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海外情報 野菜情報 2023年10月号

韓国産トマトの生産・輸出と消費の動向

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調査情報部

要約

 韓国産生鮮トマトは、日本国内で流通する輸入トマトの過半を占め、一定の品質と価格の優位性などから、業務用を中心に広く利用されている。しかし、同国では、栽培コストの上昇などから、今後は取引価格の上昇が懸念されているほか、同国内でも、健康志向の高まりなどから自国消費の増加も想定され、日本国内の供給量確保の点でも、同国の動向に注視が必要である

1 はじめに

 野菜は、気候条件などによる供給量の変動が価格に大きく影響することから、施設園芸で野菜を生産し、供給の安定化を図ることが重要とされる。しかし、近年、日本の施設園芸農家戸数(野菜類)は、高齢化や担い手不足などに伴い減少傾向にあり、2020年には2000年と比較して4割程度減少となる9万6000戸となり(図1)、栽培延べ面積も同2割強減少の3万9500ヘクタールとなっている(図2)。施設園芸で生産される野菜の中で、主要生産品目であるトマト(大玉トマトおよびミニトマト。以下同じ)は、栽培延べ面積が全体の2割弱を占め、産出額でも野菜全体の1割を占める基幹作物となっているが(図3)、栽培延べ面積は前述のとおり減少傾向にある。

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 一方、隣国の韓国では、トマトやパプリカをはじめとする施設園芸で生産する野菜を輸出戦略品目と定め、1991年から2000年にかけて同国政府が実施した先端農業施設師範団地事業(注1)などにより、施設園芸を推進してきた。同国は日本にとって生鮮トマト(生食用を意味し、加工用を含まない。以下同じ)の最大の輸入先となっており、21年の生鮮トマトの輸入量のうち同国産が7割を占めた。同国産の生鮮トマトは小売店などで目にする機会は限定的であり、主に中食や外食などでハンバーガーやサンドイッチ、サラダ類など、多種多様なメニューの食材として使用されている。
 本稿では、トマトの主要輸入先の1つである韓国のトマト生産および流通動向などについて報告する。
 なお、本稿中の為替レートは、1ウォン=0.11円(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均為替相場」の23年8月末日TTS相場)を使用した。
 
(注1)政府が、加温施設に対して大規模な支援を行った国庫補助事業。本事業の国庫負担は、累計で8800億ウォン(968億円)。負担割合は国60%、融資40%で、施設建設時の自己資金の負担はなかった。

2 日本における韓国産トマトの位置付け

(1)日本のトマトの消費・生産状況
 総務省の家計調査(二人以上の世帯)によると、日本の1世帯当たり生鮮トマトの年間購入数量は、2000年の12.8キログラムから10年には10.8キログラムにまで減少したが、22年には11.1キログラムとわずかに増加している(図4)。生鮮野菜の年間購入数量を見ると、多くの品目が減少傾向にある中で、トマトの消費量が増加している要因として、健康志向の高まりによるサラダ需要の増加のほか、近年では甘みの強い品種が浸透し、消費層が拡大傾向にあることなどが背景にあるとみられる。また、22年度に農林水産省が実施した「アフターコロナを見据えた野菜・果物の消費動向調査(注2)」によると、対象者2098名のうち16%が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大に伴い「野菜を食べる頻度が増加した」と回答し、摂取が増えた野菜としてブロッコリーに次いでトマトが挙げられた。このように、トマトは栄養価の高い緑黄色野菜として評価が高く、需要が伸びている品目の1つである。
 
(注2)農林水産省:令和4年度「アフターコロナ」を見据えた野菜・果物の消費動向調査結果と野菜・果物のレシピ紹介(https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/engei/aftercovid19/1.html、本誌57・58頁参照)

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 日本のトマトの生産状況を見ると、従来は夏野菜の代表として夏季の露地栽培が主流であったが、現在は施設園芸による栽培が普及し、周年供給体制が実現している。東京都中央卸売市場の国産トマトの月別入荷実績を見ると、5~8月にかけて入荷量が多い傾向にあるが、その他の月も6000~8000トン台で安定的に推移している(図5)。
 また、周年出荷されるトマトは、出荷時期により夏秋トマト(7~11月)と冬春トマト(12月~翌6月)に分けられる。夏秋トマトは北海道、茨城県、福島県、岐阜県などの比較的冷涼な高冷地を中心に、冬春トマトは熊本県、栃木県、愛知県、千葉県を中心に産地リレーによって生産されている。21年の国内収穫量72万5200トン(前年比2.7%増)のうち、冬春トマトは39万4900トン(同2.7%増)、夏秋トマトは33万300トン(同2.8%増)であり、近年は冬春トマトの収穫量が半数以上を占めている(図6)。

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 さらに、国産トマトは収穫量の約8割がビニールハウスやガラス温室などの施設園芸で栽培され、残りが雨よけや露地で栽培されるなど、収穫量に占める施設園芸の割合が非常に高くなっている(図7)。前述のとおり、施設園芸で栽培されるトマトの栽培延べ面積は減少傾向にあるが、単収の上昇(20年の単収は、10アール当たり6360キログラム:12年比13.2%増)などから、収穫量はほぼ横ばいで安定的に推移している。

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(2)韓国産トマトの輸入状況
 生鮮トマトの輸入量を見ると、2020年以降はCOVID-19の拡大に伴う物流の停滞や外食需要の減退を受けて減少傾向にある(図8)。22年の生鮮トマトの輸入量は6254トン(前年比25.4%減)と大幅に減少しているが、COVID-19の位置付けが5類感染症になった中で、今後は中食や外食からの需要回復が見込まれている。また、過去10年間の生鮮トマトの輸入量を見ると、輸入先には大きな変動がないものの、各国からの輸入量に大きな変化がみられる。以前は輸入量の大半を米国産が占めていたが、韓国産やメキシコ産など安価な生鮮トマトの輸入量が増加したことなどから、米国産は減少傾向にある。年によって変動はあるものの、近年は日本に輸入される生鮮トマトの5~7割程度が韓国産となっている。
 また、過去5カ年の生鮮トマトの月別輸入量を見ると、直近の22年を除き、国産の出荷量が減少する7~12月に増加する傾向がある(図9)。

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 韓国産トマトの平均輸入単価を見ると、1キログラム当たり305~344円と安定的に推移している。メキシコ産やカナダ産と比較しても低い水準で推移しており(図10)、供給の安定性や価格面から業務用需要者からの評価が高く、韓国産は日本国内で一定の地位を確立している状況にある。

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3 韓国のトマト生産の動向

(1)生産概況
 韓国の施設園芸農家戸数は、2021年に14万5649戸(前年比15.2%増)と前年からかなり大きく増加したものの、13年以降の推移を見ると、日本と同様に、高齢化や担い手不足から緩やかな減少傾向で推移している(図11)。同国の政府系研究機関である韓国農村経済研究院(以下「KREI」という)によると、21年の増加理由について明確な理由は不明としているものの、COVID-19の拡大を受けて、都会を離れて地方に移住する人が大幅に増加し、就農および帰農する人が増えたことが背景にあるものと推測している。

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 また、施設園芸による栽培面積は0.3~2.0ヘクタール規模が主流となっており、10ヘクタールを超える大規模経営は全体の2%程度しかいない(図12)。
 同国では、全国各地でビニールハウスやガラス温室などの施設園芸によりトマトの栽培が行われている。韓国統計庁によると、同国北部の江原(こうげん)(どう)など一部地域では露地栽培が行われているものの、生産量はごくわずかであるため、10年以降は露地栽培に関するデータは集計されていない。
 同国のトマトの施設栽培面積は10年を底に上昇基調にあり、14年には7070ヘクタール(前年比16.8%増)を記録した。しかし、急激な生産量の増加に伴い卸売価格が下落したことなどから、翌年には6976ヘクタール(同1.3%減)と減少に転じている(図13)。その後も卸売価格の下落から栽培面積の減少が続いたものの、18年にはピ-マンや花卉など他品目からの転換が進んだことで増加した。21年には6010ヘクタール(同8.9%増)となり、過去最長の梅雨と台風に見舞われ価格が高騰した前年の影響を受けて、かなりの程度増加した。また、同年の収穫量も36万9000トン(同7.4%増)とかなりの程度増加し、10アール当たりの単収は6146キログラムとなった。KREIが発表した22年の農業展望によると、トマトの栽培面積は消費需要が堅調に推移しているため、多品目からの転換と規模拡大により、中長期的には年平均0.6%増で緩やかに増加し、26年には6330ヘクタール、31年には6403ヘクタールに達すると予想されている。また、生産量は26年には39万7000トン、31年には40万6000トンに達するとされている。

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(2)生産地域と作型
 韓国のトマトの生産方法は、土耕栽培(促成、半促成、抑制)と養液栽培があり(写真1)、地域ごとに定植時期と出荷時期をずらすことにより、ほぼ1年を通しての出荷が可能となっている(図14)。また、主産地は(ちゅう)(せい)南道(なんどう)、江原道、全羅(ぜんら)北道(ほくどう)および全羅(ぜんら)南道(なんどう)であり、この4地域で生産量の5割以上を占めている(図15、表1)。

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 土耕栽培のうち促成栽培は、秋に定植した後、収穫期間が冬から春になるため、栽培期間の多くで加温を必要とする。このため、促成栽培は比較的温暖な全羅北道以南の南部で多く行われている。半促成栽培は、冬に定植した後、収穫期間が春から初夏になるため温度管理が行いやすいことから、韓国のトマト栽培方法の大部分を占めており、南部と忠清地方で多く行われている。抑制栽培は、初夏に定植した後、収穫開始が盛夏期となり、夏の高温・梅雨や乾燥などを避けるため、冷涼な準高冷地や高冷地(江原道、京畿道の一部など)で行われている。また、ミニトマトでは、土を使わずに肥料成分を水に溶かした養液栽培が主流となっている(写真1)。養液栽培には土の代わりに固形物質を培地として用いる固形培地耕と固形物質を用いずに根に直接養液を接触させる水耕栽培があるが、同国ではパーライト耕(注3)を培地として使用した養液栽培が最も多い。
 
(注3)火山岩や珪藻土などを原料として、高温で熱処理してできる発泡体。加熱することで、膨張し、多孔質になることから、通気性や土壌の軽量化に優れており、土壌改良資材として使用される。
 
(3)栽培コスト
 2021年の大玉トマト(促成栽培)およびミニトマトの10アール当たり栽培コストのうち、最も大きな割合を占めるのは施設償却費、資材費、水道光熱費、人件費で、この4項目で栽培コストの7割以上を占めている(表2、表3)。また、種苗費は、収量と耐病性を重視するため、割高な海外品種を使わざるを得ず、圧縮が難しい状況にある。さらに、2018年産から21年産の3年間で、修繕費が大幅に上昇しているが、施設の老朽化に加え、頻発する異常気象による施設の損壊などが背景にあると考えられる。

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(4)卸売価格と小売価格の推移
 2021年の大玉トマトの卸売価格は、1キログラム当たり平均3573ウォン(393円)となった。年間の卸売価格の推移を見ると、忠清地域の収穫が終了する9月や年末年始の需要期は価格が高い時期となり、出荷量が多くなる5~7月ごろに価格が低落している(図16)。20年および22年は夏季の梅雨の影響で作柄不良となったことから8~9月の価格が高騰した。同年の小売価格は、同5822ウォン(640円)とおおむね卸売価格に連動する形で推移している(図17)。

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(5)輸出動向
 トマトの輸出量は、国内生産量の1%程度と少ないものの、輸出されている生鮮トマトのうち96%以上が日本向けとなっている(図18)。日本への輸出は、物流コストが安価な船舶により輸送されるが、地理的にも近いため輸送時間は1日程度と短い。韓国では輸出先の多角化を目指して台湾、香港、シンガポールなどの新たな市場開拓を行っているが、対日輸出依存度は依然として高い。

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4 韓国のトマト消費と流通の動向

(1)消費動向
 2021年の韓国の1人当たり年間トマト消費量は6.9キログラムである。22年農業展望によると、健康志向の高まりから消費量は年々増加しており、26年には同7.3キログラム、31年には同7.5キログラムまで増えると予想されている。
 また、18年に農村振興庁が消費者856人を対象にトマトの購入について調査したところ、大玉トマトを好む消費者は206人(24%)、ミニトマトを好む消費者は408人(47.7%)であり、ミニトマトはその手軽さから需要が高まっている。摂取形態を見てみると、大玉トマトは朝食にジュースにして飲むか、午後または夕方に軽食として摂取し、ミニトマトは主に午後または夕方にそのまま摂取する頻度が多いとされている。さらに、消費者がトマトを購入する際に考慮する点では、「味(糖度)」と「鮮度」が最も重視され、次いで「価格」、「硬さ(硬度)」、「安全性」の順とされている。
 同国では、トマトは野菜ではなく果物として認識されており、主にデザートとして消費されてきたため、スーパーや八百屋では果物売り場に陳列されることも珍しくない(写真2)。現在は、サラダやパスタなどの食材などその用途は拡大しているものの、かき氷やケーキのトッピング材料としてスイーツに利用されることも多い(写真3)。

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 また、近年は、SNSを中心に若者の間でロゼクリームというソースが流行している。ロゼクリームとは、ホワイトソースや牛乳にトマトを混ぜてロゼ色(バラ色)にしたクリームソースのことで、クリームのまろやかさで辛みが特徴である韓国料理がマイルドになることや、その見た目の可愛さから若者を中心に人気が高まっている。ロゼトッポギやロゼラーメンなどいったロゼクリームを利用した「ロゼフード」の人気も高まっているとされている(写真4)。

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(2)流通経路
 国産トマトの生産量が多いことから、2001年以降は生鮮トマトの輸入実績は無く、ほぼ100%を自国産で賄っている。
 国内向けのトマトは、生産者から農協などの生産者団体に出荷された後、卸売市場、小売業者または量販店を経由し、収穫から2日程度で消費者に届けられる(図19、写真5~8)。国内流通は、生産者団体から卸売業者に引き渡される量が46%、量販店などの大型流通業者に引き渡される量が49%となっている。近年は、卸売業者の割合が低下し、大型流通業者の割合が上昇する傾向にある。生産されるトマトの6割以上が、大型流通業者を経由して消費者に届けられており、大型流通業者の影響力が強まっている。また、日本への輸出(生産量の1%)は生産者団体が直接輸出することで、流通経費を軽減し、価格競争力を確保している。

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5 韓国におけるスマートファーム普及に向けた取り組み

 韓国でも、日本と同様に生産者の高齢化や担い手不足が深刻化する中で、労働生産性を向上させ、高品質化を可能にするスマートファーム技術の開発・普及に注目が集まっている。
 韓国政府は2022年、ビッグデータや人工知能(AI)など4次産業革命技術を活用し、農業分野におけるデジタル技術の開発と普及を目的として878億ウォン(96億5800万円)を投資する計画を発表した。また、同国政府は施設園芸分野のスマートファーム普及に向けて、外部環境(外部温度、風速、雨量、照度)や施設内環境(二酸化炭素量、土壌水分量、培地水分量)を測定するセンサーや制御装備(換気扇、天窓、側窓)の設置を推進するため、補助事業を通じたさまざまな支援を行っている(表4、写真9~12)。

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 さらに、同国政府はスマートファームに特化した青年就農者の育成を目的として、18年から「スマートファーム革新バレー」計画を推進してきた。現在までに国内4カ所(全羅北道、全羅南道、慶尚北道、慶尚南道)に研修拠点を構え、各施設では、満18~39歳の青年就農者を毎年50人程度受け入れ、20カ月の期間でトマト、イチゴ、パプリカなどの栽培やスマート農業技術について教育を行っている(図20)。

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 このうち、慶尚南道の革新バレーでは、寄宿舎が完備され、月20万ウォン(2万2000円、光熱費含む、食堂利用料別途)で研修生の住まいも確保されている。また、教育修了生には融資申請資格が付与されるほか、成績優秀者には賃貸型スマートファームの優先入居権(圃場(ほじょう)面積500坪前後、入居期間3年)が付与されるなど、研修後にはスムーズに経営を始めるための仕組みも構築されている。
 また、近年は情報通信技術(ICT)の発展とともに、花粉媒介昆虫にもスマート技術を適用する研究が進められている。施設園芸では、施設内での受粉が必要になるため、ミツバチやマルハナバチなどの花粉交配用昆虫が利用される。同国のトマト生産における花粉交配用昆虫の使用率は84.5%(注4)となっており、花粉交配用昆虫は農業の生産性向上に重要な役割を果たしている。また、各種デジタルセンサーと無線通信機能を組み合わせた花粉媒介用デジタル蜂巣が開発され、徐々に普及している。蜂巣をデジタル化することで、蜂巣内部の温度、湿度、二酸化炭素濃度、餌量をデータ化し、画像処理を通じて蜂の活動量を監視することが可能となる。特に、8月の高温時期のトマト栽培時には、デジタル蜂巣を活用すれば、従来比1.2倍の着果量が期待できるとして、その有効性が確認されている。
 これらのように政府による支援とともに、今後も同国ではICTやロボット技術の活用が促進されるとみられる。
 
(注4)韓国国立農業科学院農村開発庁(2021)『昆虫花粉媒介者の利用状況と展望』

【コラム スマートファームの取り組み】

 忠清南道にあるイ・ウング農場では、スマートファームを導入し、高品質のトマトを生産している。イ代表(コラム―写真1)は「一定の収入を得るためには、一定の収量が必要であり、以前はそれだけの収量を得るためには、1日中農場で働かなければならず、自然にスマートファームの導入を考えるようになった」という。従来の農業方法に限界を感じたことが、スマートファームの導入のきっかけになっている。同農場は韓国政府から2400万ウォン(264万円)の支援を受け、養液自動供給装置や浄水器を導入し、土耕栽培から養液栽培に切り替えた。その他にも、流動・排気ファン、保温カーテン制御装置、温室環境センサーなどを導入している(コラム―写真2)。スマートファームの導入前は1坪当たりの生産量が20.9キログラムであったが、導入後には同25.5キログラムと2割以上増加し、1坪当たりの売上高もスマートファームの導入前の10万5882ウォン(1万1647円)から11万ウォン(1万2100円)に増加した。また、スマートファームを導入して最も満足度が高いのは、人件費を削減できた点であるという。
 同代表の周辺でもスマートファームの導入を希望する農家は多いが、彼らが感じる最も大きい心配は、やはり費用としている。しかし、同代表は、このような農家に対して最初からすべてを揃えようとせず、本当に必要な機能を吟味し、必要なオプションだけを導入するのも一つの方法とアドバイスしている。スマートファームの導入に関し、最も重要となるのは情報収集であり、スマートファームを無作為に導入するよりも、先導農家を回ってアドバイスを聞き、自身に合ったスマートファームと施設を導入することが大切だと語っている。

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6 おわりに

 韓国産生鮮トマトは、外食・中食を中心とした一定の需要を背景に日本の輸入量の過半を占めている状況にある。しかし、同国では、栽培コストの上昇が課題となっており、為替相場の変動とともに、今後は取引価格も上昇していくことが想定される。また、同国内では健康志向の高まりなどからトマトの消費量が伸びており、国内への仕向け量増加も見込まれる。
 一方で日本では、施設園芸の農家戸数が減少傾向にある中で、トマトの栽培面積も減少傾向で推移し、燃料費や肥料費、農薬費といったさまざまな栽培コストは上昇傾向にあり、単収の増加などから生産量は横ばいで推移しているものの、予断を許さない状況にある。主要な野菜であるトマトの安定供給に向けては、国内生産の安定が求められるが、引き続き日本の需要や輸入動向、加えて主要輸入先である韓国の輸出や消費動向について幅広く注視していくことも必要と考えられる。