まず、(1)世界における中国の野菜生産の位置付け(2)中国の野菜輸出入量とこれまでの変化(3)中国野菜の輸出構造―などの面から中国の野菜輸出の特徴について分析を行う。
(1)世界における中国の野菜生産の位置付け
図1に2020年の主な野菜生産国の生産量について、上位10カ国を示した。ここから分かる通り、同年の中国の野菜生産量は6億6797万1000トンと世界第1位であり、世界の野菜生産量の52.3%を占めた。これに次ぐのがインドの1億3965万8000トン(同10.9%)であり、米国、トルコ、ベトナム、エジプト、メキシコ、イラン、ナイジェリア、ロシアと続く。これら上位10カ国のうち6カ国がアジアに属しており、その野菜生産量の合計は世界の野菜生産量の69.7%を占めた。同じく上位10カ国のうち、中国とベトナムはRCEP協定加盟国であり、その野菜生産量の合計は同53.8%を占めた。このことからも、野菜生産におけるRCEP協定加盟国の重要度がうかがえる。
(2)中国の野菜輸出入量とこれまでの変化
図2に直近10年(2011~20年。以下同じ)の世界の野菜貿易額に占める中国の割合を、図3に直近10年の中国の野菜輸出の状況をそれぞれ示した。世界の野菜貿易額は緩やかな増加傾向を呈しており、直近10年の平均貿易額は676.3億米ドル(9兆5203億円)、2020年には747.4億米ドル(10兆5211億円)に達した。2020年の中国の野菜輸出額は96.7億米ドル(1兆3612億円)であり、直近10年の平均輸出額93億米ドル(1兆3092億円)をやや上回った。また、直近10年の世界の野菜貿易額全体に占める中国の野菜輸出額の割合は「横倒しのS字型(緩慢な下降―緩慢な上昇―緩慢な下降)」を呈しており、平均(中国の野菜輸出額/世界の野菜輸出額)で13.7%となった。2020年の中国の野菜輸入額は19.6億米ドル(2759億円)であり、直近10年の平均輸入額21.4億米ドル(3012億円)をやや下回った。この間の世界の野菜貿易額全体に占める中国の野菜輸入額の割合は漸減傾向にあり、平均(中国の野菜輸入額/世界の野菜貿易額)で3.2%となった。
図3に示す通り、直近10年平均の中国の野菜の輸出量は729万トン、輸出額は92.98億米ドル(1兆3089億円)であった。中国の野菜輸出額は比較的変動幅が大きく、中でも2012年の輸出額は2011年比で21%減少している。また、同年の輸出量はわずかに減少しており、主に生鮮・冷凍野菜および乾燥野菜の輸出量が減少している。この原因として以下の3点が挙げられる。
●2012年3月1日から野菜の輸出税還付政策が取り消しとなり、輸出コストが上昇し、輸出競争力が下がったこと。
●2011年に野菜の価格が大幅に上昇した影響により、2012年の作付面積が拡大し、生産量の増加から価格に非常に大きな影響を及ぼしたこと。
●2011年から農業用資材のコストが大幅に増大し、輸出の利益がいっそう圧縮されたこと。
2012年から2017年にかけて中国の野菜輸出額は徐々に増加し、2017年には2011年の水準を超える111.6億米ドル(1兆5710億円)となった。その後、野菜輸出額は減少し、2020年には新型コロナウイルス感染症の影響を受けてかなり大きく減少した(前年比12%減)。しかし、直近10年の中国の野菜輸出量は相対的に安定し、やや増加している。輸出額は輸出量の変化に連動して変化しているとは限らないが、それは主にここ数年の野菜輸出価格の変動の影響による。
(3)中国野菜の輸出構造
中国の野菜輸出について、品目(大分類と主要品目)、輸出先、輸出野菜の国内供給地の3つの面から中国の野菜輸出の構造を分析する。
ア 野菜輸出の品目構造:大分類と主要品種
中国税関の統計に基づき、国連商品貿易統計データベース(UN Comtrade)のHS(Harmonization System)商品分類システムに照らして中国の輸出野菜を分類し、表1に中国の輸出野菜の大分類と主要品目を示した。
表1に示す通り、中国の輸出野菜は、生鮮・冷蔵野菜、冷凍野菜、一時保存野菜、乾燥野菜、その他茎類野菜の5つに大きく分類され、HSコード701~714の野菜は、「中華人民共和国税関輸出入税則」が列記するすべての野菜を網羅している。
表1に列記した野菜の品目について中国の各種野菜の輸出割合と輸出量を整理し、図4に中国の野菜の大分類ごとの輸出割合を示した。
中国の生鮮または冷蔵の野菜の輸出割合を見ると、直近5年(2016~20年。以下同じ。)は年々上昇する傾向を呈しており、2016年の68.7%から2020年には76.6%に上昇した。この点から分かる通り、生鮮または冷蔵の野菜の輸出は中国の野菜輸出の中で重要な地位を占めている。
冷凍野菜の輸出割合は比較的安定しており、5年間の平均割合は12.7%であった。一方、乾燥野菜の輸出割合は年々減少する傾向を呈しており、2016年の14.9%から2020年には7.8%に減少した。一時保存の野菜およびその他の茎類野菜の輸出割合は比較的小さい。
図5に示したのは、直近5年の大分類ごとの中国の野菜輸出量である。中国の野菜輸出量は全体に増加傾向を呈しており、2020年の輸出量は885.9万トンに達した。輸出量が多い順に並べると、生鮮または冷蔵の野菜は678.1万トン、冷凍野菜は112.2万トン、乾燥野菜は69万トンであった。
図6に示したのは、野菜の細分類ごとに並べた中国の上位5種類(ねぎ類、からし菜類、根菜、生鮮または冷蔵のその他野菜、冷凍野菜)の輸出割合である。直近5年間の野菜全体の輸出量に占めるこの上位5種類の割合は約70%以上であった。このうち、輸出割合が最も高いのはねぎ類で、直近5年間の割合は30%以上となり、2020年の割合は36.2%であった。次いで冷凍野菜(同12.7%)、からし菜類(同11.5%)、根菜(同9.4%)、生鮮または冷蔵のその他野菜(同8.3%)の順であった。
図7に示したのは、野菜の細分類ごとに並べた中国の上位5種類の野菜の輸出数量である。直近5年の中国の上位5種類の野菜の輸出量は461.7万トンから691.3万トンに増加した。このうち、輸出量が最も多いのはねぎ類野菜で毎年200万トン以上となり、2020年には300万トンを突破した。次いで、冷凍野菜(111.2トン)、からし菜(同102万トン)、根菜(同83.3万トン)、生鮮または冷蔵のその他野菜(73.3万トン)の順であった。
(4)輸出野菜の国内供給地
中国の輸出野菜の主な供給地は、山東省、雲南省、湖北省、広西チワン族自治区であり、図8にその状況を示した。この4省からの野菜輸出は基本的に安定しているが、このうち山東省は変動が最も大きく、湖北省はやや減少、雲南省はやや増加している。
2020年の山東省、雲南省、広西チワン族自治区、湖北省、湖南省および江蘇省の6省の野菜輸出額は全国の72%を占めた。