野菜 野菜分野の各種業務の情報、情報誌「野菜情報」の記事、統計資料など

ホーム > 野菜 > 野菜の情報 > ブラジルにおける有機農産物の需給動向~有機野菜を中心として~

海外情報 野菜情報 2023年6月号

ブラジルにおける有機農産物の需給動向~有機野菜を中心として~

印刷ページ
調査情報部

要約

 ブラジルの有機農産物は、法令で規定されてから約20年経過したが、この間の消費者の健康志向や食の安全性への関心の高まりを背景に、消費量は増加傾向で推移してきた。また、近年では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による消費者の健康志向の高まりなどの影響もあり、その増加傾向が加速している。今後もこの傾向が続くとみられるが、インフレなど経済情勢に伴う消費者の購買力の変化などは、有機農産物の消費に影響を及ぼすとみられる。

1 はじめに

 ブラジルの有機食品市場は、大きな市場を有する米国、ドイツ、フランス、中国、日本などと比べて規模は小さいものの、南米では最も大きな市場とされている。また、ブラジルの有機農産物および加工品(以下「有機農産物等」という)市場は、健康意識の高まりなどを背景として急速に拡大している。特に近年は、COVID-19の流行、ウクライナ情勢に伴う肥料をはじめとする生産コストの上昇、インフレの高進など、有機農産物等をめぐる情勢が変化して
いる。
 本稿では、同国の有機農産物等について、有機野菜を中心にその概要および近年の需給動向などについて報告する。
 本稿中の為替レートは、1レアル=27.02円(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年4月末日TTS相場)を使用した。

2 有機農産物の概要

(1)ブラジルにおける有機農業の確立
 ブラジルの有機農業は、法律などで定義されていない1970年代から、肥料や農薬を多用して生産性を高める農法の代替として取り入れられた。80年代半ば以降は、生産者団体の活動としてこれに取り組む生産者や生産量が増加してきた。このような状況に対応して、消費者や生産者、環境保護団体などの間で、有機農業の規制の導入を求める声が上がり、特に92年のリオネジャネイロでの国連環境会議(ECO92)を契機に、一層その機運が高まった。
 94年には有機農業の規制の導入に向けた検討が始まり、99年には有機農業に関するガイドラインを政府が通達し、初めて有機農産物の生産が公式に認められた。そして、2003年には、有機農産物の生産と商品化に関する規範を定めた法律(2003年12月23日法律第10831号)が制定された。この法律では、有機農産物の取引に対する公式認定機関による認証の取得や、製品のトレーサビリティ、生産・加工現場への監査の義務化などが規定された。さらに07年には、03年の法律に基づく政令(2007年12月27日政令第6323号)が定められ、有機農業の役割や指針、有機農業への転換、慣行農業との共存、国内販売、輸出入、認証方法など詳細な要件が規定された。
 その後、関連するいくつかの規範命令が公布されたが、21年にはこれまでの規則を改正・統合した規範命令(2021年12月27日規範命令第52号)が公布され、現在に至っている。現行の規定により、義務化された主な項目は次の通りである(表1)。

タイトル: p055a

(2)主な規定
ア 認証制度

 有機農業を行う生産者(以下「有機生産者」という)は、農産物を生産・販売する場合、次の(ア)~(ウ)の3つの認証方法のうちいずれかの認証を受ける必要がある。ブラジル農牧省(MAPA)は、有機農業適正評価システム(SisOrg)を構築し、認証団体の認可、生産者の登録、有機農産物等であることを証明するロゴの使用などの一括管理を行う(図1)。

タイトル: p055b

(ア)審査認証
 審査認証は、MAPAおよび国家度量衡・規格・工業品質院から有機認証の対象となる作物生産、家畜生産、加工、種子・苗、採取、キノコ類、 養蜂、養魚、繊維製品といった分野ごとに認可を得た認証団体が行う。この認証団体は、生産者からの申請に基づき書類審査と現地査察を実施し、要件を満たした生産者に対し有機認証を行う(図2)。有機生産者はSisOrgの全国有機生産者登録(CNPO)に登録され、有機農産物等であることを証明するロゴシールを貼付、または包装に刷り込むことが許可される(図3)。認証の有効期間は1年間で、更新する場合には毎年、審査を受ける必要がある。

タイトル: p056a

タイトル: p056b

(イ)参加型認証(相互認証)
 参加型認証は、有機生産者が参加型有機農業適合性評価機関(OPAC)を設立し、有機生産者として基準に適合しているか相互チェックする方式である。この方式は、有機生産者の大部分を占める家族経営農家のコスト負担を軽減するため、審査認証に代えて導入された。OPACは通常法人登録された生産者協会、組合などが設立した組織であり、設立に当たってはMAPAの認可が必要となる。OPACでは、生産者、農業技師、消費者などをメンバーとする評価委員会の設置が義務付けられており、当該評価委員会が定期的に生産者を巡回することとなっている。なお、一部の有機生産者に不適切な事案が認められた場合には、組織全体に連帯責任が課される。有機生産物には、有機ロゴの使用が認められている(図4)。

タイトル: p057a

(ウ)社会管理認証
 社会管理認証は、家族型の有機生産者が社会管理団体認証機関(OCS)を組織し、MAPAのSisOrgに登録するもので、規則に適合しているか相互チェックする方式である。この方式は、有機生産者が生産物を直接消費者に販売する場合にのみ認められ、露天市、宅配、庭先販売が主な販売方法となる。ただし、例外として、政府の買い上げ制度(公共団体向け(PAA)および学校給食向け(Pnae))による販売が認められている。参加型認証と同じく、一部の有機生産者に不適切な事案が認められた場合には、組織全体に連帯責任が課される。有機生産者は生産物に有機ロゴの使用は認められておらず、代わりにMAPAが発行する「有機生産物証明書」(Declaração de Cadastro do OCS)を販売時に掲示することとなっている(図5)。

タイトル: p057b

(エ)各認証方式の割合
 2022年9月時点のCNPOに登録された認証方式別の割合を見ると、参加型認証が46.2%と最も多く、審査型認証が36.9%、社会管理認証が16.9%となっている(図6)。

タイトル: p058

イ バイオ資材
 有機農業で使用する殺虫剤や殺菌剤などの資材は、MAPAのアグロエコロジー・有機生産調整部が所管しており、ここで許可された資材のみが使用できることとなる。許可された資材のリストはMAPAのサイトで公表されているが、有機生産者は使用に際し認証団体に申告しなければならない。

ウ バイオ種子
 有機農業で使用できる種子・苗は有機栽培で生産されたものを使うことが義務付けられている。ただし、例外としてこれらの種子・苗を入手できない場合には、OAC
またはOCSの許可があればそれ以外のものを使用できる。現行の規定では、2022年3月から5年以内にすべて有機種子・苗の使用に切り替えることが決められている。
 OACまたはOCSは、この移行期間中に許可する場合には、有機種子・苗の流通がないこと、もしくは有機生産者が有機種子・苗を入手することは困難であることを確認しなければならない。さらにこの期間中、有機種子・苗以外の利用は、1年目が80%、2年目が60%、3年目が40%、4年目が20%を超えてはならないと規定されている。
 現状、有機種子・苗への切り替え状況については、国内での市場流通が十分でなく、かつ、従来品と比べて価格が高いことから、生産者にとって容易な状況にない。

(3)政府による支援
 ブラジル政府が実施している施策には、有機農産物に限定したものではないが、その生産・消費を支援するための次のようなプログラムがある。

ア 政府食料買上プログラム
 政府食料買上プログラム(PAA)は、2003年に家族農家などの小規模生産者の支援策として始まった。このプログラムは、ブラジル国家食糧供給公社(CONAB)が家族農家、生産者団体などから生産物を買い上げ、病院や福祉施設、学校などの公共施設に供給するものである。有機生産者の農産物は、通常の農産物に比べて30%程度高く買い上げられる。

イ 全国学校給食プログラム
 全国学校給食プログラムは教育省所管のプログラムであり、公立学校での学校給食を保証するため、全国教育開発基金から州、市に補助金が交付される。予算額の30%が家族農家からの生産物の購入に充てられ、その中でも有機生産、アグロエコロジー(注1)によるものが優先される。
(注1)生態系や生物多様性を考慮した農業や農法。

ウ 全国バイオ資材プログラム
 ブラジルでは、有機農業に限らず農薬や化学肥料の削減は、農産物の生産力を維持しながら生産コストの削減を図る上での課題とされており、大手資材企業を巻き込んでバイオ資材の開発・普及に向けた取り組みが進んでいる。このため、連邦政府は2020年、国内でのバイオ資材の利用拡大、農畜産部門の利益増加を図るため、国家バイオ資材プログラムを公表した。
 このプログラムでは、バイオ資材の法的枠組みの確立、市場拡大、製品開発、生産現場での利用促進などの取り組みが行われている。本プログラムで有機生産およびアグロエコロジー生産は、優先的に対象となる生産分野と位置付けられている。

3 生産動向

 有機農産物の生産量については適当な統計が見当たらないため、有機生産者数などのデータを中心に有機農産物の生産動向を見ることとする。

(1)有機生産者
ア 生産者数

 国際オーガニック機関(IFORM)/有機農業研究所(FiBL)およびCNPOの資料によると、2022年のブラジルの有機生産者数は2万5398戸となり、13年(6719戸)と比べ3.8倍に増加している(図7)。20年以降は横ばいで推移しているが、これはCOVID-19により認証審査が遅れるなどの影響があったためとみられる。

タイトル: p059

イ 生産者分布
 MAPAのCNPOに登録されている耕種・採取有機生産者数(注2)(畜産との複合経営を含む)は1万6280戸(2022年9月時点)である。地域別に見ると、南部が8051戸で全体の半数(全体の49.5%)を占め、南東部、北東部と続く(図8)。州別では南部のパラナ州3346戸(全体の20.6%)、リオグランデドスル州3315戸(同20.4%)、南東部のサンパウロ州1657戸(同10.2%)、南部のサンタカタリーナ州1390戸(同8.5%)の順で、南部および南東部を中心に有機生産者が分布している。
(注2)有機生産者は認証を受けるに当たり、生産・販売する作物を申告し、登録する必要がある。この生産者数には登録のみの者も含まれるため、実生産者数と一致しない。

タイトル: p060a

ウ 作物別生産者数
 CNPOに登録されている有機生産者の主な作物別生産者数は次の通りである(表2)。生産者数は、フェイジョン豆(注3)が最も多く、ケール、レタス、トマト、バナナ、レモンと続いており、野菜と果物栽培を中心とした有機生産者が登録されている。
(注3)いんげん豆などの豆類の総称。

タイトル: p060b

 レタス、キャベツ、ブロッコリー、きゅうりおよびはくさいの上位州別有機生産者数は次の通りである(表3)。これらの有機野菜は、いずれも南部のパラナ州の生産者数が最も多く、それに続く州も南部および南東部の州が占めており、これらの地域を中心に有機野菜生産が行われているとみられる。

タイトル: p061a

エ 経営形態別生産者
 ブラジル地理統計院(IBGE)が実施した直近の農畜産センサスによると、2017年の農業生産者は507万3324戸あり、このうち有機生産者(注4)は6万4690戸と全体の1.3%を占める(表4)。内訳を見ると、耕種・採取が3万6689戸(同56.7%)、耕種・採取と畜産の複合経営が1万7612戸(同27.2%)と何らかの形で耕種・採取に取り組む生産者は全体の83.9%を占める。
 また、経営形態別では、家族経営は全体の76.3%を占めており、有機農産物の生産は家族経営を中心に行われている。
(注4)農畜産センサスにおける有機生産者数は生産者の申告に基づくもので、CNPOの登録者数と一致しない。

タイトル: p061b

(2)生産面積
 ブラジルの有機農業の生産面積についてはブラジル国内の適当な統計が見当たらない。参考までにFiBLの統計によると、2020年のブラジルの有機農業生産面積(畜産を含む)は131万9454ヘクタールで全農業生産面積の0.56%を占める(図9)。有機農業生産面積は14年以降増加傾向で推移しており、20年の面積は11年の1.92倍に増加した。

タイトル: p062a

(3)生産者価格
 PAAを通じてCONABが買い上げる主な野菜の生産者価格(サンパウロ州)を見ると、有機野菜は慣行栽培と比較して30%程度高い価格で買い上げられている(表5)。
 また、通常の青果の流通価格を見ると、サンパウロ州立大学農学部応用経済研究センター(CEPEA)が公表している慣行栽培による玉レタスの月別生産者価格(2022年、イビナウ市)の年間の推移では、4月が1箱(12個)当たり37.75レアル(1020円)と最も高く、最安値となる10月の11.04レアル(298円)と比較して約3.4倍の開きがある(図10)。このように慣行栽培の生産者価格は季節変動が大きく、関係者によると、有機野菜と慣行栽培野菜の価格差は、時期により異なり、差がほとんどないときもあるとのことである。

タイトル: p062b

タイトル: p063a

4 流通

(1)流通(加工、輸送)
 有機農産物の流通は、2の(2)で報告した審査認証および参加型認証と社会管理認証で異なる。

ア 審査認証および参加型認証
 審査認証および参加型認証の流通は、加工業者、卸売業者、小売など多岐にわたる販路を通じて販売することが認められている(図11)。

タイトル: p063b

イ 社会管理認証
 一方、社会管理認証は、基本的に家族農家が消費者に直接販売することだけが認められており、露店市や庭先販売が主な販路となっている(図12)。

タイトル: p064

【コラム1 有機生産者、イビナウ農協の取り組み】

1 有機生産者(サンパウロ州イビナウ市)
 サンパウロ市の南西70キロメートルに位置するイビナウ市は、標高1000メートル近くあり、周辺の市を含めサンパウロ州で最も野菜生産が盛んな地域である。サンパウロ市の東部に位置するモジ・ダス・クルーゼス市と並び、日系生産者が中心となって生産を拡大してきた。
 調査した生産者は、同市で有機農産物と慣行栽培を行っている。この生産者は、有機農産物に取り組む前から農薬の使用を減らす方策を模索していたが、1994年頃に有機野菜専門の卸売業者が生産者を探していたことが契機となり有機野菜の生産を開始した。

 有機認証は、当初、有機製品露天市を運営していた有機農業協会、その後、フランス系のEcocert社の認証を取得していたが、コスト負担を軽減するため、現在は個人の生産者グループが設立した機関から認証を取得している。
 有機野菜の生産者販売価格は、慣行栽培と比べて50~100%高いが、年々価格差は縮小してきている。ただし、慣行栽培の野菜は価格の変動が大きいのに比べ、有機野菜の価格は年間を通して安定していることをメリットとして挙げた。
 有機農産物の販売先は70%がイビナウ農協であり、残りを自ら設立した卸売会社で取り扱っている。
 有機種子は現在使用していないが、有機栽培用の種子が開発されれば使用することとなる。現在販売されている有機種子は、通常の3~4倍の価格である。たい肥は、コーヒー殻、卵殻、モミ殻やキノコ栽培に使うおがくずなどを原料として自家製造する。有機農薬などの他の資材についても原材料を購入し自ら製造している。
 有機農業の課題は、有機農産物が生産者から消費者に渡るまでの流通の合理化とコスト削減である。現在の消費者価格は生産者販売価格の4倍程度となっている。その方策として、観光農場での消費者への直接販売も検討している。

タイトル: p065a

2 イビナウ農協(CAISP – Cooperativa Agropecuária de Ibiúna)
 イビナウ農協はイビナウ市にある1995年設立の野菜専門の農協である。同農協では、04年から有機野菜の取り扱いを始め、45人の組合員のうち6人が有機生産を行っている。
 15年には包装施設が竣工し、カット野菜の製造も行っている。取り扱う野菜は300種類以上で、1日当たりトラック30~35台を出荷している。22年の有機野菜の取扱額は1500万~1600万レアル(4億530万~4億3232万円)で、全体の16%を占める。
 主な販売先はスーパーマーケットとレストランで、有機野菜の場合、カットなど加工野菜は小売向けが70%、外食向けが30%に対し、ホールの野菜は小売り向けが95%、外食向けが5%である。なお、スーパーマーケット向けについては、スーパーマーケットの主導で価格が決められるとともに、常時、売れ残った商品は返品される。

タイトル: p065b

5 消費

 ブラジルの有機野菜消費量については適当な統計が見当たらないため、参考として、有機製品普及協会(Organis)が公表している販売額により消費の推移を見てみることとする。これによると、2021年のブラジルの有機農産物等の販売額は65億レアル(1756億円)となり、12年の15億レアル(405億円)から4.3倍に急成長していることがわかる(図13)。

タイトル: p066a

(1)消費状況調査
 2017年、19年および21年にOrganisがブラジルで実施した有機農産物等調査結果から有機農産物の消費動向を見ることとする。
 これによると、直近30日以内に有機農産物等を消費した人の割合は、2017年の15%から21年には31%と倍増した(表6)。

タイトル: p066b

 また、直近30日以内に有機農産物等を消費したと回答した者を対象に次のような調査が行われた。
〇消費した品目
 消費した有機農産物等の品目は、野菜・果物が最も多く全体の75%を占め、穀物(12%)、穀物加工品(10%)と続いている(図14)。
〇購入する理由
 有機農産物等を購入する理由として、「健康増進のため」が47%、「より健康的だから」が26%、「農薬を含まないから」が13%と、健康への意識の高さや食の安全性を挙げている(図15)。
〇購入場所
 有機農産物等の購入場所については、スーパーマーケットと露店市での購入が多く、主要な販路となっている。一方、ECサイトでの購入は1%にとどまっている(図16)。
〇購入の判断基準
 有機農産物等の購入の判断基準については、外見(43%)と価格(41%)の回答が多くなっており、価格も大きな判断要因となっていることがわかる(図17)。
〇価格水準
 有機農産物等の価格水準については、慣行栽培と比較して「非常に高い」(44%)、「高い」(35%)との回答が多くなっており、有機農産物等の価格は慣行栽培より高いという認識は広まっている(図18)。しかしながら、「有機農産物等の価格が慣行栽培より高いことは正当か。」との問いに対しては、71%が正当と回答しており、有機農産物等の価格が一般的に消費者に受容されていることがわかる。

タイトル: p067

(2)小売価格
 有機野菜の小売価格や卸売価格の適当な統計データは見当たらない。参考までに2022年12月に現地の3カ所(A:中級クラスのスーパーマーケット、B:富裕層向けの高級スーパーマーケット、C:露店市)の店舗で行った小売価格調査結果を取りまとめた(表7)。
 有機野菜と慣行栽培の価格差は品目や店舗でばらつきが大きい。この調査では、有機野菜が1.3~4.1倍程度高い結果となった。

タイトル: p068

6 輸出

 ブラジルの有機野菜輸出量などについては適当な統計が見当たらない。Organisによると、2021年の有機農産物等の販売額は65億レアル(1756億円)であり、このうち、約20%が輸出向けとなっている。また、製品別では、コーヒーやカカオ、はちみつ、黒砂糖、アサイーなどが輸出されている。野菜については南東部のサンパウロ州、南部のパラナ州、サンタカタリーナ州から輸出されているが、輸出形態、輸出先などの詳細は不明である。
 また、有機農産物等の輸出に関連して、MAPAは2019年4月、チリとの間で有機農産物等の認定基準の同等性を認めることとする運用を開始した。それぞれの国で取得した有機認証が相手国でも使用できるため、今後、同国間での有機農産物等の貿易拡大が期待される。

7 新型コロナウイルス感染症が需給に与えた影響

 COVID-19により、消費者の健康への関心が高まった。このため、消費者はより質の高い食品を志向するようになり、有機農産物等の消費量が増加した。
 また、COVID-19は、野菜の流通にも大きな影響を及ぼした。これまで野菜などの卸売業者は小規模小売店やレストランを中心に取引を行ってきたが、COVID-19を機に個人向け販売が増加した。また、販売面でもECサイトでの取り扱いが増加しており、今後も新しい販売チャネルとして定着するとみられる。

【コラム2 有機農業協会の取り組み】

 ブラジルでは、団体による有機農産物等の普及に向けた取り組みが行われている。ここでは、有機農業協会(AAO)による有機野菜の普及の取り組みを紹介する。
 AAOは1989年に設立された最も長い歴史を持つ有機農業の民間団体の一つであり、生産者、市場、行政と協力した有機生産物の拡大や品質保証を目的としている。活動の一つとして、サンパウロ市内で最大の有機野菜・加工品市場であるアグアブランカ公園市場の運営がある。同市場は1991年に州政府の委託により始まり、毎週、火、土および日曜日に開催される。現在47の生産者が出店し、100種類の以上の野菜、加工品を販売しており、1週間の集客数は3500人程度となる。同協会では,市場開設のほか、生産者を対象とする講習会の開催や公立学校での啓蒙活動を行うこととしている。

8 おわりに

 ブラジルの有機農産物等の生産量は、生産者数や生産面積の動向からみて増加傾向にあるといえる。また、国内消費についても、有機農産物等の販売額や消費者の動向から増加傾向で推移している。これは、消費者の健康意識の高まりによるものであるが、COVID-19の流行を契機にこれが一層高まったため、今後もこの傾向が続くとみられる。一方、国内消費は、消費者の購買力によるところが大きいことから、インフレや失業率などの経済動向が消費に及ぼす影響を注視する必要がある。
 ブラジルでは、2023年1月にルーラ大統領が就任し左派政権が誕生した。新政権の下、これまでと異なる経済、外交、福祉や環境などの政策が打ち出されるとみられる。国内外の状況の変化に対応して、今後どのようにブラジルの有機野菜市場が変化していくのか、併せてその動向が注視される。