(1)生産状況
2021年は、主要生鮮野菜のほとんどで暑熱・乾燥とかんがい用水不足から単収が低下した(写真)。
たまねぎ、ロメインレタス、ブロッコリー、カリフラワー、にんじん、かぼちゃは収穫面積が増加したが、トマト、さつまいも、結球・葉レタス、セロリなどでは減少している。露地栽培のレタスは、他のサラダ菜類や温室栽培葉菜類との競合や18年末以降に発生しているロメインレタスが原因とされる食中毒などの問題とが相まって生産量が伸び悩んでいる。
同年の生鮮野菜(ばれいしょを除く)上位5品目の生産量は前年比4%減となった(表4)。生産量を品目別に見ると、たまねぎは、北西部の暑熱・乾燥が単収に影響し、同8%減となった。特に、主要生産州のワシントン州では、20年の単収が過去最高であったことから、21年は減産により過去最大の減少幅となる同30%減を記録した。カリフラワーは、主産地のカリフォルニア州沿岸部が平年より低温になったことで同12%減となった。この結果、カリフラワーの全米平均単収は、同14%減の1ヘクタール当たり20.4トン(過去最高は19年の同25トン)となった。
生産量の減少と価格低下により、21年の米国の生鮮野菜23品目(ばれいしょを除く)の生産額は、同13%減の99億ドル(1兆2777億円)となった。うち、ロメインレタス(同28%減)、結球レタス(同21%減)、たまねぎ(同10%増)の上位3品目で生鮮野菜生産額の29%を占めた。
(2)1人当たり供給量が減少
2021年の生鮮野菜(ばれいしょを除く)の1人当たり供給量は、前年比1%減の66.3キログラムであった。個別品目では、カリフラワーが同14%減、ブロッコリーが同11%減、キャベツが同3%減となった。ブロッコリーの1人当たり供給量は5年連続で減少し、98年以降で最低となった。レタスの1人当たり供給量は、同10%減の10.6キログラムであった。結球レタスの1人当たり供給量は、過去30年間減少傾向にあり、同9%減の4.9キログラムと過去最低を記録した。
暑熱によって単収が低下したことで、たまねぎの生産量は96年以降で最低となったが、輸入増と輸出減により、1人当たり供給量は前年よりわずかに多い9.3キログラムとなった。たまねぎの需要が堅調であることから、21年産の価格は過去最高値となり、22年の生産量の回復が予想されている。
(3)価格動向:2021年に下落後、22年第1四半期には上昇
ア 生産者価格
生鮮野菜の供給量が減少したにもかかわらず、2021年の野菜の生産者価格指数は、この指数に含まれる12品目の野菜のうち、11品目で平均価格が低下したため、前年比6%減の118.1となった。これは12年以降で最大の下落幅であり、パンデミック時代の市場の不確実性を反映している可能性が高い。
22年第1四半期の生鮮野菜(ばれいしょを含む)の生産者価格は、トマト、キャベツなどを除くほとんどの野菜で上昇し、レタス、たまねぎ、ばれいしょでは大幅に上昇した(表5)。たまねぎの生産者価格は、前年同期比98%高の1キログラム当たり0.95米ドル(123円)と四半期平均での最高値となった。太平洋岸北西部の猛暑により単収と1個当たり重量が低下した中で、外食産業の需要回復に伴い価格が急騰した。このため、メキシコ産たまねぎの輸入開始、低温により遅れていたテキサス州産の出荷開始、ジョージア州での収穫開始により、22年第2四半期には上昇したたまねぎ価格の緩和が期待されている。
イ 小売価格
2021年の生鮮野菜の小売価格は、前年比5.3%の上昇となった。生鮮野菜の小売価格のうち、生産者価格相当分は平均で約25%を占めている。小売価格の残りの部分では、農場から小売店までの輸送費の割合が最も大きくなっている。
22年第1四半期の生鮮野菜の消費者物価指数は、平均で同4%高となった。これは、同期の食品全体の同9%高を下回っている。全体として、生鮮野菜の消費者物価の上昇は、トラック輸送費(軽油価格)および取扱コスト(賃金の上昇)と、ばれいしょ、たまねぎ、レタスなどといった主要野菜の価格上昇を反映したものとなっている。
ウ 生鮮野菜の輸送費の実例
米国で生産される生鮮野菜の大部分は、収穫後に冷蔵トラックで陸送される。例えば、トラック1台分のレタスを主産地のカリフォルニア州サリナスからニューヨーク州まで輸送した場合、2021年7月中旬時点の費用は平均1万1450米ドル(148万円)となっている。これは、48フィート(14.4メートル)トレーラー1台に結球レタス24個入りの箱(22.7キログラム)が900箱(総重量約20トン)積載された場合であり、農場から小売店までの輸送費だけで同時期の小売価格である1個当たり1.12米ドル(約144円)のうち0.53米ドル(約68円)分を占めることになる。上昇する燃料費と賃金、強い需要、低い小売在庫水準、運転手とトラックの不足が、過去2年間の輸送費を高騰させてきた。最近では、輸送費の約3割を占める燃料費は高騰しているが、供給網の混乱と港湾渋滞が改善し始めたため、トラック運賃は前年に比べて値下がりしている。 22年4月中旬の上記と同じ経路で輸送されるトラック1台分のレタスの平均運賃は、24%安い8700米ドル(112万円)、1個当たりでは0.4米ドル(約52円)となっている。
(4)貿易状況
2021年の生鮮野菜の輸入量は、温室トマト(前年比9%増)、たまねぎ(同19%増)、スイートコーン(同21%増)、レタス(同19%増)などの輸入増により前年比8%増となった。このうち、温室トマトは21年の生鮮トマトの輸入量全体の58%を占めた。同年の生鮮野菜の輸入先は、メキシコ(79%)とカナダ(11%)が圧倒的に多く、中国は1%となった。過去10年間、中国から輸入された野菜の約67%はにんにくであるが、21年にはさつまいも(生鮮および乾燥)の輸入が急増している。同年の中国からの輸入品目別の割合は、にんにくが50%、さつまいもが33%となった。
生鮮野菜の輸出では、安定した価格と輸出量の増加により、21年の輸出額は同3%増の24億米ドル(3096億円)となった。品目別では、レタスが5.3億米ドル(684億円)と輸出額全体の22%を占めた。生鮮野菜の輸出額で見ると、レタスの次にたまねぎ、カリフラワー、ほうれんそう、トマトが続いた。
輸出先としては、輸出額ではカナダが78%を占め、2位以下のメキシコ(7%)、オランダ(3%)、英国(3%)、日本(2%)を大きく引き離している。輸出量では、カナダが前年比7%増、オランダが同12%増となったが、メキシコは同16%減、英国は同8%減となった。