(1)高止まりする2022年の生産者価格
2022年の生鮮野菜の生産者価格は、さまざまな要因により供給が制限されたため、各四半期を通じて前年同期を大きく上回って推移した(図2、表2)。供給制限の要因は、年初の南西部の産地における低温から秋の大型ハリケーンの発生に至るまで、悪天候によるものが主体であった。また、生鮮野菜価格指数の中で比重が高いばれいしょおよびたまねぎ価格の大幅な上昇が生鮮野菜の高値につながった。
カリフォルニア州では、悪天候に加え、病害が甚大であった。同州の生産者は投入資材価格の高騰やかんがい用水不足を受けて作付面積を減らしていたが、病害の発生により状況は一層悪化した。生産量の減少によりレタスなどでは出荷が減少し、生産者価格が高騰した。
22年10~12月上旬の出荷量は、多くの生鮮野菜で前年同期を下回り、結球レタスやロメインレタス、ブロッコリーなどで減少が顕著となった。供給のほとんどをフロリダ州およびメキシコからの輸入に頼るトマトやかぼちゃ、いんげんなどの生産者価格は、ハリケーンによる生産量の減少により前年を大幅に上回った。
また、フロリダ州では2度にわたる大型ハリケーンの襲来で畑が冠水し、成熟期を迎えていたトマトやピーマンなどの秋野菜の出荷量が減少した。
22年1~10月の生鮮野菜の生産者価格は前年同期比33%高となり、1995年以降で最大の上昇率となった。10、11月(秋季)の生鮮野菜の生産者価格は同約25%高、20年同期比約50%高になることが見込まれている。22年秋には、カリフォルニア州サリナスのレタスに深刻な病害が発生した。同地での供給混乱は秋の終わりまで続き、米南西部の砂漠地帯における野菜生産の開始期にも影響を及ぼした。
全食品の小売価格が前年比約10%高と1979年以降、最大幅で上昇する中、生鮮野菜の小売価格は22年の第1~3四半期に前年同期比6%高にとどまった。生鮮野菜の小売価格は、主に輸送費の上昇やばれいしょ、たまねぎ、レタスといった主要品目の価格上昇の影響を受け、年間では98年(前年同期比11%高)以降で最大の上昇率と予測される。
過去数年の生鮮野菜の小売価格の上昇は、その大部分を占める輸送費(特にトラック運賃)の上昇を反映したものであり、一般に小売価格の約25%を占めるとされる生産者価格の上昇の影響は小さい。
(2)干ばつと病害によりレタスは過去最高値を更新
2022年秋には、サリナスで広範囲に発生した病害により出荷量が減少したため、結球レタス、非結球レタスおよびロメインレタスの生産者価格が高騰した。出荷量の減少は、かんがい用水不足で作付面積を減らしていたところに季節外れの高温下でピシウム
萎凋病およびアザミウマが媒介するインパチェンスえそ斑紋ウイルス(以下「INSV」という)病が発生し、単収が低下したことによるものである。
10月の結球レタスの生産者価格は、3月に記録した1949年以降の最高値1キログラム当たり250円を更新し、同365円と前月の150%高、直近3年間の平均価格の132%高となった。結球レタスの生産者価格は、12月上旬まで同290円を超える水準で推移した。なお、USDAの20年以前の月次生産者価格は、21年以降の価格に含まれる手数料や流通費が含まれていないことに留意する必要がある。
サリナスの夏~秋レタスの収穫は、11月上旬までに終了し、出荷者は冬野菜の主産地である南西部の砂漠地帯へと移動した。砂漠地帯の収穫初期の生鮮野菜は、品質やサイズにばらつきが大きく、良品の価格がさらに高騰した。12月中旬以降の価格は、砂漠地帯の収穫の混乱が鎮静化し、葉物野菜およびアブラナ科野菜の供給が徐々に改善されたことで、依然として過去3年間の平均価格は上回っているものの、下落に転じている。
(3)貿易状況(2022年1~10月)
野菜供給量に占める輸入野菜の割合は、2021年に過去最高の38%となったが、22年には天候や病害、投入資材価格の高騰、競合作物への転換、水不足といった諸要因が生産量の減少につながり、この割合がさらに上昇した。一方、米ドル高や国内価格の高騰により、総供給量に占める輸出量の割合は低下した。
22年1~10月の生鮮野菜(ばれいしょを除く)の輸入量は、前年同期比2%増となった。輸入量の約78%を占めるメキシコ産は、寒波による生育・単収への影響もあり、第1四半期には同2%減となったものの、1~10月の累計では同1%増となった。次いで12%を占めるカナダ産(約半分がトマト、きゅうり、ピーマンといった施設栽培野菜)は、同8%増となった。一方、輸入量が増加した品目は、にんじんが同15%増、レタスが同13%増、ブロッコリーが同5%増、きゅうりが同6%増であった。輸入量が減少した品目は、アスパラガスが同13%減、とうがらしが同8%減、かぼちゃが同7%減、ピーマンが同2%減、トマトが同1%減であった(表3)。
米国内での野菜価格の全般的な値上がりを反映し、22年1~10月の生鮮野菜の平均輸出単価は同12%高となった。このような価格上昇に国内生産量の減少とドル高が重なり、生鮮野菜の輸出量(ばれいしょを除く)は同9%減となった。最大の輸出先であるカナダ向けは同7%減となり、第3位のオランダ向けも同20%減となった。しかし、第2位のメキシコ向けは、たまねぎ、カリフラワーおよび有機野菜の増加から同13%増となった。トマト(前年同期比13%増)およびアスパラガス(同5%増)は輸出量が増加したが、これら以外の多くの品目で輸出量が減少した(ブロッコリー:同77%減、たまねぎ:同11%減、にんじん:同10%減、レタス:同4%減)。