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海外情報 野菜情報 2022年12月号

米国産レタスの生産・流通などの動向

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調査情報部

【概要】

 米国産レタスは、業務用として台湾産レタスに次ぐ量が日本に輸入されており、夏場の調整弁としての役割も担っている。また、近年消費者の関心も高い有機栽培の取り組みの割合も増えてきた野菜でもある。現在、米国では、トラックドライバー不足が新型コロナウイルスの流行によりサプライチェーンの混乱として表面化し、野菜流通の課題となっている。そこで、本稿では、日本でも今後増加が予測される有機野菜の流通実態および米国におけるサプライチェーンの現状について、米国レタスを通じて報告する。

1 はじめに

 日本に輸入されている米国産レタスは、数量は少ないものの、業務用として台湾産レタスに次ぐ輸入量であり、夏場の国産レタス供給の調整弁としての役割を担っている。
 そこで、本稿では、トラック運転手の不足などにより製造や流通、販売などサプライチェーンの混乱などが問題となっている米国産レタスの生産・流通などの動向について報告する。
 なお、本文中の為替相場は、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年10月末TTS相場の1米ドル=149.26円を使用した。

2 米国のレタス生産動向

(1)生産地域
 米国のレタスの主要生産州は、カリフォルニア州とアリゾナ州であり、国内のほとんどのレタスがこの2州で生産されている(図1~3)。その中でも、カリフォルニア州の生産割合は、結球レタスで71%、ロメインレタス(非結球)で74%、リーフレタスで82%と大きく、主に沿岸部のセントラル・コースト、サンディエゴ郊外の砂漠地域および内陸部セントラルバレーにあるサン・ホアキン・バレーで栽培されている。4~11月はセントラル・コースト、11月~翌3月は砂漠地域におけるかんがいによる栽培が中心となり、これら地域の端境期である4月および11月はサン・ホアキン・バレーが生産を補うことによって通年栽培が可能となっている。また、12月~翌3月にかけては、アリゾナ州ユマ郡でも多く生産されている。

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(2)収穫面積および生産量
 米国の直近10年のレタス(結球レタス、ロメインレタス、リーフレタス)の収穫面積は11万~13万ヘクタールで推移している(表1)。2021年の収穫面積のうち結球レタスが全体の4割、ロメインレタスは4割弱、リーフレタスは2割強を占める。いずれのレタスの品種においても、カリフォルニア州の生産量は7~8割と高い。しかしながら、2020年以降は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行(パンデミック)により外食産業の低迷が続き、余剰レタス対策として多くの生産者が作付けを減らした。
 また、直近10年のレタスの生産量は340万~470万トンである(表2)。技術面では効率化も図られ、生産量が拡大できる傾向にあったが、18年に発生したレタスの大規模な食中毒(後述コラム2参照)およびパンデミックの影響による外食産業などの需要の大きな落ち込みにより、生産量の大幅な増加には至っていない状況である。

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(3)カリフォルニア州の栽培状況
 カリフォルニア州で生産されるレタスは主に生鮮市場向けである。米国農務省経済全国農業統計局(USDA/NASS)によると、2020年において同州の中でも最もレタス生産が多いのはモントレー郡であり、州の生産の75.9%(重量ベース)を占めている。次に続くのはインペリアル郡であるが、その割合は11.9%とモントレー郡と大きく離れている。
 モントレー郡ではいちご栽培が盛んであり、レタスは2番目に生産の多い作物である。モントレー郡およびサン・ルイス・オビスポ郡にはサリナス川が流れ、その流域にレタス畑が広がるサリナスバレーがある。サリナスバレーとインペリアルバレーは、カリフォルニアの2大レタス地帯であるほか、ほうれんそうからブロッコリーまで、緑黄色野菜の一大生産地でもある。
 農業センサスによれば、17年時点においてカリフォルニア州には1114戸のレタス生産者がいる。1000エーカー(405ヘクタール)以上の大規模生産者がカリフォルニア州レタス収穫面積の80%を占めている。
 また、カリフォルニア州では有機レタスの収穫面積率が11~19年にかけて約2倍に拡大した(表3)。同州の有機レタスの収穫面積は米国全体のレタス収穫面積の約12%に拡大しているが、単収が低いことから、生産量に占める割合は全体の1割未満である(表4)。19年に行われたUSDAによる有機生産調査では、有機レタス生産者はカリフォルニア州で約220戸(屋外生産のみ)となっている。現地情報によると、主に小規模生産者が有機に特化した栽培に取り組んでおり、大手栽培企業が有機栽培を拡大する動きはみられないという。

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(4)収穫および貯蔵・冷却方法
 レタスはデリケートな作物であるため、病原菌の汚染度が高いものが、汚染度の低いものに接触することによって広がる交差汚染の可能性だけではなく、取り扱いや保存の面でも注意が払われる。レタスの収穫は通常手作業で行われ、刃先が斜めになった特殊な長いナイフを使用し、ナイフは頻繁に除菌液の入ったバケツで除菌される。収穫されたレタスは、出荷のためにカートンに詰められることが多い(写真1)。収穫された形のまま生鮮で販売されるレタスは、収穫後2時間以内に真空予冷装置で冷却される。ミックスサラダなど、さらに加工を要する場合は加工施設に運び、芯抜き、トリミング(不要部の除去)、洗浄、市場向けのさまざまなサイズにカットされる。結球レタス全体の約4分の1がパックサラダに加工されているとみられる。現地生産企業のOcean Mist社のホームページによると、同社は収穫、トリミング、包装および冷却するまでの作業を4時間以内に行っている。

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 収穫されたレタスは、冷蔵保管庫で0~1度の温度で保存すると、2~3週間は最適な状態を保つことができる。レタスは水分の多い野菜であるため、収穫後は適度な湿度を保つことが最も重要で、湿度を90~95%程度に保つことが必要とされる。さらに、輸送中や保管中に適切な通気性を確保する必要があるため、輸送冷蔵トラックの荷台では開口部のある箱や木枠を使用することが推奨されている。
関係者によると、米国はコールドチェーンが十分に整備されていることもあり、収穫後すぐに冷却可能な体制が整っているレタスは、流通の際のトラックのドアの開閉回数を最小限にとどめることで約1カ月間は鮮度を維持することができるとしている。

(5)労働力の確保に係る課題と取り組み
 農産物の収穫は傷みを最小限に抑え、品質の違いを見極めるなど、技術と経験が必要である。米国では、労働力不足のほか、経験豊富な労働者の高齢化問題も生じている。米国はメキシコからの季節労働者に依存しているが、メキシコの出生率の低下や経済および教育の向上により、長期的には季節労働者数は減少傾向をたどるとみられている。
 多くの生産者は季節労働者を直接雇用しておらず、農場労働請負業者(FLC:Farm Labor Contractors)を利用することが一般的である。米国には外国人季節労働者を雇用できるビザ制度(H-2Aゲストワーカー)がある。同制度は、労働力不足が予想され、国内での雇用確保が不可能と認められた場合に、外国人労働者に無料で住居を提供し、米国の労働者と同じ賃金率で、米国への移住を予定していない外国人労働者を確保できる仕組みである。USDAの報告書によると、2010年からの17年間で、青果物に限らず、すべての農業産業における同制度を利用したビザの申請数は276%増加している。
 労働者の確保が課題となる一方、カリフォルニア州では最低賃金は上昇を続け(注)、労働時間や残業代など待遇の改善に対する要件が厳しくなってきている。現地情報によると、人件費の上昇に対応するためのコストを削減する取り組みとして、機械や技術の開発が行われている。また、カリフォルニア州サリナス地域はシリコンバレーと比較的近く、スタートアップ企業が農業への技術の導入を後押しする動きもある。レタスの圃場(ほじょう)では収穫の際にベルトコンベアを設置し、収穫されたレタスを梱包・荷詰め作業エリアまで運び込む作業を軽減している。また、ベビーリーフやロメインレタスでは、水を利用した切断手法(ウォータージェット)でレタスの地上部分の茎をぎりぎりにカットする機械を開発した企業もある。Ramsey Highlander社が開発したウォータージェット機は1時間に1万2000ポンド(約5.4トン)のロメインレタスを収穫できるという。また、レタス生産の大手企業であるTanimura & Antle社は14年からレタスの苗の移植にプラントテープ(Plant Tape)を採用している。これはテープに封入されたレタスの種子を発芽させ、発芽後に専用の全自動移植機に植え付けされるもので、大幅な人員削減による効率化と収穫増が可能となっているという。

(注)2021年におけるカリフォルニア州のH-2Aビザ最低賃金は時給16.05米ドル(2396円)であったが、22年は17.51米ドル(2614円)と前年比9%高となっている。

【コラム1 米国におけるレタスの生産コスト】

 米国産レタスの労働コストおよび収穫コストは、生産コストの半分近くを占めており、他の農産物と比較しても特に高い(コラム1-図)。

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 カリフォルニア州生産者流通業者協会(GSA)によると、パンデミックなどにより結球レタスの栽培および出荷に要するコストは上昇している。また、現地情報によると、生産コストの中でも特に季節労働者の減少による人件費の上昇は大きな課題になっているという。
 サリナス産の結球レタス1カートン(24個)当たりの生産コストは、約17米ドル(2554円)強となっており、栽培、収穫、包装などにかかるベースラインの生産コストは1カートン当たり約15米ドル(2237円)である(コラム1-表)。したがって、1カートン当たりの平均価格が15~17米ドルの場合、生産者コストを賄うことができない。GSAは、生産者および流通業者が生産コストをカバーできないことは、減産や他の作物への転換などにつながると指摘している。

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【コラム2 レタスの衛生問題】

 現在、米国のレタスには植物衛生面および食品衛生面での大きな課題がある。レタスを含むほとんどの葉物野菜は屋外で栽培されており、汚染された土壌、肥料、空気、水などを介して病原菌にさらされる可能性がある。特にレタスは生で消費されるため、食中毒リスクも高くなる。
 2007年、200人以上が感染した大腸菌による食中毒発生を受け、カリフォルニアの農家はカリフォルニア州葉物野菜マーケティング協定(LGMA:California Leafy Green Marketing Agreement)の創設を通じて、食品衛生の向上に向けた取り組みを始めた。同取り組みは安全な葉物野菜を保証し、食品安全プログラムへの信頼性を高めることを目的としている。LGMAは、レタス、ほうれんそう、その他の葉物野菜を出荷、販売する企業が会員となっている。アリゾナ州でも、カリフォルニア州のLGMAとほぼ同様の姉妹プログラムが展開されており、米国全土の約9割を生産する両州の会員企業はレタスのトレーサビリティシステムを導入することを義務付けられている。また、18年に大規模な食中毒が発生して以降、LGMAと生産者は任意の収穫地ラベル表示システム(Harvest Location Label)の導入を開始し、購入した野菜の収穫地を消費者が確認できるよう努めている。
 しかし、依然として米国ではレタスによる食中毒が少なくなく、ロメインレタスの汚染あるいはその疑いが特に多くみられる。最も多いのは大腸菌O157:H7、続いてリステリア・モノサイトゲネスなどの菌の付着による汚染である(コラム2-表)。販売形態での件数としてはパックサラダが多いが、加工を行っていない生鮮でも食中毒が発生している。主要産地ではカリフォルニア州セントラル・コースト、アリゾナ州ユマでの発生がみられた。

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 米国食品医薬品局(FDA)は、11年にFDA食品安全近代化法(FSMA:Food Safety Modernization Act)を制定し、策定された農産物安全規則では水、土壌改良剤(例:肥料やたい肥)および食品接触面が農産物汚染の原因とならないよう、科学に基づく最低基準を定め、各州の規制当局と協力し、定期検査を通じて要件が遵守されているかどうかを調査している。また、20年には葉物野菜STECアクションプラン(LGAP:Leafy Greens STEC Action Plan)を発表し、生鮮葉物野菜の安全性を高めるため、特定農産物に特化した切り込んだ対策に乗り出している。
22年1月に発生した食中毒の事例では、レタスの収穫に使用された収穫器具、18年3~6月の事例では複数の農場に水を供給するかんがい用水路、18年10~12月の事例では農場内の貯水池で大腸菌が見つかり、それぞれ汚染源であるとされている。ただし、それ以外は加工施設が問題視されたり、特定できなかったりする事例も多い。
 消費者団体は、LGMAが取り組むような収穫情報表示は義務ではなく自主的なものである上、根本的な問題解決にならず、FDAの水質規制を厳しくする必要があると指摘している。

3 流通状況

(1)収穫後の流れ
 米国内での流通は、冷蔵トラック(リーファートラック)による輸送がほとんどである。生産地から全国の流通センターに届けられ、その後、各小売店へ出荷される。生産者から小売店までの流通に要する時間は各地域や交通アクセスによって異なるが、通常1週間以内に納入される。日本に輸入されるまでに要する日数は収穫~海上輸送~通関までが13日間、その翌日か翌々日には日本の加工業者に届けられるため、計13~15日間程度を要する。しかしながら、これはコロナ禍以前の日数であり、関係者によると2020年春以降は港湾の混雑などからそれ以上かかるようになった時期もあったとのことである。
 トラックは、48~53フィート(約15~16メートル)冷蔵トレーラーが一般的である。米国内輸送では移動距離は極めて長い。地図上で見ると、サリナスからニューヨークあるいはマイアミまでは、ノンストップの場合では約3000マイル(4828キロメートル)で45時間、ボストンまでは約3200マイル(5150キロメートル)で50時間要する。輸出に向けたロサンゼルス港までの輸送の場合、最速ルートでサリナスから約330マイル(531キロメートル)で5時間、ユマからは約280マイル(451キロメートル)で4時間の移動となる。しかしながら、通常の交通状態やドライバーの休息などを含めると輸送時間はそれよりも長いと考えられる。

(2)販売形態
 小売店で販売されているレタスは、包装されず個別で販売されているもの、プラスチック袋に入れて個別またはパック販売になっているもの、パックサラダとして販売されているものがある。写真2、3は自然食品などを扱うナチュラル系食品スーパーマーケットで販売されているレタスであり、有機でも無包装で販売されている。有機野菜セクションと非有機野菜セクションが分けられており、「オーガニック」と書かれた大きな表示が天井から吊るされ、消費者が一目で有機野菜セクションと分かるようになっている。有機野菜をまとめた専用セクションで販売することで、無包装でも交差汚染が起こらないよう配慮されている。

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(3)消費者の購入
 米国業界紙The Packerによる2019年の購入習慣調査では、回答者の73%が従来型のスーパーマーケットで青果物を購入し、27%は‘Trader Joe’sや‘Whole Foods Market’などの自然食品を扱うスーパーマーケットで青果物を購入すると答えている。また、29%の消費者は日常的に有機農産物を購入すると答えている。米国では高齢者や富裕層の青果物および有機農産物の購入が多く、また、人種や民族別に見るとアジア系の生鮮食品購入が特に多く、最も少ないのはアフリカ系とされる。同調査は、20年にも同じ回答者に追跡調査を行っており、19年に回答した消費者の54%が20年のパンデミックの際は「パッケージされた青果物を買った」と答えており、前年の50%をやや上回った。これは、小売店で直接多くの人の手に触れる状態にある青果物に抵抗を感じたものと推察される。実際、レタスにおいてもカット加工されたパックサラダや小分け野菜パックのみならず、レタス1玉がビニールのパッケージに包装され、販売されているものなどもある。
 また、コロナ禍ではインターネットでの青果物購入増加を後押しする傾向もある。同調査では20年には回答者の36%がインターネットで食料品や青果物を購入し、そのうち42%が今後もインターネット購入を続けるとしている。一方で、69%は直接食品を見て判断してから購入したいと考えるため、青果物のインターネット購入をためらうと回答しているが、最終的に全回答者の55%が青果物のインターネット購入を検討していると答えている。
米国では、農家から直接農産物を購入できる機会も多くある。USDAによれば、特定地域の生産者が集まり、生鮮野菜などの農産物を直接消費者に販売するファーマーズマーケットの数は15年時点で8476に上る。カリフォルニア州には20年時点で700ほどのファーマーズマーケットが存在する。都市近郊の小規模生産者が都市部で開催されるファーマーズマーケットで販売する傾向が多いが、販売価格はスーパーマーケットや小売店よりも高いものとなっていることが多い。ファーマーズマーケットの増加は地元や地域の食品に対する需要の増加を反映していると考えられ、消費者が食品の鮮度や品質、地域経済への支援、環境に良い(輸送距離短縮によるCO2排出量の削減など)、生産者の顔が見えることで安心を買えるという点から利用している。また、有機野菜の取り扱いもファーマーズマーケットでは多い。

(4)有機栽培と通常栽培の仕分け
 米国では、有機農産物の販売に至るまでに、生産者が認証を得て栽培する他にも、バリューチェーンに携わる関係業者が、輸送と保管に関するFDAの規制を遵守する必要がある。冷蔵設備およびモニターが搭載されたトラックで、有機と非有機野菜は分けられて倉庫に運ばれる。有機野菜の多くは汚染リスクを回避するために他の商品と一緒に保管することができないため、企業はFDA規則に基づいた取扱ガイドラインを設けている。
 カリフォルニアの物流会社であるWeber Logistics社は、有機野菜の倉庫に関するガイドラインを下記のように設けている。
・有機野菜の保管に適した資材を使用し、箱には内容物と原産地のトレーサビリティを明記したラベルを貼付。
・有機野菜の在庫は倉庫内の他の商品とは別に保管。
・有機野菜・食品以外の製品に使用された設備は交差汚染の可能性があるため、有機の取り扱いの際に使用しない。
・保管温度のモニターを含む効率的な倉庫管理システム(WMS)はデータ記録を保管する。
また、加工場向け情報提供サイトでは、コンテナを積み重ねるときは、有機野菜を一番上に積み重ねるようにし、非有機野菜の汁や水滴などが有機野菜に滴り落ちないようにするなどの注意を行うよう促している。

(5)流通段階の課題
 米国トラック協会(ATA)によれば、トラック業界の運転手不足は2003年頃から懸念されてきた問題である。08年のリーマンショックなどの景気後退で貨物量が減少していたが、11年以降に輸送量が回復して以降、運転手不足が再び問題となっている。高齢化や新規就業者の減少が要因とされるが、低賃金や厳しい労働条件、乏しい福利厚生なども新規就業者の減少を招いていると指摘されている。
 また、コロナ禍によって引退を決めた運転手や仕事に復帰せずに失業手当を受け取る運転手が増えたこと、さらに巣ごもり需要による宅配便が増加したことも、運転手不足を加速させている。また、米国では、21年に営業用運転免許保持者にはCOVIDワクチン接種(もしくは検査)が義務付けられており、これもワクチン接種を望まないドライバーの離職を招いていた。業界からの要請により、22年1月に従業員100名以上の企業に対する従業員のワクチン接種義務化については撤廃されたが、現在はカナダやメキシコなど国外からの輸送トラック運転手にワクチン接種が義務付けられており、国境を越えた輸送を行う運転手に対する規制緩和を求める声が業界から上がっている。
 運転手不足による賃金の上昇は、トラックの運賃に転嫁され、物流コストを押し上げている。コストの増加で利潤を圧迫される企業は商品価格の上昇に踏み切るが、大手小売業などは生産者価格を抑えたり、自社輸送機能によって大幅な小売価格の上昇を抑えたりしていると考えられる。表5はカリフォルニア州サリナス発のコロナ発生前後での積荷当たりの輸送費を比較したものであり、レタスの輸送費もこれに含まれており、コロナ発生後では輸送費の大幅な上昇がみられることが分かる。
 また、21年はコロナ禍の影響で港湾の大混雑が発生し、コンテナ輸送の遅れなどによる米国西海岸の港湾での大量のコンテナ滞留など、物流の混乱が深刻化した。バイデン政権は21年夏、短期的なサプライチェーンの混乱に対処するため、「サプライチェーンの混乱に対するタスクフォース(Supply Chain Disruptions Task Force)を立ち上げ、同年10月、ロサンゼルス港およびロングビーチ港が週7日24時間体制に業務を拡大することを発表した。夜間と週末の業務が新たに加わることで貨物の移動に利用できる時間を倍増させる狙いである。そのほか、バイデン政権は1兆米ドル(149兆2600億円)をかけたインフラ投資法($1 Trillion Infrastructure Bill)を成立させ、州をまたいだ運転が可能なトラック運転手の年齢を、これまでの21歳から18歳にまで引き下げ、より若い労働力が人手不足を補うなどの対策を講じた。

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 現在のところ、サプライチェーンの混乱については、緩和されつつある状況となってきている。しかし、これまでに講じられた対策も根本的・長期的な流通の問題解決にはなっていないという指摘も多くある。現地では、トラック運転手の雇用が安定的に継続されるよう、運転訓練および実習プログラムを経て、公的な技能職業として政府から認証を受けるべきであるという意見も聞かれる。

4 おわりに

 COVID-19のパンデミックを経て、物流コストや生産コストなどが上昇する中、米ドルに対する為替相場も円安となっていることから、今後、米国産レタスが多く輸入されることは考えにくい。実際、日本向け米国産レタスの輸出量は少量であり、現地でも日本市場はさほど重要視されてはいない。しかしながら、日本では、夏場の調整弁としての米国産レタスに一定の役割があり、コールドチェーンが十分に整備され、高水準の品質管理や鮮度維持を実現している米国と同レベルの供給ができる国はないという関係者の声も聞く。日米貿易協定もあり、米国産結球レタスは無関税で日本に輸入される。米国産レタスは目下、需給調整目的で輸入されていることがうかがえるものの、USDAが発行するGAINレポートでは日本のレタス市場やカット野菜市場の動向についての洞察もあり、業界関係者が輸出好機を得られるよう情報提供を行っている。米国内の労働環境や物価上昇、為替相場などと併せ、今後の米国におけるレタス生産動向を注視していきたい。


「野菜情報」の掲載内容に誤りがありましたので、以下の通り訂正いたします。
〇2022年11月号「中国産野菜の生産と消費および輸出の動向(第9回:ごぼう)」
(62ページ 表9「1トン当たりのごぼう調製費(江蘇省)」)
【正】 (2020年 日本円)管理費 2,832円、合計 58,537円
【誤】 (2020年 日本円)管理費 137円、合計 55,843円