方、中国からの輸入額は同20%減の501億円であった。
同期間の冷凍野菜の輸入額は、ばれいしょが2494億円(前年同期比26.4%増)とブロッコリーが570億4000万円(同11.9%増)が牽引して同14.8%増となった。冷凍野菜の輸入量は、前年に249万4800トンの過去最多を記録し、23年にはさらに前年同期比1.1%増加した。冷凍野菜は、過去3年間の野菜加工品の輸入量の54%、輸入額の49%を占めていたが、大部分が冷凍ばれいしょ製品であった。
同期間の調理・調製済み野菜の輸入額は、同4.7%増の3179億円であった。トマトケチャップ(輸入額53.4%増、輸入量41.9%増)などのトマト加工品(輸入額で35.5%増)およびポテトチップス(輸入額47.8%増、輸入量27.8%増)の増加分が、アーティチョークなどの減少分を上回った。
同期間の野菜加工品の輸出額は、同5.4%増の5422億円であった。カナダは米国の野菜加工品の最大の輸出先であり、同国への輸出額は同3%増の1448億円であった。第2位と第3位の輸出先であるメキシコと日本向けの野菜加工品の輸出量は、前年同期よりわずかに減少しているが、輸出額ではそれぞれ同15.4%増、同13.8%増となっている。
同期間の冷凍野菜の輸出額は、ばれいしょの輸出額(同13.1%増)が牽引し、同8.6%増の2169億円となった。一方、かんしょ(同85.1%減)やほうれんそう(同42.9%減)などの冷凍野菜の輸出額は大幅に減少した。また、輸出量を見ると、冷凍野菜全体では同12%減となった。
同期間の調理・調製済み野菜の輸出額は、同4.8%増の2808億円となった。これにはトマト(輸出額11.6%増、輸出量4%増)とポテトチップス(輸出額8.2%増、輸出量9.3%増)の増加が貢献した。